MARS REDを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
岬の死を聖痕と刻みながら、前田大佐を指揮官に”零”が動き出す。
皇国の影に潜む吸血鬼を、狩り出し人の平穏を守る。
それに従事する形でしか、生存を許されない元人間たち。怪物たちが燃やす情と、あっけなく散る命。
降る雨にくゆらす煙は、鬼の目に宿る涙か。
そんな感じの、零機関最初の事件である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
前回が前田大佐に強くフォーカスし、叙情重点で進んでいったのに対し、今回は零機関が請け負う事件がどんなものか、その端緒から結末まで横幅広く切り取っていく、叙事のエピソードだったと思う。
しかし前回印象的だった詩情が、消えるわけではない。
あいも変わらず前田大佐は岬の残影を置い続けているし、駆り立てられる吸血鬼側にも、追い込む零機関側にも奇妙な生活の匂い、それを断ち切る死の影がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
凄く残酷なことがあまりベットリと張り付かず、サラサラと人生の川面に流れていく感覚が独特で、”吸血鬼の話”らしくて良い。
前田さんの部下になる連中がどんな輩か、デカイ声では語らないけどもよく伝わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
特に屈折したエリートである山上さんは、アニメではあんま見ないずんぐりむっくり体型に山ちゃんボイス、小物のようで情を知る懐の深さで、大変気に入ってしまった。
可愛いオジサンだね…。(垂涎ズルリ)
岬脱走の傷跡が深く残る施設で、前田大佐は特に表情を変えない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
しかし視線は消えてしまった女を追い続け、彼の心には消えない傷が宿っている。
この廃墟を生み出した連中を、一人の女を狂わせ殺した輩を、俺が狩る。
(画像は"MARS RED"第2話より引用) pic.twitter.com/k01k8TMhhz
そういう覚悟を静かに込めて、レコードに岬の名残が刻まれていないかと、耳を寄せていたのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
前田さんは全然自分のことを喋らないで、鋼鉄のように零の真ん中に立ち続ける。
鬼斬の護国鬼として自分を定めることで、吸血鬼に対し不退転の組織を支えるつもりなのだろう。
しかしその裏には、ひどく甘やかに出血し続ける恋情があり、”護る”存在たる兵士の本懐を遂げられなかった無念がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
そんな私情と公務のアマルガムを第1話でしっかり描いたことが、作品全体に良い湿度を与えていると思う。
マージで岬”命”過ぎて、見ててどんどん好きになる。どんだけよ…。
この令和に折笠富美子ヒロインという、余りにありがたすぎる配役を思わずおろがむけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
モガの友としてスキャンダルを追う葵ちゃんは、幼馴染が日本最強の怪物になってしまったことも知らぬまま、世界の真実に隣接していく。
(画像は"MARS RED"第2話より引用) pic.twitter.com/DSYj4dNqgw
女と男。生者と死者。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
真実を暴く事件記者と、全てを闇に葬る死者の憲兵。
秀太郎と葵ちゃんの対置は、今後お話が転がる中でいい仕事をしそうではある。
そしてスゲーあっさり人が死ぬ話なので、葵ちゃんの身が心配でもある。日向担当だから、ある程度は大丈夫だと思うけど。
劣等吸血鬼たる山上さんが、気にせず流し込める血を秀太郎は飲めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
ブルーブラッドであるが故の選り好み、力の代償としての生きづらさ。
あるいは、血を吸う怪物としての生を飲み下せない、半端に残った人間性。
彼がシベリアで奪われ、未だ人間の形に残るもの。
今回の彼は軍人としても、吸血鬼としても半端な立ち回りをして、結果として人が死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
この結末をどう受け止めて、手に入れてしまった力を今後どう使っていくのか。
ある意味異能伝奇の本道を、真っすぐ進む主役なんだな、という感じがある。幼馴染ヒロインも付いてくるし…。
他の面々は石田声のマッドサイエンティストに、鈴村声の寡黙な殺し屋と、まー俺にヨシな声優お子様ランチ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
最前線からちょっと後ろに引いた配役が、魂にビビッとマッチしてありがたい。正直な話、このくらいの世代が俺の”真ん中”よ…。
山上さんがマジであざとくて、エリートのプライドをくすぐられてプンプンしたり、ピアノ弾ける”才”をそろりと見せたり、体型含め全てがあざとい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
戸籍や血液など、吸血鬼が人に交じるためのサプライを供給する天満屋が人間なのも、ちと面白い。
(画像は"MARS RED"第2話より引用) pic.twitter.com/1gFkBGJQuU
零のカシラたる前田さんも人間だし、霊長の積み上げた社会の裏でコソコソ生きるしか無い、弱い存在としてのヴァンパイアが結構大事なんだろうな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
絶対の個として、社会に対峙するほど強くはなく、異物性を噛み砕いて社会に馴染むことが出来るほど、弱くもない存在。
昼と夜、人間と怪物の狭間で、ヴァンパイアはひどく半端だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
前近代的な刃を最後の武器と、影の中で言い切る前田大佐も。
あくまで交戦を避け、ゴミあさりによる情報収集に徹する十六特務も、死を超越した怪物ではないからこそ、それに優越せんと群れてあがいている。
しかしヴァンパイアを巡る戦いは一方的な蹂躙戦とはならず、人型の戦車に人知れず対峙する仕事には、常に死がつきまとう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
護るべき昼を睨みつけながら、夜の影に身を浸す。前田大佐のポジションが取れなかった結果、若き軍人は死ぬことになる。
鍋島の出なら、前田さんタイ捨流か?
まぁここで嘯いてる剣の腕前は、岬を前にして柄を制されていたわけだが。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
達人でも、目覚めたばかりの女優に先を取られる。
身を持って知っているからこそ、日の下を歩ける部下たちには交戦を避けさせ、諜報で追い込む組織運営しているのだろう。
十六特務が無能じゃないのは、気持ちが良い描写だ。
そんな前田さん、色んな場所に未練たらたらのまま、鋼の防人を装い頑張っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
紫苑の花は、永遠の思い出。
東京駅に焼け付いた岬への思いを、葵ちゃんはひっそりと目撃する。
かっちりした軍装と、着崩した擬態。前田さんの輪郭はゆらゆら、夏に揺れている。
(画像は"MARS RED"第2話より引用) pic.twitter.com/p1qtlRIsUj
場面ごとのファッションが結構、そのキャラクターのあり方を語ってるのが舞台っぽいなぁ、と思っておるのだけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
零機関に指令を出す時と、憲兵であるとき、諜報をやってるときで、前田さんだけが装いをどんどん変えるのよね。
それは彼の器用さよりも、几帳面な不器用を語ってる気がする。
彼は水辺と陸の間にある場所で、煙草と決定的な情報を貰って、作戦を決意する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
人間だからこそ、見れる太陽。
生の岸辺に足を置くからこそ、超えられる死地。
ここで前田さんが決意した死(あるいはそこから生まれる第二の生)は、彼自身には到来しない。
だが『零の扱う事件は、こういう支払いを要求するよ』とばかりに、ここで別れた戦友の命をもぎ取っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
同じレイアウトで、昼と夜。生と死。隣りにいる男を換えながら、受け渡される灯火の連鎖。
ここはかなりいい呼応をしてて、二話の見どころだと思う。
かくして夜の獣を駆り立てて、零は征く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
大正モダンには不似合いな、血に酔っ払った行旅路の花聟。
目の前にいる怪物の凄みもわからぬまま、孤高に飛び込み、かけられた情けの重さも知らぬまま、あっけなく死んでいく若き吸血鬼。
(画像は"MARS RED"第2話より引用) pic.twitter.com/idzD50q0En
特務はヴァンパイアに、選択肢を用意する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
自分たちの道具として生き延びるか、人に仇なす獣として駆られるか。
苛烈ではあるが、問答無用の虐殺ではない。
秀太郎が見せた逡巡はそんな正しさの発露か、甘さの証明か。未だ、日本唯一のA級は実力を見せない。
ヴァンパイアも人間も、かなりサクサク死んでいくのはこの作品らしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
命が軽いわけではなく、情念も殺意もサラリと描き飲み込んで、夜が転がっていく独特の感覚。
結局前田さんは、最後の武器を敵ではなく味方に、守りたかったモノに使っていく。
(画像は"MARS RED"第2話より引用) pic.twitter.com/Q9jZJcyLgY
人でありながら、鬼に変わる痛み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
人であり続けながら、鬼を殺す鬼に堕ちる苦しみ。
そういうものを軍刀に込めて、前田さんは戦友を介錯する。
その背中を見て、秀太郎は何を思うのか?
零機関の仕事は、どうにも血生臭く湿り気が強い。切ないが、だからこそいい感じだ。
近代国家としての日本が許容できない、人命を食い潰す人型の怪物。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
私人としての情を殺し、あるいは情あればこそ非情に徹することを、軍服をまとった装置に求める国家。
その軋みが、日の当たらない場所、表向き死んだ場所で刻まれていく話なのかな、とも思う。
結構、史学の視点があるか。
前田さんが零機関司令任命と同時に、二階級特進してるのもまぁ、『お前は死人だ』ってことなんだろうし。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
その癖、実際死んだ秀太郎と山上さんは元の階級のまんまなのよね…戸籍に乗らない動死体は、あくまで存在しない存在であり、皇国に遍く天道様では対応しないのだ。
その苦さを飲み込んで、今日も事件が終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
彼岸に取り残された孤独な魂に、添えられる燈明。
鬼として生きるより、人として死んだほうが良い。
そんな鬼の涙は、雨に濡れて夜に消える。泣かない男の涙を、山下さんは知っている。
紫苑の花言葉は”追憶”である。
(画像は"MARS RED"第2話より引用) pic.twitter.com/S1FyYqY4yU
憎まれ口を叩き合いながら、同期の桜として山下さんは、前田さんの思いを解っている。いかにも日本男児めいた、どっしり腰の落ちた身体で受け止めている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
それが、去っていった若人と想いを交わした橋の上で、それを受け取るように手渡す煙草に、宿っていると思う。いやー…好きだな。
紫苑の花が死せる恋人だけでなく、人しれぬ闘いに散った戦友にも捧げられている所に、前田さんの広範な情が感じられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
人が死ぬのが当たり前、駆り立て殺すが零の仕事。
そううそぶきつつも、そこに収まりきれない想いが溢れ出る。
だが、流されはしない。流されるわけにはいかない。
死んだもののために、今を生きる国民のため。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年4月14日
駆動する国家組織と、その暴力装置が従えるべき”公”を、前田さんは寡黙に体現し続ける。
その揺らがぬ背中に、秀太郎は何を学んでいくのか。吸血憲兵達は、どんな闇を超えていくのか。
そんな道行きが照らされる、零機関最初の事件でした。次回も楽しみ。