シャドーハウスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
主と切り離された生き人形達は、フェーヴの鍵を使って扉を開ける。
現れたのは、庭園迷路。
囚われた影を探すサバイバルは、館の成員を選別する試験であり、神たちの娯楽。
謎と危機が顕にしていく魂の地金は、果たして錆びた泥色か、麗しき黄金か?
そんな感じの大規模脱出バラエティー開催! 対価は多分命ッ!! な、シャドーハウス第6話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
ろくでもないオーラがムンムンに漂っていた”お披露目”であるが、大掛かりな地獄エンタメとしての素顔をさらけ出し、なんか異様なテンションになってきた。
退廃と差別。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
貴族社会の戯画でもあろう館の上層部にはそういう泥が詰まっていて、新入りを館に入れるか否か決める試験は、それを吹き飛ばす娯楽でもあるという構図が、視聴者にも明かされる回だった。
俺のエミリコたんは、お前らの玩具じゃねーッ!(外野大興奮)
今回の試験は様々なレイヤーでの推察能力を、生き人形とシャドーに要求する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
ゲームに勝つにはどうしたら良いか。
誰かを助けることと、蹴落とすことどちらが正しいのか。
エドワードを通じて館が要求してくるルールに、従うのか反逆するのか。
考えるのか、考えないのか。
迷宮に閉じ込められた子供たちはそれぞれの能力と価値観を、パートナーと切り離された孤独の中で試される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
館は(エドワードの口を通じて)語る。
大事なものを考えて、それ以外を切り捨てろ、と。
ルウのように思考と決断を放棄すること、真実人形になることは”正解”ではない。
だが何が大事で何がそうではないのかを決定する基準は、世界の全てを知ろうとする好奇、それを吟味する理性と倫理を要求する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
臨機応変に判断する”使える”人形は、自動的に屋敷の基準にそぐわない”考える”人形になりかねない。
考えた上で、人間性を抑圧する館のルールを内面化する人形。
それはつまり、自分を特別な存在に押し上げ、他人を踏みつけにする邪悪な存在である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
ここで難しいのは、館の扉は常に閉ざされ、人類一般の普遍的な価値は窓から入ってこない、ということだ。
閉鎖されたチャンバーの中では、邪悪さは邪悪たり得ない。
だから子供たちの生きた死んだを娯楽に使い潰すルールが、覆されることもなく生き続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
その上でエミリコは、非常に普遍的な価値を肯定し、体現し、拡散し続ける。
自分で考え、誰かを助け、共に助け合うことは良いことだと、信じ行動し続ける。
彼女が最初に手に入れたフェーヴは、それを手に入れた人が王様となり、みんなに命令する権利を持つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
その風習を知らなくとも、子供らはエミリコが見つけた鍵で扉を開け、光の中に進んでいく。
(ごちうさBLOOM最終話で、チノちゃんが行き当たった役職と同じですね)https://t.co/GETDRRVtBt
煤と闇に覆われたこの屋敷で、魂の奥底からそれでも溢れ出る光。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
エミリコの人格が自然と求め、ケイトによって肯定され補強された優しさと賢さは、彼女一人では終わらず、常に拡大し続ける。
(画像は"シャドーハウス"第6話より引用) pic.twitter.com/k5TP9rodKe
”お花畑”と揶揄される善良な理想主義こそ、影に抑圧された子供たちを、抑圧する側に取り込まれんとする影たちを、別の場所へ導くという示唆が、この話には満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
『紅茶の飲み方も知らないのか』とあざ笑う言葉に、心からの笑顔で礼を言う。一つ、大事なことを学べたから。
引っ込み思案なラムは逡巡を越えて共に荷車を押し、長い坂を越えていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
それは深夜の見回りを通じて、自分が何もできないクズではなく、愛されるに足りる力強い存在だとエミリコが思わせてくれたから、踏み出せる歩みなのだろう。
小さな一歩であるが、あまりに偉大な一歩である。
花の蜜は蝶を養い、笑顔を生む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
顔のないシャドーが住まう館に置いて、感情の発露…多彩な人間性は重要ではない。
だがそれを差し置いて、守り追いかける意味のあるものとは何か。
エミリコが体現し、引き寄せ拡大させる光以上に、追うべきものはあるのか。
屋敷の謎はまだまだ多いが、しかしこの作品の筆致はすでに”答え”を告げているように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
ラムが荷車を押した時、二人に吹いた風こそが、一番大事なのだ。
マジでこの小さな戦士たちを、踏みつけ弄ぶ館の価値観を革命して欲しいからよ…自由への闘争ッ!!
迷宮を前にたった一つ、何を持っていくか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
そこには子供たちの人格が強く反映していた。
選ぶことが出来ないルウは石を投げて、ハサミを手に入れた。
誰かを脅せる武器であり、既存のルールを破壊もできるアイテムを、上手く使う価値観軸、自由意志をルウは(まだ)持っていない。
それは自分の反射/延長であるルイーズが”綺麗な顔”しかルウに求めず、彼女を道具的存在に貶めているからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
道具は使い方を決めない。
悪意を以て利用されそうになった時、『これはおかしいぞ?』と自己判断し拒絶する、疑問のセーフティがない。
これが、館が『大事なことは考えろ』と要求してくる理由だろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
画一的なルールで単調に駆動していると、道具は時にとんでもない惨事をもたらす。
”使える”道具であるためには、ある程度の自己判断が必要なわけだ。
しかしその意志は、現実対応を超えてより高いレイヤーに上がってはいけない。
『このゲームに勝つにはどうしたらいいか?』は考えても、『このゲームは誰が生み出し、どんな構造の中にあるのか』というメタ認知まで至ってはいけない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
野放図にすべてを求める性質を持った知恵に鍵をかけて、館の役に立つ賢さだけを生かさなければいけない。
それを可能にしているのが抑圧を当然視する館のシステムであり、それを混乱させるバグを事前排除する”お披露目”なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
何が本当に大切なのか認識し、判断する真実の知性を発露するほどに、”お披露目”の順位は落ちている。
人間であることは、人形の家では悪徳なのだ。
強ぶったリッキーは防具を求め、タフな知恵者ショーンはルーペ…知覚の拡大を選ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
殴り合いになりそうなところでエミリコが間に立ち、二人が求めるものを形にしていくのは、媒介者としての彼女の特質がよく現れている。
いがみ合うより早く、自分の望みを素直に告げたほうが、実りは大きい。
しかし館のシステムは妬みや怒りを最大化し、各階層ごとに争うよう編まれている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
そのことで、上部階層をひっくり返す方向に感情が向かないようにするためだろう。
全体主義国家、ブラック企業、機能不全家庭。
抑圧的な組織が、スケールに関わらず搭載するシステムは館でも元気だ。
怒りの間に割って入って、実りの多い結論を生み出すエミリコの行動は、抑圧によって成立する館のシステムへの挑戦となる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
地図を歩く人形はけして教えない、拡大していく魂の光。
それが生み出す反抗が何処にたどり着くか、不安でもあり期待も強い。頑張れエミリコたん…。
そんなエミリコはあらゆるものを持っていける、重い荷車を選ぶ。大好きなパンよりも、この迷宮にはそれが必要だと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
自分ひとりだけ勝つなら、自分ひとりだけでは運べない荷車は不要だ。だが、エミリコはおそらく”みんな”を乗せるためにこれを選んだ。
その方舟に、ラムが最初に乗る。
彼女がランタンを選び、自分に近寄ってきたライバルに指人形で本心を語りかけた時、やっぱ泣いちゃった…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
ラムはいつでも、孤独な闇から抜け出ることを選んでいる。自分の輪郭を、あるべき姿を教えてくれる光を探している。
エミリコは見回りの時、見返りを求めずそれを差し出した。
何も言わない彼女の影も、この”お披露目”で少しでも距離を縮めて、ラムに手を差し出してくれると良いなぁと、僕は思っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
まぁクソシステムが要求する”やってる感”の生贄として、落とされる可能性大でブルブルしてんだけども。マジでよー…。
エドワードの発言を見てると、”お披露目”を通じて人と影が触れ合い、関係を深めていくことをシステムは望んでいないようだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
しかし危機があれば、否応なく人は団結する。
誰かを蹴落とし、たった一人生き延びるのと同じくらい強く、”みんな”と一緒に生き延びる考えも強化されていく。
サバイバルに必要な怜悧な計算は、必ずしも孤独な利己主義を産まない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
生き延びるためにこそ団結と利他が必要な不思議も、この世界にはしっかり備わっている。
だがこの閉じた館は、あくまで抑圧と利己を拡大していくように万事を編む。
ここら辺、姿なき”お祖父様”の人格が社会化してる感じもある。
独裁国家はその中心に座るもののエゴが、国全体に満ちる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
社会制度、経済活動、デカいモニュメントに国父を称える歌。
肥大化した自我が人間一人で収まりきらず、巨大な器全体を規定していくグロテスクが、抑圧を中心に据えた組織の大きな特徴だ。
シャドーハウスにも、そういう煤が満ちてる。
これを箱に閉じ込められた怒りとともに爆裂させたジョン様は、トンチキで気持ちのいい青年であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
まさかの婚約宣言とは…でもケイト様を選んだ”眼”、最高に良いと思いますよ。
ケイトは周囲を観察し、自分の力を行使するべきか迷っている。自分を見つめる巨大な眼を感覚している。
今回のエピソードは歪んだレンズが多用され、ゲームに漂う不気味さ、監視する瞳の存在を上手く示唆している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
窓越し、誰かが見つめている不穏な気配は、屋敷の奥、窓の向こう側から見つめる影達の存在を明らかにして、巧妙に収束していく。
(画像は"シャドーハウス"第6話より引用) pic.twitter.com/8uWJJNSzPv
しかし彼らも窓の奥に閉じ込められ、望むがまま邪悪なわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
屋敷全体に満ちたシステムの檻から、自由である存在は何処にもない。
…もし一つ、この監視網から自由な場所があるなら、それはどれだけ縛っても溢れる人間性の棲家、個人の内心なのだろう。
エミリコは危うい手すりに腰掛け、危険と隣り合わせの自由を一時、愉しむ。『危ないよ…』とハワハワしてるラムたんかわいいッ!(発作)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
ケイト様に食べさせようと、もいだオレンジは麗しいが、このゲームに…ゲームを見張り用意するものに有効な武器とは限らない。
そういう余計なものも全部乗っけるために、エミリコは荷車を選んだのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
それは、一人ではけして動かすことが出来ない。
エミリコの光に救われ、ためらいを超え手を差し出したラムがいればこそ、前に進めることが出来る。
周囲に隙なく気を配り、抜け目なく立ち回る賢さが、少し足りないのも判る
それを補うタフなクレバーさは、力の使い所を図るケイトなり、ルーペで地図の謎を解いたショーンなりが補ってくれるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
ショーンの慎重な賢さは、超☆感情主義で危なっかしいジョン様を、上手く補うんだろうな。
ここら辺、エミリコ-ケイトペアとは面白い逆しまね。
というわけで、お話のスケールと勢いが一気に切り替わるエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
急に大脱出サバイバルエンタメ始まって、ちょっとビックリしたよ!
でも大仕掛けな危機が迫ることで、キャラの特徴、物語のフレームもより鮮明になって、とても良い表現だと思った。
冒険をジロジロ見据える不穏な視線を、細やかに挟み込んで上部構造を示唆したり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
ラムの決断を阻む心理的ハードル、それを越えた後に吹く風を劇的に演出したり。
作品の表現が、一個ギアを上げた印象も受ける回でした。
(画像は"シャドーハウス"第6話より引用) pic.twitter.com/fUmmWbAspa
ラムのためらいと決意を、震える足と手のクローズアップで見せた後、その歩み寄りが吹かす風の爽やかさ、丘を越えてのしかかる抑圧の歪さを切り取るカメラの鮮烈。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
定番といえば定番な演出でしたが、やっぱこういうテイストの描き方好きだな。
何も取りこぼさず、何も押しのけない道をエミリコは選んだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2021年5月17日
それはとても険しい道だ。灰色の世界はその優しさを認めず、一人で押すには重たすぎる。
だから、みんなで押す。ラムが欲しいランタンは、エミリコの重荷を一緒に持つことでしか得られない。だから、少女たちは共に進むのだ。
次回も楽しみ