裏世界ピクニックを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
打ち上げだ! ビールだサンチュだ焼き肉だ!
惰弱な大学生の夢は異様な電話で粉砕され、異界ハンター達は茜理救出のためにエレベーターへと乗り込む。
青き中間領域に踊るは、確信か幻惑か。
〆に頼むのは冷麺かクッパか。
ビビり倒す小桜を守り、カルビの夢は見れるのか!
そんな感じの、二度目の原作者脚本回、女四人のワチャワチャ中間領域突入日記である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
多分ミートトレイン再びでアニメは〆になると思うのだが、それに向けて異界ハンター達の現在位置、”助ける”という行為への向き合い方をスケッチするような回だった。
あと空魚と鳥子の距離な。
やっぱビビり小動物かわいそう可愛い小桜さんが画面に映ると、非常にホッコリするわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
異界適正の薄い彼女がアンカーになることで、すっかり暴力とオカルトに染まっちゃった二人+ナチュラルに壊れ気味なカラテカの異様さが際立つ。
しかし主役として裏世界に切り込むには、その異常こそ大事で。
即座に銃抜く常在戦場と、まだ残ってる人間性。そして手慣れた相棒感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
今回描いた空魚達の武器を、きさらぎ駅再訪でどう使い、アニメを終わらせるか楽しみになるエピソードでした。
こういう現況スケッチ的な話数は、語り口に軽味があって好きだな。
空魚が裸眼と眼鏡、鏡像と実像の間を行ったり来たりしながら物語は始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
薄らぼんやりと鏡の中見る髪は長く、それが誰の顔なのかは判然としない。
自分に髪の長い閏間冴月を投影する、彼女を既に知る女達。その瞳に映るものへ、空魚も接近していく。
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だがその形はあくまで鏡像≒虚像であり、彼女は”冴月に似た人”として自分を認識しない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
私は私。
そんなエゴは空魚当人を強烈に定位し、あやふやな領域で他でもない”紙越空魚”として固定する。
そしてその認識は常に揺れている。誰かが見ていないと、鏡の中の誰かが取って代わるかもしれない。
裏世界ではそういうヤバ事件は普通に起こり、『焼き肉に来る女』として勝手に自分を定位した茜理は知らず、領域に喰われる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
アニメ前半で幾度か見られた、死に至る認識のズレ。自分が見えていると思うものが、周囲の認識をぶっちぎって暴走しだす感覚。
それを、主客入れ替えて空魚と鳥子が体験する。
茜理が異界に迷う主観担当で、それを外側から認識するハンター役に二人がなっているのは、(望むと望まざると)経験値を積んだ結果だな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
かつて自分たちがいた場所を通り過ぎ、外部から介入する立場に、空魚達はなっている。
恐怖と混乱は主観ではなく客観で観測され、把握され、操作される。
茜理がヒロインとなることで、未知にギャーギャー騒ぎ、恐怖と衝動に走り回る季節は結構終わってて、怖いは怖いなりに握りしめて真っ直ぐ走れるタフさが、空魚にも定着してきた感じがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
まぁ自分で言っているように、怖いは当然怖いのだが。それが発狂する理由には、もうならない。
それはつまり、空魚達がより色濃く異界の生物になってる、ということだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
焼肉食うにも大騒ぎ、よれば触れば異界が近づく。
神を見るということは神に為るということで、鏡の中の髪の長い空魚は、ただ冴月のギズモ…というわけではないのだろう。感染性・伝染性の神性、か。
マジの焼き肉喰いたさに猛ダッシュしてきた小桜さんを乗せて、エレベーターは異常へと突き進む。ホンマ災難やな…焼肉食べたいだけなのに。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
普段の白衣から私服に着替えて、普通の町並みに出てくるとちびっこ感際立つな小桜…可愛いね!(裏世界ちんちん亭)
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茜理の背中を追って二人は中間領域に踏み出し、小桜はブルブル震えながらエレベーターの敷居をまたぐ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
ドアが空いたら銃を構える。
二人には当然になってしまった暴力の仕草は、小桜にとっては当然異常で、普通の世界だったらその反応が当然だ。
しかし、ここは裏世界。正常は異常に染まる。
そのコンバーションが出来ないもの、あるいは過剰に適応したものは死ぬだけ、あるいは死ぬよりひどい目に合うだけで、空魚と鳥子は軽口を叩きあえる良い距離感を保ちながら、危ういバランスを保っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
片方が崩れれば、片方が引っ張る。双極のカウンターウェイトは、不思議なダンスを踊る。
なんか小気味よくいい感じにバディしてる二人に、小桜は置いていかれないように必死についていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
人間相手のときだと憎まれ口も叩けるが、怪現象が押し寄せると即座に青ざめ、ブルブル震えだす姿が可愛く、またマトモで安心する。
フツーな二人が狂ってんだよ…。
©宮澤伊織・早川書房/ DS研 pic.twitter.com/JbCBEsUACs
前回のサンヌキカノもそうだけど、異界に行くエレベーターを途中で降りる今回は、都市伝説のスクリプトを書き換え、勝手な物語を作り出している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
”お話”ではない個人的な体験に説明はなく、何故鏡が割れるかも、それが何を意味するかも解らない。
ただ、それはそこにある。
意味がわかってしまいそうな元ネタありのエピソードより、今回みたいにひたすらワケのわからないものが画面を埋め尽くし、ビビりつつ逞しく対処していくお話のほうが、裏世界のオリジナリティと実感があるかなー、という感じもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
でも実話怪談のフレームがあって、初めてそれを飲めてる感じもある
実話怪談に伴う恐怖をメディアとして、人間に接触/侵食してくる裏世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
それがこの物語の構造と重なってるのが、結構上手いところなんだろうな。
似ているが違い、違うからこそ面白い。
筋書きは予測を外れ、不可解が面白さとして飛び込んでくる体験は、空魚達の冒険とのシンクロを上げてくれる。
今回はイヤ空間の演出が冴えてて、説明一切なしのヤダ味が空気に充満して素晴らしかった。なんだよこのイヤ人形とイヤ仏壇とイヤ床屋…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
怪しげな場所をくぐり抜けて、一行はようやく茜理を捕まえる。
追っている、と認識しているのは追われる側だけだ。そのズレ。
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空魚が拒絶したはずの長い髪、閏間冴月との共通点を幻視して、茜理は異界に迷った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
それが『ぜってー先輩は焼き肉来るから!』という、根拠のない好意の反射なのか、自分を危ない道に引き込んだ女の残響なのか。
多分、茜理にも分からないのだろう。そういうあやふやさを、裏世界は喰う。
それに身内が食われてはたまらんと、思わず手を差し伸べてしまう善性はぶっ壊れ人間にもまだあって、異界ハンター達はきさらぎ駅再訪に思いを馳せる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
助けれるなら、助けたい。
そのためなら恐怖を奥歯で噛み殺し、必死に走れる。
その素朴なヒロイズムが息をしているなら、多分まだ人間なのだろう。
青い瞳と掌は”ヤバいヤツ”に共鳴し、四人は必死に異界を逆走する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
異界適正がゼロに近いのに、誰かのために勇気を振り絞る小桜の人間性が、まだ空魚たちにもあることを今回の冒険は教えてくれる。
『やったか!?』と思わせて、もう一度。定番の天丼が気持ちいい。
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鳥子が意識を失っている間に空魚が見据えた、炎の残影。それを断ち切るために、青い掌を使う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
身勝手な身体使用が問題にならないほど、二人の距離は近づいている。しかし重なり合いはしない。
その境界線に、怪しく揺らめいている女の影を、空魚は鳥子の手を使って祓う
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ここは女達のもつれた糸、昏睡姦のエロティシズムが祓魔と絡み合っていて、大変良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
過去の女がそこにいることを知らせず、勝手に体を使う。その逸脱が特に問題にならず、日常の一コマで収まってしまう程度に、二人の心は重なっている。
あなただけの特別。私達だけの特別。唯一性のロマンスだ。
グーグー鳴るお腹、生きてればこその空腹を抱えて、空魚達は焼肉屋に入っていく。日常に戻っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
人が人足りうるヒューマニティは、恐怖と勇気と人助けにある。
きさらぎ駅再襲撃は、どうやらヒロイズムをめぐる物語になりそうだ。
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実際弱きものがそれでも奥歯を噛み締め、恐怖に立ち向かうときにこそ魂は輝くわけで。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
お互い抱える”当たり前の優しさ”がどっかズレつつ、『小桜が一番強い!』とする鳥子の判断、『米軍を助けたい』という価値観は尋常だ。
そのヒューマニズムの残滓が、裏世界で吉と出るか凶と出るか。
近づいては離れる月の引力と合わせて、最終エピソードに向けて主役が何処にいるか、切り取るスケッチでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
独特の尺で繰り出される当たり障りのない会話が、鳥子と空魚が今いる場所を上手く語ってきて良かった。
なんか、奇妙で体温のある間合いだったな…。
”そこ”こそが現世に寄る辺ない奇妙な二人のホームであり、異界から戻ってくるための道標なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
二人でいること。
繋いだ手と反対の掌で、誰かを助けること。
今回…そして作中ずっと大事に描かれたものが、きさらぎ駅でどう唸るのか。次回も楽しみです。
追記 今読むと『諸星先生は萌えもやれてスゲーな』ってなる。
裏ピ追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年3月10日
紙越空魚を縮めると”紙魚”であり、これは陰の気を漂わせる彼女のキャラを本食う虫に例えつつ、女二人異界旅の古典”栞と紙魚子”への目配せも含んだネーミングなのかな、と思ったりする。リスペクト!