のんのんびより のんすとっぷ を見る
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
秋。それは実りの季節であり、別れの気配が漂い出す頃合いでもある。
このみもまた、受験を前に部活から去っていくのではないか。
祭りの喧騒が寂しさを際立たせ、尋ねる言葉は口から逃げる。
茜色に染まる秋空が、人見知りな少女の背中を押す。
あの春のように。
そんな感じの吹奏楽青春絵巻、静かなる秋のメランコリィである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
山里の広々した風景に、のったりとおおらかな日々が流れていくこのアニメにしては、波風の大きい異質なエピソードと言える。
だが…最高に良かった。これもまた、のんのんびより。
村の学校を卒業する子供はいないわけで、今回秋風に別れ路の寂しさを載せた展開は、あかねちゃんが三期で物語に入ってきたからこそ生まれたと言える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
不変の中にある小さな変化を積み重ねていくいつもの語り口とは、真逆に思える変化の中の不変。
しかしそれは、人間の営みを同じく射抜いている。
れんちょんと触れ合った第2話、他の子とも友だちになった第5話と、あかねちゃんが関わる物語の仕上がりが良かったことが、駅前でこみ上げてきた変化への感謝が、じわりと染みる足場になっていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
一年を1クール、やや足早に駆けていくこのアニメが静かに積み重ね、生み出しているもの。
村の外からやってきた異邦人だからこそ、他の子にとっての当たり前が当たり前ではなく、奇妙な出会いから受け取ったものが大きな意味を持つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
いろんな形で描かれるあかねちゃんの変化を、村の風に返していくかのように流れる晩秋のフルート。
静かで、優しくて、とてもこの作品らしい情景が描かれた。
二期までではトボケた顔が目立ってたこのみちゃんが、先輩として後輩をしっかり導き、ときに無茶を言いつつ大きなものを手渡ししていた様子も、そんな風にのってしみじみと胸に迫った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
普段の長閑な景色とは少し違うが、これもまた、子供たちの瑞々しい人生、そのスケッチだったと思う。
というわけで、物語は普段と違う景色から始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
毎回物言わぬ風景の存在感が強いアニメだけに、街の風景に変わるだけで、違う物語が始まる期待感が強まる。
村の学校より人が多くて、変化のスピードが早い場所。
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よく考えてみれば、あかねとこのみが身を置くサイクルこそが”普通”なんだが、のどかに流れていく村の時間に慣れていたせいか、”卒業”というイベントの異物感が凄い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
しかし言われてみれば、村の外にはそういうものが当然ある。出会いと解りを繰り返し、変化していく世界。
それは寂しさだけではなく、人見知りを乗り越えて部活の友達を作ったり、フルートが上手くなったり、ポジティブな変化も連れてきてくれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
あかねはその意味を、しっかり理解している子供である。だからこそ、このみとの関係も変化してしまうのかと、少し怯える。
天真爛漫好き勝手、このみは思う存分あかねちゃんを振り回して、お土産目当てだったはずの祭りを存分に楽しむ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
制服の目新しさ、楽しさ沢山の街の祭り。
山野に囲まれた村とは違う景色を、二人は一緒に歩いてきた。この祭りは、そんな日常の延長だ。
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それがちょっと特別で、でもいつもどおりに楽しいからこそ、あかねの不安と寂しさは募る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
去りゆく背中を呼び止め、日々の感謝を言葉にする。
それは思いつめた勇み足なのだが、その心根はよく伝わってくる。
ここら辺は、村でも冴える”日常”を描く筆の強さが、下支えする情感であろう。
ピッタリ密着して追ったわけではないが、描く筆致を見ればこの二人が、良い関係を築けていたことはよく伝わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
こういうなんでも無い、しかしかけがえない時間を共有してきたのだろうなと、視聴者が自然に推察できる豊かさが、祭りを楽しむ二人にある。
間合い、呼吸。形にならないが、確かにあるもの
そういうモノを切り取るのが非常に上手い作品であることは、村の愉快な日々を描いてきた物語を見ていれば、よく判ることだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
これまでペーソスとノスタルジーを切り取ってきた筆先が、今回は震える青春に触る。
今までと違う画材だが、描き方は見事。
そこにあるのは、村の日々と同じ人の営み、人の心
同時に違うものを描いたからこそ、この作品が見据えるものの多彩さ、豊かさ、違うけど繋がっているものが力強く浮き上がってくる感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
このお話が何を描けるか、何を描きたいのか。
そういう芯を、強く伝える最高の番外編だと思う。
”空気”切り取らせると、やっぱうめーわこのアニメ…。
渾身を込めた別れの挨拶は、するりと肩透かしをくらい恥ずかしさに顔が染まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
秋空に飛ぶ風船のように、ふわりふわり揺れる私達。でもこの気恥ずかしさも、湧き上がってきた感謝と寂しさも、消えはしない。無くなりはしない。
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先週描いた初秋の緑から、すっかり紅葉に染まった世界を舞台に描かれる、青春のスケッチ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
そこには確かな体温と、秋風の爽やかさが確かに宿っていた。
美術の強さを信じて、”あかね色”の空でエピソードを閉じる詩情、最高に良かったです。
アーバン・ジュブナイルも、キッチリ仕上げてくんだよなぁ…
さて感動は第三エピソードでまたやるとして、第二エピソードは悪童夏海、幾度目かの大失敗である。ホンマ浅ましい子やで…(大好き)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
テンポよく展開する悪あがき、ちょっとズラした真相、ホッとしたところでの大失態。
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非常に小気味よく進んで、楽しいエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
お母様に胡乱な言い訳積み重ねる夏海の、何億回痛い目見ても学習しない浅はかさが大変良かった。
あとあくまでマイペースに、自分の呼吸を保ち続けるこのみちゃんのタフさね。あかねちゃん相手に先輩やってると、なかなか見れんからな…ありがたい。
ここで一笑い挟んだことで、第三エピのしみじみいい話感が更に染み込む構成なのは巧いなぁ、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
浅はかだったり、大きく笑ったり、ちょっとマジな空気出したり。
色んな顔があって人生面白い、というのは、舞台が街になったり村になったりする今回の構成と、上手く噛み合っている。
というわけで、第三エピはあかねちゃんの集大成、皆の前でのフルート披露である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
れんちょんがお土産のお面を気に入ってる様子が、最高に良い。
あと、あかねちゃんの抱えた憂鬱を思いやる、賢くやさしい子供ぶりね…国の宝やと思ってます。
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唐突に増えた聴衆を前に、あかねのあがり症が発熱し、舞台は野外へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
紅葉深まる里の景色が、最高に良い…良すぎる。
皆の視線に少し背中を向けて、大きく開けた空を見ながら鳴り響く、優しい横笛の音。
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台詞を少なめに、あかねちゃんが半年積み上げた努力の宿った音色に雄弁に語らせる作りが、非常に良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
ここまで見守り導いてくれたこのみちゃんの視線を、ちょっと探して勇気に変える触れ合いも、非常に繊細。
そして辺りを取り巻く、紅葉の錦。色彩豊かな山々は、多分あかねちゃんの心そのものだ。
押しの強い先輩に連れられて、やってきた村。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
そこで出会った景色と人々が、自分に分け与えてくれたものを思いながら音は流れていく。
街の祭りで抱えた、楽しさと寂しさ。
秋風に乗って広がっていく、豊かな思い。
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これまでも作品を豊かに支えてきた美術の強さを、この変則的なエピソードの主柱として見事に使う演出は、静謐でありながら雄弁だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
来た時は顔を曇らせていた、縁が切れることへの不安も真夜中の会話で跳ね飛ばされ、最後は満点笑顔。
飛行機雲は、天馬のように青い秋空に高く高く登っていく。
あかねちゃんにフッと訪れた別れの寂しさが、触れ合いを経て未来に繋がっていくお話に相応しい、見事なラストカットだと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
宮内れんげさんと、非常に仲の良い感じがじんわり描かれていたのも最高に良い。年が離れた友達として、ずっっっっと仲良くしてて欲しい…。
そんな感じの、あかね色の秋でありました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
普段ののんのんびよりとちょっと違う角度から、しかしのんのんびよりでしか描けない色合いと匂いで、高校生の青春を描く。
村とは違う場所、違う人だからこそ出逢う変化。
変わらない場所が与えてくれたもの。
”三期の新キャラ”を、最大限活かした傑作でした
野山にフルートは竹に雀梅に鶯、約束されたベストマッチなわけですが、それが形式に堕さずしっかりと、あかねちゃんと季節の変化を焼き付けた情景にまとまっていたことが、大変良かったと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
実質たった三話で、ここまで”変化”を描けるのって凄いと思うよ。
穏やかに繰り返す村の時間とは、また違う不変。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月1日
あかねちゃんとこのみちゃんの絆は、通う学校が変わっても続いていきます。
その少しの違いが、作品を貫通するものをしっかり際立たせる回でもあったかな、と思います。
非常に良かったです。次回も楽しみ。