BEASTARS 第二期を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
世界の表と裏で、触れ合い弾ける星々。
青春の悩みを越えて、生まれる女達の連帯。
牙を失うことで、新たな力を宿す超新星。
そして権力の顎で、捕食者を食いつぶす凶星。
闇に瞬く数多輝きを、結んで生まれる獣の星座。
ほら、夜空に一つ、今縁が消えて…そして生まれる。
物語は学園と裏市を、男と女を、捕食者と餌食を行ったり来たりしながら、複雑に回る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
肉食が持つ身体的な強さは、社会を形成してしまった獣人たちにとって強者の証明ではもはやなく、車椅子の老人が人喰い鰐の尊厳を丸呑みしたりもする。
なにもかもが素直ではありえない、歪な街に獣は生きている。
そこには色んな青春、色んな社会がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
SNS映えと心の繋がりを天秤にかけてみたり、思わず心を動かされてしまうライバルの可愛さに揺れてみたり。
牙を奪われて宿った強さを確認してみたり、血生臭い社会の現実を至近距離で睨みつけてみたり。
同い年でも、触れ合う世界は大きく違う。
しかしそれぞれに、向き合う悩みはシリアスで、掛け替えのない輝きに満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
それが裏市に漂う、剥き出しの血臭に彩られているとしても、確かに深い闇の中に奇妙な温もりがあって、それがかつての縁を跳ね除けさせたり、少年を新しい姿に生まれ変わらせたりする。
瞬き、繋がりを変える数多の星座
それがこの作品の夜空を宝石箱のごとく、彩っているのだと再確認させられる、良いエピソードだったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
裏市の喰うか喰われるかな暗黒と、少女たちのガーリィな輝きが交互に出てくる構成が、裏表に見えてどれも真実な青春を照らすようで、面白い構成だった。
というわけで、青春のファーストランナーはシイラとピーチである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
『肉食草食仲良しです!』というアピールに利用される立場に、シイラは苛立ちジュノは微笑む。
この満点笑顔にどういう計算があるか、肉食同士、女同士でも明かさない計算高さが、俺は好き
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裏市で展開してる…少年たちがその真っ只中に身を置く、喰うか喰われるかの原始の関係性。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
それを遠ざけても、ややこしさは人の常である。
ポートレートの中にしか存在を許されない自分から、シイラははみ出そうとして、ピーチの手を取る。
それは捕食本能とはまた違う、社会的動物の衝動。
動物としての絶対的な差異を越えて、言葉持つ生き物として対等に繋がりたいという、幼く純粋な願い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
それを、結構大人びて見えるシイラが叩きつけるシーンには、先週描かれたリズの血みどろとは違う…そしてどこか似ているものが滲む感じもある。
無論、シイラはピーチを食べない。
少女たちの常識になってる距離感を一歩ずつ踏み越えて、服を選びスイーツを食べて、一緒に笑い合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
心の奥に生々しいものを隠しつつ、でもそれを全部飲み込むでなく、お互いに共有できる距離を探り合いながら、関係を作っていく。
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エスカレーター一段分の差を、ナチュラルに乗りこなして対等に。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
そう振る舞ってくれる友達の思いに、震えながら手を伸ばしていく。
二人の距離感は、爪を丸めて頭を叩き、それが冗談で済むような繊細な配慮と優しさに包まれながら、携帯電話の中に収まっていく。
テムとリズが望みつつ掴めなかった、当たり前の青春の景色。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
胸の中モヤモヤとたぎる『私を理解して!』という叫びを、思わず突きつけてなお、壊れない関係性の模索。
そういう時間があの二人にも多分あって、しかし結末は、心からの笑顔とは行かなかった。
いいね!一つの微笑みと、吐き気がするほど甘い屍肉。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
それを隔てる壁がどれだけ分厚く、薄いのか。
フレッシュでガーリーな幸福に微笑みつつも、そんな事も(勝手に)考えてしまうエピソードだった。
あの二人もこうなりたかったし、なれるかも知れなかったんだがなぁ…。
ド直球に本音をぶつけ合うわけでなく、社交辞令と複雑な暗号に塗れつつ、しかし全てが嘘ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
張り裂けそうな切なさを、何気ない仕草に委ねながら、凄く柔らかいものを共有して、楽しい日々を作っていく。
シイラとピーチの青春は、凄く真っ当な青春の匂いがする。
一方レゴシが身を置く場所は、何もかもが剥き出しで暴力的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
コミュニケーションは牙と拳で取られ、慈しみよりも先に食欲が牙を剥く。
その薄暗さも、夕焼けの明るさも、多分同じ重さがある世界の真実、その一つなのだろう。
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表通りのカフェに漂う、青春の爽やかな風。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
そんなモノとは無縁の裏市の、更に薄暗い裏通り。
捕食本能に脳を焼かれ、社会生活から逸脱した怪物を、人間に戻すための闘争。
突き立てられた牙に抗い、それ以上の力で否定するせめぎあい。
レゴシは、そういう場所に立つ。
獣欲を越えた彼に、口枷はもういらない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
獣の牙は失われ、人の拳が代わりを為す。感情をニトロのように流し込んで、叩きつける鉄槌は重く、鋭い。
草食/肉食の境界があやふやなレゴシが、ここで獣/人の境も越えつつあるのは、なかなか面白い。
手を繋ぐ仲立ちにもなれば、武器を握ることも出来る掌
生物種としての”ヒト”の特徴を、レゴシは体得しつつある。それは襲いくる牙をせき止め、これ以上本能に流させないための盾にもなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
そんなヒューマニズム溢れる闘争が、レゴシの唯一性になっていくのか。
彼はどんな動物として強くなるのか。
それはまだまだ、先の話である。
何しろ宿敵は獣の頂点に立つヒグマであり、獣であったのならば焼かれることもなかった業に魂を歪めてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
リズという己の鏡像に、ここで手に入れた武器で立ち向かうのか、もっと様々な交流で磨きをかけるのか。
戦闘者としてのレゴシの変化は、物語の大事なキャンバスである。
そんな彼に焦がれるジュノは、また別のややこしさに心を砕いていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
種族合同の理想を守るべく、受けた主役への抜擢。
微笑みを返しつつも、腹の底では本音が踊る。
人当たりよく微笑んで、距離を作って踏み込まない。踏み込ませない。
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そんな処世術は、草食相手だけでなくシイラにも向けられていたと、ここで解ってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
そんな彼女の賢い仮面を、引っ剥がされる唯一の相手。憎き恋敵、離れていたい特別な相手。
ハルちゃんの背中が、クローゼットに閉じ込めておきたい思いを、知らず引きずり出してくる。
今回のエピソードは女と女/学園(シイラ&ピーチ)から男と男/裏市(レゴシとハイエナ、ゴウヒン)、そして女と女/学園(ジュノとハル)へ戻って再び男と男/裏市(ルイとワニ、老人、イブキ)に繋がっていく、四拍子のテンポが面白いと思うのだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
同じ舞台、同じ性別の組み合わせで描かれていても、一拍目と三拍目、二拍目と四拍目は当然違っていて、どこか通じるものがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
小気味良く繰り返され、転調を繰り返す語り口が見せてくるのは、軽重明暗様々な青春の差異点と共通点であろう。
皆違っていて、皆悩んでいるのだ。
ジュノの悩みは、焦がれるレゴシの視線を独占するハルへの嫉妬…で終わらず、そういう仮面の奥の本音(に見えるもの)を暴き立て、更にその奥にある思いを引き出されてしまう、無邪気な強さへの対面にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
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肉食との接触をSNSで消費する草食にも、それにうんざりな同類にも、笑顔で間合いを取れる賢さを、ハルちゃんは弱々しい愛嬌一つで切り崩していってしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
そんなふうにペースを乱されるのが、想像よりイヤじゃない。恋敵のはずなのに、憎めない。
弱いことは、このジャングルならぬ人の街においては、強いことよりも強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
そんなジュノの実感と、ハルちゃんを取り巻く世界がちょっと食い違っていることは、ここまで彼女が闘ってきた世間…女の子との対話が久しぶりな理由を思えば、すぐに分かる。
そんなふうに微妙にすれ違いつつも、心を飾らない距離感で相手を受け入れ合う草食と肉食。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
シイラとピーチのようなスタンダードなキラキラとはちょっと違うが、こっちもまた青春の一幕、輝く星のひと欠片だ。
そうして見えた恋敵に、裏市から引き取ったルイの伝言を預ける。
今回は4エピソードごとの繋ぎもいいけど、ジュノが勇気を出して裏市に踏み込み、ルイと踊ったものがハルちゃんに手渡される、話数を越えた繋がりも良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
それが落ちていく先にまた、切なさも宿るわけだが。
ルイは遠い褥の思い出を、置き去りに闇に進む。
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ふわふわウサギちゃんとKissするの夢を見てたら、強面ライオンが眼前に迫って、そらールイもビビったろうが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
『弱い者同士って、安心するね』というハルの言葉が、後にイブキが見せる聖痕で奇妙に裏打ちされる所に、構成の妙を感じる。
この世界で弱さは強さであり、強さは弱さなのだ。
単純な顎の力なら、老いた草食などひとかじりだろう凶暴な鰐が、借金に縛られ性器を切り落とされる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
権力、財産、法と社会構造。
獣人が街を作り手に入れてしまったものは、サバンナの力関係を時に逆転させる。
ジュノがハルに見つけたものの、グロテスクな逆転。
老人が人間社会で積み上げた牙が、哀れな餌食を噛み砕く残酷をイブキの手が塞ぎ、ルイはそれを睨みつける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
かつて憎悪した、大人の嘘が行き着く先。
捻れきった醜さは、”I♡裏市”のどぎついネオンよりも、最悪の色をしている。最高に悪趣味で最高だな…。
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種族に刻まれた本能を、捻じ曲げ押し込んで軋む社会。そこから溢れ出た本音が流れ込むようでいて、弱肉強食のシンプルなルールでは動いていない裏市。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
そのすべえtを、ルイの純粋は怒り睨みつける。
その真っ直ぐな視線が、求めるものはなんなのか。
多分ルイ自身も、真実解ってはいない。
それでも、己の前に晒された獅子の弱さを、足の裏に刻まれた”4”と同じ聖痕を頼りに、闇の只中に進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
さよなら、愛したヒト。さよなら、過去の呼び声。
俺はこの強くて弱いモノと、ギラつく欲望に潜っていく。
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絶望が待ち構える断崖に背中を向け、かつて餌食だった者たちは隣り合って進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
そこで繋がる思いを、『親心』と言ってしまっていることにルイは気づいているのだろうか。
何もかもが信じられない、捻じくれた世界でそれでも、温もりに縋っている己に、気づいているのだろうか。
エリートの仮面を投げ捨て、素裸で弱い自分で要られた褥。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
イブキと寝るわけじゃないが、もしかしたらそれ以上に力強い引力で、草食と肉食、男たちは惹かれ合っていく。
それは少女たちが摩擦に感情を縺れさせ、お互いの思いを絡み合わせる幸福な青春と、全く違っていて…
それでいて、何処かに通底する部分がある、不可思議な交流だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
SNSで流行りを消費する以上の関係を、確かに結び合えたシーラとピーチのように。
恋敵を好きになんてなりたくないのに、その弱い強さを認め、思いを預けてしまったジュノのように。
ルイもまた、闇の中光を探っている。
その歩みに、牙を失い拳を手に入れたレゴシの人生は、どう絡んでいくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
それぞれの舞台で、それぞれの色彩で輝く星たちは、どんな引力に惹かれて星座になっていくのか。
闇と光、男と女、裏市と学園。
それぞれバラバラだからこそ、混ざり合い生まれる火花は面白い。
個別のエピソードの切れ味と、それを繋ぐ不思議な共鳴が心地よい、青春のオムニバスでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年2月25日
微笑みと苛立ちの中でありふれた青春を送るものも、暴力と欲望が待ち構える闇に身を置くものも。
皆誰かを求め、何かと繋がりながら明日に進んでいくのだ。
さて、次に描かれるはどんな星座か。次回も楽しみ