NOMAD メガロボクス2を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
死者の日。
華やかなオフレンダを目印に、去りしものが還る祝祭。
移民たちなけなしの想いを、競売の立て札が踏みにじる。
八百長野郎は未来を、勝ち目のないトーナメントに賭けた。
宿無しノマド、受けた恩。
蜂鳥ノマド、何処へ行き…何処に帰る?
そんな感じのNOMAD2話! 華やかな死者の祭りに、再生と死が静かに踊るエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
前回あんだけジョーが行き着いちまったどん詰まりを描かれて、一体どうなるものかとハラハラしていたが、彼は闇雲に走り回る足を奪われることで、大事な場所に帰還する一歩目を踏み出すこととなった。
急き立てられるのではなく、意思を込めて立ち止まり、立ち返ること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
そう出来たのはバイクを盗まれ、一時人の優しさにふれあい、自分が生み出した夢の行き先を見つけたからである。
廃遊園地の移民街、期限付きの宿り木が果たして、ノマドに与えるものはなにか。
未来、未だ見えず。だが…。
未だジョーを苛む死者の霊、過去の傷は消えてはいないが、しかしチーフの挑戦、そこに燻る”ギアレス”の夢に寄り添うことで、何かが始まりそうな予感。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
そしてそれが、また残酷に砕かれそうなシビアな気配。
油断は許されず、希望は不安定に瞬き、一瞬たりとも目は離せない。
ボクシングをしない、穏やかな戦士の休日であったけども、死を華やかに寿ぐ”死者の日”の空気が上手く、ジョーが身を置く苦界を包んで美しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
いかつい装いを外し眼鏡を掛けたチーフは、のったりとした態度に静かな決意を燃やす。その燃料は、かつて見た夢。ジョーが魅せた夢だ。
その照り返しが、長く伸びる死者の影を打ち払う兆しとなるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
『アンタは、俺が殺した』
苦痛と眩暈の中で細切れにされた過去に、南部贋作殺害宣言はどう絡んでいるのか。
どっちにしても、ジョーは哀しく強く、まだ諦めきれないように見える。
蜂鳥達の、明日はどっちだ。
アステカにおいて蜂鳥は戦士の鳥であり、死せる闘魂は小さな鳥の形となって、現世に舞い戻ってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
軍神ウィツィロポチトリの赤いマントは蜂鳥の羽で出来ており、その名前も”南の蜂鳥”である。
贄として心臓を求める勇壮な神に、捧げる舞踏。今回のメガロボクスには、そういう味も匂う。
NOMADは”遊牧民”を意味する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
定住せず動き続けるためには足が必要だが、今回ジョーはまずその足を盗まれ、解体される。
行き着いた先は、地域に受け入れられなかった移民たちのコミュニティ。崩れた夢が眠る遊園地跡。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第2話より引用) pic.twitter.com/c2LzFA7uWA
バイクを盗んだミオは、”遊ぶ金欲しさ”にギアと一緒に売っぱらい、一時の遊興にふける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
しかし同じ食い詰めモノと思われた少年たちは、移民の子であるミオを金づるとしか思っていない。
ミオもそれを理解りつつ、盗んで差し出せば受け入れられると、腐った夢を見続けている。
南部贋作の亡霊に急き立てられ、根無し草の暮らしを続けていたジョーはここでようやく、一息をつく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
チーフに反射した自分の夢を見つめ、立ち上がる切っ掛けを掴む。
ただガムシャラに走り続けた野良犬の日々、走ればこそ仲間と居場所を見つけられた時代。
それと同じ走り方じゃ、傷つくだけだ。
OPで墓に入れられているNOMADが、その証明たる足を失うことで家…Casaを見つける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
それが安住の地になるかは解らない。全てが報われるはずの約束の地から、ジョーは既に追い出されて(あるいは逃げ出して)いる。
だが、それでも夢を見る。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第2話より引用) pic.twitter.com/1OuQHZnMU9
敗北の夢、涙の夢。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
サチオは子供の姿のまま、恨めしくノマドを見つめている。
何処かに行かなきゃいけないと、逃げるように急き立てられて、必死に拳を作って空を打つ。
その苦闘に、手を添えてくれるカーサの優しさがあまりにも温かい。
拳をもう一度握るためには、それを解さなければいけない。
そんなことはジョーも多分、心のどっかで解っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
でもグローブを置ける場所はどっかに行っちまって、かつて習い覚えた鉄拳を緩めたら、何もかも手放しちまいそうな感じがしてるのだろう。
そんな盲滅法な暴走が、今回ようやく一休みする。そうさせてくれたのは、優しい男と女だ。
目覚めて苦ぇお茶を啜りながら、ジョーは異国の祭りに身を投げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
花と灯明に明るく彩られた、死者たちが戻り来る日。
その香りは、生ける死者であるノマドもまた、ゆっくりと蘇らせていく。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第2話より引用) pic.twitter.com/l5o0E3qAgZ
冷たい顔で競売の札を立てる連中に、ジョーが前のめりになった時『オッ!』と思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
諦めた、もう終わりだ、早く死にてぇ。
そう言いながら、廃グリスで目の周りをふちどり、ドクロの化粧で闘い続けた彼は未だ、死んじゃいない。
誰かの大事な何かを踏みつけにするやつに、黙っていられない。
しかし未だ、その拳を支える足は整っていなくて、チーフは優しくその肩を押し下げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
『ここは俺の家だから、俺が守る』
そう言わんばかりの静かな表情が、恥知らずのイカサマ野郎にプライドを宿していく。
す、すまぇねチーフ…アンタの事情も知らんとボロクソ言って…。
移民たちは流れ着いた国に居場所もなく、ようやく見つけた仮宿すらも経済と悪徳に押し流され、奪われそうだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
競売の札はチーフが間に立つことで抜き取られるが、それを踏みつける子供の足はあまりに無力で、ぶち壊すことは出来ない。
静かに状況を追いかけるカメラが、相当に雄弁なのはいいアニメ。
Mi casa es su casa…”くつろいでくれ”と掲げられた旗を地元の連中は読まず、和を乱し仕事を奪うよそ者と、移民たちを受け入れない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
ノマドもまた、既存の構造に居場所を見つけられなかった宿無し。だからこそ、そこに込められた温もりを受け取れる。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第2話より引用) pic.twitter.com/jednq5WrL1
チーフが戦士の顔を外し、メガネを掛けて見つめるのは、一発勝負のチラシ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
勝てるはずもねぇ夢に、安住の思いを載せて挑む表情は、少し引き締まって知的だ。
マージでパワー型に見えた巨漢が、その身体に知性とプライド秘めてるのが判る瞬間大好き。す、好きになっちゃう…。
あくまで華やかに、死を隣において寿ぐ異国の祭りを、ジョーは遠巻きに見守る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
それは見知らぬはずなのに、モノクロームな死の思い出にずっと付きまとわれている彼にとって、心安らぐ灯火となる。
拳に添えられた花。健闘を称える、もう一つのグラブ。
それはクスリの反動でぶっ倒れ、悪夢にうなされるジョーの拳を、マーラが優しく包んでくれたのと同じいたわりだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
ジョーもまた、同じ思いを込めて贋作の拳に、華を添えたはずだ。その記憶が引き出される時、胸中に宿るのは痛みだけではない…はずだ。
何処にでも行ける赤いピックアップは、いつでも帰ってこれる場所があるから走れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
行く先も、帰る場所もなく走り回っていたノマドが、バイクを盗まれることで此処にたどり着いたのと、真逆で同じチーフの思い。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第2話より引用) pic.twitter.com/kZ8wjH98e5
彼もまた、おそらく妻子を失い、強い傷を心に受けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
それでも泥に塗れ、片八百長と嘘っぱちに身を投げてなお、優しく愛でたい花がある。
車椅子の老婦人をダンスに誘うその背中は、あまりにもジェントルでタフで、す、好きになっちゃう…。
ジョーは蝋燭の柔らかな光に導かれて、チーフの言葉と思いを静かに胸に宿していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
”ギアレス”の裸の奮戦が、俺たちハグレモノに魅せてくれた夢。
それがまだ輝くから、笑っていられる。踏みつけにされるだけの、居場所のないクズだと、自分を思わずに要られる。
ジョー自身が埋葬した”ギアレス”の伝説は、この小さなコミュニティで、そこに息づく人々の間で、目の前にいる誇り高き戦士の魂の中で、確かに生きている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
それが、真っ白に燃え尽き薄汚れたはずのジョーを蘇らせていく。死者の祭りに寄り添うことで、ノマドはジョーに戻っていく。
そうさせたのが、直接対戦したこともねぇ、モニタ越しに見ていただけのチーフだってのが、情があってよかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
そんだけスゲェことを、確かに”ギアレス”ジョーは成し遂げたのだ。
どんな悲劇がそれを打ち砕いても、みすぼらしく夢が汚れても、それは嘘ではない。
ジョーはマーラが差し出す命金を、お互い様と優しく突っ返す。”戻って”きてんだよなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
墓前に静かに、ハチドリの像を刻むチーフの魂は、あくまで穏やかだ。
露骨にたけし顔したヤクザに切る啖呵も、敬語で静かである。獅子は、無駄に吠えない。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第2話より引用) pic.twitter.com/JvCkxDaNE5
”ギアレス”ジョーの栄光を売り飛ばして、自分の居場所を金で作ろうとしただろうミオの足掻きは、ジョーの不在で水泡に帰する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
彼の行いは褒められたもんじゃないが、その悪辣に何処か、居場所を求める寂しさ、受け入れられない怒りが滲んでいて、嫌いにはなれない。
ジョーが自分を痛めつける放埒に、意思を込めて決別し、自分で戻るべき場所を選べたのは、ミオがバイクを盗めばこそだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
そういう奇妙な縁に身を預け、目の前を行き過ぎるものの意味を見つめる。
荒れ果てた道を、鏡に照らして見定める。
(画像は"NOMAD メガロボクス2"第2話より引用) pic.twitter.com/lTNBJSFqIO
ジョーが鏡の前で見る贋作には、もう両目がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
自分が殺したと、強く己を責める痛みと向き合えばこそ、亡霊は亡霊の表情を顕にしてくる。
それと向き合うのは辛い。ジョーの苦悩は、痛いほどに画面から伝わってくる。
それでも、クスリは辞めだ。俺は、此処に戻り此処から進む。
一期はずっと前に進んできたジョーが、その足を奪われ立ち止まることで、戻っていく事を選ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
凄く象徴的で、優しい詩情に溢れたエピソードだったと思います。
オッチャンに導かれ、手を引かれて進んでいた時代は終わってしまったけども、ジョーはまだ生きて進むことが出来ると、クスリを捨てて示した
そう出来たのは、鏡に写ったのが死者の亡霊、過去の過ちだけでなく、ギア無しで戦ったあの日々が誰かに何かを手渡していた、灯火と温もりを確かめたからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
チーフの言葉、”カーサ”の優しさが、ジョーを墓場から引っ張り出す。死者の日に、強さと優しさが取り戻されていく。
ハチドリ、翼傷つけど未だ死なず。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
そういう感じのお話でした。
土の匂いを宿すメキシコ文化の美麗、それが異物にしかなれない世の世知辛さを、上手く生かしたと思います。
第1話が辛い話だったんで、今回のあったけぇ感じがホント、ありがたかった。チーフもマーラも好きになっちゃったな…。
ジョーは自分を死人だと感じていたから、ノマドとしてリングに立つ時はグリスで瞳をふちどり、骸骨の化粧をしたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
そんな彼に、まだまだ長く死の影は伸びる。チーフの無謀な賭けに、かつての贋作のように隣り合う決意は果たして、明日に繋がるのか。
NOMAD…面白すぎる。次回も楽しみ。
ジョーがズタボロに追い込まれた姿たっぷり食わされたから、優しくされるとマジ泣いちゃうんだよな…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
第1話から第2話の寒暖差、落差を生かした方向づけは本当に巧いと思います。
色々世知辛いが、希望がないわけじゃない。拳はようやく、明日の方角を向いたのだ。いいアニメだ…。
追記 進むことで変わってしまったもの。たどり着いたどん詰まり。その先にまだ終わらない道は、止まること、戻ることでしか進み直せない。ノマドの旅路は続く。
NOMAD追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
バイクを盗まれ暴走は止まり、ギアを売っぱらわれたことでノマドは戦えなく…戦わなくて住むようになる。
奪わえたように見えるものが実は、自分を傷つける歩みに安らぎをくれる場所への入り口にもなっている。
走る一期から、立ち止まり戻る二期へ。7年は、ジョーと物語のあり方を変えた。
ジョーはチーフのコーチとなることで、自分が殺した贋作と同じ立場になり、あの時オッチャンが感じていたことに近づいていくのだろうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
もうガムシャラな子供ではなく、燃える夢から炎を受け取って、灰に火を灯す側になりつつある自分を、輝く思い出とともに取り戻していくのだろうか。
カーサはヤクザと私企業が管理する、台帳に乗らない土地だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月12日
第二の”番外地”に足場を置くことが、ジョーが喪失を取り戻し、再びリングに立つ契機となるのか。
前に半分、後ろに半分。
ジョー、オッチャンの教えてくれたことを、思い出せると良いね。