イマワノキワ TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ 2024-03-28T06:19:39+09:00 Lastbreath Hatena::Blog hatenablog://blog/12921228815714578141 外科医エリーゼ:第12話『道』感想 hatenablog://entry/6801883189094110781 2024-03-28T06:19:39+09:00 2024-03-28T06:19:39+09:00 人生三回目の転生令嬢よ……迫りくる死の恐怖を越え、難病に立ち向かえ! チート知識と骨太な生き様でもって、かつて間違えた人生を新たに生き直す物語、外科医エリーゼアニメ最終話である。 医師試験をフィナーレに持ってきて、全体としてはまだまだ続くけどキッチリ難局を乗り越えた満足度がある終わり方で、大変良かったです。 『さんざん手術チート見せつけてきたし、フツーに難試験通ってもなぁ……』って状況だったけど、皇帝陛下を襲った正体不明の難病、愛しい人に降りかかる疑惑、迫りくる恐怖の白刃と、ガンガンに脅威度上げてクライマックス感をしっかり出した結果、納得いくフィニッシュになった。 っっぱエリーゼさんのお話が幕… <p> 人生三回目の転生令嬢よ……迫りくる死の恐怖を越え、難病に立ち向かえ!<br /> チート知識と骨太な生き様でもって、かつて間違えた人生を新たに生き直す物語、外科医<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>アニメ最終話である。</p> <p> 医師試験をフィナーレに持ってきて、全体としてはまだまだ続くけどキッチリ難局を乗り越えた満足度がある終わり方で、大変良かったです。<br /> 『さんざん手術チート見せつけてきたし、フツーに難試験通ってもなぁ……』って状況だったけど、皇帝陛下を襲った正体不明の難病、愛しい人に降りかかる疑惑、迫りくる恐怖の白刃と、ガンガンに脅威度上げてクライマックス感をしっかり出した結果、納得いくフィニッシュになった。<br />  っっぱ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>さんのお話が幕を閉じるなら、こんぐらいのハッタリとワッショイはぶち<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%DE%A4%B7">かまし</a>てもらわねーと困るぜ!<br /> ……いやマジ、最後の最後までいかに<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>が凄いことしているのか、徹底的に口で喋り周りがビックリしながら持ち上げていて、ジャンルの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%ED%A5%C8%A5%B3%A5%EB">プロトコル</a>がどんなもんかを、門外漢に良く教えてくれる作品だった。<br /> 『こういうのもアリだなー』と思えたのはやっぱ、ワッショイどころが”医療”であり、誰かを助けて世に認められていくという素直な構造、それにふさわしいキャラ造形が、僕と相性良かったんだろうね。</p> <p> </p> <p> というわけで前回衝撃のヒキ、ロクでもない貴族派が白刃ぶら下げて襲いかかってくる流れは、その首魁が白馬の王子役を買って出て解決された。<br /> 最終エピソードに当たり急速な治安悪化が見られたこのお話、ミハイル殿下戦場仕込の殺人技術が図抜けて高く、息をするようにスムーズに人命奪える様子を、かなり気合の入ったアクションで描写してくれた。<br /> ぶっちゃけヌルい展開も多かったお話が、最後の最後に鳩尾に西洋剣ぶっ刺す描写を全力で叩きつけてきて面食らいもしたが、まーそんくらいロクでもない話だってのもちゃんと描いてきたので、異物感というより意外な面白さであった。<br /> 末端の暴走を抑えられないくらい、貴族派も一致団結というわけではなく、腹違いとは言え兄弟を引き裂いて対立している情勢も、そこに付け入る隙を見出しどうにかなるかも……くらいの収め方。<br /> リンデン様との恋路と合わせて、帝国を二分する不安要素も未来に引き継ぎ未解決ではあるが、この『どうにかなるか……』感があるおかげで、納得しつつ幕引きを受け入れられた。</p> <p> 1クールで語り切るには大部な原作なんだと思うし、最初っから資格試験突破までを見据えて話を編まないとこういう作りにはならないだろうけど、見定めた分のネタはしっかり書ききり、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>を取り巻く諸課題、それを越えていける可能性をちゃんと書いて、いい塩梅に収まった感じ。<br /> そもそも皇国の内部対立がメイン課題にならないよう、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>個人の問題にフォーカスしながら話を勧めてきた感じがあり、その上で最後にふさわしい大ネタとして今回引っ張ってきた形なので、ここら辺の調整は巧かったと思う。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>自身が言っていたように、全然まだまだ道は続く幕引きになったわけで、デカい課題に齧りついたところで終わるのは、そこにちゃんと歯が立つ手応えを描いてくれた所含めて、今まで積み上げてきたものに嘘のない幕引きだった。<br /> 医者としての修行、人間としての艱難辛苦は二度の前世で終わらせてきたわけで、だからこそ未だ越えたことがない大きな難問に挑み直して、三度目のベストエンドを目指していく物語の行く末を、アニメで見たい気持ちもあるけども。<br /> 今は書けるだけを適切に選び取り、ちゃんと描ききった心地よさに感謝したい気持ちだ。</p> <p> </p> <p> つーわけで眼の前喫緊の第問題、皇帝陛下の”命”を救え!<br /> ”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%B6%BC%B9%C5%E1%A5%AB%A5%C9%A5%A5%A5%B1%A5%A6%A5%B9">超執刀カドゥケウス</a>”みてーな問診ミステリを時代を越えた知識でぶっ飛ばし、目視による開胸心臓手術敢行ッ!(多分<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B9%A9%BF%B4%C2%A1">人工心臓</a>とかもあるッ!!)<br /> ……”異修羅”でも思ったけど、転生チートにより自然な社会発達をぶっ飛ばし、物語進行に必要な技術や物品だけを生み出す語り口、背景になっている社会がメチャクチャ歪になるので、便利だけど結構あぶねーなと思った。<br /> そういう所考えだすとキリないし、実りもないし本命でもないのでアタマから取り除いてはいたけども、主役の医療無双をぶっこむために結構軋んでいる部分はあって、でもまーそこ引っくるめて楽しむもんなのかな、くらいの認識。<br /> なにしろロングソードで殺し合いできる文明レベルなので、検査機器もそこまで超進歩しているわけではないと思うのだが、数字の裏打ちがないギャンブルに国父の命を張る<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>さんの侠気、やっぱハンパねーぜ……。</p> <p> そんなハチャメチャを周りに認めさせるだけの実力と実績も、この医師試験受験生たしかに持っているわけで、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B7%EC%C0%F2">血栓</a>除去……を越えて、糖尿病発症の根本原因でもあった<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%AD%C0%AD%A5%EA%A5%F3%A5%D1%BC%F0">悪性リンパ腫</a>完全除去! <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%F0%E1%E7%A5%DE%A1%BC%A5%AB%A1%BC">腫瘍マーカー</a>とか調べんのでいいの!!?(その話はさっき終わった)<br /> ”一周目”ではなんもできんまま死なれて、要石を失った帝国が動揺した結果一族皆殺しの憂き目にもあったわけで、運命改変モノとしてもデカいイベント達成したなぁ。<br /> 自身の疑惑を晴らし、オヤジの生命を救ってもらったリンデン陛下の好感度も既に<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%F3%A5%B9%A5%C8">カンスト</a>。<br /> お互い好き合ってるのに触れ合わないもどかしさを残して、しかしこっちも『どうにかなるかも……』という期待感を描いて、一時保留の未来に続く! となった。<br /> 結果は分かりやすく示されていて、そこに至るまでの寄り道迷い路が面白い……という作りなので、リンデン様とどーにかなるまでの悪戦苦闘を見届けたい気持ちはあるが、それは原作で……つう話なんだろうな。<br /> さっきも言ったが、アニメの範疇でできる限りを、しっかりやってくれたのは大変ありがたい話ね。</p> <p> </p> <p> そんなアニメの物語を牽引する、メインエンジンになっていた王様との賭けを、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>から譲る形で継続したのも、道が続いていく話が爽やかにまとまっていく上で、とても良かった。<br /> 謙虚な生き様と誰にも何も譲らない主人公っぷりを同居させ、世俗の栄光やら表向きの勝ちやらをどーでもいいと投げ捨てつつ、人間にとっていちばん大事なものは何一つ譲らねぇ強欲を、清廉に輝かせているのが、この話で俺的に一番面白いポイントなわけだが。<br /> よりにもよって皇帝相手に『勝負継続ッ! 試験受かった程度で”人間”図られちゃたまんねーぜ!』と、爽やかに破天荒に突っ走る形になっていて、大変良かったです。</p> <p> やっぱ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>さんの人格が清らかかつパワフルで、運命に翻弄されるお姫様に見えてバリッバリに自主性と実力があり、ガンガン運命の扉を蹴り開けていくタイプなのが、見てて気持ちよかったです。<br /> 二回の前世でさんざん辛酸を嘗め、反省も後悔も山盛り積んだ上で今生を望みのままに生ききるという、尊者の修行譚みたいなテイストが作品全体に漂っていて、やっぱ僕と相性良かったんだな……。<br /> オタク向けフィクションを軒並み、仏教説話に変換して飲み込む人間だからね……。</p> <p> そういう<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>節に惚れ込んで最後まで見てきた人間としては、現世最高権力者にも一切物怖じせず、ただただ己の”道”をひた走る途中なのだと、眩しく描いて終わったの、大変良かったです。<br /> アニメ化という難行において、原作の何をどこまで描くのかはとても難しい選択だと思うのですが、アニメを契機にこの作品に触れた自分にとって、このアニメ化が選んでくれた描き方は肌にあっていたし、収まりも良かった。<br /> 肩の力を抜き、時にツッコミ入れつつ素直に楽しめる作品を最後までやりきってくれて、とても良かったです。<br /> そういう、自分たちが選んだ”らしさ”を揺るがすことなく完遂してくれるお話は、やっぱり好きだ。</p> <p> </p> <p> </p> <p> というわけで、外科医<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>全12話、無事完結とあいなりました。<br /> 大変良かったです。<br /> 正直転生ジャンルは体内に物語分解<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%DA%C1%C7">酵素</a>が少なく、流行ってるのに食い方がわからない状態だったのですが、医療という武器を逆手に握り<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%CE%CF">人間力</a>で殴りつける、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>”三周目”の奮戦はとても面白かった。<br /> 主役凄いと持ち上げる踏み台が、命を守り未来を生み出すポジティブなものであったり、悲恋に終わった想い人との新たなロマンスが華やかだったり、面白いなと思えるポイントが多々有りました。<br /> 作画はスーパーリッチってわけじゃないけど、何を描きたいかはちゃんと伝わる水準をしっかり維持してくれて、要所要所では力の入った演出も見れ、総じて良かったです。<br /> 最終話のミハイル殿下惨殺剣、冷たい殺意のある良いアクションだったなぁ……。</p> <p> 全体的に善良で聡明な人たちが多く、あんまノイズなく主役がワッショイされる作りだったこと。<br /> 作品全体を使って持ち上げられる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>が、そうされるに相応しい人格を転生の中でしっかり育んでいたこと。<br /> 主役の医療無双にフォーカスを合わせつつ、思いの外複雑な国内情勢をスパイスとして活かし、いい塩梅のコクが出ていたこと。<br /> 面白いポイントが多岐にわたり、大変良かったです。</p> <p> 真ん中辺りから<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>さんを、『誰も傷つけない、命を救う任侠』として見ていたきらいもあり、それは全く持って原作の素直な受容ではないと思うのですが……俺の食い方だとこうなっちゃうんだ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>ょーがないだろッ!<br /> ほんと<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>さんが、ドレスの似合う手弱女の外装をぶち破り、あふれる情熱と慈愛で全てを踏破していく”侠”だったのは、そういう飯しか食べれない俺にベストマッチだった……。</p> <p> とても面白く、1クールの物語を楽しませていただきました。<br /> 早い段階から特級難易度の医師試験を<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B4%A1%BC%A5%EB%A5%E9%A5%A4%A5%F3">ゴールライン</a>に据えて、サブキャラの魅力を掘り下げたり、特大級のアクシデントでクライマックスを飾ったりしながら、勢いを殺さず走りきれた構成、大変良かったです。<br /> 肩の力を抜いて楽しみつつも、お話をバカにするのではなく自分なり膝を正して向き合う、ちょうどいい距離感で楽しむことが出来て、自分もありがたかったです。<br /> お疲れ様でした、ありがとう!!</p> Lastbreath 僕の心のヤバイやつ:第24話『僕は伝えたい』感想 hatenablog://entry/6801883189094034363 2024-03-27T20:38:23+09:00 2024-03-27T20:38:23+09:00 2クールの長きにわたり繰り広げられてきた、付かず離れず青春大決戦も遂に最終局面! 中学生の一大イベント、修学旅行を舞台に浮かれる心と流れる涙……仕事と好きピ、どっちが大事なの!!? 怒涛のごとくひた走る、ラブコメ暴走超特急のフィナーレを見届けろ! な、僕ヤバ第24話である。 二話構成の修学旅行エピを、爆エモAgraph劇伴に背中を押された泣きダッシュで決着……させると思いきや、激ヤバ女子部屋潜入でコミカルに引いて本戦は次回! という作りだった。 この回またぎを成立させるべく、結構な再構築がなされていたわけだが、周りも自分もな~んも見えてないクソガキから、山田に恋してちったぁ世界が見えてきた京ち… <p> 2クールの長きにわたり繰り広げられてきた、付かず離れず青春大決戦も遂に最終局面!<br /> 中学生の一大イベント、修学旅行を舞台に浮かれる心と流れる涙……仕事と好きピ、どっちが大事なの!!?<br /> 怒涛のごとくひた走る、ラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>暴走超特急のフィナーレを見届けろ! な、僕ヤバ第24話である。</p> <p> 二話構成の修学旅行エピを、爆エモ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/Agraph">Agraph</a>劇伴に背中を押された泣き<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%C3%A5%B7%A5%E5">ダッシュ</a>で決着……させると思いきや、激ヤバ女子部屋潜入でコミカルに引いて本戦は次回! という作りだった。<br /> この回またぎを成立させるべく、結構な再構築がなされていたわけだが、周りも自分もな~んも見えてないクソガキから、山田に恋してちったぁ世界が見えてきた京ちゃんの、”今”の視界を最後に再確認する話に、しっかりなっていたと思う。<br /> 中学受験に失敗し、自分はダメなヤバいヤツで世界は下らない怖いところだと思いこんでいた……思い込むことで自分を守っていた京ちゃんは、眩しい光の中で山田杏奈が血を流しながら泣いているところを見上げて、ちょっとずつ目を開きだした。<br /> 思いの外自分は大事にされていて、やりたいことも出来ることもそれなりにあって、目の前にいる人には尊敬できる部分が結構あって、世界は思いの外楽しい。<br /> そう思えるようになったからこそ、修学旅行相手に『ケッ!』と斜に構えつつも、心ウキウキ楽しい学校生活をエンジョイできている。</p> <p> </p> <p> そうさせてくれたのは、山田杏奈を好きでいて良い自分になるべく、京ちゃんが色々勇気出して頑張った結果、自分を変えた(あるいは取り戻した)からだ。<br /> 好きになれる自分を見つける、一番大きな手助けをしてくれた人を好きになるという、すごく素直で真っ直ぐな恋心は山田にも同じであり、だからこそ京ちゃんと一緒の修学旅行をオーディションより優先して、涙を笑顔で覆ってはしゃぐ。<br /> 仕事諦めるのも仕事のうちと、大人びたふりをしてるのに感情の起伏は激しく、密かに泣きじゃくる子供っぽさに気づかないまま、京ちゃんは奈良まで流れてきて、もうひとりの自分と対話しながら、山田が闇の中泣いている様を見る。<br /> そういう、パッと見の奥にある強がりとか痛みとか優しさとか、人間の柔らかな部分に目を向けて大事に出来る、強くて優しい人に本当はずっとなりたかったのに、なれてないガキな自分を思い知らされる。</p> <p> 『ならもーなるしかないじゃん”男”にッ!』つうわけで、決意を込めて猛<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%C3%A5%B7%A5%E5">ダッシュ</a>するわけだが、ここで一回膝カックン、この話がコメディであることを思い出させるように、ドキドキハプニングで次回に続く!<br /> 時折重たくシリアスな雰囲気を匂わせつつ、前編となる今回はいつもどおりの楽しいワイワイに満ちて、前回男の決闘を果たした足立くんもおバカな元気さを取り戻してくれてて、笑いつつもホッとする仕上がりだ。<br /> ここを滑走路にして、次回エモーションの極限までノーブレーキで加速していく終幕を描く……ってことだと思うが、女子部屋で演じられるトボケが混ざると、待ちに待った告白がブレるつう判断が、再構築の裏にあるんかなぁ。</p> <p> こぅして順番や見せ方を変えられると、当然印象も全然変わってくるわけで、実は『原作通り』のアニメ化なんて全然期待してなくて、常に『原作以上』のアニメ化を願っている自分としては、幾度目かの面白い挑戦だなぁと感じた。<br /> 僕は原作好きでずーっと読んでるけども、のりお先生がWeb漫画で描いているもの、描けているものとアニメで描くべきものは当然違うと思うし、このアニメ化は結構そこら辺のギャップを鑑みつつ、アニメがやるべきこと、出来ることをやってくれた作品だと感じている。<br /> 原作でフルスイングされている生っぽい下ネタは適度に加減しつつ、山田と京ちゃんのピュアラブっぷりに強くフォーカスして、音楽と色と動きがあるアニメの強さを適切に使って、色んな奴らがワイワイやってる世界の善さもちゃんと書く。<br /> 一話早いけども、『様々な工夫を色々頑張ってくれて、大変良かったです』とまとめてしまっても良い、素敵なアニメ化だったなと思う。</p> <p> (まぁここら辺の手際を信じきれず、一期終盤で筆が止まったりもしたのだが、二期再開に当たりガッツリ5回ほど原作と合わせて見返し、自分なり”アニメ化”と向き合う角度を整え直せたのは、終わってみればいい経験だったと思う。<br /> 安楽な視聴態度を投げ捨て、がっぷり四つに作品と相撲取らないとどうにもならないトコロにハマってしまうのはなかなか難儀だが、そうやって自分と物語を照らし直して始めて、生まれる視界と距離感というのは確かにあるのだと、思い出させてくれる視聴になったのはありがたかった)</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327062958.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327063006.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327063016.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327063025.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327063031.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327063037.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327063044.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用</figcaption> </figure> <p> というわけで初手通学路<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DA%A5%E4%A5%F3%A5%B0">ペヤング</a>、『やっぱ山田が一番ヤベーんじゃねぇかな……』疑惑を深めつつ、最終章の幕が開いていく。<br /> 京ちゃんや友達との修学旅行、行くべきか行かざるべきか悩み続けている山田は、日程明かされてガン凹みするわけだが、『明るく元気な、いつもの山田』を被り直し、日常は滞りなく過ぎていく。<br /> そんな、野放図に見えて思いの外自分を作ってもいる山田杏奈の変化を、問わず語りに感じ取れるナイーブさが京ちゃんにはあり、だから彼は山田の好きな人として選ばれる。(足立くんにはなかったので、前回男の玉砕へと進み出すことにもなった)</p> <p> 見る、見られる。<br /> 気にする、気にかけられる。<br /> 違和感の正体を後半に持ち越したまま、視線の応答は幾重にも重なっていって、山田も京ちゃんもいろんなことに気付き、気付ききらない。<br /> 彼らが経験豊富なオトナならば、夢も楽しさも両方大事に出来る器用な立ち回りも出来るのだろうけど、そうなっていくための戦いを一個一個積み重ねている彼らにとって、出会う全てが未知数だ。</p> <p> </p> <p> 京ちゃんが三年目の修学旅行に、思いの外浮かれていることを、山田はビデオ通話越し、一年前のパンフレットを見て理解するし、キス妄想に浮かれつつも視界の端、置かれた単行本を京ちゃんは見落としはしない。<br /> そうやって、相手のことを良く見て考える……時に考えすぎるのは、やっぱり好きだからこそ。<br /> こそばゆくなるような純情が、最後の最後にもう一度強めにエンジンふかしてきて、待ってましたのありがたさに見てるこっちも体温上がるぜ……。</p> <p> ここで山田の涙をダイレクトには描かず、ブラックアウトした画面の向こう側に微かに滲ませて、京ちゃんの『見えなさ』とシンクロさせる描き方になったのは、このアニメらしい演出だと感じた。<br /> ここまでも原作なら俯瞰で描いてた部分を一人称に制限して、作中人物の心境や能力に重ね合わせ、引き寄せる描き方は幾度かあったけども、今回もそういう<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/FPS">FPS</a>的青春喜劇の文法を持ち込んできた感じ。<br /> なにっっしろメカクレスーパーピュアボーイの青春なんて、すっかり遠いトコロにいっちまった人間なので、こうしてシンクロ率を上げて京ちゃんのままならなさ、切実さ、瑞々しい痛みと優しさに見てる側を近づけてくれるのは、ありがたい語り口だ。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327064154.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327064200.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327064209.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327064218.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327064227.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327064235.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327064243.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用</figcaption> </figure> <p> 鹿も迫りくるワイワイ修学旅行をコミカルに描きつつ、これまでも内省や世界を……この作品にとって大事なものを描いてきた窓辺の鏡面に、半沢さんが映り込む。<br /> 近寄りがたい高嶺の花に思えて、ほわほわ赤ちゃん情緒な半沢さんは、メインヒロインの仕事を頑張る中で山田から抜け落ちてしまった要素を集めて再構築した、遅れてきたシャドウって感じがして可愛い。<br /> 恋とは何かがわからない、けど山田と京ちゃんの望むままに恋を成就させてあげたい彼女を鏡にして、京ちゃんは今なら、今こそ思いを言葉にできる自分を再確認する。<br /> これまで幾度もそうであったように、騒々しいハプニングに邪魔をされて告白は遠く、ここらへんを紫髪のヤバ女にまとめ上げて<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%E6%B8%FD%CD%B5%B9%E1">井口裕香</a>の声帯付けたのが、三年目からの新キャラとなるカンカンなんだろうけど。<br /> 局面を一つの決着へと引っ張るべく、進級タイミングで作劇に必要なキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターを舞台にぶち上げ、圧力上げて押し出すフェイズなんだなぁ……とは思う。</p> <p> 決着へと至る一連の流れを、強く後押しするのが山田杏奈の親友、小林<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%C1%A4%D2%A4%ED">ちひろ</a>である。<br /> 露骨にシリアスな話するためだけにポップアップしてきた東屋で、遠い目をしながら無理する親友を見つめつつ、少女は普段あんま見せない成熟した顔をする。<br /> 仕事か学業か、小林も納得行かないジレンマを結局解決するのは主役であり想い人である京ちゃんになるのだが、相談自体は小林にしかしてなくて、ここら辺の距離感のねじれが、なんだか切なく面白かった。<br /> 少年めいた爽やかさで前向きに生きている小林は、恋も良く知らぬまま親友の隣りにい続けて、山田を一番思い悩ませている大問題に関しては、全く置いてけぼりのままだ。<br /> しかし京ちゃんには好きだからこそ言えない悩みを、打ち明け背負わせてもらえる特別さは確かにあって、でもそれがここから先、恋を知った山田と同じ世界で生きていられる保証にはならない。</p> <p> 色々素敵なことに満ちていた、思わず応援したくなる京ちゃんと山田の恋路。<br /> それが何もかも率直に預け合って解決してきた同性の繋がりを、結構変えてしまうのだという事実を、ここで小林が京ちゃんに問題解決の主導権を手渡す様子を見ながら考えた。<br /> それは時の流れの中変わっていく彼らの必然であり、必ずしも哀しいことばかりではないのだけども、抜けてる山田の口を拭き面倒を見る仕事が小林<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%C1%A4%D2%A4%ED">ちひろ</a>の占有物でなくなることを、当人はわからないなりに理解っているとも思える場面だ。<br /> 山田に彼氏が出来た意味を、受け止めるには恋愛方面の受容体発達が小林遅いのであるが、『山田杏奈が大事』という根源においては京ちゃんに負けず劣らずなわけで、でも解決権は京ちゃんにこそあるってのが……こう……。<br /> まーそういうもんだよなッ!(大声で逡巡を断ち切るマン)</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327065558.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327065606.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327065612.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327065619.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327065626.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327065635.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327065640.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用</figcaption> </figure> <p> 次週感動の最終回だってのに、全てを乗っ取る破壊力があるチンポバトルで殴りつけつつ、修学旅行の夜はふける。<br /> こんな爆弾、来週やったら何もかもダイナシになりかねないので今やっておくのは正解なのだが、最後の最後までおバカコメディの味わいが残って話が進むのは、そういう部分も好きな自分としては嬉しかったりもする。<br /> そして先週あんな魂のぶつかり合いしたのに、いつも通り最高の悪友としてアホなことほざいてくれる足立くんに、ありがたみを感じもするのだ。<br /> 京ちゃんと山田が晴れて恋人同士となれば、色んなモノが変わっていくのだろうけど、変わんないものも当然あって、そういうものほど大事だったりするのだろう。</p> <p> 原作では東屋の語らいで、小林に教えてもらうオーディションを京ちゃん自身が気づく形に変わったので、女子は女子でおバカに仲良く過ごしている裏で、意味深な顔を見せる山田……それを見守る親友の顔も、ちいと意味合いが変わって面白い。<br /> 何でもかんでも言葉にするのではなくて、自分の中で複雑に噛みしめる大人っぽさを、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B3%C5%C4%B0%EC">山田一</a>派でもいっとう子どもっぽい(その純粋さが良い)小林もまた背負っていて、それが山田と共鳴している感じになっていた。<br /> 携帯電話に刻み込んでいた、夢の名残を消そうとして消せず、しかし直面して向き直ることも出来ず、宙ぶらりんで画面だけ消してしまう山田の迷いや弱さは、大人と子どもの間に立っている彼らにとって、大事にされるべき豊かさの影でもある。<br /> そうやって色んなことに迷って、迷う自分も受け止めてもらえる誰かと繋がって、見えたものが沢山あるからこそ、山田はこの修学旅行に来て、夢に迷ってもいる。<br /> 答えが出ないけど……あるいはだからこそ大切なジレンマの真ん中で、どこか出発前の京ちゃんに似た迷い方をしているヒロインが描かれて、お話はもう一つギアを上げていく。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327175213.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327175220.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327175228.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327175234.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327175240.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327175246.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327175253.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327175302.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327175308.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用</figcaption> </figure> <p> 鏡像関係は、クラスの底辺と頂上に見えて似た者同士……であることを、触れ合いの中で確認していった二人を描いてきたこのアニメにおいて、とても重要なモチーフだ。<br /> 山田は窓ガラスの鏡に写った自分の夢を、諦めきれずに窓辺に沈み込むし、同じポーズで京ちゃんは自分の至らなさを嘆き、変われていない己に涙を流す。<br /> ア<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%C1%A5%E5%A5%A2">マチュア</a>の『ただただ好き』では終わらず、好きを仕事に繋げるために付箋張って幾度も練習してきた”秋野杏奈”の頑張りを、自分の指で引っ剥がす痛みに共鳴して、京ちゃんはうずくまり、他ならぬ山田が貸してくれた漫画から生まれたもう一人の自分との対話を経て、立ち上がり駆け出す。<br /> 時に自意識パンパンの思春期ボーイの面白さを引き出し、時にその生真面目な良さを形にしてくれた、京ちゃんと同じ顔をした名助演、最後の見せ場と言ったところか。</p> <p> 自己投射・自己投影の乱反射が随所に見える作品の中で、否定と深慮を繰り返す内省のプリズムを、イケすぎてるイマジナリーな自分との対話としてコミカルに、時に熱く描いてきたのは、とてもこのお話らしい”発明”だと思う。<br /> 僕はイマジナリー京太郎のキャラも存在も好きで、思慮深く感じやすく、だから傷つきやすくて立ち止まってもしまう京ちゃんが、露悪の鎧の奥に隠しているものが良く出ている奴だと感じてきた。<br /> 個別の意思を持ったキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターのように描かれながら、京ちゃんは彼が鏡写しの自分でしかないこと、その提案や対話は全部自分自身の内言であることを、しっかり認識している。<br /> 彼が手渡す甘い夢や市川京太郎への信頼、『まさかね……』と打ち消してしまう未来を俯瞰で見据える視線は、全部京ちゃん自身が自分や世界を見つめるための、大事なレンズだ。</p> <p> 彼が自分に投げかけてくるものが、あくまで自分の望みや認識の鏡像であって、答えを導くためにあえて否定するべき仮定をするのも、賢い少年の内省を分かりやすく描き直しているにすぎない。<br /> しかし自分ひとりなら迷宮入りしてしまいそうな悩みも、自分でありながら他人でもある『もう一人の僕』という鏡を使うことで、逡巡を踏み越え行動へ進み出す道へ、幾度も導かれてきた。<br /> そういう存在を京ちゃんが生み出して、ちっぽけで偉大な一歩を何度も踏み出してきたのも、そんな風に自分とよく対話して、本当はどうなりたいのか、何をしたいのか、身悶えしながらもちゃんと見据えて選べるようになった切っ掛けが、やっぱり山田杏奈なのも、僕は好きだ。</p> <p> </p> <p> 山田が好きになってくれるだろう、少女漫画のヒーローみたいな自分を求めるようになって、京ちゃんはもうひとりの自分とよく話すようになった。<br /> 鏡の向こう側、ひとりきりのベッド、あるいは人生勝負の土壇場で、一番身近な他人として、市川京太郎を客観視し、本当に大事なものを(この作品らしい愉快さで)手渡してくれる、大事な相棒。<br /> 俺は彼が好きだったので、イマジナリー京太郎に導かれるように窓辺に出て、山田が何に苦しんでいるのか、自分が何を見落としたのか、京ちゃん自身が見つける展開になったアニメの変奏を、すごく良いなと感じた。<br /> 受験失敗に傷つき、悪しざまに何かを罵りヤバくなることで自分を守ってきた京ちゃんが、今更取り戻しも進み出せもしない、どっか遠くにある理想像。<br /> それは手の届かない彼方にあるようでいて、自分の手で引き寄せられる/引き寄せるしかない現在の延長線上にしかなく、そんな人生の厳しさと尊さをなんだかんだ、ちゃんと理解ってる京ちゃんはなりたい自分になるための助けを、自分の中から導き出した。</p> <p> そういう、イマジネーションが現実を変えていける可能性に思い切り踏み出せるってのも、思春期の特長の一つであり、ちょっとイチャくてスカしてる部分引っくるめて、現実にこすれつつも夢を見る十代の、大きな力が最後に、京ちゃんに行くべき道を示す。<br /> 薄々感じ取って気にもしていた、山田の迷いと涙。<br /> 京ちゃんはずっとそういうモノを見落とさない、強く正しく優しい人になりたいと思っていて、山田杏奈に恋をすることで、そういう自分を取り戻していった。<br /> だから告白へと至る最後の一歩を、間違いなく京ちゃんであり、京ちゃんとは似ても似つかない彼の後押しで踏み出すのが、俺は凄く良いなと思う。<br /> それは京ちゃん自身が選び取って辿り着く場所であり、色んな誰かが助けてくれなければ辿り着けない場所でもあるのだ。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327202711.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327202723.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240327/20240327202716.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第24話より引用</figcaption> </figure> <p> さー物語が決着する場所へ、行けよ走れよ市川京太郎!<br /> ……って思ってたら、『そうはならんやろ……』っていう勢いで状況がゴロゴロ転がり、まさかまさかの女部屋乱入!!<br /> 一触即発の激ヤバシチュエーション、最後の最後まで京ちゃんの青春は波乱万丈だぜ~~ってところで、次回最終回に続くのであった。<br /> 『遂に往くのかッ!?』と思わせる激エモBGMでの全力疾走から、あっという間にコメディ時空に引きずり込まれていったの、大変このお話らしい引きで素晴らしかったです。<br /> このトホホでギャフンなところも愛おしく、ずっと見させてもらったお話だから、最終話一個前にそういう面白さを元気に暴れさせて、たっぷり味あわせてくれたのは嬉しかった。<br /> 俺は僕ヤバの、色んなところが好きだ。</p> <p> </p> <p> というわけで、賑やかで思慮深い最後の大イベント、青春修学旅行でした。<br /> ぶっちゃけ先週までは『話数足んねぇ!』とか思っていたのだが、最終章を前後編にしてくれたおかげでじっくりどっしり、僕ヤバアニメどんな話だったか思い返しながら楽しむことが出来て、大変良かったです。<br /> 事件の順番を入れ替えて、来週待ち構えるだろう最大級のエモーション炸裂が一番響くように、お話を整えてくれたのも良かった。<br /> 小林に教えてもらうのではなく、京ちゃん自身が山田の秘密に気づく作りになって、当事者性が上がったと思いました。</p> <p> すれ違ったり立ち止まったり、踏み出して触れ合ったり。<br /> 微細に震える心を寄せ合って、共に青春を駆け抜けてきた物語も残り一話。<br /> 皆が知ってて、でも言葉になっていない京ちゃんと山田の思いを、アニメがどんな風に描いてくれるのか。<br /> 来週がとっても楽しみです。<br /> 色々あったけども、良いアニメ化でありいいアニメだったなぁ……。</p> Lastbreath ゆびさきと恋々:第12話『私たちの世界』感想 hatenablog://entry/6801883189093638617 2024-03-26T06:43:34+09:00 2024-03-26T06:43:34+09:00 透明な雪が舞い降りる季節に、出会い始まった恋が辿り着いた、花盛りの季節。 雪ちゃんと逸臣さんがお互いの声を聞き解り合う努力を重ねながら、進み辿り着き踏み出していく世界を最後に丁寧に描く、ゆび恋アニメ最終回である。 主役二人にしっかり焦点を合わせつつも、関わった人たち皆がどう生きていくか未来へ広がる描写も豊かで、大変満足なフィナーレとなった。 素晴らしいアニメでした、ありがとう。 とまー、本編良すぎてこれで終わりにしても良いんだけども。 感じ入って揺れ動いた心をわざわざ言葉にまとめ上げて、こうして記録していくスタイルで長くやってきた自分としては、やはり蛇足をあえて書き足すことにする。 何が描かれ… <p> 透明な雪が舞い降りる季節に、出会い始まった恋が辿り着いた、花盛りの季節。<br /> 雪ちゃんと逸臣さんがお互いの声を聞き解り合う努力を重ねながら、進み辿り着き踏み出していく世界を最後に丁寧に描く、ゆび恋アニメ最終回である。<br /> 主役二人にしっかり焦点を合わせつつも、関わった人たち皆がどう生きていくか未来へ広がる描写も豊かで、大変満足なフィナーレとなった。<br /> 素晴らしいアニメでした、ありがとう。</p> <p> </p> <p> とまー、本編良すぎてこれで終わりにしても良いんだけども。<br /> 感じ入って揺れ動いた心をわざわざ言葉にまとめ上げて、こうして記録していくスタイルで長くやってきた自分としては、やはり蛇足をあえて書き足すことにする。<br /> 何が描かれ何を成し遂げたのか、本編見りゃ一目瞭然なわけだけども、それだけでは満足しきれない余計な思いは、見届けたアニメーションが素晴らしかったからこそ湧き上がるものでもあると思うわけで、しっかり書ききって『またね』と言いたい。<br /> そう思わせてくれるアニメで、大変良かった。</p> <p> お話としては非常に落ち着いたエピソードで、主役<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%C3%A5%D7">カップ</a>ルが恋人になって以来初めてのデートに出かけ、恋仲になってなお……というか親しく近づくからこそ知りたいと願う新たな発見を心に留め、豊かな”いつか”を見つめながら一歩ずつ進んでいく様子を描いている。<br /> 分かりやすくデカいイベントとしては一緒に海外行ったり、結ばれたり結婚したりといろいろあるんだろうけども、無理くりそういうアニバーサリーをねじ込むのではなく、見落としがちな日々の歩みに確かに輝く美しさに、改めて目を向ける話で凄く良かった。<br /> ともすれば社会に埋没した存在にされてしまいがちな、ろう者を主役とするこのお話は『気づく』ということをとても大事に進んできたと思うが、今回花盛りの公園で新たに見つけたもの、冬から初夏へ季節が移ろったからこそ生まれた信頼と尊敬は、雪ちゃんにも逸臣さんにも目の前にある恋が特別な奇跡であり、丁寧に編み上げ織り上げていくものだと教え直す。<br /> 自分がどれだけ、恋人と選んだ人のことを好きか。<br /> 告白がゴールではなく、そうしてお互いの”ぜんぶ”になった後にこそ続いていく道のりに気付き直す思いが、見知らぬ同志だった二人がお互いの世界を、過去や夢や願いを贈り合いながら、混ぜ合わせて『私たちの世界』にしていける幸せ。<br /> そういうモノを、最後の最後にもう一度しっかり描いてくれて、大変良かったです。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325172058.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325172104.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325172111.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325172117.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用</figcaption> </figure> <p> とにもかくにもまず見てくれ、この美しい花盛り!<br /> やっぱ……草薙は”最強”だなって思わせてくれて、ほんといいアニメでした……。<br /> 優れた美術を堪能するシンプルな喜びはもちろんのことだが、冬から春を経て初夏、時の移ろいあればこそ生まれてくる変化を大事に進めてきた物語を、雪月花の美しさをしっかり刻み込むことで下支えしている所が、大変に良い。<br /> 出会いの頃、逸臣さんは降りしきる透明な雪に雪ちゃんの善さを感じ取り、あるいは雪ちゃんは雪が自由に広がり降りていける空に、逸臣さんの特別さを見出していた。<br /> いまだときめきながら恋人であることに慣れてきているこの初夏、二人はお互いワクワクと心を弾ませながら計画したデートで、冬ではないからこそ、出会いの季節から時が過ぎたからこその美しさに、お互いを満たしていく。</p> <p> 逸臣さんは雪ちゃんが花が好きだと知らなかったし、雪ちゃんは逸臣さんが海外へ出かける理由をまだ聞いていなかった。<br /> 恋に落ちて、愛が形になって終わるのではなく、時が過ぎる中でよりお互いを愛しく思えばこそ、お互いが見ている世界を自分に引き寄せていく。<br /> もっと、あなたを知っていく。<br /> そういう歩みは幸せで美しいのだと、冬にはなかった新たな美しさを最終話に堂々描いて告げてくるのは、あまりに豊かな映像の詩であり、ドラマと絵画が同居するアニメーションという表現だからこその面白さに満ちて、大変良かった。<br /> 冬には雪として冷たく凝っていた水が、春を過ぎてこの季節には美しい水鏡となり、花の色を写している様子が、二人を包んでいる時間の流れ、移ろい変っていく世界への肯定にも思え、大変に良い。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325172938.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325172945.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325172951.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325172958.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325173006.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325173013.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用</figcaption> </figure> <p> 電車の中での出会いで始まった物語が、一旦幕を閉じるこのタイミングで再び電車の中の二人を描き、同じ状況だからこそ手に入れた変化を愛しく噛み締めている様子は、1クールに及ぶ物語が何を積み上げてきたのか、しっかりと振り返る助けになってくれる。<br /> 運命的に出会い、目を見て言葉を聞き届けてくれる人だからこそ好きになった二人は、あの時踏み込めなかった場所へと共に進み出して、交わせなかった言葉を手渡し合う間柄になっている。<br /> 目もくらむような眩い色彩の中で、小さな幸せをひだまりに感じ取りながら歩みを進める時、男は女を、女は男を、幾度も見とれて立ち止まる。<br /> 細やかな感情のゆらぎをクローズアップで切り取る、繊細な筆致が豊かだったこのアニメ、最終回でも……最終回だからこそどんだけ雪ちゃんと逸臣さんが、恋人になってなおお互い好きすぎる様子を、丁寧に描いてくれる。<br /> 告白して終わり、キスして終わりではなく、恋すればこそ日々新に愛が生まれ直している様子をとても大事に、良いものとして描いているのは、勝負としてのロマンスに拘泥しない自由な姿勢を感じられて、大変いい。<br /> 勝ったの負けたの……恋を支えに今を生きていく時大事なのは多分、そういうことじゃないのだ。</p> <p> 雪ちゃんは逸臣さんにデートの計画を任されて、自分が大好きな花に一緒に包まれて、同じ眩さを見つめる事を選んだ。<br /> それは自分が好きなものを共有し、自分が見て感じ愛しく思う世界へ、隣り合う人に踏み込んで欲しいと願う誘い文だ。<br /> 恋人の健気な誘惑に、逸臣さんはしっかり向き合って踏み出し、カメラロールに記録された『雪の世界』を見つめる。<br /> 透明で純粋なだけではない、数多色彩と生命の息吹に満ちた、新しい雪の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%F3%A4%D0%A4%BB">かんばせ</a>。<br /> 手のひらに収まる記憶装置を借り受けて、そこに自分と彼女の肖像を刻むということは、そうして見せてくれた『雪の世界』に自分を入れて、『私たちの世界』にしていくという決意表明だ。<br /> この幸せな日々が、一つの物語の幕引きが、全ての終わりなどではなく、もっとより善く、美しく、幸せになっていけるのだという確信。<br /> 私とあなたで……私たちで、そういう時間と世界を一個づつ作っていくのだという、優しく力強いメッセージ。<br /> そういうモノを、適切に的確に届けられる人だったからこそ、雪ちゃんは逸臣さんを好きになったし、もっともっと好きになっていくのだろう。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325174108.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325174115.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325174122.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325174129.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325174136.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325174144.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用</figcaption> </figure> <p> しかし好きになったからと言って、時と場合を選ばず愛に励むのもまた違う。<br /> 逸臣さんは口づけのサインを誤読しかけるが、直前で立ち止まっって雪ちゃんの真意を聞き、見知らぬ手話の意味を新たに学んで、今はキスをするタイミングじゃないと身を引く。<br /> いま・ここで・俺と。<br /> 時と場合によって移り変わる関係性の中で、最適な判断をしていくのはとても難しいことだし、逸臣さんはそんな難問に無条件で正解できる人間ではない。<br /> それを解っているから、雪ちゃんの顔を見て声を聞き、自分の口の動きや手話や携帯電話によるコミュニケーションを積み重ねて、相手が何をしてほしいのか、どんな場合なら良くて今はダメなのか、一個一個確認する。<br /> 親しい間柄になっても、むしろだからこそ適切なコンセンサスを積み重ね、敬意を持って相手の言葉に耳を傾けることの大切さは、最終話になってもこの話の真ん中にある。</p> <p> 控えめに流されつつも、NOを言うべきタイミングで雪ちゃんがちゃんと意思表示できていることと、それを逸臣さんが凄く尊重して関係性を編んでいる様子を、僕は12話見れて嬉しかった。<br /> 聴覚に障害を持ち、一般的なコミュニケーションをそのまま援用できないからこそ、相手のことを知ろうとしっかり目を見て、語彙を学び、意思を確認する。<br /> そういう恋路を追いかけてきたこのお話において、キスをすれば恋人というわけでも、セックスすれば愛の証明が出来るわけでもない。<br /> それはお互いの同意の元、適切なタイミングと場所を選んでなされるべきことであり、焦ることなく一つずつ、今だからこそ味わえる幸せな色を楽しみながら、進んでいけば良いことなのだ。<br /> いつかは頑なな強張りも雪ちゃんから取れて、恋人同士がする”ぜんぶ”をお互い望んでいるとおりに、自然に幸せに果たす日も来るのだろうけど、それが未来であったからと言ってこの恋が、無意味で無価値なものにはならない。<br /> 大きな”イベント”が起きずとも、その途中にある全ての歩みが特別な色と発見に満ちて幸せであると、最終回にこういう話を、こういう色を選ぶ物語は語っている。</p> <p> </p> <p> 花の暖色に包まれていたデートが、キスを先送りにした後繋がれる手を、弾む笑顔を、揺れる心を、新たな青い色で描いているのが好きだ。<br /> そうやって新しく美しい色が、何かを選び為すことだけでなく、今ここで話さないことを選び、お互いに同意する中で見つかっていく。<br /> そんな出会の喜びが瑞々しく心を揺さぶるから、雪ちゃんは逸臣さんの背中を写真に収め、『雪の世界』に加えようと思えるのだろう。</p> <p> 僕はアニメーションの中で携帯電話がどういう表象として扱われるかに、個人的な興味を持ち続けているので、ろう者である雪ちゃんの大事なコミュニケーション手段であり、バイトをする自分へと近づいていく武器になり、あるいは”世界”を切り取り共有できる大事な手立てとして、豊かに描かれているのはとても面白かった。<br /> 遠く離れていても思いを伝えたり、数多世界の欠片を収めればこそその人の”世界”がどんなものか解ったり、このお話における携帯電話はとてもポジティブに、フェ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A5%C3%A5%B7%A5%E5">ティッシュ</a>に描かれててきた。<br /> 今回のデートにおける描かれ方は、その総まとめとして大変に力強くて、非常に良かったです。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326052648.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326052654.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326052702.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326052714.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326052721.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326052728.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326052736.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326052743.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用</figcaption> </figure> <p> そしてこのお話が描く『私たちの世界』は、ラブラブ主役<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%C3%A5%D7">カップ</a>ル二人で狭く閉じたものではない。<br /> 最終話にあたって、雪ちゃんと逸臣さんの物語に関わった様々な人が、今どこにいてどんな未来へ、誰と進み出していくかをしっかりスケッチして終わっていくのは、僕には凄く良いことだと思えた。<br /> 放送時の描かれ方を切り貼りして語ることになるが、それぞれの新たな恋、新たな関係に至る前に登場人物の周囲には、仕事とか友情とか恋以外の関係がしっかりあって、それに支えられてどこかへ踏み出せる様子を、しっかりと描いている。<br /> それは恋だけが世界の全てではないが、それあってこそより豊かで多彩な世界を生み出せると、主役二人で描いてきたお話らしい最後の一筆だったと思う。</p> <p> 桜志くんと悪友の、チャーミングな距離感。<br /> 結構深いところまで踏み込んでくれる、エマちゃんの同僚。<br /> サラッとした間合いを維持しながら、部下の人生が豊かになるよう店を貸してくれる心くんの上司。<br /> サブキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターたちの隣には、彼らを愛する誰かが必ずいて、それに支えられ取り入れて成立している『私たちの世界』があってこそ、特別な誰かと手を繋げるもう一つの『私たちの世界』も成り立っている。<br /> 最終話だからこそ、主役二人がどんな思いで繋がっているかクローズアップで照らす構成なわけだが、そこに執着しすぎる狭さを上手く逃がして、このお話が捉えている世界、進み出す未来の横幅を、優しく描いてくれる場面だった。</p> <p> </p> <p> こういう支えがあって、皆が新しい恋へと踏み出していく。<br /> じっくり踏み込めば雪ちゃんと逸臣さんと同じくらい……あるいはそれ以上に面白い物語がありそうで、マージ『二期で深堀りお願いします!』って感じではあるが。<br /> りんちゃんと店長の恋路がガッツリ深まっているのも良かったし、高校以来宙ぶらりんだった心くんの手のひらをエマちゃんが掴んでくれたのも素晴らしいし、桜志くんの夢をずっと見守ってくれてる子がいるのだと、描いてくれたのもありがたかった。<br /> 桜志くんが手話通訳士という未来を選ぶのは、間違いなくあの夏の日『桜志の世界』に雪ちゃんが滑り込んできたからなんだが、当て馬という役柄を割り振られ、負けるための恋に最初から呪われていた彼の夢が、それでもあの日の出会いは間違いではなかったと教えているのが俺は好きだ。</p> <p> そういう恋の着地もあるし、思い出の中だけに桜志くんにとっての雪ちゃんがいるわけではなくて、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%D6%A4%C3%A4%AD%A4%E9%A4%DC%A4%A6">ぶっきらぼう</a>ながら色んな人に愛され見守られて進む中で、『アイツのもの』になってしまった雪ちゃんとより善く、より豊かに繋がりうる可能性は、彼の中で輝いている。<br /> 成就した恋のその先、お互いを好きだからこそより解り合いたいと願い、キスした後にもっと相手を知っていく様子を描く今回、恋になる前に積まれてしまった桜志くんの思いが誰かを傷つける呪いではなく、自由に羽ばたく翼になる気配を描いてくれて、僕は嬉しかった。<br /> 桜志くんの尖って危うい気配は、人が恋に向き合う時当然の難しさを強く反射していて、お互いを人間として尊重し合って最高の恋をしていく主役には、照らせない陰りを背負っていた。<br /> その暗さ、危うさを描かなければ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%A8%B6%F5%BB%F6">絵空事</a>として浮ついていたかも知れない物語に、地面に縫い止め重みを出す大事な仕事を、このクソ生意気で身勝手で真っ直ぐな青年は果たしてくれていたわけで、彼が涙の先へと手を伸ばし、伏せかけていた目を上げて世界と自分の顔を見れる強い青年なのだと、最後に示してくれたのは嬉しい。<br /> 俺は……芦沖桜志が好きだから……。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326054850.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326054857.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326054905.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326054912.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326054919.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326054927.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用</figcaption> </figure> <p> 雪美しき冬から風あたたかき春、そして花盛りの初夏へと時が流れる中で、雪ちゃんと逸臣さんの距離は縮まり、あの時保留にされた質問に答えが返ってくる。<br /> 何故、自分は言葉を交わすこと、見知らぬ土地に飛び込むこと、子どもたちと触れ合うことを、人生で大事にしているのか。<br /> 波岐逸臣という人間の核へ切り込む問いかけへ、長い返答を携帯電話に預けて応える時、その過去が豊かに綴られていく。<br /> 逸臣さんの人間が読み切れず、どこかミステリアスな空気を漂わせていたことは、だからこそ知りたいという雪ちゃんの心理……『知る』ということを話しの真ん中に据えたテーマへの切り口として、有効に機能していた。<br /> 一種のミステリとしてロマンスを描く手腕が、恋人たちをここまで導いてきたわけだが、その中も深まった最終回、波岐逸臣という謎の奥に踏み入って根源を見せるのは、なかなか気持ちの良い決着である。<br /> 人当たりの良い彼が、しかし自分のすべてを簡単に預ける人間ではないことも12話かけて教えてもらっているわけで、雪ちゃんにシンクロする形で謎めいた美青年の一番柔らかいところを、最期に手渡してもらえる充実感のあるまとめだ。</p> <p> ドイツで孤独に迷っていた逸臣少年は、勇気を振り絞ってボールを手渡し、暗い影から光の中へと踏み出した。<br /> この歩みが、ドヤバイ拗らせ方しかかってた桜志くん相手に、グイッと踏み込み手を引いて明るい場所に引っ張り上げてきた、逸臣さんの”今”と重なるのが俺は好きだ。<br /> かつて自分が体験して、人生を変えてくれるほど眩しいと思えた行いを、逸臣さんはヤベー恋敵にだって手渡して、自分が感じた風と空が目の前に広がっているのだと、教え直すおせっかいを、幾度も繰り返せる人なのだ。<br /> 自分自身、思いが伝わらないもどかしさ、そこに閉じていく暗さを知っていればこそ、桜志くんの純情と痛みに手を添えて、酒の勢いも借りつつ『解る』と言えたのだろう。<br /> そういう意味でも、今回は最後の”答え合わせ”である。</p> <p> 窓もねー場所でマッズいシリアル食ってる所から、風が吹き光が満ちた場所で、しっかり食事を口にいれる心境まで。<br /> こういう心理表現のリフレインがめちゃくちゃ上手いからこそ、このお話がみっちり豊かに色んなモノを語れたわけだが、やっぱ村野監督全話コンテは偉業中の偉業としか言いようがねぇ……。<br /> 赤と青、光と影に塗り分けられた校庭で、過去に狭く閉じこもるものと未来へ向けて開かれているものが同居していて、逸臣少年は前へ進むことを選んだ。<br /> 語りかけること、解ってもらうことを選んだのだ。<br /> それはコミュニケーションに生来難しさを抱える雪ちゃんが、それでもガラスのやさしい檻を出て自分を世に問うと、世の中を知ろうと、踏み出した歩みにしっかり重なっている。<br /> 電車の中、偶然出会った他人のように見えて、お互いを突き動かす衝動はしっかり重なり合い、同じ夢を見据えていたのだ。<br /> だからお互いを翼にして、より自由な空へと飛び立ってもいける。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326060352.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326060400.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326060407.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326060414.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326060421.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326060428.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326060436.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240326/20240326060443.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第12話より引用</figcaption> </figure> <p> この物語で幾度も象徴的に描かれてきた、青い空に力強く刻まれる飛行機雲。<br /> 私たちはどこへでも行けて、共に幸せになっていけるという希望を乗せる翼は、常に言葉とともにあった。<br /> 自分がどういう場所から来て、どこへ行きたいと望むか。<br /> そこに何故あなたがいてほしくて、どれだけ愛おしいのか。<br /> ろう者と聴覚保持者に分断されかねない世界の中で、逸臣さんは身近な異国として雪ちゃんに出会い、彼女が手のひらと指先と表情と心で作る言葉を、しっかり受け止め返してきた。<br /> 手話を学び、雪ちゃんがしてほしいこととしてほしくないことを確認し、二人の間にルールを定めて、一つ一つ確かめて渡してきた。<br /> そういう、眼の前の一人をとても大事にしたコミュニケーションを瑞々しく、力強く手渡してくれる人だから、雪ちゃんは逸臣さんを好きになったのだ。</p> <p> 恋とコミュニケーションという、作品を貫通する大きな柱を最後の最後、穏やかな日々の一幕に強く刻みつけて終わっていくのは、僕はすごく好きだ。<br /> ずっとそういう話なのだと思いこんでみてきたアニメが、確かにその通りだよと僕に告げて別れてくれるのは、満足と納得と安心を得れる。<br /> でもそれは自分が見ていたものをなぞってくれる快楽だけではなくて、確かに雪ちゃんと逸臣さんを主軸に幾度もこのお話が描いたものは、人間がより善く生きる上でとても大事だと、新たに思えるからでもある。</p> <p> </p> <p> 逸臣さんは仕上がった顔面にけして甘えず、あらゆる人に(ヤベークソガキ桜志にすら!)親切であり、恋人になった後にこそ雪ちゃんをもっと、知ろうとする。<br /> 人間解り会えないものだという暗い理解をその身に刻んで、でも断絶に立ち止まるのではなくむしろもっと踏み込んで、かつて自分を光に包んだ喜びと発見を、色んな人に手渡そうとする。<br /> その主目標が”子ども”であることに、メチャクチャ個人的な好感がバリバリに上がったりするわけだが、雪ちゃんという特別な個人……”ぜんぶ”を与え受け止めて構わないと思えるほどの他人に出会えたことで、彼の魂はより元気に、嘘なく望む未来へ進んでいくのだと思う。<br /> それは雪ちゃんにも同じで、バイトを始め知らない世界を知り、ろう学校から出たいと思った衝動をより善く、逸臣さんとラブラブする中で叶えていくことになるだろう。<br /> そうやって人生を前に進めていけるだけの爆発力が、逸臣さんと雪ちゃんがお互いに交換することばの中にはあって、幾度も愛に心揺さぶられることで、彼らはより善い未来へ近づき、自由に羽ばたいていく。<br /> そういう、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%AB%B8%CA%BC%C2%B8%BD">自己実現</a>の大いなる助けとして”恋”を描いていることが、僕にとってこのお話がとても特別なものになった、大きな理由だと思う。</p> <p> 月見れば君を思い、携帯電話越しに離れてなお、思いは繋がる。<br /> 人がより善くなっていくために何をすればいいのか、凄く理念的で綺麗なものを視界に真っ直ぐ捉えつつも、肉欲にも近い純情がどう胸に燃え上がっているのか、身体性をもって描いているのも良かった。<br /> 恋人となり、キスをした後のその先にどう踏み込んでいくべきなのか、静かに燃え上がるエロスをなぞりつつ焦らず、雪ちゃんの様子を見ながら進んでいく道には、世に満ちる『べき』がない。<br /> 世間一般ではそういう事をするから、そういう事になってるから、そうする『べき』。<br /> そんな不可視の圧力に押し流されて、心と体が告げている本当から目を背けて、進むべきではない場所へ踏み込んでしまう危うさから、逸臣さんは自分たちを遠ざけて、自分たちだけの地図を頼りに、自分たちだけの恋を削り出している。<br /> そうして生まれていくものが、彼らの世界になっていく。<br /> その時時に汚らわしいともされるフィジカルは精神的な透明性を手に入れて、ただ目の前にある一つの真実として、恋人たちに共融されていくだろう。<br /> そんな幸せな未来を、爽やかな光の中確かに感じさせる熱があるフィナーレで、大変良かったです。</p> <p> </p> <p> </p> <p> というわけで、ゆびさきと恋々全12話、無事見届けました。<br /> 大変素晴らしかったです。<br /> お疲れ様です、ありがとう。</p> <p> 少女漫画のど真ん中を味わいたいと、ある種斜めからの視線で見始めたアニメでしたが、出会いから恋が生まれるまで、形になるまで、恋人になった後より深まる絆まで、美しくも雄弁な筆跡でしっかり描ききってくれて、大変に良かった。<br /> 雪ちゃんと逸臣さんのロマンスをぶっとく主軸に据えつつも、そこに絡んでくる様々なキャラにもそれぞれの恋があり、人生があり、尊厳があることを大事に描写を積み上げてくれて、負け役だろうが敬意と愛情を持ってしっかり描いてくれたのは、自分にとってとてもありがたかったです。<br /> 冬から初夏までを描く物語の中で、美術と色彩がとにかくハチャメチャに良くて、ビリビリ痺れるほど美しいものを山程味わえたのも、また最高でした。<br /> 繊細さと明瞭さを同居させたレイアウトと演出、シリアスで力強い胸キュンと可愛すぎるSD作画の同居、力強くもクドすぎない語り口の妙味。<br /> いい所がいくらでもある、素晴らしいアニメでした。</p> <p> </p> <p> ろう者を主役にし、聴覚保持者である僕が知らない”身近な異国”としての面白さをスパイスに話を牽引する……といういやらしさを、ろう者が持つ豊かなコミュニケーションを徹底的な量と質、描き抜くことでぶっ飛ばしていたのも、大変良かったと思います。<br /> 当たり前に可愛く、自然に幸せな雪ちゃんは社会から庇護/隔離されるだけの異物ではけしてなく、私達の世界に確かにいる隣人であり、同時に個別の難しさと立ち向かい方を既に身につけている、タフな生活者でもあります。<br /> メッセージアプリ、手話、筆記、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%FD%CF%C3">口話</a>。<br /> ともすれば聴覚保持者よりも多彩なメディアを活用して、思いを伝え受け取ることが……それを糧に力強く未来へと踏み込んでいける、尊敬すべき存在として、自然と恋を応援したくなってしまうスーパーキュートガールが描かれていたのは、大変良かった。<br /> ありえんほど胸キュンなおとぎ話感と、想像の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%D4%BF%B3%B0">埒外</a>にあったんだけども描かれてみると身近に体温を感じるハンディな質感が同居していて、ろう者がそこに居る『私たちの世界』に自然、耳が行くような強さがあったのは、ただのロマンスを越えた作品の善さだと感じました。</p> <p> この生っぽい手触りは、ろう者にとってのコミュニケーションが、あるいは生活の難しさがどんなものであるか、徹底的に取材し描いた結果だと思います。<br /> 監督クラスの逸材を複数手話アニメーターに起用し、ガチもガチの気合でもって描ききったことで、逸臣さんに恋する雪ちゃんを『私たちの世界』の一員なのだと、否応なく受け入れてしまいたくなる魅力が、シーンに宿っていました。<br /> それは教条的な上からの正しさではなく、雪ちゃんが彼女なりの世界を必死に生きて、素敵な運命と出会ってときめき、可愛くも必死に未来へ進んでいく足取りに、しっかり寄り添った結果生まれてくる。<br /> 『ああ、この子はここで生きてるんだな、頑張ってほしいな』と、見ているものに思わせるだけの物語をちゃんと作ったからこそ、偉大な物語が描ける。</p> <p> 逸臣さんは雪ちゃんの善さを、透明で汚れのないガラスに例えていましたが、恋の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%C1%A5%D0%A5%C1">バチバチ</a>からあえて距離を取り、様々な人がそれぞれの幸せを探っていく前向きな歩みに注力したこのお話自体が、透明で美しい雪のような物語だったと思います。<br /> それは熱を宿しながらも溶けることがない、永遠の不香花として僕の胸の中に刻まれて、ずっと素晴らしい作品だったと、思い続けることでしょう。<br /> 本当に、素敵なアニメでした。<br /> お疲れ様、ありがとう。<br /> 心から、出会い見届けられて良かったです。</p> Lastbreath わんだふるぷりきゅあ!:第8話『まゆのドキドキ新学期』感想 hatenablog://entry/6801883189093504417 2024-03-25T16:38:48+09:00 2024-03-25T16:38:48+09:00 リアルよりひと足早く、アニマルタウンは新学期! 新たな学校、新たな友達に馴染めるか不安な猫屋敷まゆ、勝負の転校デビューやいかに!? という、わんぷり第8話である。 毎度のことながら、大変良かった。 画像は”わんだふるぷりきゅあ!”第8話より引用 猫屋敷まゆの物語としての今回は、自分の外側へ開けていく窓に背を向け、暗い場所で事前準備の鎧ばかり固めているところから始まる。 考えすぎで大失敗! …と自分では思ってしまう自己紹介が、いろはちゃんの助け舟で上手く落着し、眩しい場所と暗い場所の間を繋ぐ渡り廊下でしばらく迷った後、”姉”であるユキが開いてくれた窓から燦然と輝く夕日を見るまでの、小さな冒険のエ… <p> リアルよりひと足早く、アニマルタウンは新学期!<br /> 新たな学校、新たな友達に馴染めるか不安な猫屋敷まゆ、勝負の転校デビューやいかに!? という、わんぷり第8話である。<br /> 毎度のことながら、大変良かった。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”わんだふるぷりきゅあ!”第8話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325154735.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325154743.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240325/20240325154752.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”わんだふるぷりきゅあ!”第8話より引用</figcaption> </figure> <p> 猫屋敷まゆの物語としての今回は、自分の外側へ開けていく窓に背を向け、暗い場所で事前準備の鎧ばかり固めているところから始まる。<br /> 考えすぎで大失敗! …と自分では思ってしまう自己紹介が、いろはちゃんの助け舟で上手く落着し、眩しい場所と暗い場所の間を繋ぐ渡り廊下でしばらく迷った後、”姉”であるユキが開いてくれた窓から燦然と輝く夕日を見るまでの、小さな冒険のエピソードである。<br /> 私服で過ごす春休みの間に、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>として闘う非日常に首を突っ込んだいろはちゃんとは毛色が違うが、こういうありふれて難しい等身大の戦いをすごく大事に描いてくれるのがわんぷりの良さだと思うので、なかなか上手く生きれない猫屋敷まゆが『学校面白かった、行ってよかった!』と思えるまでの旅を、丁寧に描いてくれたのは嬉しい。<br /> これが完全に現実と季節をシンクロさせず、もしかしたら数週間後の初登校や環境の変化にナーバスになってるかも知れないメイン視聴者の、未来への予防接種としてちょい早めに、まゆちゃん等身大の頑張りを描いてくれていたのが、誰に向けて作品を作っているのか、強いエールを勝手に感じてジンと来た。</p> <p> いろはちゃんは非常に幼いこむぎを受け止め導く立ち位置なので、既に<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%CE%CF">人間力</a>が分厚く適切なコミュニケーションをズバズバ手渡せる。<br /> 何しろ変身後の決め台詞<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>て『あなたの声を聞かせて!』なわけで、眼の前の相手のやりたいことを傾聴し、自分の出来ること、するべきことを見定めて適切な補助を行うことが、人格の一部として既に仕上がっている少女だ。<br /> 対して猫屋敷まゆは過剰に失敗を恐れ、事前準備で自分を雁字搦めにして、頭の中で膨らませた恐怖に縛られてしまう、コミュニケーションが下手くそな……いろはちゃんのようにスーパーな存在ではない当たり前の女の子として、ずっと描かれている。<br /> 出来ないことがあるとはつまり、出来るようになる余白をたくさん残しているということで、人見知りがはげしいまゆちゃんがいろはちゃんと出会い、新たな環境で変わっていける物語には、独自の活力が宿っていくだろう。<br /> その一歩目として、ブルブル考えすぎて震えてるところから始まり、自分に親切にしてくれるいろはが”自分にだけ”優しいわけではないと見て一歩引きそうになってしまったり、その後退をガッチリ捕まえられて新しい学校の楽しいところを教えてもらったりする。<br /> 自分に欠けているものを友達に助けてもらう体験を経て、見知らぬ怖い場所だった学校は楽しいかも知れない場所に変わっていって、ありふれた怯えと憂鬱は晴れやかに吹き飛んでいく。<br /> その小さな、でも大事な一歩がすごく丁寧に描かれていたのが、とても良かった。</p> <p> </p> <p> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%CB%FC%BB%F6%BA%C9%B2%A7%A4%AC%C7%CF">人間万事塞翁が馬</a>』を、好きな言葉として先生が上げているのが、僕は凄く良いなと思った。<br /> それは目の前に立ち現れてくる幸と不幸を、頭の中で簡単にジャッジせず身一つで飛び込んで噛みしめる、勇気が必要な態度だ。<br /> 物語が始まった時、自己紹介の文面を幾度もこねくり回しているまゆに、思い通りに行かない現実を楽しむ余裕はない。<br /> 既に傷ついている体験から過剰に怯え、それに縛られて実際”失敗”してしまうわけだが、偶然と運命が事前に結びつけておいてくれたいろはとの縁が、動物大好きなクラスに受けが良い話題を引っ張り出して、ファースト・コンタクトは良い方向へと転がっていく。<br /> まゆ一人だったら確かに最悪のデビューになっていたかも知れないが、彼女がシコシコ手作りのハーネスを作り、友情の証として手渡した過去が、ちょっとコケてもそれを好機に変えてしまえる、明るく元気な女の子の助け舟を呼び込んだ。<br /> ここまで8話、いろはとの出会いを無下にしなかったことが、あんなに怯えていた新たな出会いに傷つくのではなく、明るく楽しい場所として学校を受け取れる足場を、まゆに作っていたのだ。<br /> いろはの分厚い<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%CE%CF">人間力</a>はマジ凄いんだが、まゆちゃんなりに不器用ながら新しい街、新しい友達と親しくなろう、不安と戦おうと頑張ってきたことが、今回の”塞翁が馬”に繋がっているのが、僕には凄く嬉しかった。</p> <p> 前々回こむぎの身勝手を受け止めきれない、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A1%BC">ティー</a>ンエイジャーとして当然の(喜ばしくすらある)未熟をみせたいろはちゃんだが、今回はバキバキに仕上がったコミュニケーション筋をフル動員し、クラスの中心として光り輝く姿を見せつけていた。<br /> 新学期が始まり、クラスという社会が初めてスケッチされたことで、そこにおいて犬飼いろはがどういう人物であるか……太陽のように眩しい犬飼さんに、悟くんがどんだけ参っちまってるかが良く見えて、新鮮な喜びがあった。<br /> あんな素敵ガール……そらー瞳奪われ、心高鳴っちまうよなぁ……。<br /> こむぎと向き合う時とはまた違った、引っ込み思案なクラスメイトをグイグイ開けた場所へ引っ張っていく犬飼さんが見れたことで、彼女をもっと好きになれたのは大変良かった。<br /> いろはが前に出てまゆが手を引っ張られるこの初期配置から、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>としての非日常の戦い、学校生活や放課後を共に過ごす日常を経て関係が深まれば、色んな善さや強さが形になって、関係も変わっていくだろう。<br /> 一年アニメの醍醐味とも言えるそんな変化を、最大限堪能するには”今”猫屋敷まゆがどんな少女であるかがちゃんと描かれているのが大事だと思うので、そこをしっかり、影も光もどっしり削り出してくれたのは、大変良かったです。</p> <p> </p> <p> まゆの小さな奮戦記と並走する形で、とにかくいろはと一緒にいたい犬飼こむぎの大暴走も、明るくコミカルに突っ走っておりました。<br /> ハチャメチャ元気で明るい幼めの語り口が、まゆのお話に伸びている思春期特有の陰りと面白い対比をなしており、良い感じのメリハリが付いたのは良かった。<br /> ブレーキのぶっ壊れた感情機関車として、バリバリ突っ走り続けるのが”獣”の定めって感じもあり、幼いからこそ怖い物知らずで街駆け抜け、あっちにフラフラこっちにフラフラノンキに生きている様子は、それよりちょっとオトナだからこそ難しいまゆの様子を照らす、良い鏡にもなっていた。<br /> 更に言うと次回犬飼こむぎ制服着込んで学校にGO! なので、その前奏としてもスーパーハッピー元気印、とにかくいろはと一緒にいたいワン! な様子がよく見えて、良い滑走路になってたと思います。<br /> 人生の難しいところに直面していないときの犬飼こむぎは、マジで元気の塊で恐れるものなし、純粋さと力強さの象徴でいてくれていて、見てて凄く元気貰えるんだよな……。<br /> ありがたい……(アニマルタウンの方角へ、合掌礼拝)</p> <p> そんな暴走超特急とわんにゃん<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%E7%C0%EF%C1%E8">大戦争</a>を繰り広げた猫屋敷ユキも、うにゃうにゃスーパーチャーミングな様子をたっぷり見せてくれて最高だった。<br /> はー可愛い……本当に可愛い。<br /> 色々精神不安定な”妹”が、自分をもみくちゃに安らぎを得ようとするのを『ったくしょーがねーなーコイツはよー……』という顔でされるがままにしてたり、そんなまゆちゃんが明るい顔で幸せを報告してくるのを聞き届け、『見ろよ……お前の未来だぜ……』とばかりに夕焼けの窓辺へ導いていくの、あまりに”姉”で良すぎた。<br /> 姉妹ってのは血縁でも年齢でも種族でもなく『生き様と心意気』なので、ひとつ屋根の下共に暮らす2×2を主役に据えたことでそういうトコロにビシッと切り込めているわんぷり、かなり新しい<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>な感じがある。<br /> 姉妹キュアって案外いねーからな……”ふたり”をこういう角度から削り出していくのも、わんぷり特有の新機軸な気がしている。</p> <p> 実際、どーも過去の失敗に傷ついている匂いがあるまゆちゃんが、それでもユキが大好きだからなんとか人生戦えている描写、猫屋敷の少女たちの繋がりの描き方としてめっちゃ好きなんよな……。<br /> 傍から見りゃちっぽけで下らない事かもしれないけど、まゆちゃんにとって社会の中で上手く振る舞えない自分、傷つけてくる世界との向き合い方は命懸けの戦いで、自由で優しいユキに体重預けることで、ギリギリ戦えている部分も大きいじゃない。<br /> ユキもユキなりに、そういう立場にいる自分を悪くないと感じてるからこそ、時折猫パンチぶち込みつつ手のかかる”妹”の、心の支えになってやってるわけで。<br /> 人とか猫とか横に置いて、誰かと誰かがそういう繋がり方をしているってのは大いに意味ある営為だと思うし、そんな繋がりが色んな出会いによって広がって、見知らぬ同士が友だちになれるかもって可能性も、今後描いていくわけでね。<br /> そういう作品が豊かに広がるキャンバスが、なかなか良い感じだと教えてくれる回だったと思います。<br /> めっちゃ良かったです。</p> <p> </p> <p> というわけで、猫屋敷まゆ等身大のデビュー戦でした。<br /> 僕は<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>が住まう街がどっかぶっ飛んでてファンタジックな所が好きなので、『どう考えても学校レベルじゃねぇだろ……』という飼育施設に、色んな動物が暮らしている様子とか最高でした。<br /> やっぱメインテーマに選んだネタならね、あんくらいぶっ飛ばしたスケールで扱って欲しいわけよ。<br /> ガルガル出た時、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CF%A5%EA%A5%CD%A5%BA%A5%DF">ハリネズミ</a>は丸まり兎はスタンピングして、種族によって対応が様々であると描かれていたのも、細かいけど良いところだったな……。<br /> 毎回色んなガルガル出てきて、その生態を契機に浄化が行われるの、自然な生き物教育要素で好きだぜ、わんぷり。</p> <p> 色々出来ないことも多いけど、だからこそ自分なり必死に頑張る等身大の成長物語の二歩目を、猫屋敷まゆがどう踏み出したか。<br /> 学校という舞台をわんぷりがどう活かしていくか、そのテストケースとしても大変良い話数でした。<br /> この青春の園に、ブレーキぶっ壊れた純情まっしぐらが飛び込んでくるわけだが……一体全体どうなることやら。<br /> 犬飼こむぎ制服デビュー、ワクワクと次回を待ちたいです!</p> Lastbreath プレイレポート 24/03/23 ストリテラ『Bestiaire -群獣寓意譚-』 hatenablog://entry/6801883189093002755 2024-03-23T17:21:21+09:00 2024-03-23T17:21:21+09:00 今日はナラティブTRPGオンリーオンラインコンベンション”ジャムコン2nd” sites.google.com にて、ストリテラのオリジナルシナリオを遊ばせていただきました。 シナリオタイトル:Bestiaire -群獣寓意譚- システム:ストリテラ キズミさん:”三年坂の蝮”葛羽恭路:33才男性:妄執の狂犬 とある二次団体を率いる若き獣。親分亡き後、その夢を引き継いでテッペンを目指してきたが、病魔に侵された身体に残された時間は少ない。命を燃やし尽くし、譲れない道をひた走るか、それとも……。遺品である時計は非常に時を刻み、答えてはくれない。 フレッド緑野さん:”暴虐の龍”井出遊馬:38才男性:… <p> 今日はナラティブ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/TRPG">TRPG</a>オンリーオンラインコンベンション”ジャムコン2nd”</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Fsites.google.com%2Fview%2Fnarrative10online%2F%25E3%2583%259B%25E3%2583%25BC%25E3%2583%25A0" title="ジャムコン2nd ~ ナラティブTRPGオンリーコンベンション ~ 第10回とらいあどオンライン" class="embed-card embed-webcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 155px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://sites.google.com/view/narrative10online/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0">sites.google.com</a></cite></p> <p>にて、ストリテラのオリジナルシナリオを遊ばせていただきました。</p> <p> </p> <p> シナリオタイトル:Bestiaire -群獣寓意譚- システム:ストリテラ</p> <p> キズミさん:”三年坂の蝮”葛羽恭路:33才男性:妄執の狂犬 とある二次団体を率いる若き獣。親分亡き後、その夢を引き継いでテッペンを目指してきたが、病魔に侵された身体に残された時間は少ない。命を燃やし尽くし、譲れない道をひた走るか、それとも……。遺品である時計は非常に時を刻み、答えてはくれない。</p> <p> フレッド緑野さん:”暴虐の龍”井出遊馬:38才男性:不遜なる獅子 昇り龍の入れ墨を背負った、冷徹にして傲慢な生粋のヤクザ。頭が切れ利に聡く、それ故情の引力で街をまとめるには足らないが、今更爪を収める手立ても知らない野獣。いつかどこかでねじ曲がった道が、定めだと譲らぬ一本気を背負う、孤独な侠客。</p> <p> コバヤシ:”色無し伽藍”桑原伽藍:42才男性:還りし龍 かつて悲劇に襲われ、稼業から遠く距離を取って花屋をやっている巨漢。オヤジの死を契機に因縁が荒れ狂う街に、かつて逃げ出した道を辿って首を突っ込んできたハンパ者。色を入れる前に散った背中の花を、赤く染まるのは決意か、犠牲か。</p> <p> </p> <p> こんな感じの感情と因縁こんがらさせたドヤクザ共が、沸騰する街にそれぞれの生き様をぶつけ合うお話をやってまいりました。<br /> 大変面白かったです。<br /> お二人共ストリテラ初体験ということで、経験者としては良い出会い方になってくれればな~~と願いながらのセッションとなりました。</p> <p> ですが、積極的に『俺はこういうお話をしたくて、こういう奴なんだ』というメッセージを出し、それを受け取って『俺達のお話はこうなると面白いんじゃないか?』という提案をしていただいて、ノーデータ・ノー<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/GM">GM</a>の特異なシステムが最高速を出すために必要な、ロールプレイの燃料をガンガンに投げ込んでいただいて、最高に煮えたセッションとなりました。<br /> コンベンションでの初顔合わせ、初システムということで緊張もされていたとは思うのですが、積極的にコミュニケーションを取り、楽しい時間を一緒に過ごそうと前のめりにバンバン熱い一撃を入れてくれたおかげで、こちらも引っ張られて良いロールを沢山返すことが出来て、大変面白い時間を過ごすことが出来ました。</p> <p> </p> <p> お話の方は過去の事件で人生ねじ曲がったヤクザ二匹と元ヤクザ一匹が、抗争に加熱していく街の中で譲れない生き様を探り、激しいぶつかり合いの末に進むべき未来を見つけていく展開に。<br /> とにかくずーっと雨が降り続いている、湿り気の多い話になったわけですが、キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターは出口の見えない業と因縁に溺れつつも、プレイヤーはしっかり皆でどこに行くべきか話し合い、ロールプレイでつっつき空い、理想的なバランスで一緒に走ることが出来ました。<br /> 『俺はこうだ!』という芯を安易に譲らずしっかり構えて、その上で『俺はこうして欲しい!』という願いにちゃんと耳を傾けて、自分含めて同卓している相手全員を尊重した上で、今共有している物語を大事に、皆で納得行く展開を探っていく。<br /> ストリテラの、ナラティブ・システムの一番大事で一番強い所が、しっかり噛み合って強い出力を絞り出す展開となって、二時間のスピーディーなセッションながらやるべきこと、やれることを全部振り絞った、大満足の物語体験となりました。</p> <p> キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター提出時、あるいはロールプレイを始める前の相談ではなかなか思い至れないところに、実際のプレイを通じてグイと乗り上げていく手応えも随所にあって、リアルタイムで話を作り上げていくからこその面白さを、たっぷりと味わいました。<br /> 終わってみると想定していないところに全キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが流れ着き、しかしこれしかありえないという納得と満足を持って一つの結末にたどり着くことが出来て、手捻りで先の見えない話を編んでいく醍醐味を、堪能できるセッションでした。<br /> カタギがヤクザに、ヤクザがカタギに、オセロのように動かないはずの生き様が動いて未来が拓けていくのは、血みどろでどうしようもない人間の業を描きつつも、どこか前向きな希望がある感じで凄く良かったです。<br /> 雨に濡れつづけていた街に日が差し込み、『固い絆』を<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%D6%B8%C0%CD%D5">花言葉</a>とする<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%AB%B4%E9">朝顔</a>が花開いて終わるエンディングも、詩情があって良かったな……。</p> <p> </p> <p> というわけで、大変楽しい時間を過ごさせていただきました。<br /> 同卓していただいたお二人、コンベンションの運営スタッフ、ストリテラという最高システムを作ってくれたフユ先生、みんなありがとう!</p> Lastbreath うる星やつら:第34話『校長殴打事件/秘密の花園/涙の家庭訪問 地獄の諸星家編』感想 hatenablog://entry/6801883189092917097 2024-03-23T10:57:42+09:00 2024-03-23T10:57:42+09:00 可能世界を股にかけて、未来を見つめるエモい旅も一段落。 気分も新たに冒頭にあらすじをお出しし、大変にロクでもないお話でラッシュを仕掛けてくる、令和うる星第34話である。 ここ最近情感の濃い、筋道の立ったお話が続いてきた流れをぶった切るように、『あー……コイツラそう言えば、相当なロクデナシでもあったな……』と思い出せるエピソードが、ゴロリと飛び出してきた。 このしょうもなさ(第2エピソードの投げっぱなし加減含む)もまた”うる星”の味であり、特に理由もなく襲いかかるメガバイオレンスっぷりとか、スキマ時間に蓄積されてきた家庭訪問エピでの温泉マーク虐待っぷりとか、いやまぁなかなかにヒドい。 先週まで未… <p> 可能世界を股にかけて、未来を見つめるエモい旅も一段落。<br /> 気分も新たに冒頭にあらすじをお出しし、大変にロクでもないお話でラッシュを仕掛けてくる、令和うる星第34話である。</p> <p> ここ最近情感の濃い、筋道の立ったお話が続いてきた流れをぶった切るように、『あー……コイツラそう言えば、相当なロクデナシでもあったな……』と思い出せるエピソードが、ゴロリと飛び出してきた。<br /> このしょうもなさ(第2エピソードの投げっぱなし加減含む)もまた”うる星”の味であり、特に理由もなく襲いかかるメガバイオレンスっぷりとか、スキマ時間に蓄積されてきた家庭訪問エピでの温泉マーク虐待っぷりとか、いやまぁなかなかにヒドい。<br /> 先週まで未来の扉を開けて自分たちの可能性を観測したり、幽霊少女と真夏のデートを繰り広げていた連中と同一人物とは思えないが、まー演目の雰囲気に合わせて結構キャラ変わるからな、このお話……。<br /> そういうフラフラ感も芸幅と、チャーミングに受け入れさせてしまえる腕力が強みでもあって、いい話が続いたからこそここで一発荒れ球投げ込んでくる組み立ては、アンソロ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>としての令和うる星がどういう印象を編み上げたいのか、探る手助けにもなって面白い。<br /> やっぱどの話数をどの順番で板に乗せていくのか、セットリストから編者の意思を読み取るのが俺的には面白いんだよな、令和うる星。</p> <p> </p> <p> お話の方は校長気絶の裏側を探るミステリ仕立て……と思いきや、温泉マークを限界まで追い込んで虚偽自白を引っ張り出して終わる、大変蛮性の高いオチ。<br /> ノリと勢いでガンガン人間追い詰めていく、うる星メンバーのヤバい所が全力で暴れまわる話であり、激詰めされた温泉マークの顔面芸と合わせて、なかなか心地よいろくでもなさであった。<br /> 表向きの被害者である校長はノンキに危機を乗り越え、秩序の体現者なはずの担任が一番ひどい目に合わされるという、トボケて逆立ちした展開がなかなかに面白い。<br /> つーかアクが強すぎる面々と並ぶと、極めて好い人である校長はけっこう『どうでもいい人』にもなってしまって、なかなかキャラの味付けは難しいな……と思わされる。</p> <p> 話の軸足が久々に友引高校に戻り、ドタバタ騒がしい高校生活がどんなものだったか、改めて掘り下げる……にしては、色んな意味で治安最悪のエピソードでもある。<br /> 罰則貰うだけの大暴れを確かにしているのに、不服の牙を突き立ててさらなるメチャクチャに踏み出す学生連中も、そんな輩に負けじとヤバめな偏見投げつけて、迷推理で更に場を混乱させる温泉マークも、まぁ大概な人間ではある。<br /> 令和の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B3%A5%F3%A5%D7%A5%E9%A5%A4%A5%A2%A5%F3%A5%B9">コンプライアンス</a>意識だと、一部女生徒に教師が投げかけてはいけない妄念がモリッと表に出ていたが、そういう不謹慎も引っくるめて楽しめるのが”うる星”の良いところではあって、心地よいロクでもなさだった。<br /> 高橋先生、『迫られて椿の花が畳にポトリ……』的な表現好きよねぇ……後続作でも良く出てくるので、時代を経てある種の風物にまで昇華された感じがある。</p> <p> </p> <p> Bパートは宇宙由来の超ろくでなしアイテムが大暴れして、あらゆる場所がメチャクチャになっていくお話。<br /> 宇宙人組がまーったく友引町の大混乱を知らぬ存ぜぬ、自分たちの見える範囲でお片付けして一件落着……みてーな面して、なーんも解決しないままドササーっと終わっていくのが、勢い良くてナイスだった。<br /> 投げっぱなしのナンセンスを巧く使えているのが、コメディとしての高橋作品の強みだと思っているが、今回のすっとぼけた展開はそういう味わいが、濃く出ていたのではないかと思う。<br /> それにしたってアイツラ、マジで人間どもに引き起こした混乱欠片も興味なくて、久々に宇宙人らしさを感じたよ……。</p> <p> 地上の大惨事をよそに、幼馴染コンビは仲良くキャッキャウフフしており、ラムラン大好き人間としては喜べば良いものか、ロクでもなさを嘆けば良いのか、なかなか判断に迷いもした。<br /> 妙にテンちゃんがプニプニしててかわいいのも含めて、ランちゃん周辺の過剰なブリっ子イズムが大量摂取できる回でもあって、どんだけヒドいことが起きててもランちゃんのそういう部分を、口にねじ込まれると幸せになってしまう自分の業を感じる。<br /> 何しろ人数が多いので、どのキャラに出番が回るかも難しい座組なのだが、こうして日当たりいいところに出てくるとやっぱ大変可愛く、ラムと仲良くワーワーやってて嬉しかった。<br /> ランちゃんは単独でも良いけど、やっぱラム相手に仲良し悪友っぷりを見せつけてるのが最高なんだよなぁ……20年早かったきらら時空。</p> <p> 今回は混乱をもたらすタネが、ヤバイ発言を切り貼りして増殖する宇宙植物であり、MADテープ文化のような面白さもあった。<br /> あの頃はスーパーオタク共の密やかな楽しみだったものが、時の流れとともに結構一般的なネタになり、あるいは色んな具材をぶち込まれて悪魔進化を果たしている様子を見ると、やはり先駆者としての凄みを改めて感じてしまう。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%FC%CC%B4">淫夢</a>だの猫<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DF%A1%BC%A5%E0">ミーム</a>だの、このエピソードでコスられた面白さを継承・変化させたネタは全然現役で元気であり、というか<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A5%BF%A5%AF%CA%B8%B2%BD">オタク文化</a>の一般化に乗っかってよりデカくもなっている。<br /> ある種のタイムカプセルとして、過去から今を<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%A9%C2%CE%BB%EB">立体視</a>する助けになるのは、やっぱこの作品が内側に取り込みエピソードへと消化した、当時の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%C3%A5%D7%A5%AB%A5%EB%A5%C1%A5%E3%A1%BC">ポップカルチャー</a>への視線が別格に鋭かったからこそかなと思う。<br /> あんまモダナイズせず当時の味わいを大事にしていることで、結果としてコンテンポラリーな味が出ているのは面白いところだ。</p> <p> </p> <p> というわけで、久々に”うる星”の不謹慎で暴力的な所がゴリゴリ前に出る回でした。<br /> いやー……久々に飲み干すと、これもなかなか良いなッ!<br /> こっからどういうコースを組み立てて、令和うる星最後の1クールを味あわせてくれるのか。<br /> そこら辺の腕前にも期待しつつ、次週を楽しく待ちたいと思います!</p> Lastbreath 葬送のフリーレン:第28話『また会ったときに 恥ずかしいからね』感想 hatenablog://entry/6801883189092874931 2024-03-23T06:54:35+09:00 2024-03-23T09:39:23+09:00 かくして、旅は続く。 北へ進む許可を得るための一級魔法試験にも無事合格し、出会いと別れを繰り返しながら、永生者と仲間たちは天国を目指す。 その『またね』が叶わぬこともあると深く知りつつ、あっさりと今生の別れを果たす瞼の奥に、もういない君の顔が浮かぶ。 未来へ歩みを進めるほどに、過ぎ去った思い出が生き生きと蘇る旅路を越えて、それぞれの物語が動き出す。 フリーレンアニメ、旅立ちの最終回である。 放送後半を長く引っ張った一級試験も、フィナーレはごくごくあっさりしたもので、ゼーリエ様がザクザク合否を出して残りの時間は、じっくりと旅立ちの叙情を描いてきた。 スゲー作画でバリバリバトルしつつ、戦いはあくま… <p> かくして、旅は続く。<br /> 北へ進む許可を得るための一級魔法試験にも無事合格し、出会いと別れを繰り返しながら、永生者と仲間たちは天国を目指す。<br /> その『またね』が叶わぬこともあると深く知りつつ、あっさりと今生の別れを果たす瞼の奥に、もういない君の顔が浮かぶ。<br /> 未来へ歩みを進めるほどに、過ぎ去った思い出が生き生きと蘇る旅路を越えて、それぞれの物語が動き出す。<br /> フリーレンアニメ、旅立ちの最終回である。</p> <p> 放送後半を長く引っ張った一級試験も、フィナーレはごくごくあっさりしたもので、ゼーリエ様がザクザク合否を出して残りの時間は、じっくりと旅立ちの叙情を描いてきた。<br /> スゲー作画でバリバリバトルしつつ、戦いはあくまで物語の添え物、重要なのは時の定めと綾なす人生……という作品の持つ味わいを、最後まで大事にしてくれた語り口かと思う。<br /> ありふれて下らないと世界が断じる、生活に密接したよしなし事をこそ何より<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%BA%A4%A4">尊い</a>と寿ぐ作風は、細やかな仕草や風景を丁寧に描ききる筆致に支えられていたのだなぁと、冒頭フリーレンのあくびを見て思う。<br /> 第1話、未だ後悔を知らざる彼女が、勇者との最後の逢引に赴く前に見せていた表情をここでリフレインし、28話分彼女を知った今の僕らがどう感じるか、静かに確かめさせてくれるような、粋な出だしであった。<br /> フリーレンは子ども通り越して、動物めいた純粋さを仕草に宿す所が可愛いと思うね、俺は。</p> <p> </p> <p> ゼーリエ様の人間診断はサクサク進むが、デンケンとヴィ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>が二人共世界最強の魔道士の力を値踏みし、勝てないなりに戦い方を探ってしまう業を背負っているのが、少し悲しかった。<br /> バクバククッキー食べる孫(ついこの前出会った)横において述懐されるように、デンケンにとって権力も戦いも二の次、本当に欲しかった妻との幸せな日々はとっくに壊れてしまっている。<br /> 軍属に慣れ親しんだ身の上が、思わず探ってしまう『相手を殺す可能性』も、本来いらない習性だったのだと思う。<br /> 愛妻の墓参りという、あまりにロマンティックな夢のために命懸けの試練に挑んだデンケンは、それを通じて憧れの大魔道士と直接出会い、魔法が楽しいものであることを”思い出す”。<br /> ”知る”でないということは、元々デンケンは魔法とそういう向き合い方をしていて、戦塵に汚れて忘れかけていた……ということだ。<br /> そういう年輪全部ひっくるめて、ゼーリエ様が合格出すのは好きだ。<br /> 最後の特大デレで大いにバレたが、あの人人間好きすぎなんだよなぁ……。</p> <p> 作中示された、『魔法とはイメージであり、人生をかけた祈りである』というテーゼに基づけば、それを『好きも嫌いもない、ただの道具』と言い切れるヴィ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>は、だいぶ乾いた人生を送っているように思う。<br /> しかしババァ呼ばわりに迷わず手助け、最後の最後にあざとさが過ぎる善良さを見ていると、道具でしかない魔法にプライドはなくとも、それを用いて闘ってきた己の在り方には、いささかの愛があるように思う。<br /> 『勇者、遂に斃れる』の一報を聞き及び、好き勝手絶頂に村焼き始めたクソ魔族をぶっ殺して、故郷の村を守る。<br /> 青雲の志は返り血に汚れたが、しかし誰を殺すべきなのか最後まで迷い判断する理性と、ブツクサボヤきつつも戦友となったものを見捨てない強さは、傭兵暮らしにも煤けていない。</p> <p> 歴<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%CB%BD%F1">史書</a>に残る偉業ではなく、日常に積み重なる下らない親切をこそ、勇者の伝説と大事に抱えて、ヴィ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>はここまで流れ着いた。<br /> そしてこの試験で得たもの、見つけたもの、思い出したものをひっそり大事にして、彼だけの物語へと新たに進み出していく。<br /> 別に旅を同じくしなくても、触れ合った時間が短くても、そういう風に色んな人にそれぞれの時の刻みがあり、そこから生まれる物語があり、交わって生まれた何かには、大きな意味がある。<br /> お話がずっと大事に追いかけてきたものを、別れ際もう一度丁寧に思い返す、いい最終回だった。<br /> ヴィ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>がしみじみ偉大と胸に刻んだ、ちっぽけで身近な勇者の伝説が、彼の生き様を継いで民間魔法を収集してきたフリーレンの旅路と、豊かに重なり合うの良かったな……。</p> <p> </p> <p> そしてエルフの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%ED%A5%EA%A5%D0%A5%D0%A5%A1">ロリババァ</a>に狂わされた、かつての紅顔の美青年は、悪名を以て歴史に名を刻まんと大魔道士に勝負を挑む。<br /> 『戦いだけに人生を捧げてきた、不器用な男』という要素は、それとの付き合い方を人生使ってなんとか身につけてきたデンケンやヴィ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>と同じなのだが、レルネンはお師匠様への純愛が過ぎた上に、分かりにくい発破を真正面から受け取っちゃったから……。<br /> 『不甲斐ない弟子でも、なんとか最高なお師匠様の名前を歴史に刻まないとッ!』と思い詰める真っ直ぐさ、しわくちゃのジジイになってもピュアさが削れてなくて、めっちゃ萌えるぜ。<br /> この思い詰め方をいなせるほどに、フリーレンの実力が卓越してるから気楽に萌えられもするんだが、魔族をぶっ殺すために鍛え上げてきた力が誰かの人生を受け止めるためのブランケットにもなるのは、このお話らしい優しさだ。</p> <p> 子どものまんま長く生きてしまったのは師匠も同じで、極めて分かりにくい愛情を弟子に注ぎ、ムッツリ顔で『失敗作』と暮らす下らない日々がとても楽しかったのだと、ゼーリエは素直に伝えられない。<br /> 目の前にある大事なものに、相手が棺に入るまで気付けなかったからこそフリーレンは、物語の最初で(だけ)大粒の涙を流した。<br /> かつての自分に、あるいは素直でいる大事さを教えてくれた彼女の勇者に、どこか似ている老成した少年にゼーリエの本意を手渡したのは、二度目の後悔はゴメンだという思いが、どっかにあるのだろう。<br /> かつて自分の目の前を通り過ぎていった思い出を、ただ消え去っていく幻と手放すのではなくて、今目の前にある物語をより良く先に進めていくための鍵として、しっかり活かす。<br /> そのために必要な共感と知恵が、やっぱり人間と魔族を分ける決め手なんだと思う。</p> <p> </p> <p> 平和をイメージできなかったゼーリエであるが、自分を置き去りにすぐ死ぬ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%F3%A5%B3%A5%C4">ポンコツ</a>共が個性と尊厳をもった一個の生命であり、自分もそれと寄り添いながら生きているのだということは、しっかりイメージ出来たのだ。<br /> だから彼女の弟子、弟子の弟子は長い時を経て世界を変え、平和をもたらす奇跡にたどり着けた。<br /> 魔法に浪漫を取り戻そうと歴史の表舞台に顔を出した大魔術師が、一番強く夢見た魔法は既に叶い続けていて、それは魔王を倒してしまったフリーレンも同じかなと感じる。<br /> ある意味、永生者の余生なんだなこの時代……。</p> <p> それでも人生という物語は続き、歩幅の合わない永遠をフリーレンは厭わない。<br /> 全ての願いが叶う特権を、フローラルな洗濯魔法に使ってしまった弟子の頭を撫でくり撫でくり、笑いながら明日へと進み出していく。<br /> その出会いも別れも、下らないと誰かが嗤う人生のすべてが花のように輝いていると、誰かに教えてもらったから、思い出を愛しく葬送していく旅はいつだって、新しい喜びへと開かれている。<br /> そうして進んだ一歩が、誰かの伝説を芽吹かせていくことは、勇者一行の物語に憧れてここまで自分を運んできた、デンケンやヴィ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>の生き方が良く伝えている。<br /> そういう風に、連祷のごとく繋がっていく数多の人生をとても美しく描いての最終回は、凄くこのお話らしくて良かった。<br /> 願わくば是非、旅路の続きをアニメで見たいものだ。<br /> そんな祈りを彼方に手渡しつつ、今はお疲れ様とありがとうとを。<br /> とても素晴らしいアニメで、優れたアニメ化でした。</p> <p> </p> <p> </p> <p> というわけで、葬送のフリーレンのアニメが終わった。<br /> 大変良かった。<br /> 原作が持つ独特の人生観、死生観を落ち着いた筆致でアニメに焼き付け、作中世界が持っている豊かで美しい風景をたっぷりと、アニメだからこその色彩と匂いで描いてくれた。<br /> 極めてリッチな筆先で描かれる、ファンタジックな風景を四季折々、景色豊かにたっぷり食べさせてくれて、毎週ありえないほどの眼福でした。<br /> ”下らない”日々の思い出こそを大事にする作風と、目の前に広がる情景から説得力を作る演出がしっかり噛み合って、背景がよく喋る作品になったのは、そういうの大好き人間としては大変ありがたかった。<br /> こんくらいのレベルで、アニメに再構築された美しい自然を延々と摂取できるチャンスがあってくれると、生き延びられて嬉しい。</p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A6%A5%E9">アウラ</a>一派との激闘、あるいは一級魔法試験で作品の潮目が変わりつつも、根本にあるのは過去と響き合う現在、思い出に照らされて眩しい未来であり続けた。<br /> 死と時間に無情に引き裂かれていくように思える、虚しき人の定めがしかし、愛と祈りに満ちて全てを超えていけるほど眩しいものだと、様々な出来事、様々な出会い、様々な人々から描く。<br /> 人間讃歌の綴織のような作りを、どっか達観した透明感を維持し続ける画風と芝居、そこに生きる喜びを宿す細やかな配慮が支えて、静謐なんだけどスケールがデカい、独特の伽藍が組み上がっていました。<br /> 年経た賢者たるフリーレンが頑是ない<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%B8%BD%F7">童女</a>の趣を残し、フェルンにお世話されながら踏み出した新たな旅路が、楽しく喜びに満ちたものであると色んな場面で感じられたのが、大変良かったです。<br /> 旅物語として色んな景色を見て、色んな出来事が起こって飽きない事が、フリーレンがその旅に見つけ大事にしているものの意味を自然と気づかせてくれて、しみじみワクワク出来たのはありがたかったね。</p> <p> </p> <p> その旅は人類の宿敵である魔族との、激しい戦いの記録でもある。<br /> 要所要所でスーパーバトル作画が暴れ狂い、いい具合にスパイス効かせてマッタリだけで落ち着かせなかったのは。アニメ独自の味わいで非常に良かったです。<br /> 魔族という歪な鏡があればこそ、同じように達観し同じように永遠を生きるフリーレンがどうして”人間”なのか、より鮮明に見えた感じもある。<br /> 魔王を倒してなおその脅威が残る、厳しい世界を舞台とすることで、フリーレンだけが魔族と闘ったわけでも、戦いという生き様を誇り高く駆け抜けたわけでもないと、作品の横幅を確保できたのも良かった。<br /> 大魔法使いフリーレンが、どんだけの規格外かを作画の説得力で伝えてくれた、複製体戦の大迫力、ファンタジックな想像力は、やっぱアニメーションだからこその面白さに満ちてて素晴らしかった。</p> <p> とはいえ戦いの中にも生きる意味を忘れず、というか戦えばこそ照らされるものを大事にしつつ、作品の特色である静かな温かさを積み上げていってくれたのは、凄く良かったです。<br /> この落ち着き、アニメという動きと音がついて派手になりがちなメディアだと取りこぼされそうな部分だったのですが、徹底的にハイクオリティに勝負し続けることで、ともすれば原作以上に研ぎ澄まされた形で描かれたと思います。<br /> まーあまりに質が高すぎた結果、原作が持つどっか<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DD%A5%F3%A5%B3%A5%C4">ポンコツ</a>なトボケが薄れた感じもあるが、張り詰めすぎないチャーミングさはしっかり随所に溢れていて、ラヴィーネ&カンネもイチャイチャしたおして、大変良かった。<br /> 感情表現が全体的に控えめな作風の中で、アイツラだけスロットルの開け方がきららだからな……その異質もまた良しッ!</p> <p> あとアニメになってみると、ヒンメル無限の愛がとんでもない破壊力になっていて、『そ、そらアンタは勇者だぜ……』と黙っちまう迫力があった。<br /> あいっっつマジ純愛なんだけどッ!<br /> 回想と現実がシームレスに重なる語り口でもって、花見ても雲見てもヒンメルを思い出す状況になったこと、その思い出が大変美しい色合いで描かれ続けることで、勇者の愛を天地が祝福し続けているような味わいがあったの、ロマンティックで良かった。<br /> もはや今生で報いることが出来ない後悔を、追いかければこそフリーレンは天国への旅を続けているわけで、その起因たるヒンメルをいっとう好ましく、凄まじい男と描けていたの、大変良かったです。</p> <p> </p> <p> というわけで、大変素晴らしいアニメをたっぷりと味あわせてもらい、ありがたい限りでした。<br /> 初手四連発、金ロー枠で思い切りぶっ放すという大胆な戦術もきっちりハマり、盛り上がった力こぶに負けない大ホームランを、盛大にぶち<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%DE%A4%B9">かます</a>快作でした。<br /> こんだけ盛大に打ち上がると是非、旅の続きをアニメで見たくなるわけですが……齋藤監督、ぼざろも場外までぶっ飛ばしちまったからな……。</p> <p> 定かならぬ未来に楽しい夢を見つつ、今はこうして素晴らしいアニメを届けてくれたことに感謝を。<br /> とても楽しく、感じ入るものの多いアニメでした。<br /> ありがとう!!</p> Lastbreath ダンジョン飯:第12話『炎竜2』感想 hatenablog://entry/6801883189092734862 2024-03-22T15:32:04+09:00 2024-03-22T15:41:46+09:00 旅の目的だった火竜は倒され、しかしファリンは戻らない。 禁忌を侵してでも取り戻したい願いを目の前に、冒険者たちが選んだ道は。 ファリンの帰還とひとときの安らぎを描く、ダンジョン飯アニメ第12話である。 前回のハードバトルが落ち着いて、しかし緊迫感としては勝るとも劣らない、黒魔術を使ってでもファリンを蘇らせる決断を果たしたライオス一行。 色々不穏さが匂う中で、生きてるからこそ腹が減り共に笑える幸せが描かれ、ひとまずは幸せな結末……とならんのだよこの2クールアニメはねッ! 一体こっからどういう急転直下で”ダンジョン飯”が続いていくのか、アニメで始めて体験できる人たちが嬉しくもあるが、俺は俺で漫画で… <p> 旅の目的だった火竜は倒され、しかしファリンは戻らない。<br /> 禁忌を侵してでも取り戻したい願いを目の前に、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%C1%B8%B1%BC%D4">冒険者</a>たちが選んだ道は。<br /> ファリンの帰還とひとときの安らぎを描く、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>アニメ第12話である。</p> <p> 前回のハードバトルが落ち着いて、しかし緊迫感としては勝るとも劣らない、黒魔術を使ってでもファリンを蘇らせる決断を果たしたライオス一行。<br /> 色々不穏さが匂う中で、生きてるからこそ腹が減り共に笑える幸せが描かれ、ひとまずは幸せな結末……とならんのだよこの2クールアニメはねッ!<br /> 一体こっからどういう急転直下で”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>”が続いていくのか、アニメで始めて体験できる人たちが嬉しくもあるが、俺は俺で漫画でたっぷり楽しんだもんねー!<br /> 誰と闘ってるのか解んない牽制合戦は横に置いて、物語開始時からの目的であるファリン復活になんとかたどり着き、皆で食卓を囲めた満足感はやはり大きい。<br /> 妙に気合が入った作画で描かれる、ファリマルキャフフシーンの切れ味も鋭かったしな……生きてるってことはエッチだッ!(唐突に叫ぶ人)</p> <p> </p> <p> 元々マルシルが情に篤いエルフであることは示されてきたが、尋常なやり方では復活できないファリンを目の当たりにして今回、涙を拭いて覚悟を決めることになる。<br /> 生命の定めを捻じ曲げる古代の禁呪は、付け焼き刃で効果を発揮するものではないわけで、どんくさエルフが心の奥底に抱えた闇の奥、地道な研究を積み重ねた結果として悍ましき蘇生はなされることになる。<br /> 『魔法に善悪なし』と彼女は言うが、果たしてそれが本当なのかは、今後迷宮の深奥に更に潜っていく中で問われ、試されることにもなる。<br /> 道理や条理を捻じ曲げてでも、親しい人を奪っていく時の定めを捻じ曲げたかった彼女の影が、これから立ちふさがる敵の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%F3%A4%D0%A4%BB">かんばせ</a>と良く似ていることを、一度物語を読み通している立場からは感じ取る。</p> <p> 『命懸けの迷宮に一緒に潜っているのに、思いの外お互いを知らない』というのはライオスパーティの特徴で、どんな過去が自分を形作り、何を譲れず諦められないのか、旅の目的が果たされたように思えるここに至ってなお、まだまだ見えきらない。<br /> マルシルが禁忌に手を染めても、死を否定する術式に踏み入った裏にあるものを探る意味でも、旅はここでは終わらない。<br /> つまりはファリン復活は揺るがされ奪い取られること前提の、幻の幸福……なのだが、ここまでたどり着くまでの奮闘とか、無垢で優しい生きてるファリンの姿とか、色んなモノがそれを嘘ではないと、思わせてくる魅力に満ちている。</p> <p> 幻ではなく、生きていればこそ腹も減るし、呼吸するために気道から血を追い出さなければいけない。<br /> ファリンが血に溺れた状態から自律呼吸能力を手に入れて、赤い血に塗れていたのを産湯に清められて人の形になっていくのは、この復活がある種の再誕であることを示してもいる。<br /> 死のアギトに飲み込まれ、一度忘却の無明に降りたファリンは、無邪気で幼い。<br /> そんな彼女が手に入れた新しい力は、人の範疇をはみ出す禁呪の反動なのか、奇跡を掴んだ祝福なのか。<br /> お風呂に入ってたっぷり食べて、幸せと抱き合ってぐっすり眠る。<br /> そんな人間らしい幸せを描いた後に、物語はそんな問いかけへ雪崩込んでもいくだろう。</p> <p> </p> <p> そんな激変は先の話として、今は生きている喜びを堪能するタイミングである。<br /> 先週”食材”として既に美味そうオーラを放っていたドラゴンステーキが、センシの腕前によって見事なごちそうに変わり、祝宴を豊かに飾っているのは大変良かった。<br /> 爆発事故がつきものなドラゴン炭鉱においては、未熟な炭鉱夫でしかないセンシが、危機をファリンの助けで乗り切った後は見事なシェフに立場を変えているのが、なかなか面白い描写だった。<br /> 呪われし蘇生を切り出す時、今までの親しみやすかったドジっ子の顔を投げ捨て、魔女の如き闇を見せてるマルシルの背後で、”歯のある女陰(ヴァギナ・デンタタ)”のようにガッポリ大穴を開けていたドラゴンの遺骸は、爆裂する鉱山となりパン焼き釜となり、食材それ自体になっていく。<br /> 一つの具象を様々に解釈し、あるいは活用できるのは魔術の基本であり、道具と言葉と想像力を使う生物たる人間の強みでもあるのだろう。</p> <p> 命を奪ってくる敵が食材となり、命を繋ぐ糧にもなる不思議は”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>”の真ん中にも据えられていて、ファリン復活前の”下ごしらえ”として、解剖学の知識を動員した骨並べが描かれるのもなかなか面白かった。<br /> マルシルの医学とライオスの動物<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%B8%C2%D6%B3%D8">生態学</a>、それぞれ対象にするものは違えどまさしく知は力であり、ヤバイ禁呪に挑む前段階のはずなのに、楽しいパズルゲームの様相も混じってくる。<br /> 『どんだけシリアスで重たいものに挑んでも、人間が生きている以上腹は減ってしまうものだし、笑いも生まれてしまう』という、英明なコメディへの理解はこの作品の根本だろう。</p> <p> 復活を成し遂げ新たにパーティに加わったファリンも、そんな”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>”らしさに大きく拓けたキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターであり、兄が語る大冒険に目を輝かせ、物怖じせずに魔物食にもかぶりつく。<br /> 色々ぶっ壊れてるライオスが、ヤバさ気にせず禁呪にもOK出すし、バリバリここまでの旅路を語っちゃうブレーキのなさ、彼らしくて面白かった。<br /> そういう非人間的な部分と同じくらい、ファリンを追いかけているときには秘められていた兄としての顔が、蘇った温もりに抑えきれず元気だったのも、また良い。<br /> 色々ぶっ壊れた魔物マニアではあるんだが、間違いなく妹を深く<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%A6%A4%B9%A4%EB%BF%CD">愛する人</a>情家でもあって、そうじゃなきゃ命懸けで迷宮の奥深くまで分け入って、自分の足を竜に食わせたりはしないんだよなぁ……。<br /> 背丈が伸びても変わらない、トンチキ兄ちゃんとぽわぽわ妹の情景が暖かに感じられて、『色々ヤバそうではあるけど、それにしたって良いもんだ……』と思えたのは、大変良かった。<br /> この暖かな手応えが、今後ライオス達の旅を追いかける時迷わずにすむ、大事な大事な灯りになっていくからなぁ……。</p> <p> </p> <p> </p> <p> というわけで、激闘を終えた後の一苦労と幸せな時間を描く、第1クールクライマックスその2でした。<br /> 『蘇ったファリンは最高キュートなぽわぽわ女子なんですぅぅう! 生き返ったことは間違いでもなんでもないんですぅうう~~!!!』と、気合の入った演出が全力で語りかけてくれて、大変良かった。<br /> そう、この安心も幸福も嘘じゃない。</p> <p> 嘘じゃないんだが、それだけを正しいと出来るほどシンプルなルールで迷宮の中も外も動いてはいなくて、では一体どんなふうなレシピで世界が出来ているのかを、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%C1%B8%B1%BC%D4">冒険者</a>たちはこの後にこそ探っていかなければいけない。<br /> 過酷なる新たな旅立ちをアニメがどう描くのか、来週も大変楽しみです!<br /><br /></p> <p> </p> <p><br /><strong>・補記 <em>”</em>見よ、動く音があり、骨と骨が集まって相つらなった。</strong><br /><strong>わたしが見ていると、その上に筋ができ、肉が生じ、皮がこれをおおったが、息はその中になかった。”(<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%BC%A5%AD%A5%A8%A5%EB%BD%F1">エゼキエル書</a>第37章7-8節)</strong><br /> ファリン復活の前に、マルシルが骨をつなぐ描写があるのは<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%BC%A5%AD%A5%A8%A5%EB%BD%F1">エゼキエル書</a>第37章に重なるものを感じている。<br /> 分断された<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%B9%A5%E9%A5%A8%A5%EB">イスラエル</a>の復活が死者の復活に重ねて描かれているあの記述と、最終的にこのお話が行き着いた結末を思うと、あながち妄想でもない気がする。</p> Lastbreath 蓬草春風に揺れる -2024年1月期アニメ 総評&ベストエピソード- hatenablog://entry/6801883189092684912 2024-03-22T11:12:46+09:00 2024-03-26T15:59:18+09:00 ・はじめに ・異修羅 ・葬送のフリーレン ・ゆびさきと恋々 ・はじめに この記事は、2024年1~3月期に僕が見たアニメ、見終えたアニメを総論し、ベストエピソードを選出していく記事です。 各話で感想を書いていくと、どうしてもトータルどうだったかを書き記す場所がないし、あえて『最高の一話』を選ぶことで、作品に僕が感じた共鳴とかを浮き彫りにできるかな、と思い、やってみることにしました。 作品が最終話を迎えるたびに、ここに感想が増えていきますので、よろしくご確認を。 ・異修羅 ベストエピソード:第11話『落日の時』 lastbreath.hatenablog.com かなりヘンテコなアニメであり、そ… <ul class="table-of-contents"> <li><a href="#はじめに">・はじめに</a></li> <li><a href="#異修羅">・異修羅</a></li> <li><a href="#葬送のフリーレン">・葬送のフリーレン</a></li> <li><a href="#ゆびさきと恋々">・ゆびさきと恋々</a></li> </ul> <h4 id="はじめに">・はじめに</h4> <p> この記事は、2024年1~3月期に僕が見たアニメ、見終えたアニメを総論し、ベストエピソードを選出していく記事です。<br /> 各話で感想を書いていくと、どうしてもトータルどうだったかを書き記す場所がないし、あえて『最高の一話』を選ぶことで、作品に僕が感じた共鳴とかを浮き彫りにできるかな、と思い、やってみることにしました。<br /> 作品が最終話を迎えるたびに、ここに感想が増えていきますので、よろしくご確認を。<br /><br /><br /><br /><br /><br /></p> <h4 id="異修羅">・異修羅</h4> <p> ベストエピソード:第11話『落日の時』</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Flastbreath.hatenablog.com%2Fentry%2F2024%2F03%2F14%2F072127" title="異修羅:第11話『落日の時』感想 - イマワノキワ" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://lastbreath.hatenablog.com/entry/2024/03/14/072127">lastbreath.hatenablog.com</a></cite></p> <p> かなりヘンテコなアニメであり、それが懐かしく心地良くもあった。<br /> 出だしから血みどろの悪趣味とゴア全開、前半六話はキャラ紹介にあてる思い切りは、口当たりが良く親切でなければスタートラインにすら立てない、コンテンツ飽和時代にはあまりにソリッドな作りであり……しかし”深夜アニメ”なるものは、そもそもそういう味だった気もしている。<br /> まぁまぁ近めの作品だと”ゲキドル”や”BLUE REFLECTION ”に感じた、『ついてこれるやつだけついてこい!』と胸を張って走り抜けていく、バズや商業的成功からは遠い場所に自分たちを追い立てるスタイルは、僕にとっては馴染みの味だ。<br /> 垂れ流しにされる専門用語、補助線がない世界設定。<br /> 超高速度で展開される、多すぎ登場人物たちの人間模様。<br /> 多くの人にとって切り捨てる要因になるだろう、そのゴリッとした質感が僕のオタク顎にはちょうどよく、三ヶ月齧りついて楽しませてもらった。</p> <p> この異様な形態で展開する物語が何を言いたくて、クセの強いキャラとエピソードが乱舞するモザイクを通して、何が見えるのか。<br /> なかなか明瞭には告げてくれないからこそ、自分の目で読み並べ直す面白さがあって、今どきブログに長文直打ちでアニメ感想書いている人間としては、付き合い甲斐があるお話だったと思う。<br /> 自分としては弱者と強者の話であり、個と社会、中世と近世に関わる物語なのだろうと当たりをつけていたわけだが、新公国を巡る戦争が決着に近づくにつれ、そうして合わせたピントにお話のほうが近づいていってくれて、我が意を得た手応えがあった。<br /> 先を読めれば偉いというわけでも、初見で見抜ければ凄いというわけでもないけど『こうじゃないかな』と読むのはつまり『こうだと良いな』という期待の反射であり、欲しかった方向にお話が転がっていったのは、シンプルに嬉しい。<br /> ハチャメチャにチートを暴れさせているようでいて、非常に理性的かつ論理的に話を編んでいる(というか、チート比べはそういう視点がないと成立しない)作品なので、自分の噛みつき方と相性が良かったんだろうな、とは思う。</p> <p> そこら辺の見立てが叶ったと、ユノが辿り着いた弱者としての戦い方が教えているからこの話数……というわけではない。<br /> ロクデナシばかりのお話の中で、一番体重預けて見れたレグネジィくんが考えてた通りの末路で終わってくれた心地よさもあるし、なによりソウジロウとダカイの戦いに、刹那に全てを賭ける剣豪小説の心地よさが溢れていて、良いアクションだったのが大きい。<br /> 長い序章たるこの第一期、チート野郎同志が死力を尽くしてぶつかり合う場面は思いの外少なく、決着はあっさりだったが盗人と剣士、生き様の違う客人二人がそれぞれ手を尽くして勝ちに近づこうとするこの戦いは、未だ炸裂せざる作品の醍醐味を味わえたような、待ってましたの気持ちよさがあった。<br /> 後にトーナメントにたどり着き、十六匹選りすぐりの修羅共がぶつかり合う時に何が見れるかを、僕はじっくり楽しみに待っている。<br /> それを輝かせるために、長い序章に1クール使ったんだろうしね。<br /><br /></p> <p> </p> <p> </p> <h4 id="葬送のフリーレン"> <br /> <br />・葬送のフリーレン</h4> <p><br /> ベストエピソード:第11話『北側諸国の冬』</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Flastbreath.hatenablog.com%2Fentry%2F2023%2F11%2F18%2F065124" title="葬送のフリーレン:第11話『北側諸国の冬』感想 - イマワノキワ" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://lastbreath.hatenablog.com/entry/2023/11/18/065124">lastbreath.hatenablog.com</a></cite></p> <p> 世評としては<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A6%A5%E9">アウラ</a>戦なのだろうし、このアニメのバトル作画は魔法という超常の力が暴れまわった時何が生まれるのか、想像力の限りを尽くして描いてくれていて大変好きだ。<br /> ……なのだがベストと選ぶのはこの話数で、それはやっぱり僕が、背景のアニメとしてこの作品を見てきたからだ。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B3%A8%B6%F5%BB%F6">絵空事</a>だからこそ豊かに描ける、様々な絶景、四季の移ろい、山河の表情。<br /> アニメ見る時に何よりそれを食べたい人間なので、フリーレンのアニメが徹底してハイクオリティであり続けてくれたこと、その質へのこだわりが作品世界全部をしっかり支えていたことは、とにかくありがたい。<br /> 魔法が存在し、永生者が確かにそこにいる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%DB%C0%A4%B3%A6">異世界</a>に、しみじみと地道な人生の物語を綴っていく独特の画風をなじませるためには、こんくらい異様な気合が必要であり、それを乗りこなす手腕が問われる。<br /> なかなか難しい勝負だったと思うが、しっかりやりきって最後まで走り、アニメ独自の空気感を宿して追われたのは、大変凄いことだと思う。</p> <p> 高品質な画面がただそこに在るのではなく、ドラマと呼応しキャラの感情を照らしながら描かれる語り口も、緩むことなく的確に描かれ続けた。<br /> 流れ行く時、人と人の心の距離をレイアウトに反射しながら、静かに雄弁に活写し続ける演出方針も自分にはあっていて、絵を読み解く楽しさの在るアニメだったと思う。<br /> この話数は雪山の静けさが一つの補助線になってか、あまり自分を語らないフリーレンが世界や他者をどう受け取り、どう向き合っているのか、とても彼女らしい語り方で描かれている回だと思う。<br /> 作品に応じてどういう筆致を選び、そこに生きるキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターに相応しい描き方を作り上げていくか。<br /> アニメの基本なんだろうけど、やり切るのはとても難しいことを常時さらりとやり遂げているお話で、この話数はその手際がどういうものであるか、かなり鮮明に教えてくれている。<br /> やっぱそういう、創作者の静かな魔法が感じ取れるアニメが好きだから、このアニメが一つの豊かな魔導書として幕を閉じてくれたことに、大きな感謝を覚えている。<br /> しみじみいいアニメであり、素晴らしいアニメ化だった。<br /><br /></p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <h4 id="ゆびさきと恋々">・ゆびさきと恋々</h4> <p> ベストエピソード:第2話『恋々へ』</p> <p><iframe src="https://hatenablog-parts.com/embed?url=https%3A%2F%2Flastbreath.hatenablog.com%2Fentry%2F2024%2F01%2F14%2F145440" title="ゆびさきと恋々:第2話『恋々へ』感想 - イマワノキワ" class="embed-card embed-blogcard" scrolling="no" frameborder="0" style="display: block; width: 100%; height: 190px; max-width: 500px; margin: 10px 0px;" loading="lazy"></iframe><cite class="hatena-citation"><a href="https://lastbreath.hatenablog.com/entry/2024/01/14/145440">lastbreath.hatenablog.com</a></cite></p> <p> オタクを長めにやっていると、作品と向き合うコストを下げるべくある程度以上お話がたどるだろうコースを予測して、知ってる範疇に収めて衝撃を減らすようになってくる……と思う。<br /> 少なくとも自分はそうで、スタッフや制作会社の座組からキービジュアルの方向性、Webサイトのデザインから作品ジャンル、掲載雑誌、キャラデザの印象などなど、拾える情報を可能な限り集めて、できる限りの”読み”を組んだ後で視聴に挑むことになる。<br /> それは思い込みで作品をナメる行為であり、予断でもって実像を歪める危うい視聴なのだが、人間はつくづくイメージする動物であり、見知らぬものに出会うときは見知った形を当てはめた上で、類推と想像を駆使して自分に受け止めやすいよう、形を整えてから見始めることになる。</p> <p> このお話もまた、『少女漫画のド真ん中、トキメキ満載直球勝負』という予断(あるいは期待)を抱えて見始め……はやくもこの第2話で想定していたものが、全部上回られた感じになった。<br /> 第1話の段階で圧倒的な画面構成のセンス、まっすぐに主題を突き出してくる表現の強さ、繊細かつ美麗な色彩とライティングと、強い部分はたくさんあった。<br /> 主役である雪ちゃんのキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターは可愛らしく好感が持て、新しい出会いへの期待感はしっかり高められ、運命の出会いは極めてロマンティックに、”雪”というフェ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A5%C3%A5%B7%A5%E5">ティッシュ</a>を鮮烈に活かす形で描かれている。</p> <p> </p> <p> そういう”良い”を超えた衝撃を受けたのは、雪ちゃんが既にろう学校を出て自分を世に問う決意をしていて、ただ状況に流されるだけのお姫様ではないのだと、非常に鮮烈な表現で教えてくれたときだった。<br /> 僕の中にあった『まぁなんか、座ってても気持ちよくしてくれる都合の良い恋愛劇なんでしょ?』みたいなナメを、雪ちゃんは自分の言葉と表現でしっかりぶん殴ってきて、彼女なりに何かを高望みして飛び出さざるを得なかった、強い衝動があるのだと教えてくれた。<br /> そういう強さをしっかり出すとは正直思っておらず、しかし描かれてみればなるほど雪ちゃんはそういう人であり、だからこそ逸臣さんと響き合い恋になっていく話なわけで、主人公が空を求めてガラスの天国から抜け出したと教えてくれるこの話数が、膝を整えて作品と向き直させて貰う、とても大事な契機になった。<br /> こういう事前のナメをぶん殴り、『私はこういう話だ!』と叫び教えてくれる話数に出会えると、一段階作品との向き合い方が筋金入った感じになり、体重預けて見れるのでとてもありがたい。</p> <p> 物語としての強さや表現の鮮烈さでは、どの話数も大変に素晴らしい。<br /> もっとスローペースで進むかと思いきや、話の半分で一気に<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B4%A1%BC%A5%EB%A5%E9%A5%A4%A5%F3">ゴールライン</a>(それはスタートでしかないわけだが)を走り切る第6話とか、脇役とされる連中もまたこの作品世界の中で確かに生きているのだと、敬意を持って叙情的に描き切る第8話、第10話も良い。<br /> 第9話、恋人となった二人の距離が近づき触れ合い、セックスを視野に入れつつも極めて慎重に距離を取っていく場面での身体性の描き方なども、この真摯な物語特有の熱と質感に満ちていて素晴らしかった。<br /> 自分たちが辿り着いた物語を誇り、豊かに未来へ広げていく最終話も最高であるし、どれもこれも村野監督の圧倒的技量とセンスに満ち満ちて、極めて素晴らしいアニメだった。<br /> その上でこの話数がベストなのは、ナメたり殴りつけられたり、極めて個人的な一対一の取っ組み合いとしてアニメを見る行為を、僕が大事にしたいと常々思っていて、このブログはそういう個人的感想を刻みつけていく場所として、僕が選び作り上げた場だからだ。<br /> 僕にとって特別なものになってくれたこのアニメ、この話数を、僕はとても愛しく思っている。<br /> ありがとう、本当に素晴らしかった。</p> Lastbreath 2024年 4月期アニメ放送前短評 hatenablog://entry/6801883189092645663 2024-03-22T07:26:39+09:00 2024-03-22T07:26:39+09:00 三寒四温が体に染み入り、自律神経も踊り狂う昨今、皆さん如何お過ごしでしょうか。四半期に一度の時告げ鳥、アニメ新番組放送前短評のお時間がやってまいりました。活力萌え出る春にふさわしく、力入った新作が山盛り!ご視聴予定の一助に、新春の一笑いに、どうぞ活用ください。 — コバヤシ (@lastbreath0902) 2024年3月21日 ・終末トレインどこへいく?https://t.co/fRUfdZjEpq春番オリジナルアニメ一番槍は、終わった世界の電車旅!不穏なオーラをただよわせる世界設定と、噛み合ってない萌え萌え少女の組み合わせが、どういう化学反応を示すか。超実力派のスタッフ陣の、見事な手際に… <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja"><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%B0%B4%A8%BB%CD%B2%B9">三寒四温</a>が体に染み入り、自律神経も踊り狂う昨今、皆さん如何お過ごしでしょうか。<br />四半期に一度の時告げ鳥、アニメ新番組放送前短評のお時間がやってまいりました。<br />活力萌え出る春にふさわしく、力入った新作が山盛り!<br />ご視聴予定の一助に、新春の一笑いに、どうぞ活用ください。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770922501398556967?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・終末トレインどこへいく?<a href="https://t.co/fRUfdZjEpq">https://t.co/fRUfdZjEpq</a><br />春番オリジナルアニメ一番槍は、終わった世界の電車旅!<br />不穏なオーラをただよわせる世界設定と、噛み合ってない萌え萌え少女の組み合わせが、どういう化学反応を示すか。<br />超実力派のスタッフ陣の、見事な手際に溺れたい。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770922912716833089?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CF%B5%A4%C8%B9%E1%BF%C9%CE%C1">狼と香辛料</a> -merchant meets the wise wolf-<a href="https://t.co/CDjnLgf2gu">https://t.co/CDjnLgf2gu</a><br />賢狼、春の帰還…。<br />リメイクブームを背中に受けて、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%A4%A5%C8%A5%CE%A5%D9%A5%EB">ライトノベル</a>史に残る傑作が再アニメ化。<br />実は原作旧アニメ含め、ぜーんぜんタッチしてないお話なので、そんな自分にどう新しい挨拶してくれるのか、自然体で受け止めてみたい</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770923438846161035?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%E1%B7%F5%CD%F0%C9%F1">刀剣乱舞</a> 廻 -虚伝 燃ゆる本能寺-<a href="https://t.co/zWmNGjyk1o">https://t.co/zWmNGjyk1o</a><br />久々なTVとうらぶアニメは、なんと舞台が原案!?<br />市川監督とドメリカが”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%E1%B7%F5%CD%F0%C9%F1">刀剣乱舞</a>”をどう味付けしてくれるのか、ファンとしての楽しみは元気に弾んでいる。<br /><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%DC%C7%BD%BB%FB%A4%CE%CA%D1">本能寺の変</a>という、かなり美味しい歴史ネタの調理法にも期待が膨らむね。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770924098950230269?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%E6%A4%EB%A5%AD%A5%E3%A5%F3%A2%A4">ゆるキャン△</a> SEASON3<a href="https://t.co/ooQ7cjhzsH">https://t.co/ooQ7cjhzsH</a><br />あの映画流した後で、どーやってS3やんだよ!!<br />体制一新、新たな”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%E6%A4%EB%A5%AD%A5%E3%A5%F3">ゆるキャン</a>”はPVから受け取る雰囲気もだいぶ変わったが、作品の核にある良さを残し新たにしながら、自分だけの面白さをどう形にしていくか…結構難しい勝負になりそう。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770924568116425142?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・花野井くんと恋の病<a href="https://t.co/omC0ncMoFN">https://t.co/omC0ncMoFN</a><br />”阿波連さん”の牧野監督新作は、ド直球なアオハルラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>!<br />なにしろ”と”に❤️付いちゃってるからな…かなり真っ直ぐな球が飛んでくる予感がする。<br />ストレートなのは強いが、プレーンすぎると味がない。<br />このバランスをどう取るか、独自のクセに期待。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770925236126355727?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・変人のサラダボウル<a href="https://t.co/1hrcVfMXue">https://t.co/1hrcVfMXue</a><br /><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%DB%C0%A4%B3%A6">異世界</a>美少女×探偵×ドタバタ日常!<br />『いかにも<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%CE%A5%D9">ラノベ</a>っぺぇ味するな…』と思ってたら、平坂先生原作だった時の衝撃…。<br />カオスでありながらある程度コースが読める感じもあるが、気持ちよく裏切る第一話を心待ちにしたい。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770925846095712316?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・アストロノオト<a href="https://t.co/mqatQA7L58">https://t.co/mqatQA7L58</a><br />高松総監督が、またトンチキなオリジナルアニメに挑んでおるぞ!<br />やや味の濃いキャラデザからも、一筋縄ではいかないカオスが滲んでいるが、そこを一本筋通すまとまりで貫いてくれると、なかなか面白い塩梅になりそう。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770926287714210176?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・ガールズバンドクライ<a href="https://t.co/HU37aePvxd">https://t.co/HU37aePvxd</a><br />3Dガールズバンドアニメ戦国時代、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C5%EC%B1%C7">東映</a>の”答え”はこれやッ!<br />でけーバジェットが背後で揺れている感じが、期待も不安もブルブルさせてくれる。<br />酒井監督久々の監督作という意味でも、何が見れるか楽しみな作品。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770926841970458921?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A4%A5%C9%A5%EB%A5%DE%A5%B9%A5%BF%A1%BC%20%A5%B7%A5%E3%A5%A4%A5%CB%A1%BC%A5%AB%A5%E9%A1%BC%A5%BA">アイドルマスター シャイニーカラーズ</a><a href="https://t.co/v0UH9hxgYx">https://t.co/v0UH9hxgYx</a><br /><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A4%A5%DE%A5%B9">アイマス</a>アニメ三本の矢、最後の一矢が射抜くものとは。<br />先行上映組の声を漏れ聞くと、かなり独特の作りになっているっぽく、そのこだわりとクセがどう自分に響くか、実際に見届けて確かめたい。<br />え、芹沢さん出ねーの?</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770927431051837546?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・HIGHSPEED Étoile<a href="https://t.co/cyK0S5Rim9">https://t.co/cyK0S5Rim9</a><br />ぬるぬるスーツのナオンが、スーパーマシンで突っ走るぜ!<br />オタクの妄想を脳髄から直接取り出したような、色彩豊かな絵面がまず力強い。<br />レースへのこだわりは既にビリビリ感じ取れるので、地道なの強さがどんくらいあるのか、"ダシ”喰わせてくれや!</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770927899048124640?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・烏は主を選ばない<a href="https://t.co/zCFWHXauH1">https://t.co/zCFWHXauH1</a><br /><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%BB%BF%CD">鳥人</a>が住まう<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%DB%C0%A4%B3%A6">異世界</a>宮廷に、謀略の黒羽が舞い踊る。<br />近年躍進目覚ましいファンタジック史劇でも、かなりの大玉っぽいこの地味なお話。<br />蓋を開けたらどういう匂いがするのか、京極監督の新境地を感じ取りたい。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770928342776078839?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B6%A1%A6%A5%D5%A5%A1%A5%D6%A5%EB">ザ・ファブル</a><a href="https://t.co/WGg6gqISOY">https://t.co/WGg6gqISOY</a><br />大人気殺し屋生き直し日常アクションコメディが、ついにアニメ化────<br />原作が持っている独自のペーソスと乾き、トンチキながら必死に生きてる人々の可愛げを、高橋監督がどうアニメにしてくれるか────<br />見ものやな────</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770928884118426038?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・夜のクラゲは泳げない<a href="https://t.co/0ou6MTxC4u">https://t.co/0ou6MTxC4u</a><br />かかってこいやーアレやソレー!<br />競合相手が山とひしめく少女音楽ジャンルに、オリジナルで殴り込んできた意欲作。<br />夜という舞台、匿名な特別さをどう効かせて、自分たちだけの爪痕を刻んでくるのか。<br />竹下監督、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%B0%B2%E8%B9%A9%CB%BC">動画工房</a>…勝負だッ!</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770929566246125617?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・となりの妖怪さん<a href="https://t.co/LMPalj6awh">https://t.co/LMPalj6awh</a><br />味の濃いオリジナル作がひしめく春クールに、素朴な味わいの妖怪田舎暮らしが着弾ッ!<br />変にスタイリッシュにしない土の味そのまんまなデザインが、土俗妖怪というテーマと良い噛み合いを見せてる印象。<br />人間ドラマの骨がどんだけ太いかが、大事かな?</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770931255183396897?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・ひみつのアイプリ<a href="https://t.co/hoWb8oE64L">https://t.co/hoWb8oE64L</a><br />ミリマスも<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%F3%A5%C0%A5%E0">ガンダム</a>も”席”開けな…そこは”プリティ”の居場所なんだよッ!<br />数年の間隙を飛び越え、ついに帰ってきた女の子のキラキラドリーム!<br />かなりスタンダードな勝負仕掛けてる感じだが、シリーズ特有の”狂い”をどこで出すか…シラフを脱ぎ捨てろ!</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770932317852168260?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B6%C1%A4%B1%A1%AA%A5%E6%A1%BC%A5%D5%A5%A9%A5%CB%A5%A2%A5%E0">響け!ユーフォニアム</a>3【久美子3年生編】<a href="https://t.co/D6TPbtjYRg">https://t.co/D6TPbtjYRg</a><br />そして、最後の音楽が始まるのです。<br />待ちに待ったユーフォ最終章、夕方<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/NHK">NHK</a>アニメとして堂々の凱旋!<br />アンコンの仕上がりを見るだに何の不安もねーので、全身の毛穴で<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%FE%A5%A2%A5%CB">京アニ</a>の”今”を受け止める…それだけよッ!</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770932672648425914?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・じいさんばあさん若返る<a href="https://t.co/sadH1TMIIn">https://t.co/sadH1TMIIn</a><br />老夫婦の熟成された関係性を、フレッシュな肉体で新たに煮込む!<br />最強の美味しいどこ取りまったりラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>が、麻美子の声を得て襲いかかってきたぞ!<br />実際透明度の高い、仕上がりの良い原作なので、いいアニメにして欲しいね。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770933168427897096?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・ヴァンパイア男子寮<a href="https://t.co/7FlvuHCRRV">https://t.co/7FlvuHCRRV</a><br />クソオタクとしての俺の勘が言ってる…コイツはヤベーってなッ!<br />あまた怪作を生み出してきた、乙女×ヴァンパイアモノの最新鋭。<br />PVからも結構な<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>レ度合いが感じ取れるが、本編には更にギアを上げた勝負を期待したい。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770933556413595678?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・ブルー<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A1%BC%A5%AB%A5%A4%A5%D6">アーカイブ</a> The Animation<a href="https://t.co/Gb5bk9cVMs">https://t.co/Gb5bk9cVMs</a><br />透き通る世界を舞台に、銃弾と少女は踊る。<br />あっという間にソシャゲ界隈の覇者に成り上がった怪物が、満を持してのアニメ化。<br />高い期待度故にハードルも凄いが、軽やかに飛び越えてくれることを楽しみに待つ。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770933959846748319?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・忘却バッテリー<a href="https://t.co/Gk3zAWcThu">https://t.co/Gk3zAWcThu</a><br />ジャンプ+はアニメの畑、コイツも<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/MAPPA">MAPPA</a>でアニメ化だぁ!<br />そういう煽りを食らいそうな勢いの良さだが、王<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C6%BB%A5%B9%A5%DD">道スポ</a>根としてもトンチキコメディとしても、好きだしいい作品なので…誠実にアニメにしてもらいたいッ!<br /><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/MAPPA">MAPPA</a>働き過ぎだろ正直ッ!!!!</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770934364207272426?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・声優ラジオのウラオモテ<a href="https://t.co/opyv9IBRoo">https://t.co/opyv9IBRoo</a><br />生き馬の目を抜く声優業界、百合営業もガチになる!?<br />みっくともえしを引っ張ってきた時点で、かなり”勝ち”な電撃の声優<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%CE%A5%D9">ラノベ</a>、ついにアニメ化である。<br />バチって泥臭い部分が美味しそうなので、キラキラ百合と同じくらい、そっち頑張ってほしい。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770935087195988018?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B3%A4%CE%C1%C7%C0%B2%A4%E9%A4%B7%A4%A4%C0%A4%B3%A6%A4%CB%BD%CB%CA%A1%A4%F2%A1%AA">この素晴らしい世界に祝福を!</a>3<a href="https://t.co/RJqMz2Jon7">https://t.co/RJqMz2Jon7</a><br />爆炎スピンオフを間に挟み、満を持しての三期出陣。<br /><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%DB%C0%A4%B3%A6">異世界</a>転生コメディの金字塔が、金崎総監督の元ズズイと身を乗り出してきた。<br />おなじみの連中がわーわーヤッとるだけでで楽しいとは思うが、そこに甘えない挑戦をどんだけブッ込めるか。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770935623320313908?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・喧嘩独学<a href="https://t.co/e8lcJh7pyY">https://t.co/e8lcJh7pyY</a><br />韓国からやってきた配信者×ステゴロな異色作を、菱田監督がアニメ化。<br />ずいぶん<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>れた初期設定にパワーを感じるが、下手に煮込むと濃厚なヤダ味が出そうな作りでもある。<br />どうアク取るか、クセを生かすか、作り手の技量を堪能させて欲しい。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770936045565255757?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・時光<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%E5%CD%FD%BF%CD">代理人</a>Ⅱ<a href="https://t.co/GJM069QjRP">https://t.co/GJM069QjRP</a><br />きたぁああああ、初報からマジ待ってたぜ…。<br />凄まじい<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%EA%A5%D5%A5%CF%A5%F3%A5%AC%A1%BC">クリフハンガー</a>で引いた時空異能力ミステリの傑作が、やったぜ本邦でも二期公開!<br />謎も男男も最高の前作を、超える大暴れを叩きつけて欲しいよホントッ!!</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770936466014683461?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・ささやくように恋を唄う<a href="https://t.co/qYnRS1tp17">https://t.co/qYnRS1tp17</a><br /><a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%B4%B9%E7%C9%B1">百合姫</a>アニメの新作は、女がギターを弾くみたい?<br />少女音楽もりもりな春クールだが、恋に焦点を合わせた尖らせ方はかなり良い感じに思える。<br />もう一つの要素、音楽にどんだけ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%BC%A4%AF%C0%F8%A4%EC">深く潜れ</a>るかが、ただ甘いだけじゃないコクを出す決め手となるか。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770936902256152904?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%B4%CC%C7%A4%CE%BF%CF">鬼滅の刃</a> -柱稽古編-<a href="https://t.co/skmWZhWdBv">https://t.co/skmWZhWdBv</a><br />俺達ぁ”王者”だからよ…5月にゆっくり顔出すぜ!<br />すっかりバケモノコンテンツと化した鬼滅、寄せられる期待もトンデモナイと思うが、ぶっちゃけ一修行編でしかない柱稽古、みなぎる力みを受け止めきれるのかッ!?</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770937322688647417?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">という感じの、春の新番組です。<br />いやー…多いねッ!(率直な感想)<br />体力も気力も衰えを感じてきて、色々ままならない今の自分がこの大<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C4%C5%C7%C8">津波</a>を乗り越えられるのか、ぶっちゃけ不安です。<br />しかし面白そうな作品が目白押しなのは嬉しく、自分にできる限りを絞り出し、楽しく付き合っていきます!!</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1770937810897236257?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月21日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p> </p> Lastbreath 異修羅:第12話『修羅』感想 hatenablog://entry/6801883189092636513 2024-03-22T06:06:38+09:00 2024-03-22T20:17:01+09:00 かくして新魔王戦争は幕を閉じ、夢の骸が大地に転がる。 世にありふれた残酷の一片を足場に、生き延びた修羅たちが向かうは黄都。 アニメ異修羅、一期最終回である。 終わってみると『なげープロローグだったな!』という話ではあり、同時にこの世界に起こる悲惨のモデルケースとして、それを飲み込むより大きな無惨の啓示として、なかなか良いスタートだと感じた。 リチアを舞台に巻き起こった惨劇は、終わってみれば『まぁまぁマシな殺戮』として収まっていって、殺すべきを殺し生かすべきを残し、極めて政治的で経済的な決着が張り付いていく。 そうなるように始まった戦争であるし、タレンが街を巻き込み自分を焼いて辿り着こうとした結… <p> かくして新魔王戦争は幕を閉じ、夢の骸が大地に転がる。<br /> 世にありふれた残酷の一片を足場に、生き延びた修羅たちが向かうは黄都。<br /> アニメ異修羅、一期最終回である。</p> <p> 終わってみると『なげープロローグだったな!』という話ではあり、同時にこの世界に起こる悲惨のモデルケースとして、それを飲み込むより大きな無惨の啓示として、なかなか良いスタートだと感じた。<br /> リチアを舞台に巻き起こった惨劇は、終わってみれば『まぁまぁマシな殺戮』として収まっていって、殺すべきを殺し生かすべきを残し、極めて政治的で経済的な決着が張り付いていく。<br /> そうなるように始まった戦争であるし、タレンが街を巻き込み自分を焼いて辿り着こうとした結果にちゃんと収まったことが、黄都という巨獣(<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%F4%A5%A1%A5%A4%A5%A2%A5%B5%A5%F3">リヴァイアサン</a>)を動かす顔のないシステムがどれだけ強大か、しっかり示していたように思う。</p> <p> どんな理不尽も独力で跳ね除けられる、怪物的……に思える”個”をいかにして社会集団が飲み込み、無力な人間の群れが<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C4%EA">不定</a>形の同意の元、少しはマトモな人生を送れるよう世界を作っていくか。<br /> リチアはそのための大きなネズミ捕りであったし、今後展開されるトーナメントもまた、”修羅”と持ち上げられた勇者候補を潰し合わせ、突出した才無き普通の世の中を形作るための罠になるだろう。<br /> 無力であるがゆえに群れ、群れるがゆえに強い”人間”の社会が、世界のルール全部を一人で曲げてしまえた魔王が斃れた後、なお”人間的”であるためには不必要な、強さに特化した歪な”個”。<br /> 長い牙を持った猛獣のようでいて、数に駆り立てられる害獣でしかない勇者候補達がはたして、悪辣極まる人間社会を相手取りどこまで生き延び、我欲を通せるか……という、作品全体を測るスケールが一期最終話、暴かれる回でもあった。<br /> ともすれば主人公様の超絶チートでなんもかんもぶん回して、無双の快楽だけ与えてスカッと終了な転生モノを相対化し、新たに掘り下げる画角として、今回顕になった『強者を包囲する弱者の社会』はなかなかに面白い。<br /> より戦いが激化する中で何が描かれるのか、見届けたい気持ちも強くなった。<br /> つーか本番全然始まってねぇし、続いてくれなきゃ困るのよ、アニメからのニワカとしては……。</p> <p> </p> <p> というわけで冒頭、一番聞いてほしかったポイントにクゼさんが切り込んでくれて、大変良かった。<br /> ”冷たい星”に頼り切りの武力、不安定な軍備構造、全体的なヴィジョンの無さ。<br /> 魔王を自称し世界に牙を突き立てるには、あまりに不自然なポイントが目立つタレンの反乱であったが、自身と新公国を薪にして未来に不要なクズを減らす、壮大な害獣駆除計画であったのなら色々納得は行く。<br /> 終わってみれば戦後処理もスマートかつスムーズに、黄都が<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%B7%B6%BD%B9%F1">新興国</a>を併呑する形で収まっていきそうであるし、そうなるように戦争を編んで綺麗に決着させて、まこと警めのタレンは名将であった。<br /> 彼女が養子への私情引っくるめて自分を殺す道を選んだ背景には、死してなお残響する魔王の存在感を、黄都中心の新秩序から払底し、人間が人間らしく生きられる世界(これがユノが旅の中見つけた夢と重なっているのが、グロテスクでいい)への希求があるのだろう。<br /> 勇者が欲しい。<br /> その末期に、嘘はなかったと思う。</p> <p> 魔王殺しの勇者は、いったい誰か。<br /> 大きなフーダニットが物語の牽引役として秘されている以上、『魔王がいて、恐怖の中で死んでいくのが当たり前な時代』と『魔王がいなくなり、巨大な空白が世界に不安定を撒き散らしている時代』の実像がどの程度かは、この戦役が終わっても、正直自分には見えきらない。<br /> 巨大な獣の影を追うように、全体像を把握しきれないからこそ死したる魔王の凄みも高まり、その影響力が黄都を非常に狂わせている現状にも、納得がいくわけだが。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>れた反逆者として死んでいくタレンが、声望も愛も焼いてなお決着させなければいけないと思った、人が生きるには不安定すぎる魔王以降の世界。<br /> その実像がどんなもんかは今後……あるいはタレンの犠牲それ自体によって、一筆ずつリアリティを増していくのだろう。</p> <p> </p> <p> 例えばユノが己の支えと選び、例えばラナが無念の中で答えなく祈った、弱者が弱者のまま、人間が人間のまま生きていけれる、当たり前の世界。<br /> 何より重要ななずの人命がちゃんと尊重される社会は、非常に現代的なものであり、”魔王”なる遺物に未だ支配されている中世的世界においては、顧みられなくて当然ではある。<br /> 僕らが識る地球の歴史においても、無力な民草はみな生きたいと願いながら荒れ狂う暴力に無惨に殺されてきて、血のインクを涙で溶かし、悲憤と怨嗟に塗りたくりながらなんとか、社会契約の鎖で人間を縛った”当たり前”が到来している。<br /> そんな倫理的変化(”進歩”と言っていいのか、言うべきかは悩ましい)を<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%DB%C0%A4%B3%A6">異世界</a>転移してくる客人達は手渡してくれなかった世界は、極めて中世的に命が軽い。<br /> 正確には『俺の生命は重たいぞ!』と言いたいのなら、他人をぶった切るだけの強さを示す以外に手がないルールで動いている。<br /> それが魔王亡き後もそのままであり続けるのなら、個として怪物的な力をもつ修羅たちが新たな勇者として世界を蹂躙し、新たな支配を圧倒的多数の弱者に押し付けることにもなろう。<br /> 個が個として強すぎる限り、異修羅世界に近代は訪れないのだ。</p> <p> それはド許せぬと、薄墨のジェルキを筆頭に黄都を動かす官僚集団が腹に固めたからこそ、この戦役は起きたし、勇者決定トーナメントも開催される。<br /> 名誉や理想や戦乱の興奮を釣り書きにして、強すぎるバカを世界から排除するための大きな罠を駆動させて、数の暴力で世の中からはみ出す個を狩り殺す。<br /> 極めて民主的な殺戮が正義の名のもとに、幾度も展開していくだろう。<br /> その智謀と惨殺が”正義”たりうるのか、グロテスクに戦場の悲惨を描き続けてきたお話は無言で問うてくる。<br /> しかしこの世界においても人間は群れることでしか生き延びられない動物であり、高度な技術と社会システムを発達させ、人間らしく弱いまま強くなろうとしている有り様を見ていると、修羅のエゴを社会が食いつぶそうとするのは、むしろ自然な反応に思える。</p> <p> 殺したり奪ったり、愛したり守ったり。<br /> 修羅ごとに望むこと、出来ること、やろうとすることは違えど、それぞれが抱えた狭い祈りを強引に押し通し、世界を支配するルールとして運用しうる身勝手が、修羅には許されてしまう。<br /> その独善に自分でブレーキをかけれないほど、抱えたエゴが強力だから修羅は修羅足りえ、つまり無数の人間、無数の祈りを調整してなんとか張力を保っている社会の在り方とは相容れない。<br /> 殺すことにしか興味がなく、殺し合える相手しか”人間”と思えないソウジロウの独白は、そんなふうにしか在れない、遠い故郷からも追放された異邦人の姿をよく削り出している。<br /> 修羅は、修羅としてしか生きられないのだ。</p> <p> </p> <p> このままならなさは、勇者を求めつつ偽物の魔王で終わるしかなかったタレンにしても、告解を受け取る宗教者のはずが極めて優秀な暗殺者でしかないクゼさんにも、複雑に反射する。<br /> 新公国を理想の元統制し、戦争状態に突っ込ませるだけの指揮能力を持っていても。<br /> 誰もが許される理想を見据え、盲目の歌姫の末期を聞き届ける優しさを確かに残していても。<br /> 彼らは自分が望んだ圧倒的な力には届かず、狂って残酷な世界の在り方を変えれる”勇者”にはなり得なかった。<br /> この時”勇者”の定義が、魔王を殺したという行動でも、それをなしうる怪物的な強さでもなく、傷ついたまま取り残された無数の人民に向き合い、人のあるべき姿を示してくれる倫理的理想として見られているのは、個人的には面白い。</p> <p> それはつまり、最強の力を持った修羅をどれだけ殺し合わせ、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%EA%C3%C6%C7">蠱毒</a>の果てに一匹を選んだところで、それが”勇者”の証明にはならないことを示しているからだ。<br /> タレンが今際の際に願い、クゼさんが死者を埋葬しながら見上げる、ハッピーエンドをこのクソみたいな世界につれてきてくれる、特別な存在の資格。<br /> それはソウジロウやアルスが戦場に示し生き延びた個としての強さとは全く関係なく、あるいはそれのみを必要条件として実現しうる、多彩で多様で恨み言と祈りに満ちた世界全部に、向き合えるだけの人格的巨大さだ。<br /> 個としてのエゴの強さが修羅を支えている以上、彼らは身勝手で<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%B9%A4%AF%BC%AA">聞く耳</a>を持たない強者にしかなり得ず(ここの軋みを、ソウジロウとラナで照らしているのは良い)、強くなるほどに”勇者”の資質を失っていく。<br /> トーナメントが進むほどに、真の勇者の正体を探るミステリは解かれていくのだろうけど、そうして示された”真の勇者”がその実、弱き人間が望む立派で優しい勇者様とはかけ離れていることは、十分以上に有り得る話だ。</p> <p> そうやって、望まぬ勇者の真実が暴かれた時、今回の戦役で起きたように黄都という巨大なシステムがそれを飲み込み、自分たちに都合の良い勇者像を打ち立てようとすることも、また想像に難くない。<br /> むしろ黄都に都合の良い勇者像を喧伝し活用し、魔王亡き後の新世界秩序をより善く、より安定し、より優しく形作っていくために、勇者候補選別とその殺し合いが用意されている感じもある。<br /> とすれば、『ハイ強者でござい』というツラ引っ提げてコロシアムに顔を出す、世界最強のチャンピオン達こそが時代の生贄であり、死んでいくことを期待され約束された”弱者”なのではないか。<br /> そんな強者と弱者の反転可能性が、12話の物語を駆動させていたカ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>リを吐露する、タレンの末期には滲んでいた。</p> <p> </p> <p> ユノがむき出しのエゴに向き合い、八つ当たりにも似た復讐を遂げてようやく、素直に話せるようになった強者への怨嗟と、弱者としての祈り。<br /> それは生き延びられなかったラナやカーテやレグネジィの末期が、答えを求め得られない未解決の謎だ。<br /> 世界はどうでも良くない尊さで満ちているのに、全て恐怖で狂わせ支配する魔王とか、倫理観ぶっ壊れた<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%DB%C0%A4%B3%A6">異世界</a>チート野郎とかがボンボコ湧き出すこの世界は、それを大事にしてくれない。<br /> 強さだけが己を示す証であり、世界を塗りつぶすほどに圧倒的なはずなその”強さ”を勇者にぶっ殺され否定されたから、魔王の時代は終わった。</p> <p> その好機に人間が人間らしく生きられる世界を求めるのは、為政者としてまこと真っ当な、誠実ですらある決断だ。<br /> だから修羅を駆り立てる分厚い包囲網が、戦争を血みどろの茶番と弄ぶ傲慢が、必ずしも悪と断じられないのは面白い構図だと感じた。<br /> 黄都の連中は相当に優秀で、自身の手を血で汚しながらある程度の個人的野望と、それ以上の公共心と理想を持っている。<br /> 極めて残酷なシステムによって人間の世界を、魔王亡き後取り戻そうとしている。<br /> そこですり潰される生命や祈りが、未来への必要経費だと飲み込めたから、タレンはこの戦争を始めて、色んな人が死んでいった。<br /> こっから先もイヤってほどたくさん死ぬだろうし、賢く計画された殺戮計画を経なければ、変われないほど世界が終わってることも、この序章は巧く教えてくれた。</p> <p> </p> <p> 同時に人間のスケールを大きく越えた、社会という弱者に優しいブランケットに絞殺される、圧倒的な”個”の反撃を見てみたい気持ちもある。<br /> 我々は社会と世界という、とても大きな構成要素の一つであると同時に、どこまで言っても自分ひとりでしかない孤独なエゴだ。<br /> 集団と個人という、相反する性質を抱え込んだまま、無慈悲で不条理な世界を生き延びるしかない。<br /> そんな過酷な定めを背負った我々が、『今日くらいは生きててもいいかな……』と思える大きな助けがエンターテインメントというものであり、超絶チート野郎が血みどろ活劇に暴れまわるこのお話は、その一つである。<br /> だから当たり前に我々の周囲を保護し、包囲し、常識や倫理や法や正義という輝かしい名前に飾られて首を絞めてくる、ひどく窮屈なものを。<br /> ”社会”なるものを孤独な怪物たちが蹴っ飛ばし、傷を負いながら暴れている姿に、怯えつつも<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B2%F7%BA%C8">快哉</a>を叫ぶ。</p> <p> ああ、スカッとした。<br /> いい気分だ。<br /> 無慈悲で無惨な殺戮が画面の中に描かれて、それが今生身で座ってる自分と無縁であることを確認して、心のなかに溜まった面白くもねぇ澱を吹き飛ばさせてもらう。<br /> そんな、悪趣味で力強い心地よさ。</p> <p> それちゃんと向き合った上で、群像がそれぞれの祈りと脆さをこすり合わせ、時代を発火させる群像劇の面白さを描いていること。<br /> 刻めて残酷で救いのない話を描きつつ、血の池にかすかに輝く真摯な祈りが、確かにそこにあったのだと忘れず記すこと。<br /> そういうことをしっかりやってくれているお話で、大変良かったです。<br /> モンドテイストを全面に押し出し、読者の悪趣味な期待感にしっかり答えつつも、そういう理不尽で不条理で残酷なモンを扱えばこそ描ける大きな絵に向かって、かじりつくように話を紡いでいる様子が感じられたのは、俺はつくづく良いなと思う。</p> <p> </p> <p> </p> <p> 世界は理不尽で残酷で、そんな中で人間は優しい夢を希う。<br /> この矛盾が話しの真ん中にあった上で、多種多様な向き合い方、叶え方、へし折れ方を描くのが、僕が12話見て感じた”異修羅”だ。<br /> 遅効性の毒で自分の野心を危うくする間者をきっちり殺し、キアを操るための”先生”の仮面を……あるいは微かに残った甘い願いを、しっかり守ったエレアの顛末にも、その色合いは濃く匂った。</p> <p> 流石に黄都二十九官、情に曇らされて判断を見誤るヌルさではなく、きっちりやりきってくれて良い決着だなぁと思う気持ちと、心ズタズタにされた挙げ句誰にも看取られぬ無残な死を遂げたラナを痛ましく思う気持ち、両方がある。<br /> 『あんな死に方しなくても……』と、現代人の感性で思ったところで、ラナの死はあの世界に極めてありふれた終わり方であり、大概の人間がああも苦しく、無念に斃れていくのが”当たり前”なのだ。<br /> それをどうにかしたいと願うから、黄都の為政者たちは巨大なシステムを編み上げ、人間の世界を取り戻すべくこの戦争を仕組み、まだまだ戦いを続けていくのだろう。</p> <p> そんな世界に対し、幼い世界詞は何でも出来る無敵なのだと、己を打ち立てる。<br /> 目の当たりにした炎と殺戮、不和と断絶を極めて子どもっぽい受け止め方で、『仲直り』出来る未来を夢見て噛み締め、明日への糧にする。<br /> 再会と対話を願ったラナが、眼の前の先生の手で無惨にぶっ殺されており、この話はおしまいになって魔法でも取り戻せないことを、彼女は知らない。<br /> 知らせないことで、エレアは世界詞という切り札を握り込んだまま、陰謀渦巻く政治劇のプレイヤーとしての資格を保った。</p> <p> </p> <p> 世界が想像より遥かに残酷で、自分に出来ることは大してなくて……つまりはただの子どもなのだと、キアが己を思い知った時、世界詞を巡る物語がどうねじ曲がっていくかは、結構興味がある。<br /> キアの言霊は極めて強力だが、起きてしまった事実にしか影響が及ばぬように見えるし、キアが言葉にしたこと……認識できることしか効果が及ばない。<br /> 彼女が想像もしない悲惨や尊さが世界には山程あって、その無敵の言葉が触れ得ないものがいくらでも転がってると理解った上で、言葉を紡ぐ選択を果たした時、あのあまりに純粋で幼い女の子はようやく、人間への一歩を踏み出す。<br /> 世界を変えてしまえる怪物のような力が、それ故伸びた権力の長い腕が、彼女を当たり前の成長と痛みから遠ざけるだろう。<br /> けど全く優しくないこの世界、否応なく残酷な現実にぶち当たる瞬間は必ずやってきて、運命に愛されてしまっている彼女はそんな終わりの先へと、(ラナとは違って)辿り着いていくだろう。</p> <p> それは何かと歪んだ連中が多いこのお話の中で、レアリティの高い透明なお話に……なってくれるかも知れない期待感があるファクターだ。<br /> 悲惨で辛いものをたくさん書けばこそ、人間が持っている輝きや祈りをより強く照らせるというスタンスが、色濃く滲むこのお話。<br /> そこでキアがこの戦役で見たものがどう発芽し、美しく花開き、残酷に摘み取られていくのかは、結構大事な画角だと思う。</p> <p> そんな当たり前の挫折と成長は、例えばソウジロウには望むべくもない<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A5%E5%A5%D6%A5%CA%A5%A4%A5%EB">ジュブナイル</a>なのだが、複数のキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが対等な存在感で物語を泳げる、群像劇の強みはその多様さにある。<br /> 人の心も自分の未来も、何もかも理解らぬまま剣を握り、それでいいと飲み込めるソウジロウの物語も、自分の無力を思い知ってなお優しさに包まれ、痛みとともに目覚める時を待っているキアの物語が、同じページに収まるからこその、乱反射するプリズムのような面白さ。<br /> それが本格的に息をしてくるのは、死ぬべきものがしっかり死んで、その血潮で生き延びた者たちの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%D3%C1%FC%B2%E8">肖像画</a>に立体感が加わった後の……こっから先の面白さだろう。</p> <p> </p> <p> </p> <p> というわけで、異修羅アニメ一期終わりました。<br /> お疲れ様でした、楽しかったです。</p> <p> 初見勢を大層豪快に振り落とす、ゴ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%B4">アゴ</a>ア血みどろな描写、前半分全部使ってのキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター紹介、山盛りの世界設定と複雑怪奇な人間模様!<br /> 色々クセの強いところはありながら、だからこその噛み応えで自分との相性は良く、大変楽しませてもらいました。<br /> 原作が持っている歪んだオリジナリティを、あえてそのまんまアニメの俎上に乗っけて、120%の力が発揮できるよう色々工夫してくれた感じがあって、ググッと引き寄せられました。<br /> 世間からは色々言われる作りになったと思うけど、それでも選び取ったやり方をやり切るんだ! という覚悟と決意が常時滲んでいたのは、大変好みの力み方でした。</p> <p> 1クール終わってみるとやっぱ壮大な序章であり、こっから本番という感じは色濃くあります。<br /> 幸い終了直後に二期制作の報があり、血みどろの戦争を生き延びたキャラの行く末、彼らを画材に描こうとしている作品全体の未来が、アニメでも見れるのは嬉しい限りです。<br /> エンタメが飽和している昨今、このペースト語り口でクール使うのは相当な冒険だと感じていますが、だからこその独自性とクセが強くうねっている手応えもあり、何が見れるのか今から楽しみです。<br /> 俺はこの終わりまでちゃんと付いてきたし、自分なり噛み砕き独自の面白さを飲み干せるところまで行けたので、いいアニメだったなーと感じています。<br /> そう思える人の割合が、そうそう多くない作りだとも思うんだけども、その歪み方あっての面白さだしねぇ……難しいところだ。</p> <p> </p> <p> どうしょうもねぇロクデナシどもが、生きたり死んだりしながら血の海の中、微かな祈りを世界に投げる。<br /> 群像劇だからこそ、超最悪の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%DB%C0%A4%B3%A6">異世界</a>だからこそ描けるモノがしっかりあって、このお話を見る意味が色濃くあったのは大変良かったです。<br /> 弱い群れとしての人が、強い個としての修羅をどうにか食い殺して、魔王がいた中世から人間が生きる近代へと時代を変えていく。<br /> そういう話だと、12話見てみて自分は受け止めました。</p> <p> この見切りが正しいのか的はずれなのか、確かめて見るためには最後まで見とどける必要があるわけで、この極めてロクでもない、暴力と悲惨に溢れた作風でもって二期と言わず、全てが決着するまでアニメで描いてほしいものです。<br /> さらなる残酷を心待ちにしつつ、今はお疲れ様を。<br /> 1クール楽しかったです、ありがとう!!</p> Lastbreath 外科医エリーゼ:第11話『願い』感想 hatenablog://entry/6801883189092514191 2024-03-21T16:57:39+09:00 2024-03-21T16:57:39+09:00 医師試験を目前にして、突如発生した重大事件……皇帝危篤! 広がった動揺は対立に火を付け、エリーゼの未来に暗雲が立ち込める。 急展開のクライマックス、一体どうなってしまうのか! ……という感じの、外科医エリーゼ第11話である。 散々規格外の医療知識で無双ブッこいて『試験とかヨユーでしょヨユー』とかナメてたら、急に皇帝陛下は血を吐いてぶっ倒れるわ、調子こいた貴族派がダイレクトな暴力に訴えかかるわ、比較的抑えられていた治安が一気に発火して、俺好みのキナ臭い展開になってきた。 『今まで喉越し爽やかに話し飲めていたのは、エリーゼの周りに集う人が人格者だっただけなんだなぁ……』などと、異世界に流れ着いても… <p> 医師試験を目前にして、突如発生した重大事件……皇帝危篤!<br /> 広がった動揺は対立に火を付け、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の未来に暗雲が立ち込める。<br /> 急展開のクライマックス、一体どうなってしまうのか! ……という感じの、外科医<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>第11話である。</p> <p> 散々規格外の医療知識で無双ブッこいて『試験とかヨユーでしょヨユー』とかナメてたら、急に皇帝陛下は血を吐いてぶっ倒れるわ、調子こいた貴族派がダイレクトな暴力に訴えかかるわ、比較的抑えられていた治安が一気に発火して、俺好みのキナ臭い展開になってきた。<br /> 『今まで喉越し爽やかに話し飲めていたのは、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の周りに集う人が人格者だっただけなんだなぁ……』などと、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%DB%C0%A4%B3%A6">異世界</a>に流れ着いても変わらぬ人間世界の業に思いを馳せつつ、最期の医療無双に向けてハードルが上がりまくる回である。<br /> 貴族派の人たちが軒並み『皇帝陛下の病因、常人に見抜けるわけねーだろ! 出来るやつなんて人生三周目の超絶ヒロインだけだぜ!!』みたいな、露骨な神輿の担ぎ方をしてくれて、来週どんだけブッこまれるのかワクワクしてきたぜ……。<br /> やっぱ最後の花火はデカいほうが良いわけで、こんくらい状況がヤバくなってくれたほうが盛り上がるわな。</p> <p> </p> <p> つーか帝<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%F1%BB%CB">国史</a>上類を見ない、女性初の薔薇勲章受勲者とかになってる時点で世俗の栄達はただの飾り、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%E5%B3%D8%C0%B8">医学生</a>の立場があまりにも不釣り合いな超絶チート野郎なわけで、この帝国の危機を聴診器でぶった切り、実力に相応しい名声で周囲を黙らせる流れは、待ってましたでしっくり来る。<br /> ”一周目”でやらかした悪行が響いて、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の自己評価は地に落ちているわけだが、医療超人としての実力と行いはそこを飛び超えて高みに登っているわけで、こんぐらいハードな事件ぶっ飛ばして終わってくれたほうが、収まりが良いわな。<br /> いやまぁ、医療方面以外はごくごく普通のお姫様なので、抜身の白刃ぶら下げて直接的政治解決を図られると、ビビってブルブルもしちゃうわけだが。</p> <p> こういうダイレクトな行動主義に蓋をして、なんとか平和な日常を保っていたのが宮廷の内幕だと考えると、リンデン陛下もなかなかお辛い立場で生き延びてきたんだなぁ……と、最終話一個前に理解が深まる。<br /> 風聞は垂れ流す、いざとなったらヤッパは抜く。<br /> まさに毒蛇の巣と言うしかない陰謀の渦中、匂わされてきた貴族派と皇室派の対立が、国の大黒柱が揺らいだことで<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%E1%A4%AD%BD%D0%A4%B7">吹き出し</a>たわけだが、逆に言えば陛下の命脈を保ちその病院を解明しさえすれば、膿を出すいい機会とも取れる。<br /> 皇太子の身柄が牢に繋がれ、逆転の足がかりが主人公にしかない状況もなかなかヒロイックで、スカッと終われる足場づくりを、一気に成し遂げてくれた感じがある。</p> <p> 元々宮廷絡みの火種は気にかかっているネタであり、こういう形で医療と絡めながら発火させてくれるのは、自分的には嬉しい流れだ。<br /> こんだけ冷え込み腐りきってるのは予想外ではあったが、まーユリエン様が例外だったということなのだろう。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>には甘く情けない顔ばっか見せていたお父様が、皇帝派筆頭としてギリギリのせめぎあいに身を投じ、かなり頑張っていたのも良かった。<br /> 急に話の方向性が180度変わったようにも思えるけど、むしろこの重たさ暗さこそが宮廷のリアルって感じはあるし、降って湧いたお后ポジションに痛みと重みを足す上でも、政治のややこしさとヤバさに首突っ込んでくれるのは、個人的には嬉しい味付けだ。</p> <p> </p> <p> 掘り返すとなかなか根が深そうな問題だが、幸い皇帝陛下危篤の謎を解くと情勢が良くなりそうにまとまっていて、最後の医療無双が唸りを上げる準備は万端。<br /> 取り敢えず目の前に迫った危機をどうにか脱し、生命と国を救って過去最大のワッショイを受け取って話をまとめる最終回、いったいどう描くのか。<br /> 次回も楽しみです!</p> Lastbreath ゆびさきと恋々:第11話『約束』感想 hatenablog://entry/6801883189092403774 2024-03-21T07:15:37+09:00 2024-03-21T07:15:37+09:00 冬の出会いから時は流れ、誰もが前へと進んでいく。 大きな一歩を踏み出す前の途中経過だって、素敵に愛しいことを丁寧に描く、ゆび恋アニメ第11話である。 残りニ話、どういうまとめ方をこのアニメが選ぶのか気になっていたが、大変”らしく”落ち着いた話が展開され、とても良かった。 バイトを始め逸臣さんとの仲を更に深める雪ちゃんも、恋敵との衝突を経て少し視界がひらけた桜志くんの危うさも、意を決してエマちゃんと向き合う心くんも、皆それぞれの季節を、それぞれの足で進んでいる。 その一歩一歩の先にとても喜ばしいものがあって、そこにたどり着くためにも誰かの隣に立ち、その目を見ながら一緒に進んでいくことが大事なのだ… <p> 冬の出会いから時は流れ、誰もが前へと進んでいく。<br /> 大きな一歩を踏み出す前の途中経過だって、素敵に愛しいことを丁寧に描く、ゆび恋アニメ第11話である。</p> <p> 残りニ話、どういうまとめ方をこのアニメが選ぶのか気になっていたが、大変”らしく”落ち着いた話が展開され、とても良かった。<br /> バイトを始め逸臣さんとの仲を更に深める雪ちゃんも、恋敵との衝突を経て少し視界がひらけた桜志くんの危うさも、意を決してエマちゃんと向き合う心くんも、皆それぞれの季節を、それぞれの足で進んでいる。<br /> その一歩一歩の先にとても喜ばしいものがあって、そこにたどり着くためにも誰かの隣に立ち、その目を見ながら一緒に進んでいくことが大事なのだ、と。<br /> お話がその始めっから言い続けていたことを、終わりがけもう一度告げてもらえるような話数となった。</p> <p> 海外旅行というデカいイベントを打ち上げて終わる道もあったと思うけど、恋人になってから初めてのデートという小さな……でも大事な楽しみをあえて選んで、それが大事なのだと思い返す過程まで丁寧に追いかける形で、雪ちゃんと逸臣さんのお話が終わっていくのは、何か良いなと思った。<br /> 告白や決別や、なにか大きな運命の転換点だけで人生は出来ているわけではないし、その途中にある小さな歩みをどれだけ丁寧に、目の前の人を尊重して進んでいけるかが、世界を輝かせる決め手であると、コミュニケーションとコンセンサスを主題に据えたこのお話はずっと描いてきた。<br /> 逸臣さんが雪ちゃんの言葉を聞き、彼女の世界に優しく入って広げてくれる人だからこそ恋が始まり、実をつけ豊かに育まれているわけで、お互いの喜びや願いを良く語り合い、ちゃんと共有して恋人やってる彼らの”今”が見れるのは、本当に嬉しい。</p> <p> この他人をちゃんと見る視線、届く言葉を選ぶ大事さが、前回壮絶な青春体当たりを逸臣アニキにぶち<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%DE%A4%B7">かまし</a>た、桜志くんに雪ちゃんが向ける目線から感じられるのも良い。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C4%EA">不定</a>形の感情に否応なく”恋”と名前をつけ、憎い相手の目を見てしまった彼は、もうガキっぽい不機嫌で何かを覆い隠したまま幼馴染に接することは出来ないし、そんな変化を雪ちゃんも敏感に感じ取り、尊重している。<br /> 恋人になれないからと言って、雪ちゃんと桜志くんが積み重ねてきた(逸臣さん抜きの)日々が無意味に消えるわけでもないし、その尊さに気付き直して新たな息吹を加えていく歩みも、超らぶらぶダーリンとイチャイチャする日々に併走して、雪ちゃんの人生であり続ける。<br /> こんだけ恋心に丁寧に分け入りつつ、恋だけを絶対視せずもっと広い場所へ、自由にお話を羽ばたかせていける手付きが、あの夜を経て桜志くんがどう変わり、その変化を雪ちゃんがどう受け取ったか、しっかり描いてくれるアフターフォローに感じ取れた。<br /> 恋すればこそ”一歩”があまりに重たかった心くんも、湖面に揺れる叢雲に複雑な心境を照らしつつ、勇気を出して踏み込んだわけで、そこからまた何かが動いていくのか……アニメが一旦幕を閉じた後の人生に、ワクワク期待が持てる感じで幕引きが近づいているのは、俺は凄く良いと思う。<br /> 物語が彼らを追わなくなっても、作品世界の中で彼らが確かに生き続けて、大事なものがやり取りされ変化が積み重なっていくのだと、信じられる形で終わるお話というのは、大変素晴らしいものだ。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第11話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321061421.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321061430.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321061440.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321061448.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321061456.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321061504.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321061511.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第11話より引用</figcaption> </figure> <p> というわけで、メロンパンもぐもぐする雪ちゃんもかわいいね……かわいいね……という気持ちを新たにする所から、お話スタートである。<br /> 雪ちゃんは自分の心と世界のあり方を、鋭敏に聞き分ける聴覚を魂に持っている人なので、恋人関係になっても……むしろなってからのほうが、逸臣さんに恥じらいときめく場面は多い。<br /> それは心が瑞々しく波立っているからこその反応で、生きることにガッツがある人だからこそ生まれる感情だと思う。<br /> そんな彼女の内面に、音響面での細やかな演出を交えて丁寧に踏み込み、何を感じて体温を上げているのか、とにかく丁寧に積み上げていく筆致が、この作品のロマンティックを形作っている。<br /> やっぱ雪ちゃんがどんな気持ちでいるか、丁寧に語り描くことでこっちのシンクロ率も上がるし、そういう素敵なトキメキを手渡してくれる逸臣さんへの愛しさとか、触れ合う実感とかも強く伝わってくる。<br /> この手応えの確かさは少女漫画の本道であろうし、ここがガッチリ強いからこそ、恋以外もしっかり描く横幅が成立しているのだと思う。</p> <p> 優しく手を取り励ましてくれる逸臣さんの、野放図な自由さに振り回されながらも、雪ちゃんは彼に恋すればこそ世界を広げ、新しいことに挑む。<br /> バイト先のお姉さんが、メッチャ明るく雪ちゃんを受け入れてくれる好い人で、本当に良かった……。<br /> こんないい子が辛い目に遭うの、俺あんま受け入れられねぇからよぉ……縁をたぐり果敢に挑んで、世界を変えていく活力が主役にあって報われるの、とってもありがたいよ。<br /> 聴覚にハンディを負いながらも、バリバリ働いてバリバリ稼ぐ”当たり前”が雪ちゃんの前に広がっていること……そこには真剣な表情だけでなく、コミカルで明るい笑いもあると描くのは、自分たちが主役に据えた存在が持つ属性を、信じて敬した結果かなとも思う。<br /> どんな立場の人だって人が生きてりゃ笑いがあって、それがあればこそ生きていけるもんなワケで、このお話のコメディ要素が爽やかで力強く、ちゃんと笑えるのは良いことだなぁと、仕事に燃えるお姉さんを見ながら思った。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第11話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321062609.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321062617.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321062625.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321062637.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321062645.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321062653.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321062712.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321062721.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第11話より引用</figcaption> </figure> <p> そんな風通しの良い世界にいる……逸臣さんに引っ張り上げて貰っている雪ちゃんに、桜志くんは置き去りにされたのか、追いすがっているのか。<br /> マスク着用が一般化した社会で、なかなか気づかれにくい難しさをこういう形で教えてくれる面白さを感じながら、極めてジェントルにスマートに、幼馴染に助け舟を出す桜志くんが、纏う空気は先週までとは変わっている。<br /> 自分が酒も巧く飲めないガキであることを思い知らされ、強がりと気恥ずかしさの奥にある思いを引っ剥がされてしまった彼は、後戻りできない一歩を踏み出して雪ちゃんとの距離を縮める。<br /> それは粘ついた感情に執着して足を止めているときより、爽やかな青さを宿した色合いで描かれ、開放的で自由だ。<br /> ここら辺のカラーリング・コン<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%ED%A1%BC%A5%EB">トロール</a>が極めて私的で、かつ適切なのはこのアニメのとても良いところだ。<br /> 桜志くんが今どういう場所に立っているか、彼を取り巻く色と光が良く教えてくれる。</p> <p> 逸臣さんにぶつかることで自分と向き合ったことは、勘定の赴くまま突っ走ってしまう危うさとも繋がっていて、桜志くんは逸臣さんを愛しく語る雪ちゃんの指先を初めて遮る。<br /> バランスの良い、正しい方向へ進み出せそうだった青信号が、彼の感情が揺れて前に踏み出す時に赤信号に変わり、なかなか始末をつけきれない思いを<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%C5%CA%AA">静物</a>が語っているのも、このアニメの優れた語り口だろう。<br /> 桜志くんが抱く雪ちゃんへの恋は、身勝手でありながら純情で、真っ直ぐでありながらねじくれていて、なかなか目鼻がつかないからこそ力強い。<br /> 自分の気持ちを上手く制御して、雪ちゃんの望みや願いを優先的に引っ張り上げてくれる”大人”な逸臣さんとは、違う形で自分のエゴと祈りに向き合っている青年だ。<br /> 安全に進める正しさと、危うくても手放せない思いが入り混じった彼の世界は、少しずつ形を変えながらもまだ不安定で、青信号と赤信号が明滅し続けている。<br /> そのどちらに進めばいいのか、わからないなりにちゃんと見据えて選ぼうとしている姿勢が、僕にはとても愛しく見えるのだ。</p> <p> </p> <p> 雪ちゃんは彼女の恋人と幼馴染が、どういう夜を過ごし何をぶつけ合ったか、知らないし分からない。<br /> 自分の見えないところで、時に”男”であることを鎹に繋がる感情の形は、まだ幼く(だからこそ透明に美しい)雪ちゃんには計り知れないところがある。<br /> しかし裏側が見えないからといって、表側に立ってきた変化が感じ取れないわけではないし、それを思いやれないわけでもない。<br /> 既に決着が継いてしまっている恋をどこに持っていくか、わからないながら本気で向き合い自分を前に進めようとしている桜志くんの”今”を、雪ちゃんがちゃんと感じ取って手を伸ばしているのが、俺には嬉しかった。<br /> そういう風に、陰ながら彼女をしたい守っていた少年が自分に向ける気持ちを、その危うさも引っくるめて受け入れてくれる人が、このお話の主役で良かったなと思った。</p> <p> 桜志くんが恋愛レースに参加する前に、逸臣さんがロケットで突き抜けたスピード感が、この物語の特色だと僕は思う。<br /> すでに結果がでてしまっているものに心を追いつかせる、結構キツい負け犬の歩みをこの後も桜志くんは進んでいくことになるわけだが、しかしそこには確かに爽やかな風が吹いていて、見て欲しい人はちゃんと自分を見てくれて、答えのでない語らいの後広がる空は、美しくて広い。</p> <p> 恋敵を嫌いになれない惨めさも、複雑に揺れながら差し出す思いも、桜志くんだけの宝物として愛しく磨き上げられ、丁寧に描かれているのが好きだ。<br /> 彼が最後に見上げるのが、逸臣さんの象徴として幾度も描かれ、雪ちゃんが抱きしめている”空”なのが、やっぱ良いなと思う。<br /> 彼自身はワーワー大声で否定するだろうけど、やっぱ空を背負った男と出会いちゃんと話したこと、恋敵の顔をちゃんと見てそこに自分の心を照らしたことは、彼をもっと自由に、もっと大きくしていく。<br /> 恋に破れることにだって、人が幸せになる切っ掛けはある。<br /> 主役の恋路を濁りなく、幸せに結実させたこのお話が、桜志くんを画材にそういう場所に切り込んでいってくれるのは、豊かで良いことだ。<br /> 恋にはならずとも、心が見えないから見ようと思える人として桜志くんがいてくれて、その身勝手も不自由もチャーミングに、一人の人間として魅力的な濁り方を書いてくれていることが、お話に彩りを与えているのは間違いないだろう。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第11話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321064644.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321064652.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321064700.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321064709.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321064717.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321064725.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321064734.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321064742.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第11話より引用</figcaption> </figure> <p> 桜志くんが危うい赤信号を背負いつつ、夕焼けの空を見上げる真っ直ぐさを手に入れつつあるのに対し、心くんとエマちゃんは直接月を見上げる気持ちをまだ持ちえず、水鏡に反射させながら向き合うことになる。<br /> 気持ちがどこに向いていて、何が見えているのか。<br /> 視覚言語である手話、それを用いるろう者を主役に据えたお話が大事にしているものが、また別の形で表現され、演出されていく場面と言える。<br /> エマちゃんが別格の美しさを備えていること、それが心くんを縛り呪っていることが大事な場面で、めっちゃ繊細に綺麗にエマちゃん書いてくれているのは凄く嬉しいし、大事なことだと思う。<br /> このキレイな女の子が、自分の隣で自分の親友を見上げ続けている横顔を、ずっと見てきた心くんの気持ちを思うと、そらー”一歩”は難しかろう。<br /> しかし、彼は踏み出した。<br /> マジ偉い。</p> <p> 月明かりは湖面に不安定に揺れながら、時に雲に覆われ、時に葉に隠される。<br /> エマちゃんがどれだけ強く逸臣さんを追いかけてきたのか、良く知ればこそ切り出しにくい、彼女を置き去りに進んでしまった時間の残酷さと、ままならない心。<br /> 風、水、あるいは月。<br /> 透明度を重要なモチーフとして、雪やガラスに反射して描かれた主人公の恋路とはまた違った複雑な屈折を、しかし同じだけの真剣さと温かさで持ってこの若者たちも抱えていて、それが美しい画面構成にしっかり反映されている。<br /> 心くんが訥々と、起こってしまった事実と隠していた気持ちを告げる調子も、静かに過ぎていく水面の風にしっかりマッチしていて、彼ら特有のナイティな空気を教えてくれる。<br /> 『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%AB%C3%E6%CD%B4">畠中祐</a>最ッ高ォ……』という個人的な感慨はさておき、泥酔して自分を紛らわせ向き合ってきたエマちゃんに、彼らしい真摯な素面で対応出来るようになった変化を感じられて、大変良かった。<br /> ……桜志くんが酒の力を借りて自分を前に進めたのに対し、心くんは避け抜くことで言うべきことを言えたんだな……。</p> <p> 揺れ、隠され、震えた月は最後には冴えた光を放ち、起こってしまったことと伝えるべきことは、ちゃんと”一歩”を踏み出す。<br /> これをどう受け止め、どう進み出していくかはエマちゃんが選ぶ未来であり、心くんが寄り添う道になるのだろう。<br /> 急に心が正しくなってくれるわけではなく、揺れ動くからこそ愛しいものもあることは、桜志くんを描く筆の中に色濃く宿っているけども、エマちゃん達もまた、そんな複雑で彼ら独自の色合いで、自分たちの人生と恋を塗っていくのだろう。<br /> それがどんな風に進んでいっても、見守り応援したいと思える素敵なものと受け止められるのは、このお話のとても良いところだ。<br /> 色んな色、色んな光、色んな空がそれぞれにあって、関わり響き合いながら変化していく豊かさが、群像劇だからこその面白さが、話の最後にググっと力こぶを見せてくれた感じがあった。<br /> 良いなぁ……終わるってのにワクワクするのは、凄く良い。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第11話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321070123.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321070130.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321070139.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321070147.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321070155.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321070203.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321070212.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240321/20240321070220.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第11話より引用</figcaption> </figure> <p> 湖面の月のモチーフを引き継ぎ変奏する形で、雪ちゃんと逸臣さんの夜も優しく転がっていく。<br /> なかなか会えない寂しさを反射して、最初雪ちゃんが見上げる月は叢雲なのだが、愛しさに突き動かされてパジャマのまま駆け出し、街頭に照らされながら抱き合った後には、一切の陰りなく明鏡が輝いている。<br /> ここの街頭モチーフは、冬……まだ二人が恋人ではなかった季節に描かれたモノをリフレインしている感じもあって、恋人になればこそ高鳴るときめき、恋人になった彼らが掴み取ったものを、改めて感じることが出来た。<br /> つーか雪ちゃんはホント無防備なトコロあるから、めちゃくちゃ心配だよッ!<br /> そんな薄着で夜に駆け出しちゃダメだよ!!<br /> 逸臣さん頼んますよホント!!(ダーリンはちゃんと、顔だけ見て帰ろうとしてました)</p> <p> しかし胸の高鳴りをせき止めず、優しく語り合う夜というのも恋人の特権であり、そこで優しく頼もしく、雪ちゃんが知らず狭めていた世界を広げてくれる逸臣さんのありがたさも、月下に染み入る。<br /> なにか大きなイベントじゃなくても、楽しくて素敵なことを一個ずつ一緒に作っていって、もっと幸せに、もっと好きになって良い。<br /> そういうことを真っ直ぐ、伝わるように伝えてくれる逸臣さんはそっらーモテるわ……って感じだし、この衒いとためらいのなさと野放図な無遠慮は、裏腹なんだろうなぁと思ったりもする。<br /> 長所短所を決めるのは場面と使い方によるわけで、雪ちゃんに必要なものを、欲しいタイミングでちゃんと差し出せている逸臣さんの生き方は、人間が取るべきバランスをしっかり掴んでいると思う。<br /> そのバランス感覚に導かれる形で、雪ちゃんは自分ひとりだと見えないものを見つけれて、知らなかったことに踏み出していける。<br /> そういう人生の拡張装置として、好きになった人がいてくれるって幸せなことだなと、素直に思える話で大変良かった。<br /> 『恋したら、一体何が手に入るのか』つう現世利益主義的なツッコミから、僕はロマンス見る時どうしても逃れられないのだが、作品が持つ透明感を損なうことなく、凄く納得行く手応えの答えをしっかり描写してくれているのは、とてもありがたいです。<br /> 人生が善くなるから、二人の恋は良いもんなんだな。</p> <p> </p> <p> </p> <p> というわけで、様々な人々が迷い戸惑いながら、よりよい光の方へ進み出していくエピソードでした。<br /> 手話を用いてコミュニケーションする場面が、いつも以上にしっかりと作画されており、逸臣さんが自分をそこに置きたいと思えた雪の世界に、入るための鍵をどれだけ身に着けたのか、感じ取れて良かった。<br /> ろう者が有する様々なコミュニケーション手段を、スムーズに見ているものに解ってもらって、豊かでいいもんだと思えるようクオリティを高く保ってきたの、ホント志あって良いなと思います。<br /> そういう、沢山ある作品の強さと善さを改めて感じられる、最終話一個前なのはありがたい。</p> <p> 心弾む、恋人となってからの初デート。<br /> それは最初であって最後ではなく、ここからもっともっと豊かな世界が花開いていく。<br /> あなたと一緒にいるからこそ眩しい、明るく美しい世界でどんなものが見えて、何が聞こえるのか。<br /> 僕がすごく好きになったこのアニメは、最終話、何を描いてくれるのか。<br /> とても楽しみです。</p> Lastbreath プレイレポート 24/03/20 BoA『償いの伽藍にて』 hatenablog://entry/6801883189092391941 2024-03-21T05:00:59+09:00 2024-03-21T05:00:59+09:00 昨日はシェンツさんのブレカナオリジナルシナリオを、カッツェのみんなと遊びました。 シナリオタイトル:償いの伽藍にて システム:ブレイド・オブ・アルカナ GM:シェンツさん アカメくん:シンクレア:21才女性:マーテル=アダマス=コロナ 平和な片田舎に生まれ、誰かを助けるために盾を持ち運命に身を投じたグラディウシア騎士。ハイデルランドで生きていくにはあまりに真っ直ぐな魂をしているが、だからこそ眩しい光の化身。 二次元くん:”星見の”ヴァイベルク:外見60代男性:アクシス=フィニス=オービス 天恵院で学究に明け暮れ、狭い象牙の塔で人生を閉じようとしていた老学徒。刻まれたフィニスの聖痕に導かれ、広い… <p> 昨日はシェンツさんの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%EC%A5%AB%A5%CA">ブレカナ</a>オリジナルシナリオを、カッツェのみんなと遊びました。</p> <p> シナリオタイトル:償いの伽藍にて システム:<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%EC%A5%A4%A5%C9%A1%A6%A5%AA%A5%D6%A1%A6%A5%A2%A5%EB%A5%AB%A5%CA">ブレイド・オブ・アルカナ</a> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/GM">GM</a>:シェンツさん</p> <p> アカメくん:シンクレア:21才女性:マーテル=アダマス=コロナ 平和な片田舎に生まれ、誰かを助けるために盾を持ち運命に身を投じたグラディウシア騎士。ハイデルランドで生きていくにはあまりに真っ直ぐな魂をしているが、だからこそ眩しい光の化身。</p> <p> 二次元くん:”星見の”ヴァイベルク:外見60代男性:<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%AF%A5%B7%A5%B9">アクシス</a>=フィニス=<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AA%A1%BC%A5%D3%A5%B9">オービス</a> 天恵院で学究に明け暮れ、狭い<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BE%DD%B2%E7%A4%CE%C5%E3">象牙の塔</a>で人生を閉じようとしていた老学徒。刻まれたフィニスの聖痕に導かれ、広い世界で人に交わり学ぶ道へと己を進み出す。落ち着いた<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%D2%B7%C5">智慧</a>を持ちつつ、達観で自分を遠ざけない真の賢者。</p> <p> コバヤシ:”死の暴風”ラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>ーガス:外見30代男性:アングルス=<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%EB%A5%C9%A1%BC%A5%EB">アルドール</a>=<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AF%A5%EC%A5%A2%A1%BC%A5%BF">クレアータ</a> 記憶もなく、渇望と炎の剣のみを抱え戦場を渡り歩く凄腕の傭兵。その正体は<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E2%A5%EB%A5%C8">モルト</a>ゥスの魔印を刻まれた死者であり、さすらいながらも正しい生き方を探し求めている、喋る<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%EC%A4%B3%A4%A6%A4%D9">されこうべ</a>。</p> <p> </p> <p> こんな感じのメンバーで、クソ異端蔓延る辺境の街へ飛び込んでいきました。<br /> 大変面白かったです。<br /> 発売以来時が立ち、ダークファンタ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>のイメージソースも色々変わった中、『俺は生き延びるのがハードな難易度の、陰鬱な中世世界で怪物相手に切った貼ったするのが大好きだぜ!』という、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/GM">GM</a>の叫び声がよく聞こえるシナリオとなりました。<br /> 差し出されるビジュアルイメージや各種イベントのロクでもなさが大変凄くて、ぐぐっと前のめりにシナリオに引きずり込まれるパワーがあって、遊んでるコッチもノリよく進めました。<br /> 『これぞハイデルランド!』という感じのロクでもなさを堪能しつつも、神と救いに関わる真摯な問いかけ、重たすぎる定めへのリリカルな視線がちゃんとあって、ロクでもなさを露悪に味わうだけで終わらなかったのは、大変良かったです。<br /> 本当どうしようもないんだけども、しかしそんな倫理の泥沼の中で当事者たちは必死にあがいているという、ハイデルランド特有の切実さが良い感じに染み出していて、キャラもPLもそれを自分に引き受け答えを返した、大変いいセッションだと思いました。</p> <p> 僕ら3rd時代にエピック・ファンタ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>は山程やったわけで、歴史が動く大きな話というよりは、あまり公式<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/NPC">NPC</a>によりかからない味わいのセッションを作ってくれました。<br /> そういう話になっても……あるいはなればこそ、ハイデルランドが元来有している魅力的なおどろおどろしさ、祈りが呪いとなり呪いの中で祈る切なさみたいなものが、シナリオ全体に漲っていたのは大変良かったです。<br /> 『これが俺の見た、”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%EC%A5%A4%A5%C9%A1%A6%A5%AA%A5%D6%A1%A6%A5%A2%A5%EB%A5%AB%A5%CA">ブレイド・オブ・アルカナ</a>”だ!』という、シンプルで真っ直ぐな主張がセッションに芯を入れていて、イメージと熱量の共有がしやすかったことが、身の入ったセッションを支えていたと思います。</p> <p> PLは二人が9000円のルールブックわざわざ買って初参加、メッチャ久しぶりにハイデルランド降誕という形だったのですが、クセのない造形がシナリオの強さとバッチリ噛み合う、大変いい造形でした。<br /> 理想を諦めない若き騎士、酸いも甘いも噛み分けつつ熱を残す不死の賢者、擦れっ枯らしながら微かな光を残す魔印の剣士。<br /> キャラの書き分け・棲み分けが気持ちよく成立して、お互いのキャラ性がお互いを引き立てる連動が理想的に回っていたのは、大変ありがたかったです。<br /> やっぱ他人のキャラシーを良く見て、欲しいところに欲しい球投げあえるセッションは最高に気持ちがいい……。<br /> 俺も宿命を刻まれし修羅が言いそうなことを、ポンポン垂れ流しに出来て最高でした。<br /> やっぱハイデルランド<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>か生まれない、独特の”味”ってのはあるわなー。</p> <p> </p> <p> というわけで、大変楽しいセッションとなりました。<br /> 俺もオリジナルシナリオを作って、たっけールールブックの元取んなきゃな! という気持ちがメラリと燃え上がってきました。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/GM">GM</a>、頑張りたいと思います。<br /> 同卓していただいた方、ありがとうございました。</p> Lastbreath 僕の心のヤバイやつ:第23話『僕は負けたくない』感想 hatenablog://entry/6801883189092123519 2024-03-20T06:42:33+09:00 2024-03-20T06:42:33+09:00 降りしきる雨の中、少年たちは思いの丈を強く吠える。 どいてろアオハル、そこのけそこのけ友情が通る! 意地と敬意が混ざりあった男の子テイスト濃い目の青春カクテルを、告白直前にお届けする僕ヤバアニメ第23話である。 足立将……好きだ……。 というわけで、スケベでバカで配慮が足りず、どうやっても山田には選ばれない当て馬こと足立くんの恋が、無様に終わる回である。 選ばれないモブにだって誇りというものがあり、それぞれの悩みや人生があるということは南条ハルヤを描く筆で既に示されていたが、京ちゃんが山田への恋慕を深めていく隣で確かに積み上がった、青臭く暑苦しい男の絆が、今回のメインである。 俺は山田と京ちゃ… <p> 降りしきる雨の中、少年たちは思いの丈を強く吠える。<br /> どいてろアオハル、そこのけそこのけ友情が通る!<br /> 意地と敬意が混ざりあった男の子テイスト濃い目の青春カクテルを、告白直前にお届けする僕ヤバアニメ第23話である。<br /> 足立将……好きだ……。</p> <p> というわけで、スケベでバカで配慮が足りず、どうやっても山田には選ばれない当て馬こと足立くんの恋が、無様に終わる回である。<br /> 選ばれないモブにだって誇りというものがあり、それぞれの悩みや人生があるということは南条ハルヤを描く筆で既に示されていたが、京ちゃんが山田への恋慕を深めていく隣で確かに積み上がった、青臭く暑苦しい男の絆が、今回のメインである。<br /> 俺は山田と京ちゃんの恋が、中学受験失敗というありふれた挫折からネジ曲がりかけた、彼の人生をより望ましい方向に、元々の京ちゃんらしい角度に整えていってくれている様子が、いっとう好きだ。<br /> 恋するほどにきょうちゃんの視野は広がり、色んな人が自分を大事にしてくれている事実に目を向け、もっと強く優しくならなければ……と心に刻んで、実際その通りの自分を引き寄せる。<br /> 顔真っ赤にプルプル震えて、余裕なんてなんもないその必死さで、山田杏奈の前に立てる自分でいようと、懸命な背伸びをすることが、彼の人格を確かに伸ばし、可愛くも頼もしい青年へと育て上げてきた。</p> <p> </p> <p> 物語の主役ではない足立くんは、そういうチャンスに恵まれない。<br /> ずっとバカで無神経で、中学生男子の一番胸キュンから遠い獣性を正すチャンスも少ないまま、当然山田の視界に入ることもなく、阿呆な空回りを延々続けてここに至る。<br /> 市川京太郎になれなかったし、なろうとしなかったし、なりようがなかった少年はしかし、ダチ一人いなかった京ちゃんの確かな親友であり、山田を好きになって変わっていく京ちゃんの善さを、山田とは違う角度から受け入れて好きになってくれた。<br /> 彼には彼なりの可能性が確かにあって、それは恋という形に結実しなくとも意味も熱もあるものだということを、今回雨中の決闘は強く滲ませる。<br />  大昔の不良漫画に良くある『雨の河原で殴り合い、大の字に倒れてマブダチ確認』を、体育祭という行事を通じ擬似的に描く今回、足立くんの熱に当てられる形で市川京太郎は、男臭く暴力的ですらある”強さ”を、表に出してくる。</p> <p> それは山田杏奈を鏡にした時出てくる、ナイーブな優しさ……京ちゃんが選ばれ足立くんが選ばれなかった最も大事なファクターが、ただ優しいだけでは終わらぬ強さになるための、大事な火種だ。<br /> 足立くんがいてくれたからこそ、京ちゃんは間違いなく彼らしさの一部である”強さ”をアホみたいな友情の中温めて、それで守れたり踏み込めたりするものも沢山あって、山田杏奈を好きで、それを堂々誇れるような自分に近づいていったのだと思う。<br /> 『バカがよ~~』と内面で罵りつつ、確かに自分にそういう側面もあるスケベなアホっぷりと肩を組んで、好きなこと一緒にいるだけじゃ消えてしまう、等身大の男子中学生としての京ちゃんを、大事に出来たのだと思う。<br /> そういう”強さ”があったから、悶々と考えた挙げ句山田が欲しがってる優しさを手渡す小さな勇気も、送辞で堂々己の思いを白紙のまま告げることも、出来たんじゃないかなと思う。<br /> そうやってバカみてーな青春一緒に送りながら、なりたい自分に近づけてくれた足立くんのありがたみを、京ちゃんも分かっているからこそアホみたいなタイマンを受けて、本心を叫ぶ。<br /> 青臭く、暑苦しく、バカみたいで、とても素敵だった。<br /> 足立くん、京ちゃんの友だちになってくれてありがとう……。(自分で書いてて、何処視点だかサッパリ分からんけども、今の素直な気持ちが”こう”なんだ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>ょうがなかろう)</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第23話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320054857.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320054904.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320054909.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320054916.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320054922.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320054928.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320054934.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第23話より引用</figcaption> </figure> <p> というわけで窓ガラスの向こう側、『興味ないね……』とクールを装い、体育祭という一大イベントから距離を置こうとする京ちゃんは、しかし一年前の彼ではない。<br /> 送辞で全校に見せつけた侠気に、不良オーラを纏った強面ボーイも一目を置き、騎馬戦の”頭”に据えようと声をかけてくるところに、ここまで23話京ちゃんは自分を運んできた。<br /> 自己イメージではクソ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%A2%A5%AD%A5%E3">陰キャ</a>の弱虫なまんまなんだが、なんだかんだ京ちゃんが山田に惚れて以来の軌跡を色んな人がみてて、『あいつ変わったな……』と評価し直している様子は、このお話の随所で見られる。<br /> 誰かを好きになったことで、誰かを好きでいられる自分であろうと自分なり頑張ってあがいてみることが、確かに何かを切り開いていく可能性に対して、このお話はきわめてポジティブだ。<br /> 不格好なカッコよさ、可愛くないカワイさ。<br /> そういうモノが、不自由な青春の身じろぎにはしっかり宿るのだと信じて話を積み上げてきたことが、自分が思っているより強くて熱い市川京太郎の存在を、しっかり支えてもいる。</p> <p> こういう変化を、アホバカなはずの足立くんも至近距離でちゃんと感じ取っていて、一年前食ってかかった自分を謝りつつ、デカくなっちまったマブダチを見つめる。<br /> 普段どーしょうもないクソ中坊やってる彼が、時折見せる繊細な視野の描写は、彼もまた思春期を戦う少年戦士の一人なのだと、大事にしながら話を作っている現れだと思う。<br /> そういう繊細さはありつつ、気恥ずかしく目をそらして『そんなの俺らしくない』と向き合えなかった結果、自分のナイーブさを全力で突き出して山田に深くした京ちゃんとは、ずいぶん違う場所へ来た。<br /> 京ちゃんが保健室のベッドの下、クラス最上位のピカピカ女から溢れる生身の涙と血を見つめたことで始まった関係の、更にゼロ地点。<br /> 山田が京ちゃんを意識する最初の出会いもまた、傷と血から始まっているのはなんとも運命的であるが、足立くんにそういう特別さは訪れない。<br /> 未だ残る傷跡を優しく撫でて、愛しさを確かめるような距離感に自分が置いていかれていることを、彼は持ち前の視力でしっかり確認する。</p> <p> それが理解ってしまった上で、儀式のように敗北したいと願うのは卒業式での南条ハルヤと同じなのだが、憐れまれるよりもフラレることを望んだナンパイに対し、足立くんは京ちゃんとの距離があまりに近い。<br /> かっこよく身を躱すよりも、無様に前のめりに拳を突き出し、本気でぶつかりたい。<br /> その思いがまっすぐ、眼差しと一緒に突き出されて、京ちゃんは避けられないまま受け止める。<br /> ここで差し出された恥ずかしい青春を、自分の全部で受け止める男に京ちゃんはなれていて、躱したくない相手だと思えるくらい、足立くんとはダチなのだ。<br /> そういう友情を、元登校拒否児で世界中全部を恨んでたヤバイやつが掴めているのは、やっぱ良いなと思う。<br /> 一年で伸びたのは背丈だけじゃないと、本人より良く理解っているのが足立くんなのかもしんねぇなぁ……。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第23話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320060423.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320060509.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320060429.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320060435.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320060442.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320060448.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320060456.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320060503.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第23話より引用</figcaption> </figure> <p> 本命の青春激突との間を繋ぐように、山田とのちょっとエッチなハプニングがあったり、ワイワイ楽しい最後の体育祭があったり、日々は楽しく過ぎていく。<br /> 足立くんとはぶつける形で思いを繋げた拳が、山田とは相繋ぐ手のひらになっているあたり、人と人の在り方は様々だし、だからこそ美しく楽しいというメッセージが良い感じに出ている。<br /> 無論このお話、胸キュン青春ラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>なので最終的には山田杏奈との関係に回収されていくわけだが、色んな連中が京ちゃんの周りに集って、困ったダメさも引っくるめて楽しく過ごしている様子には、個別の良さがたっぷりある。<br /> クライマックスを前に、山田ではなく足立くんを焦点とするエピソードがここで挟まるのは、(彼のファンである俺の贔屓目を抜いても)彼らが身を置く世界の豊かさを改めて語り直す、良い構成だと感じる。</p> <p> 父兄も混ざる一大行事とあって、ここまでの物語で関わった人たち大集合のバラエティ回という感じが色濃く、そこもまた良かった。<br /> 前回関係を深めた半沢さんがすっかり山田にメロメロな様子とか、色恋絡まなくてもカンカンは厄介事起こすとか、ラブラブっぷりは娘とよう似とるな! な山田夫妻だったり、やっぱこの騒がしい感じが楽しく好きだ。<br /> 騒がしい行事は相変わらず苦手だが、遠ざけて無視して自分を守る必要も薄くなってて、『ワーワーうるせぇのも結構良いかも……』と思えるようになった、今の京ちゃんを感じられるのも良い。<br /> その一環として足立くんとのじゃれ合いもあって、でもそこにただ友情だけがあるわけじゃないことを、二人共真正面から受け止める戦いがこっから始まっていく。<br /> 皮一枚で保たれていた当たり前の日常、バカバカしくも大事な友情が、決定的な沸騰点に辿り着いてしまう瞬間特有のハラハラとワクワクが、このエピソードは濃いから好きだぁ……。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第23話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320061723.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320061729.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320061741.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320061749.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320061755.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320061800.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320061806.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320061812.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320061818.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第23話より引用</figcaption> </figure> <p> お前もあいつもいい奴だから、無様に負けて納得したかった。<br /> 荒天の中強行された騎馬戦で、足立くんは普段恥ずかしすぎて言えない思いの丈を、至近距離で吠える。<br /> イベントごとだからこそ言葉にできるものが確かにあるのだとしたら、京ちゃんが普段バカにしている浮かれポンチにも十分意味があるなと思いつつ、気づけば大きく差をつけられてしまった恋敵との距離を、バカなまんま前に進めなかった自分を、足立くんは苦そうに噛みしめる。<br /> それが後悔だけで終わらないためには、目の前にいるダチが熱と勢いをこのせめぎあいに足して、本気でぶつかってくれる必要がある。<br /> 山田の前だけじゃなく、雨が覆い隠してくれるこの友達の眼の前でも、京ちゃんが泣いているのが俺は好きだ。<br /> 心のなかに押し留めておけないくらい強いものを、同じ女の子を好きになった友達にも確かに抱えていて、それをクールに押し隠すほうがダサいと思ったから、タイマン受けた。<br /> あまりに不器用に、真っ直ぐ突き出される拳から逃げずに、自分がどれだけ山田杏奈が好きなのか、そうあるためにはどうすればいいのか、ちゃんと答える。<br /> そんな時、市川京太郎という少年は泣かずにはいられないのだ。<br /> そこが好きだ。</p> <p> 足立くんにとって京ちゃんは、クラスのキモくてヤバい奴として始まった。<br /> 初期の二人を見返すと結構当たりが強くて、それは気になってる女の子への牽制含みなんだと思うけど、ある意味京ちゃんをナメてる視線が二人の関係を繋ぎ、しかし眼の前の少年が誰に恋して、誰のためにどんどん強くなっているかを、ダチの距離で足立くんも確かに感じていたと思う。<br /> 自分が前にいたはずなのに、恋でも人間としても追い抜かれて、もしかしたら追い付けない。<br /> そういう現状認識と危惧が、山田と京ちゃんがガンッガンに青春ラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>の主役やる後ろにあって、ここで闘って負けなきゃもう市川京太郎のダチじゃいられないと、結構マジな危機感に煽られたから、足立くんは恥ずかしい決闘に踏み出した気がする。<br /> それに同じ温度で答えて、『俺達の友情は確かに釣り合っている!』と理解らせる京ちゃんも、ダチが青春の大勝負に挑む足場になってやる太田くん達も、見込んだ男のち潮が確かに熱かったことに満足げな<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B9%F4%BE%C2">鵠沼</a>くんも、男の子たちみんな素敵だ。</p> <p> ハチマキの下にある恋心を自分の目で確かめて、無様に泥の中に落ちて雨に打たれて、二人は満足げにカッコ悪い。<br /> そこは男の子の聖域で、山田は遠く見守ることしか出来ないわけだが、この三角形を成り立たせる裏事情をよく知る萌が、だりーの何の言わず一緒に濡れてくれるのも、良き友情の在り方だ。<br /> グイグイ前に出る普段のスタイルを封じられ、なんかワーワー言ってる様子を遠巻きに見つめることしか出来ない山田からのみ摂取できる、正統ヒロイン力ってのは確かにあるな……。<br /> こういうのを際立たせる燭台としても、旧き良きずぶ濡れ河原殴り合いスタイルは有効であり、最近だと”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AC%A5%F3%A5%C0%A5%E0SEED">ガンダムSEED</a> FREEDOM”でも活用されてた印象。<br /> 時代遅れになっても強い類型があるなら、芯を残したままアレンジして使えばいいんだよな~。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第23話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320063223.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320063229.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320063234.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320063240.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320063247.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320063252.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320063259.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240320/20240320063305.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第23話より引用</figcaption> </figure> <p> 望んでいた無様な敗北を掴み取り、山田も市川も嫌いにならないまま一つの決着を付けた足立くんは、なんだかんだしょーもないクソガキであり、新たな恋の予感にタフにときめく。<br /> アニメはかーなり強めの補助線、”萌足”に足してる感じもあるわけだが、バレンタインから繋がってきた仄かな温もりがここでもう一つ温度を上げた感じがあり、大変良かった。<br /> もう一つダメ押し、足立くんが惨めなシリアスに沈まなくていい足場になってくれたお姉が、京ちゃん以外には結構塩対応のクール女子であり、ダダ甘は弟だけの特別扱いって解る所も好きだ。<br /> あまりにも自分のことが好きな身内の、一側面を至近距離で押し付けられて視界塞がっているので、対外的に優れた表情全然見えてない位の距離感、ホント好き。<br /> あと『京ちゃん怪我したって!?』って大急ぎ駆けつけたのに、杏奈ちゃんがカーテンの向こう一緒にいるのを確認してクールに去るところとか、二人への信頼と気遣いが垣間見えて最高。<br /> 好きだ……市川香菜……。</p> <p> さておき戦いすんで日が暮れて、自分のために泥だらけになってくれたダーリンに<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BC%EA%CA%DB%C5%F6">手弁当</a>。<br /> ここでの『うっまぁ……』が、山田パパのスープ食ったときと(おそらく無自覚に)一緒なの、”血”を感じて好きである。<br /> 『お前その”あーん”はもう……もうさぁ……』と、足立くんじゃなくても言いたくなるが、こういうのをヤバいと感じぬままぶっ放せるのが今の二人であり、残り話数でどこに転がしていくのか! という話でもある。<br /> 足立くん相手に本心吠えちまったことは、もう逃げられないスイッチを京ちゃんに入れた感じでもあり、まだこの暖かなぬるま湯で付かず離れず微睡んでいたい心地よさも良く伝わり、さー僕ヤバアニメ最終盤、一体どうなる!</p> <p> </p> <p> という感じの、男たちの体育祭でした。<br /> 俺は京ちゃんが背負えなかった男子中学生当たり前のバカな無神経を、背負って負けに行った足立くんが好きだし、そんな足立くんを大事にしてくれるこのお話が好きなので、大変良かったです。<br /> 山田と京ちゃん二人に狭く閉じたクライマックスに飛び込む前に、色んな人がいるからこそ面白かったお話の善さを、たっぷり味わえもした。<br /> 次回、運命の修学旅行。<br /> 一体アニメがどう描くのか、大変楽しみです。</p> Lastbreath わんだふるぷりきゅあ!:第7話『ふたりのフレンドリベラーレ!』感想 hatenablog://entry/6801883189091872895 2024-03-19T05:54:10+09:00 2024-03-19T05:54:10+09:00 すれ違いぶつかって、涙雨に濡れた後に差し出された思いやり。 二人だけで間違ってしまうのなら、色んな人と話せばいい! 誰かが隣りにいて、自分じゃ見えない何かを手助けしてくれることの意味を描く、わんぷり第7話である。 大変良かった。 まさかまさかの前後編、ケンカの辛さは前回で終わらせて、開幕から晴れ模様が広がり即座に悟くんがこむぎ回収! なスタートから、迷いつつも前向きに、むしろ迷ったからこそ新しい答えが見つかり奇跡が応える展開となった。 スタートからして涙雨は去り、たんこぶモリモリのコミカルな描写で上手くストレスコントロールしてくれたが、大福さんの仰るとおり、生きてればぶつかることくらいは普通に… <p> すれ違いぶつかって、涙雨に濡れた後に差し出された思いやり。<br /> 二人だけで間違ってしまうのなら、色んな人と話せばいい!<br /> 誰かが隣りにいて、自分じゃ見えない何かを手助けしてくれることの意味を描く、わんぷり第7話である。<br /> 大変良かった。</p> <p> まさかまさかの前後編、ケンカの辛さは前回で終わらせて、開幕から晴れ模様が広がり即座に悟くんがこむぎ回収! なスタートから、迷いつつも前向きに、むしろ迷ったからこそ新しい答えが見つかり奇跡が応える展開となった。<br /> スタート<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>て涙雨は去り、たんこぶモリモリのコミカルな描写で上手くストレスコン<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C8%A5%ED%A1%BC%A5%EB">トロール</a>してくれたが、大福さんの仰るとおり、生きてればぶつかることくらいは普通にあって、そこでくじけず立ち上がって顔を上げることが大事なのだ。<br /> しかしこむぎもいろはちゃんも、人生のありふれた難しさを全部受け止めきれるほど強くはなく、そんな人間当たり前の弱さに優しい人たちの助けで向き合いながら、自分たちが何を求めているのか、新たに探していくことになる。<br /> ケンカしない越したことはないけども、間近にベッタリ愛着を張り付かせていては見えなくなってしまうものが、お互い少し離れたからこそ見える回でもあり、いろはLOVE以外なかったこむぎの幼く純粋な世界が、衝突と向き合うことで広がる回でもあった。<br /> こういう形で、悲しい部分もあるけど人間の必然として起こってしまうものを、前向きに捉えよりよい未来に繋げていくエピソードで、新しい奇跡が形になるのは凄く良い。<br /> 新アイテム販促回としても、とてもいい仕上がりだったと思います。</p> <p> </p> <p> つーわけで迷えるこむぎが冷たいアニメの中、辛い思いを続けていたらどうしよう……と、マジビビりながら見始めたわけだが。<br /> そこは作中最強の大人、悟くんがソッコー回収して色々手助けして、道を整え背中を押してくれた。<br /> 持ち前の賢さを優しさと結び合わせ、迷える幼子を優しく抱きとめてくれる男(ひと)、マジありがてぇ……。<br /> 今回の悟くん人間一年生であるこむぎの優しい先生として、こむぎが使い慣れていない思考や言葉をどう扱うか、丁寧に導いてくれていた。<br /> こむぎ自身はその勢いと純粋さに流されて、冷静に俯瞰することが出来ていない自分の感情や行いを、ちょっと離れた所から見定めつつ、暖かく手を伸ばして支えてあげる。<br /> かなり難しい距離感覚が必要とされる行いだけども、悟くんは他人事の冷たさでも、(いろはとこむぎの距離が近いからこそ溺れた)当事者の近さでもなく、非常にいい間合いで泣きじゃくる子どもに、言葉の力を差し出していた。</p> <p> 自分が何を感じているのか、言葉でラベリングすることで新たに考え直し、強い思いが湧き上がってくる源泉を探る。<br /> 前回感情の赴くままいろはちゃんと衝突しちゃったこむぎは、悟くんの問いかけと示唆に助けられて、自分の内面を<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%C0%B8%EC%B2%BD">言語化</a>していく。<br /> それは人の形を得た獣がヒト特有の強さを活かしている場面であり、人間であることに慣れていない幼子が始めて、自分がどんな存在であるかを客観視して制御する、ありふれて大切な心の戦いだ。<br /> これを未熟な自分一人では戦えないから、色んな人が支え守り導く必要があって、しかし自身いまだ子どもであるいろはちゃんは今回、そういう仕事を果たせない。</p> <p> </p> <p> 『なら他人がやりゃーいいだろうがッ! なんのための”社会”だッ!!』ということで、悟くんがこむぎを引き受けることでクールダウンする時間も取れ、賢いお兄ちゃんに色々教えてもらい、本当の願いを見つけ直したこむぎはタクトの奇跡を自分のものにしていく。<br /> 『心のあり方が伴わない限り、変身アイテムは力を貸してくれない』つうのは<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>定番の物語類型ではあるが、前後編どっしり使ってこむぎの今がどんな感じなのか、その幼さと成長にしっかり付き合う話を作ったことで、フレンドリータクトがどういうアイテムなのか、鮮烈に描かれもした。<br /> いろはの役に立つ自分でいることと、タクトを使って新しい可能性を開くことが=で結ばれ、願いと力が一体となって奇跡を呼び込む、変身ヒロインの基本構図がしっかり形になっていたのが、力強くてよかった。<br /> この奇跡に力を貸してくれた悟お兄ちゃんが、与えるだけで終わらず『大福の言葉を通訳してもらう』というリターンがあったのも、こむぎがただ守られるだけの子どもではなく、ちゃんと恩を返し何かに報いることが出来る、パワフルな存在だと感じれた。<br /> 悟くんはマジ賢いので、動物≒他者との根本的な交流不可能性をしっかり見据えていて、それでも大福の声を聞きたい自分の気持ちを大事にもしている。<br /> 理性と情念がいいバランスで保たれている青年が、『世の中そういうもんだよな』と飲み込もうとしていた道理を、犬が人になった奇跡の子どもが力強く蹴っ飛ばして、思いがけずシブい人格してたマブダチの声を聞けたのは、凄く良いことだなと思った。</p> <p> そしてこむが出てってマジビビリするいろはちゃんの悩みを、突破する仕事は猫屋敷妹が担当していた。<br /> 脇目も振らず一心不乱、シコシコ針仕事してんな~~と思っていた行いが、知らない町で初めて出来た友達に素敵な贈り物をするものだと分かった時に、猫屋敷まゆのことをもっと好きになっちゃったな……。<br /> こむぎの姉であるいろはちゃんが、ポジティブでアクティブな積極性、良く拓けて優しい視野を強調される”持ってる”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>なのに対し、まゆちゃんは人見知りで視野が狭い”持ってない”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>として描かれる。<br /> しかしそんな彼女にだって震えながらも世界を変えていく意思があり、それを形にした素敵なハーネスがあり、ケンカしたって邪険にされたって大好きな繋がり方を、あらためていろはちゃんに教えることも出来る。<br /> こむぎ-悟のラインが年長者から教え諭す形になっていたのに対し、いろは-まゆのラインはあくまで対等な友達に、どん詰まりに落ち込んでいた気持ちを持ち上げてもらって、見えていなかった大事なもんを対等に教えてもらう形となった。<br /> 人数増やさずバトルを激化させず、丁寧に時間使って作品世界を編み上げているこのタイミング、色んなやつがいて色んな繋がり方があるからこそ面白いという、多様性の楽しさもまた、ドラマに交えて丁寧に積み上げられているように感じた。<br /> 『次週の初登校回絶対面白くなるだろ~』と思えるのは、こんな風にまゆがどんなキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター性を持っていて、それがどういう化学反応を生み出しうるか、メインストーリーの端っこでしっかり描いているからだと思う。</p> <p> </p> <p> 百獣の王を相手取り、敗北からの再挑戦を描く今回のバトルは、序盤の追いかけっこムードが鳴りを潜め、擦り傷まみれのハードなものになった。<br /> ガルガルを生み出す闇の意思みてーのも顔を出し、いよいよバトル方面にもギアを上げていく感じがあるが、怖いけど、怖いからこそ戦いに踏み出していくワンダフルの決意と尊さを描く意味でも、激しい試練はいい仕事をしていたと思う。<br /> 日常テイストが濃い<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>なので、子どもが傷だらけになりながら使命を果たす非日常に、わざわざ首突っ込む意味は結構丁寧に削り出す必要があると思う。<br /> 言葉でモノを考えることになれていない、動物であり子どもでもあるこむぎが抱え込んだ純粋な願いが、一番大事な人と衝突して未来が見えなくなり、悟くんに改めて問い直されることで、自分だけの答えを言葉にしていく。<br /> 『キュアワンダフルが、何故闘うのか。何故<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>なのか』という、作品の根っこを支える大事な問いかけに真正面から答えれるよう、前後編の全部が注ぎ込まれていて、こむぎらしい真っ直ぐな答えへたどり着けていたのは、とても良かった。<br /> やっぱ強めのクエリーを、しっかり出すのがヒーローの物語では大事だ。</p> <p> こむぎの迷いと発見は、特別な奇跡に見初められた”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>”だからこその悩みであり、同時に凄く普遍的で人間的な歩みだと思う。<br /> 自分が本当は何をしたいのか、わからなくなってしまうことは誰にでもあって、そうして塞がれた視界でぶつかりたくもない衝突に傷つき、涙ながら迷うこともある。<br /> だけどだからこそ問い直せる起源ってのも確かにあって、悟くんやまゆちゃんの助けを借りることで痛みや悩みから距離を取り、自分を苦しませているものが自分の大事なものとも繋がっているような、不思議で面白い真実に目を向けることも出来る。<br /> この客観性はこむぎといろはの距離感にも結びついていて、いろはと一緒でいることに執着して社会性を失いかけていたこむぎは、今回の戦いを経て、”あの”リードへの執着を乗り越えていく。<br /> まゆちゃんが心を込めて差し出してくれたハーネスと、その先にいるいろはこそが大事なのであって、愛と独占欲がベッタリ癒着した危うい場所にしがみつくよりも、もっと広くて強くて優しく、そして賢い場所へとこむぎは、自分を押し上げることが出来た。<br /> それはこむぎ一人で成し遂げたものでも、安楽で痛みがない穏やかさから生まれたものでもなく、ぶつかり傷つけばこそ確かに生まれるものを、肯定して描かれる成長だ。<br /> 優しい誰かの手助けを受けて、人生当たり前の苦しさを乗り越えもっと強くなれる人間の……子どもの可能性を、堂々信じ切ったエピソードだったと思う。<br /> それは凄く”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>”らしくて、やっぱ良いなと思うのだ。</p> <p> こむぎという、人でも動物でもある存在を主人公にすることで、わんぷりは独自の角度から色んなモノを描けていると思う。<br /> 言葉と思考を得たからこそ衝突も起きてし、それを越えて大好きを確かめ前に進む武器になったのも、言葉と思考だ。<br /> 否応なく世界が狭い子どもにとって、身近で間近な最愛は独占して安心したくなるものであり、その執着を自然なものとして描きつつ、それが生み出す難しさをどう飲み干し新しい形にしていけばいいか、細やかに向き合った回だったと思う。<br /> こういう密度と丁寧さで”成長”を削り出してもらうと、そのド真ん中でどんどん善くなっていく犬飼こむぎがどんどん好きになるし、彼女にそういう体験を手渡してくれているこのアニメのことも、もっと好きになるのだ。</p> <p> そして霊長の種族的特色である賢さは、誰かを押しのけ踏みつけるためにあるわけではなく、分かり合い繋がるための優しいメディアとしてあるべき……というメッセージも、人間一年生のこむぎが人間勉強する中で、確かに伝わっている気がする。<br /> 同時にしゃらくさい人間が押し隠してしまう、ド直球で純粋な愛の強さと善さを、幼く真っ直ぐなこむぎを表情豊かに描くことで全面に押し出せるのも、独自の魅力となっている。<br /> ほんっっっっとこむがいろは好きすぎで、しかしその真っ直ぐなエネルギーは生命全部が本来持っているものであり、特別ではないはずなのに特別に思えて、まったく楽しく不思議な<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>で……俺は好きだ、わんだふるぷりきゅあ!</p> <p> </p> <p> というわけで、雨あがれば虹かかる、無敵の愛のお話でした。<br /> 二人が新しく手に入れた力がFriend Liberale……”友情と自由”なの、マジ良いなと思います。<br /> 人の形を手に入れたこむぎはなにかと、二本の足で進み出せる自由を肯定的に叫ぶわけだが、何でも出来る立場には危うさがつきまとい、愛は賢さあってこそより善い形になりうる。<br /> 人が人であるからこそ生まれ、人が人であることを支えてくれる”自由”とは一体どんなモノなのか、獣と人の間に立つ主人公を通じて、一年かけて描いて行くお話になるかな……と感じています。<br /> どーも野放図な自由称賛主義というより、そこに付随する尊厳と責務に……人という獣を繋ぐハーネスの意味について、突っ込んだ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>になってくれるんじゃねぇかな、という期待感。</p> <p> そこは先の話として、値千金の真心を今回手渡した猫屋敷まゆ、次週学校社会に飛び込む!<br /> 職人気質のスーパー<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B1%A2%A5%AD%A5%E3">陰キャ</a>が、見知らぬ人間関係のジャングルにどう踏み込むか。<br /> 既に人生の借り一つ、気弱で優しい友達を全力応援するしかねぇ立場にいる犬飼いろはは、どんな輝きを放つのか。<br /> 色々あるけど犬は犬、社会的立場を適切に得ていないこむぎがどこに突っ走り、何を得るのか。<br /> 次回も楽しみ!!</p> Lastbreath 葬送のフリーレン:第27話『人間の時代』感想 hatenablog://entry/6801883189091632537 2024-03-18T06:30:42+09:00 2024-03-18T06:30:42+09:00 難攻不落の迷宮を攻略し、待ち構えるの最後の試練は思わぬ方向へ。 バトルまみれの後半クールを締めくくる、世界最高の魔術師によるスーパー主観クライマックス、フリーレンアニメ第27話である。 あんだけ趣向を凝らした新世代ハンター試験やっておいて、最後の最後でゼーリエ様の思し召しが飛び出してくるの、やっぱヘンテコなお話だな……そこが好きだが。 というわけで試験を終えて一休み挟みつつ、最後はあっさりノーバトル、協会のトップの直接面接で決める展開となった。 一級に似合わないヘナチョコもPullして合格させてしまう、フリーレン規格外の実力が生み出した結果ではあるのだが、閉鎖空間でのデスゲーム、協力型の迷宮攻… <p> 難攻不落の迷宮を攻略し、待ち構えるの最後の試練は思わぬ方向へ。<br /> バトルまみれの後半クールを締めくくる、世界最高の魔術師によるスーパー主観クライマックス、フリーレンアニメ第27話である。<br /> あんだけ趣向を凝らした新世代ハンター試験やっておいて、最後の最後でゼーリエ様の思し召しが飛び出してくるの、やっぱヘンテコなお話だな……そこが好きだが。</p> <p> というわけで試験を終えて一休み挟みつつ、最後はあっさりノーバトル、協会のトップの直接面接で決める展開となった。<br /> 一級に似合わないヘナチョコもPullして合格させてしまう、フリーレン規格外の実力が生み出した結果ではあるのだが、閉鎖空間でのデスゲーム、協力型の迷宮攻略と来てこの流れは意外……なんだが、このお話らしくて妙にしっくりも来る。<br /> 『ゼーリエ様の独断ならしゃーないか……声も<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%CB%C0%A5%E7%FD%E8%BD%CC%E9">伊瀬茉莉也</a>だしな……』と思える、格と超<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC">ツンデレ</a>っぷりもたっぷり積み上げてくれて、特権を約束する一大事がザクザク決まっていく気持ちよさもあって、個人的にはなかなか面白い。<br /> カンネ以下の有象無象が不合格になる理由を、ここまでさんざん掘り下げてきた”イメージ”に担当させるのも、大鉈振るっているようで一貫性があったように思う。<br /> 一級魔術師になった自分が、その特権で何をするのか。<br /> その地位それ自体が魔法であるような場所にたどり着くには、魔法使いとして一番大事な資質を見せなければいけないし、それを見抜く眼力は確かに、ゼーリエにはある。</p> <p> </p> <p> 三次試験へ向かう合間、お久しぶりなシュタルクを交えつつホッコリ人情噺が展開されていくわけだが、ここのトーンとゼーリエが愛弟子を見る視線がすれ違うつつ重なるのが、なかなか面白かった。<br /> すっかり孫みが板についたラオフェンが、不器用にリヒターを気遣うデンケンおじいの代弁する様子とか、『コイツ……最後だからって完全にブレーキ壊してきた!』という距離感でイチャイチャキャッキャするカンラヴィとか、大変良かったが。<br /> 定命共が比較的分かりやすい形で顕にする情を、時代も命も自分を置き去りにしていく定めを飲み込んでいるゼーリエは、尖った形で表に出す。<br /> 苦み辛み濃いめのソリッドな<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC">ツンデレ</a>で、かなり俺好みの味してんだよなゼーリエおばあ……。</p> <p> クールな罵倒と冷たい値踏みで、超越者然と構えて周囲を睥睨し、花を愛でつつも花から愛でられることはない……と思いつつ、かつてフランメの思い出を語った時に滲んでいた情は、現役世代にもしっかり向いている。<br /> フリーレンの魔力隠蔽を唯一見抜いた、レルネンの眼力と鍛錬……それに奢らない謙虚さを誇りに思いつつも、その才が時の流れに飲まれていく無常を嘆く言葉には、皮肉な色合いが濃くなってしまう。<br /> いうたかて、レルネン自身はお師匠様が『そういう人』だってのは(多分最初の弟子であるフランメと同じく)良く解っていて、だからこそ紅顔の美少年がしわくちゃジジイになるまで、側に仕えて学んできたのだろうけど。<br /> 彼女が描かれる時、常に花園に立つのはフランメを象徴する”花畑の魔法”の覆い焼きであると同時に、咲けば散ってしまう儚さをそれでも愛でる、永生者の分かりにくい愛を結晶化させてもいるのだろう。<br /> そういう不器用で分かりにくい生き方をしている人の側に、彼女を解ってあげれる人がいるのは良いなぁ、と思う。</p> <p> </p> <p> とここまで書いて気づいたのだが、『分かりにくい永生者を分かってあげれる愛弟子』つう構図は、フリーレンとフェルンと全く同じなのだな。<br /> 出会った頃はまだ隠遁者の硬さが残り、自分が何を楽しんでいるか分かりにくい硬質美少女だったわけで、ハイターも『<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%ED%A5%EA%A5%D0%A5%D0%A5%A1">ロリババァ</a>の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C4%A5%F3%A5%C7%A5%EC">ツンデレ</a>、分かりにくいけど食ってみると極上だから!』とアド<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%A4%A5%B9">バイス</a>したわけだが。<br /> 他ならぬフェルンを弟子として義娘として、旅の仲間として十年伴に過ごす中で、ふにゃふにゃ甘えん坊マスコットとしての才能を開花させ、何を楽しみ何を愛しているか、分かりやすい人になっていった。<br /> ブーブー文句たれつつ、リヒターおじさんを巻き込んで大事な杖を修理して、フェルンの大事な思い出を守ってあげる気遣いあればこそ、瞬く間に散ってしまう花々が一つ一つ、かけがえなく咲いている今を寿げもするのだろう。<br /> 逆に言うと一般的なエルフは、自分からすればあまりに刹那的な人間たちの時間間隔に寄り添えなかった結果、種族全体としては衰退してんのかな……とも感じるが。</p> <p> フリーレンがそういう、刹那を愛でる永遠になれたのはもちろん、色んな人との縁あってのことだ。<br /> 時の重さに閉じられそうになっていた彼女のまぶたを、決定的に開いたヒンメルとの出会いに、フランメが愛した魔法が深く関わっていたこと……話の主軸になる二人の関係が、神話スケールのおねショタだったことが判明などもし、界隈が更地になったわけだが。<br /> いやー……27話話を牽引してきた関係性の”起点”が、残り一話ってこのタイミングで暴かれた上に、『あまりに美しいものとその名も知らず出会ってしまい、後の人生全部その色に染められてしまった』つう麗しい呪いだと解るの、あんまりに強いよ……。<br /> 永遠に若きフリーレンがヒンメルを勇者と呪うだけでなく、人生全部を……その死すらも使い切って愛した人が淋しくないよう、世界中に埋めた花束をフリーレンが探り当てているお互い様な関係なの、あまりに……あまりに……。<br /> ここまで気楽な調子で『仲間になったのは偶然!』みてーな回想パなしてきたのが、今回”起点”描かれたことで全部ひっくり返り、『ヒンメルの魔法使いは、最初っからフリーレンだけだった』つう”事実”がそびえ立っていくのも、気さくな笑顔の奥に隠した感情がデカすぎてヤバすぎる。<br /> 話数が積み重なるほどに、『勇者はまさしく勇者だった……』と思わされるキャラなの、凄いよねぇ……。</p> <p> </p> <p> フリーレンは何を答えても、ゼーリエが自分を落とすと確信して試験に挑む。<br /> それは散る花を愛でる永生者の共鳴であり、師匠の師匠、弟子の弟子として魔導を追求し続けた高達だけに見えている、必然の風景だ。<br /> フリーレンの目的は一級資格を通行証にして、皆で旅を続けることだから、何やってもフェルンが受かると確信している以上、自分の合否は問題ではない。<br /> ゼーリエがフランメに、レルネンに、あるいはフェルンに求める、自分と同じ領域まで……それ以上の高みへと上がってこれる理想の魔法使いに、自分はなれなかった。<br /> 魔力隠蔽に無駄な時間を費やし続け、必殺の機を強引にもぎ取る泥臭さは、魔法浪漫を魔王亡き世界に再生させようと協会を作ったゼーリエとは、根本的に相容れない。<br /> しかしそこが重ならなくても、一千年後の人間の時代を鋭い眼力で見据え、静かに人の世に寄り添ってその時を待ち、いざ時が来たら表舞台に上がって傲慢に夢を形にしていくゼーリエのことを、フリーレンは信じている。<br /> 自分もまた、エルフにのしかかる時の重さに抗って、人の世に交じることを選んだからこそ、理解るものがあるのだ。</p> <p> それが叡智と呼ばれるにはあまりに卑近で、当たり前に大事な誰かを慈しむ気持ちなのが、僕はすごく好きだ。<br /> これを生来分かり得ないから、魔族は人類の天敵、コミュニケーション<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C7%BD">不能</a>な猛獣なのだろう。<br /> フリーレン達高位エルフがどれだけ規格外の実力を持ち、人間一個殺す程度何の苦労もないことを、二次試験のスーパーバトル作画は良く教えてくれたが、同等以上の力を持っていても、彼女たちは人食いの猛獣にはならない。<br /> 牙の鋭さが人の尊さを決めないと、自ら学び人と触れ合う中で理解できる力が、エルフを賢者にしているのだ。<br /> この善さを娘として弟子として旅の仲間として、一番の至近距離で浴び続けたフェルンがフリーレン信者になっているのは、メチャクチャ納得がいくし、それで合格もぎ取っていく流れも良かった。<br /> ヒンメルの人生も世界救うほどにネジ曲がったし、クールな顔して人間としての存在質量、それが生み出す重力が強い女(ひと)なんだな、フリーレンは。</p> <p> 想像できないものは、実現できない。<br /> ゼーリエが夢見つつ自身では成し遂げられなかった、魔王がいない人間の世界へ確かに、儚く脆く咲いては散る花たちは辿り着いて、彼らだけの魔法を成し遂げた。<br /> 個としてゼーリエを超える魔法使いはいないだろうが、種としては既に乗り越えられていて、旧き種族最後の責務を果たすように、『魔法使いの高みはここに在る』と己の存在で告げる。<br /> 市井に混じっての旅路に、小さな幸せをその目で確かめ手で掴む道を選んだフリーレンとは真逆の生き方だが、そこには人間存在への確かな愛しさがある。<br /> ゼーリエが全ての魔法を知っているということは、フリーレンが収集する数多の民俗魔法も、そこに込められた人々の祈りも、なんだかんだ理解っているということだ。<br /> 分かった上であの態度しか取れないってのが、なんとも面倒くさく愛しい人である。<br /> </p> <p> </p> <p> という感じの、一級魔法使い選抜第三次試験でした。<br /> 今までと毛色の違う選抜を最後に置くにあたって、全権を握るゼーリエがどういう人間なのか見せないと飲み込みにくい所でしたが、彼女の硬い外装を崩すことなく、内側にある豊かさを良く描いてくれて、大変良かったです。<br /> モチーフに選んだ花の作画が最高に良くて、表に出づらい内心を的確に象徴できていたのが、良く効いてたと思います。<br /> つくづく超絶ハイクオリティを良い方向に活かしながら、ドラマや表現と噛み合わせながら走りきったアニメも、残り一話。<br /> 次回も楽しみですね!</p> Lastbreath うる星やつら:第33話『あやかしの面堂/最後のデート』感想 hatenablog://entry/6801883189091471757 2024-03-17T15:58:30+09:00 2024-03-17T15:58:30+09:00 少女幽霊が囚われた夢は、真夏に揺れるスノードーム。 原作屈指の名エピソードを見事に描ききる、令和うる星第33話である。 軸足は明らかに第2エピソードにある構成だが、タコの生霊と少女の幽霊、二つの”霊”をブリッジにしてエピソードを繋げ、何かと忘れられがちなサクラ&チェリーの霊媒設定を生かす、面白い作りだった。 第2エピソードがぶっちぎりにロマンティックでエモーショナルなのに対し、第1エピソードは作中屈指の何でもアリ領域、面堂邸を舞台にしてシュールでナンセンスな味わいを全面に出して、ガラリと味を変えていたのも良かった。 第2エピソードのハンサムなあたるも、第1エピソードのしょーもないあたるも、全部… <p> 少女幽霊が囚われた夢は、真夏に揺れるスノードーム。<br /> 原作屈指の名エピソードを見事に描ききる、令和うる星第33話である。</p> <p> 軸足は明らかに第2エピソードにある構成だが、タコの生霊と少女の幽霊、二つの”霊”をブリッジにしてエピソードを繋げ、何かと忘れられがちなサクラ&チェリーの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%EE%C7%DE">霊媒</a>設定を生かす、面白い作りだった。<br /> 第2エピソードがぶっちぎりにロマンティックでエモーショナルなのに対し、第1エピソードは作中屈指の何でもアリ領域、面堂邸を舞台にしてシュールでナンセンスな味わいを全面に出して、ガラリと味を変えていたのも良かった。<br /> 第2エピソードのハンサムなあたるも、第1エピソードのしょーもないあたるも、全部ひっくるめて”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%A6%A4%EB%C0%B1%A4%E4%A4%C4%A4%E9">うる星やつら</a>”の主役であり、短編連作だからこその芸幅の広さ、傑作選だからこその連続性が、良く効いていた。<br /> そもそもタコをペットにして、館ひっくり返しての探索行に勤しむあたりでぶっ飛んでいるわけだが、『枕に迷い込んだタコの生霊が、主に助けを求めていた』というオチも大概であり、おまけに最後に出された謎掛けもシレーっとトボケた返しでどっかにぶっ飛んでいって、落ち着くトコロなく話はまとまっていく。<br /> この極めて投げっぱなしなナンセンス・テイスト、一歩間違えればドン滑りな語り口だと思うのだけど、”うる星”がもつ洒脱な魅力(を、新しい表現で新たに蘇らせんと頑張っている制作陣)が良く活きて、らしい味わいに仕上がっていた。<br /> こういうワケの分からない、でも確かに面白いネタを力みなく投げつけられると、『ああ、うる星食ってるなぁ……』としみじみ思えるのは、なかなか面白いものだ。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”うる星やつら”第33話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317152641.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317152648.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317152654.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317152702.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317152707.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317152713.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317152720.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%A6%A4%EB%C0%B1%A4%E4%A4%C4%A4%E9">うる星やつら</a>”第33話より引用</figcaption> </figure> <p> というわけで本命Bパート、幽霊少女とスケベ男が織りなす、真夏のデート絵巻である。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%F4%C0%B1%A4%A2%A4%BF%A4%EB">諸星あたる</a>という少年が持つ、純情な優しさが全面に出て大変いい話であるが、アニメとして新たに描かれると、身体を失い時が止まった”幽霊”という属性を、見事に生かした話だなと思う。<br /> ガールハントに余念がないあたるが、望ちゃん相手にはいつもニコニコ、押し付けられた真冬の装いも笑顔で飲み込んで、紳士的に過ごせている。<br /> それは性欲滾らせて追いかけるべき身体が彼女にはなく、しかしその残影に囚われて恋を求めていることを、出会って語らう中ですぐさま知ったからだと思う。<br /> あたるはスケベで卑俗な浮気性を装いつつ、セックスへの入口としての恋愛も、その先にある身体の触れ合いもホントのところはさっぱり解っていない、イキったクソ童貞である。<br /> そんな彼の本性はどうあがいてもセックスできず、セーターを完成させることも大人になることも、自分が死んだ冬から抜け出すことも出来ない望ちゃんを相手に、彼女が求める理想のダーリンを演じる中で、むしろ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%E3%B2%BD">純化</a>され顕になっていく。</p> <p> 少女の遺品がスノードームなのは大変示唆的で、死んで以来時間が止まっている望みちゃんは眼の前の相手をちゃんと見れる大人になれず、自分を解き放って成仏することも出来ないまま、真冬の恋に閉じ込められている。<br /> それを『間違っている!』と大上段から切り捨てるのではなく、霊がいるのも当たり前、デートもできれば狂人扱いも耐えられる、優しい友人としての距離感であたるが付き合うことで、少女の無念はほどけていく。<br /> あたるは触れられるはずもない望ちゃんの生身が、確かにそこに在るかのようにしっかり握り、彼女が押し付ける理想のダーリン像を、感じられない夏の熱気にうなされながら、頑張って演じきる。<br /> それはラムが危惧し期待していた、スケベでバカな”いつものあたる”とは程遠く……しかしだからこそ、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%F4%C0%B1%A4%A2%A4%BF%A4%EB">諸星あたる</a>の真実を照らす優しい嘘だ。</p> <p> </p> <p> うだるような熱気を感じず、あたるの限界っぷりが見えない望ちゃんは、普段のラムのシャドウでもある。<br /> 理想を押し付け裏切られて、ビリビリ電流で八つ当たりする”いつものうる星”は今回鳴りを潜め、ラムは恋のライバル……になり得ない可哀想な幽霊、幼くして死んだ子どもを遠くから見つめながら、ダーリンが本当はどんな人なのか改めて確かめる。<br /> そんな他者への視線は、変わることが出来ないはずの少女幽霊の目を開き、止まっていた時間を冬から夏へ動かしていく。</p> <p> ドタバタ愉快で、あたる渾身の痩せ我慢で良いデートにもなっている逢引除霊のなかで、望ちゃんは暗い死者の国にいる自分に気づいてしまい、暗闇に囚われる。<br /> 死ぬことの怖さと寂しさすら忘れていた、忘れることでノンキにデートできていた望ちゃんが死者の現実を突きつけられた時も、あたるは優しく隣に寄り添い、存在するはずのないその輪郭を、片袖の不格好なセーターで確かめてあげる。<br /> それは優しくて宇宙一カッコいいクソ童貞の顔であり、ここに至ってようやく、望ちゃんは自分が死者でありながら生者を呪うことがない、未練無き幽霊であることを思い出していく。<br /> 死者が死者であることを思い出してしまえば、もはや消えるしかないわけだが、しかし止まっていた時間をあたるに動かし直してもらった彼女は、恋人の腕に甘え存在しないはずの肉体を、一瞬蘇らせる。<br /> それは死者を蘇らせ、止まった時間を動かし直すという、あたるが成し遂げた優しい奇跡だ。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”うる星やつら”第33話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317154231.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317154237.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317154243.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317154250.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317154256.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317154303.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240317/20240317154309.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%A6%A4%EB%C0%B1%A4%E4%A4%C4%A4%E9">うる星やつら</a>”第33話より引用</figcaption> </figure> <p> 真夏に降るはずもないま白い雪を、あたるの優しい嘘に届けてもらった望ちゃんが消え去った後の、あたる青年の表情が良い。<br /> 鼻の下伸ばしながら女の子を追いかけるいつもの表情の、奥底にある強い感受性と慈悲が嘘じゃないからこそ、肉体もないのに確かにそこにあったと思えた、幽霊少女の面影が消えた時彼は、とても苦しそうにしている。<br /> そんなダーリンの痛みも優しさも、ラムは今回電撃ビリビリすることなく穏やかに見届けて、暑苦しいセーターをまだ着続け散りゆく花を見上げるあたるの、側に残り続ける。<br /> 望ちゃんはこの短くも鮮烈なエピソードで退場していくわけだが、彼女を鏡に照らされたものは確かにあたるとラムの、変わりようがない日常に波紋を残していて、永遠に続く日常が確かに、一つの答えにたどり着く大事なきっかけになっていると思う。<br /> そうなるだけの強さと叙情性がこのエピソードにはあるし、優しい嘘を貫いたあたるのダンディズムを目の当たりにすることで、ラムも僕らもダーリンを更に好きになっていく。</p> <p> 自分が幽霊ならば、こんな素敵なロマンスを主演出来るのかと、ラムは戯けて墓地に問う。<br /> フワフワと重力から自由に飛び交う異性の少女は、確かにどこか幽霊的でもあって、そういう意味でも望ちゃんはラムのシャドウだったのだろう。<br /> しかしいつもの調子を取り戻し、夏服に戻ったあたるは生きているからこそこの後の物語でも、一緒にいられるラムを(極めて彼らしい、素直じゃない言いぐさで)肯定し求める。<br /> 幽霊も宇宙人も当たり前にそこにいて、大事な隣人として向かい入れることが出来るトンデモナイ世界に、主役とヒロインとしてそこに居続けることを寿ぐ。<br /> 生きて騒いで楽しくて、でもそれが当たり前ではないことを死者との触れ合いに学び取って、今回のあたるはちょっと大人びている。<br /> やっぱ好きだなぁ、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%F4%C0%B1%A4%A2%A4%BF%A4%EB">諸星あたる</a>……。</p> <p><br /> これはあくまで夏の夢、素敵で不思議な一瞬の番外編だ。<br /> だがだからこそ、いつもどおりでは描けない素朴な純情が話の主役にちゃんとあって、その気配を痴話喧嘩の中感じ取っていればこそ、ヒロインが彼に夢中であると思い出すことも出来る。<br /> こうい染みる話をしっかり力入れて、見ているものに届くように描いてくれることでのみ、”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%A6%A4%EB%C0%B1%A4%E4%A4%C4%A4%E9">うる星やつら</a>”とはどんな話なのかを各々掴むことも出来て、それはたった4クールの傑作選を編む令和うる星が、アンソロ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>として何を届けたいのか、かなり真摯に教えてくれているようにも感じた。</p> <p>  ”Nunc est bibendum, nunc pede libero pulsanda tellus”(<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DB%A5%E9%A5%C6%A5%A3%A5%A6%A5%B9">ホラティウス</a>『詩集』第1巻37.1)<br /> 死によって確かに終わったはずで、しかし終わりも始まりすらしていなかった恋をロマンティックに優しく終わらせることで、終わらぬ狂騒の中に確かに、終わっていくからこそ美しいものを見つめる視線があることを、しっかり書いてくれた。<br /> そういうエピソードをこの美しさで届けてくれたことが、僕はとても嬉しい。<br /> 大変良かったです。<br /> 次回も楽しみ。</p> Lastbreath わんだふるぷりきゅあ!:第6話『こむぎ、いろはとケンカする』感想 hatenablog://entry/6801883189091363305 2024-03-17T07:16:44+09:00 2024-03-17T07:16:44+09:00 人の姿を得、言葉で繋がれるようになったからこそ顕になる、焦りと未熟。 すれ違う心に降りしきる涙雨は、少女たちの未来を閉ざすのか。 まさかまさかの前後編、犬飼姉妹バチバチのぶつかり愛が描かれる、わんぷり第6話である。 大変良かった。 バトル要素を大胆にカットしたわんぷりは、空いたスペースをどっしり活用して、焦ることなくアニマルタウンの日常、いろはちゃんとこむぎが過ごす時間を積み重ねている。 高ストレスなすれ違い展開を、あえて話数またいで描いて行く筆致もまた、そういう長尺の語り口の一つだと思うが、それ故細密に、丁寧に、自然に積み上がっていくものが多い話数で、とても良かった。 生活空間を同じくし、お… <p> 人の姿を得、言葉で繋がれるようになったからこそ顕になる、焦りと未熟。<br /> すれ違う心に降りしきる涙雨は、少女たちの未来を閉ざすのか。<br /> まさかまさかの前後編、犬飼姉妹<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%C1%A5%D0%A5%C1">バチバチ</a>のぶつかり愛が描かれる、わんぷり第6話である。<br /> 大変良かった。</p> <p> バトル要素を大胆にカットしたわんぷりは、空いたスペースをどっしり活用して、焦ることなくアニマルタウンの日常、いろはちゃんとこむぎが過ごす時間を積み重ねている。<br /> 高ストレスなすれ違い展開を、あえて話数またいで描いて行く筆致もまた、そういう長尺の語り口の一つだと思うが、それ故細密に、丁寧に、自然に積み上がっていくものが多い話数で、とても良かった。<br /> 生活空間を同じくし、お互いの個性を至近距離でぶつけ合わせる暮らしの中で、まだ未熟な精神を抱えた子ども達がぶつからないのも不自然であるし、衝突の根源にはお互いを思う愛があると、いがみ合いの中にしっかり描いてくれる回でもあった。<br /> 人間の形を手に入れ、お話したり道具を使ったり、出来ることが増えたはずのこむぎはだからこそ、自分が出来ないことに衝撃を受けて、それをどこに持っていったものか、良く分からない。<br /> それは言葉を得た獣の姿であると同時に、変化していく心身に戸惑いながら成長していく子どもたちの似姿でもあって、自分の気持ちを上手く言葉に出来ない所とか、制御できずお姉ちゃんにぶつけちゃう所とか、メチャクチャ生っぽくて良かった。</p> <p> そういう失敗……であり、変化と成長に従って必然的に起こるアクシデントを受け入れるだけの成熟が、こむぎよりは人生経験豊富でも、未だ子どもでもあるいろはちゃんには足りていない。<br /> だからこそこむぎとの間柄が難しくもなっていくわけだが、それは『こむぎと人の言葉でお話したい!』という夢が叶ったからこそ、人という形を得たからこその、新しい摩擦熱でもある。<br /> だからこのケンカには悲しさばっかりではなく、成長痛にも似た切ない必然と、思いあ言えばこそすれ違ってしまう寂しさと、愛し合ってんだからどうにかなんだろ! という前向きな希望が、色濃く混ざっている。<br /> 子どもらしい思い詰め方からいろはの元を去り、雨に濡れて一人トボトボ歩いていくこむぎの未来が、ケンカする前よりピカピカ眩しくなってくれるのだと、信じられる前編で凄く良かったです。</p> <p> </p> <p> つーわけで、色々良いところある回だったが。<br /> 幼いこむぎが気持ち先行で突っ走って、色んな事情を飲み込めているいろはちゃんとぶつかる構図が、一回”入る”と周囲が見えなくなる特性を持ったまゆちゃんを、姉猫であるユキが気ままに良く見て補佐してあげている様子と、面白い対比をなしていた。<br /> まゆちゃんの過集中気味な気質は、既に示されているように短所ともなり長所ともなりうる、彼女だけの武器だ。<br /> 服飾やメイクにひたすら一本気、脇目を振らず邁進できる特性は、職人として彼女を高みへ連れて行くだろうし、そこで見落とす色んなモノが彼女を孤独にもするだろう。<br /> こむぎがいろはお姉ちゃんにワガママ言って迷惑かける犬飼家のあり方に対し、ユキはそういう困った妹が周囲に目を向けれるよう、いいタイミングでストンとキャットタワーから降りてきて、集中を解いてあげる。<br /> 犬/猫、妹/姉という対照的なキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター性を、こむぎとユキがそれぞれ背負う中で、動物と人間の関わり合い、家族としてのあり方も一面的ではなく多彩なのだと……そのそれぞれが面白く、個別に魅力的なのだと、しっかり書けていた。</p> <p> 今回のお話はこむぎの未熟な振る舞いで色々厄介なことが起こるが、しかし彼女が”悪い”とは描かれていない。<br /> いろはの役に立ちたいのも、ずっと一緒でいたいのも、人間の形を得たばかりのこむぎにとって必然の感情であり、幼い彼女はその気持をどう制御していくのか、まだ学んではいない。<br /> というかこの衝突から、今まさに学んでいる真っ最中なのだ。<br /> それはやはり、真っ白なキャンバスにそれぞれの人生を刻んでいる子ども達のあり方を、こむぎに重ねて描いて行く、野心的で独創的な試みなのだと思う。<br /> ”犬である”という属性を付与することで、幼く身勝手なこむぎの振る舞いに創作的エクスキューズが入って受け入れやすくなり、人間のガキをあるがまま描くなら必ず生まれるノイズを、飲み込みやすくする工夫。<br /> それが、”わんだふるぷりきゅあ!”の主役(そう、成熟したいろはお姉ちゃんではなく、間違えまくり好き放題なこむぎこそがこの話の主役である意味は、相当デカいと感じている)には施されていると思う。<br /><br /> 気持ち優先で突っ走ったら、やりたいことも上手く行かなくなってしまう。<br /> 児童特有の万能感をくじかれ、自分を包囲する世界には色々ままならないことがあるのだと、傷つきながら学んでいく普遍的な旅を、今こむぎは必死に進んでいる。<br /> そこには怖いことも出来ないことも沢山あって、そのままならなさを抱きしめ噛み砕いていくことで、幼い自分なりに出来ること、やりたいことも見えてくる。<br /> そこにやる難しさやややこしさ、面倒でイラガっぽい幼年期の手触りもひっくるめて、こむぎの気持ちとふるまいを丁寧に描いていこうという姿勢が、今回の前後編にはあったと思う。<br /> こむぎはとにかくいろはが大好きで、ずっと一緒にいたいし役に立ちたい。<br /> しかし学校に通い家業の手伝いをする社会性を持ったお姉ちゃんは、こむぎだけのいろはではないし、まだ幼いこむぎには出来ないことも沢山ある。<br /> それはつまり、いろはちゃんにとってもこむぎが本当に大事で、役に立つ/立たないを超越したいてくれるだけで尊く大切な価値を、彼女が持っていることと裏腹だ。<br /> そんなお互いの関係の真芯を、いろはちゃんはまだ上手くこむぎに伝えられていないし、こむぎもまた解ってはいない。<br /> それが伝わり解るのは、雨上がった後の仲直りになるのだろう。</p> <p> </p> <p> こむぎの幼さと同じくらい、その幼さを適切にいなせないいろはちゃんの幼さが描かれていた今回、しかし僕は見てて苛立つよりも安心した。<br /> 感情そのまんまに突っ走る動物/子どもとしての顔が濃いいろはを、飼い主として姉として人間として導く立場にあるいろはちゃんは、大人びた物わかりのよさ、周辺視野の広さとコミュニケーション能力の高さが強調されて、ここまで描写されてきた。<br /> しかし彼女もまた、間違いを繰り返しながら様々なことを学び、新しい自分を作り上げていく幼い存在であり、まだまだ至らない部分があればこそ、可能性を豊かに広げるキャンバスを自分の中に持っているはずだ。<br /> だからこむぎのワガママに正面衝突してしまう幼さが彼女にあると、今回しっかり描いてくれたのは、年相応の未熟を作品が許し、一年間の物語を通じていろはちゃんだって、ドンドン学んでドンドン善くなっていけると、伝えてくれた感じがした。</p> <p> この成長の余地は、とにかく自分の気持ちしか見えていないこむぎの、世界の狭さにこそ色濃い。<br /> まだ何者でもなく、自分がどんな存在で周りに何が広がっているのか、人間としての視野が狭いこむぎの、だからこそ純粋でまじりっ気のない愛。<br /> まだ使い方がわからないから、社会と衝突して色々問題も起こるけども、その真っ直ぐな思いは間違いなく<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%BA%A4%A4">尊い</a>もので、より良い使い方を身につけられるよう、皆が教え見守らなきゃいけない。<br /> こむぎの必死さが良く伝わる作画が生きて、見ていると自然にそういう気持ちになってくるのは、大変に良かったと思う。<br /> ほんっっっとこむぎはお姉ちゃんが大好きで、大好きだから上手く行かないことがあって、んじゃあ上手くいく大好きってどういう事なのか、雨に打たれながらも学んでいくしかねぇだろッ! ていう回であった。<br /> こむぎ……お前は全く、役立たずでも間違ってもいねぇ。</p> <p> </p> <p> 今回は犬飼姉妹が感情と未熟に迷う回なので、全体のバランサーとして悟くんがいい仕事をしてもくれた。<br /> ライオンガルガルと向き合い、戦いの本質……”恐怖”を識るワンダフルの描写は大変良かったが、これを理性的に解説し、恐れを飲み込み戦いに挑むための外形を整えてくれてるありがたさとか、かなりいい感じだった。<br /> こむぎは人の話聞かないし難しいこと解んないガキなんだが、今噛み砕けなくても悟くんが見つけてくれたもの、伝えてくれたことがこの後、難しさを乗り越えていく助けには絶対なってくれるわけで。<br /> 子どもの間近に、そういうアシストをしてくれる存在がいるのは、本当に大事で大切だ。<br /> ただの解説役で終わらず、犬飼姉妹の良きサポーターとして人格的にも補佐してくれているの、メガネ男子の株がギュンギュン上がる描写で、俺は嬉しい。</p> <p> あとフレンディがぶっ飛ばされて一瞬、ガルガルに憎々しげな視線を送るんだけども、そういう”敵”もワケのわからねぇ呪いに苦しめられている被害者であり、助けるべき動物なのだと見つめ直して、居まいを整える描写があったのも良かった。<br /> 動物をメインテーマに据える以上、絶対ゆるがせにはしてほしくない仁愛の視線が強くあって、暴れるガルガルを安易に悪者にしない姿勢が徹底されているのは、見ていてとてもありがたい。</p> <p> 今回ガルガルを描写できなかったので、木はなぎ倒され世界は傷ついたまんまで痛々しい。<br /> その荒廃はガルガルの責任ではなく、なんもかんも<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>力で許して癒やしてハッピーエンド! ……とは、なかなか行かない難しさを描く回でもあった。<br /> ガルガルとちゃんと戦えないと、浄化も復興も出来ず世の中悲しいまんまなわけで、『早くタクトを使わなきゃ!』というワンダフルの焦りには、個人的な感情だけではなく一定以上の道理がある。<br /> しかし<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>の力は心の力、大好きな相手も自分自身も見えなくなってしまっている今のこむぎでは、タクトは答えてくれない。<br /> こういう現状を丁寧に積み上げた上で、”ふたり”が力を合わせるからこそ奇跡が生まれ、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%F3%A5%C0%A5%A4">バンダイ</a>様謹製のスーパーアイテムが爆売れする未来も、力強く近づいてくる。<br /> 新アイテム販促としても、丁寧に時間を使って足場を組む作りで、隙がないなぁと思った。<br /> というより、販促ノルマを冷たくこなして空から新アイテム降ってくるのではなく、迷いや悩みも全部ひっくるめてちゃんと描いて、ドラマのうねりが作中の必然として奇跡を生み出す形のほうが、しっくりくるし面白いからな!</p> <p> あと前回辺りからハードさを増しつつあるガルガルバトルで、命がかかったヤバさが加熱していることで、ワンダフルとフレンディの絆があぶり出されてきたのも良かった。<br /> 言うこと聞いてくれない困った妹と喧嘩してる状況なのに、立ちすくむこむぎの盾になる時、いろはちゃんは一切躊躇わない。<br /> それは今ワンダフルが初めて向き合い、飲み干し方がわからない”恐怖”への処方箋を、フレンディが既に得ている証明だ。<br /> 悲しいこと、怖いこと、苦しいこととどう向き合うのか。<br /> 子どもが解らねぇ(から、今必死に学んでいる)人生の苦さを、一歩先征く姉貴はしっかり解っていて、だから足がすくむ土壇場でも正しい行いが出来る。<br /> こういう強さを描く上で、バトルってのは一番いいキャンバスなので、独特ながら適切な使い方してんなーと思った。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>定番の肉弾戦を大胆に変奏しつつも、戦いに描くべきもの、闘うからこそ描けるものをちゃんと見据えて、わんぷりらしく描いているのは、凄く良い。</p> <p> </p> <p> </p> <p> というわけで、衝突のち涙雨、犬飼姉妹初のケンカ前編でした。<br /> ガキ特有の世界の狭さと思い詰め方で、『自分は役立たずで、いろはの隣にいられない!』と雨の中一人進み出してしまうこむぎの姿が、あんまり淋しく悲しく、また泣いてしまった……。<br /> そんなことはねぇ……ねぇのだ、こむぎ。</p> <p> そういう寂しい場所へ心ならずとも愛妹を送り出しちまった責任を、”姉”としては果たさなきゃ嘘だろーが! という状況だが。<br /> 犬飼いろはは”人物”なので、そういう人間が絶対に間違えちゃいけない問題に関して、最高の解答を叩きつけ、こむぎを胸に抱いて人生へと力強く一歩、踏み出してくれると信じております。<br /> 人間生きてりゃ、ぶつかることだってある。<br /> そんな真実を丁寧に刻みつけ物語は、当然『ぶつかったからこそ、解ることだってある『ぶつかったって、愛があれば大丈夫』という、もう一つの真実も描いてくれるでしょう。<br /> それを描けばこそ、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>は<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D7%A5%EA%A5%AD%A5%E5%A5%A2">プリキュア</a>なのだ。<br /> 次回も、とっても楽しみです。</p> Lastbreath 僕の心のヤバイやつ:第22話『僕は山田に近づきたい』感想 hatenablog://entry/6801883189091229985 2024-03-16T18:05:48+09:00 2024-03-16T18:05:48+09:00 新学期にクラス替え……変わりゆく環境から湧き上がる、新たな激震の予感! 鵜の目鷹の目で初恋を弄ばれそうな予感に、僕らの適正距離を探る僕ヤバアニメ第22話である。 と言っても、女性陣は新キャラ交えつつほぼ続投、男衆が丸ごと別クラスに流れる形になったわけだが。 話の中軸である山田と関わり深い人達が相変わらず周囲を固める中で、無責任な恋の賑やかし大好きヒューマン・カンカンに警戒度を高めたり、不思議美少女・半沢さんとの間合いを探ったりする、懐かしくて新しい手応えのあるエピソードとなった。 元登校拒否の激ヤバ少年から、山田に惚れて自分を変えていった京ちゃんが手に入れた、同性の友人との変わらぬ友情なんかも… <p> 新学期にクラス替え……変わりゆく環境から湧き上がる、新たな激震の予感!<br /> 鵜の目鷹の目で初恋を弄ばれそうな予感に、僕らの適正距離を探る僕ヤバアニメ第22話である。</p> <p> と言っても、女性陣は新キャラ交えつつほぼ続投、男衆が丸ごと別クラスに流れる形になったわけだが。<br /> 話の中軸である山田と関わり深い人達が相変わらず周囲を固める中で、無責任な恋の賑やかし大好きヒューマン・カンカンに警戒度を高めたり、不思議美少女・半沢さんとの間合いを探ったりする、懐かしくて新しい手応えのあるエピソードとなった。<br /> 元登校拒否の激ヤバ少年から、山田に惚れて自分を変えていった京ちゃんが手に入れた、同性の友人との変わらぬ友情なんかも垣間見え、相変わらず強張りつつ迷いつつ、他者に極力誠実に向き合おうとする、市川京太郎くんの学校生活を堪能した。<br /> 気づけば明るい充実オーラ垂れ流している”陽”の人間を、呪うようなことも全然口にしなくなってて、あそこら辺の言動は身の内から湧き上がる薄暗くドス黒いモノとどうにかやっていくための、思春期の予防接種みたいなもんだったのかな……などと思う。<br /> 登場当初の京ちゃんだったら、カンカンは最悪に苦手な相手で強めに押しのけていたと思うのだが、コッチの都合お構いなしなビカビカ加減に慄きつつも、なんとかやっていこうと手立てを探っている姿が、小さく積み上げてきた成長を感じれて良かった。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第22話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316172611.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316172617.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316172622.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316172628.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316172635.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316172642.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316172648.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316172654.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第22話より引用</figcaption> </figure> <p> というわけで、要警戒度数の高いヤバ女と同クラにぶっこまれつつ、京ちゃん最後の中学生活が始まる。<br /> お互い好き合いつつも、大事にしすぎてなかなか決定機を得れない主役二人を前に推し進めるべく、『ぜってぇコイツに、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C1%C7%BC%EA">素手</a>で初恋触ってほしくない……』と思えるようなノンデリ人間を隣に置いたのは、なかなかタクティカルな配置と言える。<br /> ここら辺の仕掛けが生き始めるのは今後の話として、俺がこの作品でいっとう好きな場面がちゃんと描かれていて、大変に安心した。<br /> 自分が変われるキッカケになった存在と、同じクラスになった幸運の裏に、教師の、大人の気遣いを感じて、少しツンと背筋を伸ばして”大丈夫”な自分を見せる。<br /> 学園主任と前担任のやり取りは、京ちゃんが釘を差した通り先生たちが、色々難しい袋小路に入りかけた彼らの生徒をしっかり気にかけて、どうにかいい方向に進んでいってくれないか気をもんでいたことを、サラッと描写する。<br /> 京ちゃんもそういう人達に見守られながら、人生良くも悪くも変化しうる可塑性の高い季節を自分が歩いていることを、気づけば意識するようになった。<br /> こっから話は青春ラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>らしく、ドタバタ騒がしくもときめく方向に当然進んでいくわけだが、そこからちょっと離れた、当たり前で大事な優しい学園生活の1ページがちゃんとあるのが、僕は好きだ。</p> <p> そんな暖かなものに守られつつ、山田と京ちゃんは今日も今日も今日とて苦しいごまかしとエッチなハプニングに包まれ、幸せな日々を過ごしている。<br /> ここでパンツ見られるのが少女・山田杏奈ではなく、少年・市川京太郎なところ、このお話らしいヘンテコな平等で大変好きだが、カンカンのハチャメチャ提案に目を輝かせつつも、色々防壁張ってくれる萌子の存在がありがたい。<br /> 傍から見れば超バレバレ、ラブラブオーラ垂れ流しで山田も京ちゃんも日々を過ごしとるわけで、恋愛ハイエナがクラスに混じった最高学年、望む方向に進みたいならちっと気は使わなければいけない。<br /> ……のだが、二人共スーパーピュアなので嘘つくのは下手だし、小器用に人間関係を乗りこなすのも無理だしで、どうやってもギクシャクドタバタ、大変愉快な感じに転がっていく。<br /> この力みと強張りが、生来の善良さから出て可愛らしくも滑稽な所が、このお話のチャーミングさを支えているのだと思う。</p> <p> </p> <p> 女性陣とは同じクラスになれたが、男衆とは離れてしまった京ちゃん……なんだが、花見にも行った同性のダチとは良い距離感を保っている。<br /> ガサツで遠慮がない……ように見えて、色々ナイーブな足立くんの善さやありがたさを京ちゃんがちゃんと解っていて、変に誤魔化したり嘘ついたりしたくない、マジの友情で繋がろうとしている姿が、やはり愛しい。<br /> 山田への恋慕を<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%AF%C7%FA%BA%DE">起爆剤</a>に、京ちゃんは自分を変え(あるいは失いかけたものを取り戻し)前に進み、自分を包む小さな社会の中での立ち位置と、繋がり方を変えてきた。<br /> 時にうっかり失言も飛び出すが、笑ってメンゴですむいい関係をこうして掴めているのは、縁と幸運に恵まれ、それを活かせる自分を京ちゃんが作ってきたからだ。</p> <p> このお話はラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>ディだから、山田との関係性を中心に話が組み立てられていく。<br /> でもそれだけが世界の全てではなくて、中学3年生になりたての少年を見守り、繋がっている人たちの表情も、色んなところで描かれる。<br /> 逞しさを増した京ちゃんに安心した表情を見せた先生たちや、クラス別れたってダチな足立くんたちや、ヘンテコな部分もあるけど優しい家族とも、縮こまらず世界に手を伸ばせるようになった京ちゃんは、確かに繋がっているのだ。<br /> 中学受験失敗という、どこにでもありふれているからこそ切実な挫折からなんとか這い上がって、手放しかけていた自分の善さをもう一度取り戻して前に進んでいく、当たり前な思春期の戦い。<br /> 京ちゃんが立ち向かう平和な戦場に、色んな人がいてくれるのがやっぱり、僕は好きだ。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”僕の心のヤバイやつ”第22話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316174442.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316174449.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316174456.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316174502.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316174508.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316174514.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240316/20240316174520.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”僕の心のヤバイやつ”第22話より引用</figcaption> </figure> <p> そんな市川京太郎の世界に、新たに迷い込んできた不思議な闖入者、半沢ユリネ。<br /> 感情表現が下手くそで得体が知れない、どっか京ちゃんと似たオーラをキレイなお顔に包んで、なかなか距離感掴むのが難しい相手である。<br /> 話してみるとぽわっと柔らかな内面を持っていて、どこか幼いトコロ含めて共通点も多いのだが、知らぬ同士が集まるクラス替え直後、ぎこちなくも微笑ましく、探り探りの時間が続く。<br /> カンカンがド派手に鳴り物かき鳴らしながらイヤ圧力をかけ、反発でストーリーを先に進めていく仕事をしているとすれば、半沢さんは素朴で柔らかな好奇心から恋する二人に近づいて、お互い抱えているものが何なのか、改めて問い直すようなキャラである。<br /> ここら辺、新しい関係性が構築されていく新学年だからこそのうねりであり、なかなかに面白い。</p> <p> 二人のラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>固有結界と化しつつある図書室にも、半沢さんはスルスル迷い込んでカーテンを開く。<br /> 布一枚垂らせば、息遣いすら感じ取れれる密着距離感が衆人環視の中確保できると思い込んでるあたり、京ちゃんも山田もどっかズレているわけだが、そこがあくまで誰かと繋がった”社会”の一端であることを、半沢さんはペロンとベールを捲って教えてくる。<br /> 学校という社会が小さいながら、他者と隣り合って成立している場所な以上、『二人きり』と二人が勝手に定めた場所は開かれて危うい場所であり、カーテンの向こう側にはいつでも他人がいる。<br /> いる上で、『二人きり』がとても大事な京ちゃん達はどういう距離感を選び取り、どういう繋がり方をするべきなのか。<br /> 下手くそな文字で書き綴った手紙の中、もう隠しようのない気持ちが溢れかえっているこの状況で、そういう事が問われている。</p> <p> </p> <p> 無論半沢さんは悪意も揶揄もなく、ぽやーっと純粋に『恋とはどんなものかしら?』を知りたがっているだけだ。<br /> そういう人だから、『忘れていった図鑑に、手紙を挟んで返す』という、どっか幼いアプローチが心の波長にピッタリあって、山田はあっという間に至近距離へ滑り込む。<br /> カンカン相手にグイグイ間合い詰めた時もそうだが、山田生来の毒気のなさがスペックの高さを巧く打ち消して、妬まれず憎まれないベストポジションに彼女を押し上げている感じあるね。<br /> 半歩間違えれば色々敵を作りそうな造形なんだが、ここの釣り合いが精妙だからこそ、善良な人達が集う前向きな作風が維持されていると、山田杏奈が新しい友達を作る過程に刻んでいくエピソードとも言えるか。</p> <p> 自分がどれだけ市川京太郎を好きになって、これからの未来を大事にしたいか。<br /> 山田が手紙に綴った真心を、無下にしない善良さが半沢さんにはあって、こじれるかと思った不思議少女との<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%DC%BF%A8">接触</a>は、とても良い距離感で落ち着いていく。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CA%A5%C1%A5%E5%A5%E9">ナチュラ</a>ルに近いパーソナルエリアに、強い顔面がガッチリ噛み合って、ちっと体温上げすぎたがそれはそれだッ!</p> <p> ここら辺の関係構築の外野に立ちつつ、新しく出会った他者がどんな人なのか、おっかなびっくりちゃんと見ようとしてる京ちゃんも描かれていて、そこも良かった。<br /> やっぱこー、他者と向き合い繋がり、面倒だけど孤独でもない自分をどうしていきたいのか、どう他人と向き合っていきたいのか……不器用に一歩ずつ、適切なコミュニケーションを学んでいく季節の手応えが確かなのが、俺は好きだ。<br /> 『コイツはこういう奴!』とすぐさま決めつけず、相手の顔見て向き合い方を決めれる、当たり前と思われているけどとても難しい、だからこそ心の奥底で望んでいた、ヤバくない自分に京ちゃんも、ゆっくり近づいていっている。<br /> そういうコミュニケーションの真ん中に、山田杏奈への慕情が熱く燃えているのが、作品の力強いエンジンになってるのが、凄く良いなと思う。<br /> 山田杏奈が好きでいることで、市川京太郎はどんどん、善い人間になっていく。<br /> そうなれるような恋は、やっぱ素敵だ。</p> <p> </p> <p> という感じの、波乱の新学年開幕でした。<br /> ニューカマーとの向き合い方に悩みつつも、22話分しっかり成長している様子も感じ取れ、でもまだまだ自分をより善くしていく真っ最中な半煮え感も、ぷにぷに愛おしい。<br /> 桜の季節が終わり、爽やかな風が吹いてくる物語がこの後、どういうクライマックスに向けて加速していくのか。<br /> 次回も楽しみです。</p> Lastbreath ダンジョン飯:第11話『炎竜1』感想 hatenablog://entry/6801883189090991866 2024-03-15T18:16:21+09:00 2024-03-15T18:16:21+09:00 妹を冥府から取り戻すべく、魔物を喰らい辿り着いた深き廃都。 想像以上の火竜の実力に、用意した算段が全て瓦解してなお、腹をくくって進むしか無い土壇場に、血みどろの死闘が咲き乱れる。 食うか食われるか、”ダンジョン飯”が安全なグルメ観光ではない証明を赤い色で描く、ダンジョン飯アニメ第11話である。 というわけで1クール目クライマックス、旅の最初から追い求めてきた火竜との決戦である。 序盤はややコミカルに転がる戦いは、センシ渾身の『腹をくくれ!』を呼び越えに作画もケレンを帯びて心地良く崩れ、片足食わせることで命を貰う、ライオス覚悟の秘策で決着していく。 最初からTRIGGER味全開というわけではなく… <p> 妹を冥府から取り戻すべく、魔物を喰らい辿り着いた深き廃都。<br /> 想像以上の火竜の実力に、用意した算段が全て瓦解してなお、腹をくくって進むしか無い土壇場に、血みどろの死闘が咲き乱れる。<br /> 食うか食われるか、”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>”が安全なグルメ観光ではない証明を赤い色で描く、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>アニメ第11話である。</p> <p> というわけで1クール目クライマックス、旅の最初から追い求めてきた火竜との決戦である。<br /> 序盤はややコミカルに転がる戦いは、センシ渾身の『腹をくくれ!』を呼び越えに作画もケレンを帯びて心地良く崩れ、片足食わせることで命を貰う、ライオス覚悟の秘策で決着していく。<br /> 最初からTRIGGER味全開というわけではなく、このお話らしい軽やかな味わいから決戦を始めたことで、逆にマジで生きるか死ぬか<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%E6%B0%EC%BD%C5">紙一重</a>な強敵との戦闘が、ピリッと引き締まった感じもある。<br /> 前回色々用意していた算段は総崩れ、仲間たちが命懸けで作った活路を何とか駆け抜け、新たにひねり出した秘策で勝利をもぎ取る展開も、この迷宮で行われている闘争がどんなものであるのか、そこで生きて死ぬことの手応えを生々しく伝えてきて、大変良かった。<br /> 楽観混じりに組み立てた予測が全部裏切られたとしても、足一本龍の口に突っ込むとしても、成し遂げなきゃいけないことがあるからライオス達は<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%C1%B8%B1%BC%D4">冒険者</a>となり、この戦いに挑んでいるのだ。<br /> 美味そうな飯をドタバタ楽しい冒険のなかかっ喰らっていた物語が、実はずっと取っ組み合っていた『食うこと』の深奥へ、更に一歩踏み込むようなバトル……素晴らしかったです。</p> <p> </p> <p> アダマント鍋で炎を防ぎ、建物の下敷きにして動きを封じ、ケンスケでとどめを刺す。<br /> 先週あんだけ準備して組み上げた作戦は、実際火竜と向き合ってみると全部上手く行かず、しかしそのままならなさが、逆にダンジョン稼業のシリアスな重たさを巧く教えてくれてもいた。<br /> 思わぬところでおっ死ぬし、大成功ばかりが待ち受けているわけではないが、それでも知恵と勇気と覚悟を絞り出して、どうにか死地を越えていく。<br /> そういう経験を既に経ているライオスにとって、算段が全部崩れる窮地は確かにピンチであるが、我を忘れて泣きわめくものではない。<br /> そういう危機に食らいつき、牙を立てて、噛み砕いて飲み干す貪欲さあってのダンジョン暮らしであり、朗らかな人柄でここまでの冒険を楽しくしてくれたセンシも、戦士としての逞しさを全面に出す。<br /> 『俺を戦闘要員に数えるな!』と言っていたチルチャックも、逸るライオスを切り札に温存するべく前に出て、龍の目を潰す殊勲を立てる。</p> <p> 男衆の覚悟に比べると、数字の上では長く生きてるはずのマルシルは全くどんくさくパニクっていて、しかしその感情豊かで脆い所も彼女らしさだと、僕らは既に知っている。<br /> 仲間を思うからこそ混乱してしまう気質を、なんとか飲み込んで仲間の元へ駆け出し、爆裂魔法をロケットジャンプに使う機転で、勝利への道を切り開いてもくれた。<br /> 何しろファリン復活という、旅の大目的がかかった大一番なので、パー<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A1%BC">ティー</a>全員が死力を尽くし、自分のやれることを全部やりきって勝利に近づいていくのが、見応えがあって良かった。<br /> 先週は一か八か過ぎると却下してた、『竜の首に飛び乗って倒す』って案が結局決め手になる所とか、予測通りには転がらず命懸けのギャンブルも時には覚悟の、冒険野郎らしさが良く出てました。</p> <p> </p> <p> 大ボスとの激震バトルということで、今回は魔物グルメなし! ……と思いきや、ライオスが己の骨肉を竜に喰わせるという、食べる側と食べられる側が逆転した”料理”が描かれていた。<br /> 喰われる側が負ける側というわけでもなく、足を食わせて逆鱗を貫く一撃は見事のクリティカル、勝敗の天秤もまたギリギリで逆しまに傾いて、ライオス達は血みどろで勝利を掴み取る。<br /> 赤龍の鱗、燃え盛る炎、流れ出す血しぶきと、”赤”が鮮明な回であったのは、実はシャレになる範囲でダメージ描写を抑えてきたこのお話が、一つギアを踏み込んで火竜決戦のシリアスさを演出していたのと、巧く歩調を合わせていたと思う。<br /> センシの獅子吼が思い出させたように、ここまでの旅で行われた”料理”は、相手の命を奪う”戦い”でもあって、明るく楽しい食卓には常に、死力を尽くして屠られた魂が乗っかっていた。<br /> ならば躊躇いつつも盤上この一手、竜に食い殺された妹の痛みを思って恐怖を乗り越え必勝の一撃に賭ける決断は、ダンジョンに確かにあった日常の延長線上にある。</p> <p> あそこでライオスがちゃんとビビってて、それでも自分の命も妹への情も飲み干して踏み出す描写があるの、俺凄く好きなんだよな。<br /> あいつ確かに激ヤバ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>レ人間だけど、自分や家族や身内に何も感じていないわけじゃないし、だからこそ妹救うために逆風の中迷宮に潜り直すことを、選んだわけで。<br /> そういう決意があるから、人間の”普通”ってのが巧く飲み込めない彼の不自然さや不器用さ、不気味さが消え去るわけじゃないけど、何かがズレてる変人だって、人間の一番弱くて強い部分を、持っていないわけじゃない。<br /> ギリギリの所まで追い詰められてなお、諦めず逆転の秘策を編み上げる戦術家としての才も含めて、彼が英雄の器、主人公の資格を持っていると伝わる、良いクリティカルでした。<br /> いやまぁ、思いついてもアレやれちゃうのは、どっかぶっ壊れているなと俺も思うけどさ……。</p> <p> </p> <p>  かくして強敵を打ち倒し、荒っぽい治療魔法で傷を癒やした後は、火竜の腹を探ってファリンの遺体を探索することになる。<br /> 常識外れの竜の巨体を探る時、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DF%A5%B9%A5%EA%A5%EB">ミスリル</a>包丁をツルハシにした炭鉱掘りの様相を呈しているのが、”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>”だなぁという感じでいい。<br /> 火竜の身体はファリン復活の可能性を奥深くに隠した、一つのダンジョンなのであり、試行錯誤を繰り返しながら、時に血に濡れながら自分の手で探っていくことで、求めていたお宝を手に入れられるのだ。</p> <p> 同時に火竜は屠殺され解体されることで”食材”にもなっていき、”食”の色んな側面を切り取ってきたこの話は、腸引きずり出して肉を裂く、屠畜の実情からも目を背けずちゃんと描く。<br /> 踏みつけられかじり取られ、逆鱗ぶっ刺して命を奪う、お互い様の血みどろを描いた後だからこそ、何かとタブー視されがちな『命をいただく』ことの一番生臭い部分も、スッと見ているものに入ってくる感じがある。<br /> 瓦解しかけたパー<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A1%BC">ティー</a>を立て直した、センシの咆哮に感じ入るものがあった視聴者ならば、臓物の臭気漂うドラゴンバラしもまた、迷宮の中で人が生きていく一つの事実なのだと、受け止められる語り口だった。<br /> キレイなことも汚いことも、全部ひっくるめて問われる迷宮の厳しさと面白さが、二転三転する火竜との戦い、そこで輝く人間の弱さと強さに照らされて、とても鮮明な回だったと思う。</p> <p> 火竜炭鉱に分け入り、探し求めてきたファリンの遺骸が見つからなくてマルシルが凹む後ろで、ライオスが自慢の魔物知識を思い出して、道を拓く描写が好きだ。<br /> 人間社会に馴染むのを妨げるほど、彼の魔物への偏愛は度が過ぎているわけだが、それでも知恵は知恵であり、火竜を殺すときにも妹を蘇らせるときにも、剣で切り開けないところを突破する鍵になってきた。<br /> ただただバトル一辺倒というわけではなく、古き良き<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/RPG">RPG</a>テイストをふんだんに盛り込んで面白いこのお話、こんな風に機転や知恵が助けとなる場面が多くて、見ていてとても面白い。<br /> そもそもただ闘う動物として<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%C1%B8%B1%BC%D4">冒険者</a>を書きたいのなら、”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>”なんてやらないわけで、食って迷って闘って見つけて、人生の全部を迷宮に問う人間絵巻として、鼻につかない活きた賢さが強みと描かれているのは、大変いい。<br /><br /></p> <p> そんな知恵と勇気が探り当てた、愛しき人の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%EC%A4%B3%A4%A6%A4%D9">されこうべ</a>。<br /> 命懸けの勝利に一瞬微睡み、思い出した自分たちの原点において、ファリンがあくまで『死者の声を聞くもの』として描かれているのも、プリーストという存在がどういうものか、このお話らしく書いてて好きだ。<br /> その特出した才能は村落共同体から兄弟を弾き出して、流れ流れて<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%C1%B8%B1%BC%D4">冒険者</a>稼業、生きるも死ぬも勘定のうちなロクデナシとなったわけだが、そういう存在だからこそ輝かせる光が、確かにある。<br /> そんな作品の力強さが、迫力満点のアクションに元気に踊る回でした。<br /> 大変良かったです。</p> <p> つーわけでボスモンスターはぶっ倒したけども、現実は厳しくファリンはお骨に。<br /> こっからどうハッピーエンドを引き寄せるのか、はたまた新たな危機が訪れるのか。<br /> まだまだ続く冒険を、アニメがどう画いていくかを楽しみに、来週を待ちます。<br /> 次回も楽しみ!</p> Lastbreath 外科医エリーゼ:第10話『玉響』感想 hatenablog://entry/6801883189090750393 2024-03-14T20:39:34+09:00 2024-03-14T20:39:34+09:00 そろそろ医師試験というクライマックスを見据えつつ、サブキャラとの絆を深めよう回第三弾! 素顔を隠したクール王子とのドキドキデート……と思わせておいて、すんごい勢いで劇場炎上! 愚鈍貴族に龍声一閃! 命の現場に恋が燃える、リンデン様攻略回となりました。 前回あんま医療無双しなかったので油断してたが、スナック感覚で命の危険が降り注ぐアニメだったわね、そう言えば……。 序盤は最高スイーツにときめき夢色逢引と、乙女色濃いめにヌルく進んでいったわけだが、そっから一気に急旋回してボーボー舞台装置が燃えてモクモク致死性の煙が出始める勢い(の割に、死人は出ない所)が、このお話らしくて良かったです。 なにするに… <p> そろそろ医師試験というクライマックスを見据えつつ、サブキャラとの絆を深めよう回第三弾!<br /> 素顔を隠したクール王子とのドキドキデート……と思わせておいて、すんごい勢いで劇場炎上! 愚鈍貴族に龍声一閃! 命の現場に恋が燃える、リンデン様攻略回となりました。<br /> 前回あんま医療無双しなかったので油断してたが、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%CA%A5%C3%A5%AF%B4%B6%B3%D0">スナック感覚</a>で命の危険が降り注ぐアニメだったわね、そう言えば……。<br /> 序盤は最高スイーツにときめき夢色逢引と、乙女色濃いめにヌルく進んでいったわけだが、そっから一気に急旋回してボーボー舞台装置が燃えてモクモク致死性の煙が出始める勢い(の割に、死人は出ない所)が、このお話らしくて良かったです。<br /> なにするにしても緩急が凄いというか、加減を忘れて全力で殴りかかるわりにどっか抜けた可愛げが残っている所、俺は好きな作風なのだ。</p> <p> </p> <p> ここ最近はやや話のペースを緩めて、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>以外のキャラの彫りを深めていく話が展開しているわけだが、遂にメインヒロイン攻略! という話でもある。<br /> コッチが想定していたよりリンデン様は<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>にお熱であり、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>も『前世の罪咎を悔いて恋は捨てました……』と、尼みたいなこと抜かしてるくせにメロメロときめいてもいて、くっつきそうでくっつかない両片思い状態。<br /> これに加え、王家秘伝のロイヤルプリズムパワーメイクアップでもってパツキンに化けて名前を偽り、叶わぬ恋(と思い込んでる)の相手とイチャコラしてる罪悪感が壁になって、結構拗れた状態になっていた。<br /> ロン状態でのときめきも、立ち居振る舞いにリンデン様の面影を見ればこそメラリと燃える炎であり、ちょーっと素直になれば即座にくっつきそうな二人であるが、そこがなかなか進んでいかないもどかしさが、ロマンスの醍醐味……といった感じか。<br /> まぁ残り話数から言っても、二人の恋路がゴールに辿り着くのはアニメでは難しそうなので、ニチャニチャ微笑みながら見守れる感じになれて、良いエピソード来たなと思った。</p> <p> そのための薪として劇場一個燃やすのは……まあこのアニメだし良いかッ!<br /> 実際<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の価値観軸は徹底的に”命”にあり、こういう火急の危機に想い人がどういう決断をするか見届けないと、真実惹かれて良いものか判断も付きかねるわけで、災い転じて福となす……かどうかは、この後の転がり方次第ではある。<br /> ロイとして受けた治療がリンデン様にも影響を及ぼし、生きるの死ぬのの境目で黙って座ってはいられない、熱い血潮をお后候補と共有できているのは、似合いの二人だと思う。<br /> これが”一周目”では全然噛み合わず、二回の転生を経て<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%CE%CF">人間力</a>が究極に高まった今の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>だからこそ、ピッタリ引き合う形になったのは、なかなかに面白いね。</p> <p> </p> <p> 今回はいつもむっつり鉄面皮だったリンデン陛下が、どういう才気と価値観を持っているかを<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>と僕らが知る回なので、ワッショイ担当は<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>がやることになった。<br /> ここまで聡明で善良な人ばっか出てきたので、むしろ新鮮な趣すらあった愚鈍モブ貴族を持ち前の王気で従わせる時の、その凄み全てをセリフで説明し切る<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の立ち回り、”受け”に回っても誰かの無双を引き立てられる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%F3%A5%D7">バンプ</a>を感じれて、大変良かったです。<br /> クドいくらいのワッショイでもって、主役の特別性を引き立ててこその無双モノという感じもあるので、眼の前の相手がどんだけ凄いのか、ちゃんと驚いて言葉で伝えてくれるキャラは大事よね。<br /> 一発喰らわされた愚鈍貴族が、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>に向けてた反発をシオシオと手早く引っ込めて、素直に屈辱的なハイハイで無事脱出していく所とか、メチャクチャこのアニメらしくて良かったですネ。</p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>は婚約辞退して医道に生きる意思を示しちゃったし、リンデン様はロンという仮面被って望ましい関係構築しちゃったしで、なんか捻くれた繋がり方になってる二人。<br /> しかしまー心の根っこでは思い合っているのは間違いなく、微笑ましく可愛らしいトキメキ満載で、仲良くやっていけそうな前向きさがあったのは、このお話らしくて良かったです。<br /> お互いの立場と信念があればこそ、思い合っていても繋がれないもどかしさがロマンスを彩ってもくれるわけだが、うまいことお互いの気持ちが通じ合って、本当に求めているものを掴めると良いね。<br /> ……と、素直に応援できる濁り少ないキャラが主役とヒロイン張ってるのは、自分としては見やすくてありがたい限りだ。<br /> 素朴でボヤッとした可愛げ含め、なんだかんだ肌に合うアニメだったのだと思う。</p> <p> </p> <p> というわけで、劇場デートに恋の炎(物理)が燃え盛る回でした。<br /> お互い好き合ってるのに、いらない障壁が邪魔をして巧く繋がれない現状が描かれたことで、まず最初の障壁である医師試験突破に弾みが継いたのは、終りが見えたタイミングで良いトス上げだったと思う。<br /> 医道に邁進する志を抱えたまま、恋に使命に全力で頑張る道をひた走るべく、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>が乗り越えるべき試練も間近。<br /> どんな風にアニメを締めくくってくれるか、残りの話数も楽しみです!</p> Lastbreath 異修羅:第11話『落日の時』感想 hatenablog://entry/6801883189090590356 2024-03-14T07:21:27+09:00 2024-03-14T08:06:55+09:00 街と理想を薪として、亡滅が夜闇に燃える。 数多修羅が散り、それに倍する咎無き人たちが木っ端のごとく散る、戦争の惨禍。 弱者が呪い強者が嗤う世の常は、流れた先でも変わりなく、月下に一刀が冴えて……鬼が一人死ぬ。 決着目前、異修羅第11話である。 リチアがボーボー燃える中で、死ぬべきが死に生きるべきが生き延び、物語は続く。 勇者決定トーナメントの序章でしか無い、世にありふれた大惨劇もそろそろフィナーレ、色んな死に方が無明の夜闇に眩しい。 このお話の乾いて容赦がない所が好きなので、カーテの無惨な結末には得心がいっているし、ダカイとソウジロウの剣豪小説めいた永遠の一合には震えが来た。 総じて大変ロクで… <p> 街と理想を薪として、亡滅が夜闇に燃える。<br /> 数多修羅が散り、それに倍する咎無き人たちが木っ端のごとく散る、戦争の惨禍。<br /> 弱者が呪い強者が嗤う世の常は、流れた先でも変わりなく、月下に一刀が冴えて……鬼が一人死ぬ。<br /> 決着目前、異修羅第11話である。</p> <p> リチアがボーボー燃える中で、死ぬべきが死に生きるべきが生き延び、物語は続く。<br /> 勇者決定トーナメントの序章でしか無い、世にありふれた大惨劇もそろそろフィナーレ、色んな死に方が無明の夜闇に眩しい。<br /> このお話の乾いて容赦がない所が好きなので、カーテの無惨な結末には得心がいっているし、ダカイとソウジロウの剣豪小説めいた永遠の一合には震えが来た。<br /> 総じて大変ロクでもなく、このお話らしい決着へと雪崩込んでいる感じがあって、大変良い。<br /> あとは色んなモンボーボー燃やしてタレンが引き寄せたかった理想とやらが、一体どんなものかのかを死ぬ前に誰かが問いただし、ちゃんと語ってくれると満点……かなぁ。<br /> 『結局本番開始ってないじゃんッ!』は、第4話あたりで飲み込んだツッコミなのでここまで見た自分としては、マイナスポイントじゃないかな。<br /> アニメの語り口好きだから続きが見たいけど、全力で初見を置いてけぼりにする作風をあえて選んだ後に何が続くのか、そこまで楽観視は出来ないとも思うので、とりあえずは新魔王戦争の行く末を見届けたい。</p> <p> </p> <p> つーわけで今回のメインステージはレグネジィとカーテの美しく悲しい決着と、盗賊ダカイの末路。<br /> 初登場時から死相が浮かんでいたレグネジィくんが、約束された決着へと彼の天使といっしょにたどり着いたわけで、悲しくもあり奇妙な達成感もあり、こういうやつから死んでいく世の無常も感じられて、なかなか良い終わりだったと思う。<br /> 二人が戦いと無縁に、幸せに生きていく余裕は魔王亡き後もこの世界にはなく、彼らを食い破ったこの戦争も、後の平和を買うための必要な代価……というと、無惨にグロ死した数多の弱者に申し訳が立たないけども。<br /> 客人達の故郷である彼方もまた、殺し殺されが当たり前の超ロクデナシワールドのようなので、とにもかくにも残酷な世界律でこの世界は動いている。<br /> そこで意を通し望む未来を引き寄せるには、言葉一つで何もかも書き換えたり、誰にも殺されえないほどに強かったり、社会から逸脱するほどの力を有してなければならない。<br /> レグネジィくんが世界全部をバカにしながら手に入れた群れの力は、真の強者足りうるほど十分ではなく、それは剣士ではなく盗賊だから勝ち筋を見間違えたダカイもまた同じなのだろう。<br /> 殺し、殺され、無限の修羅界の果てに一人、世に生きる資格を証明した孤独な怪物は、しかし人間と言えるのか?<br /> それを問い切るには、戦争一個はあまりにも短い。</p> <p> 何もかも求めて街すら焼くアルスに比べ、レグネジィくんの願いは大変慎ましやかで、カーテとの幸せだけを片手に抱いて生きていく道は、しかし燃え盛る怨嗟が許さなかった。<br /> ユノが己の無力を呪い、しかしその身に引き受けて謙虚に弱者のまま生きていけるほど強くもないから、ソウジロウを己の代理闘士としてスカッとしない復讐に身を投げたように、群れという概念に呪われ魔王に尊厳をすり潰されたレグネジィくんは、強者を気取ることでしか生き延びられなかった。<br /> 力を誇れば角が立ち、大事な物ごと全てを貫いていく。<br /> 虫を使った外法で彼の”群れ”を作り、リチアを第二の宿り木に選んで命を賭けた時から、この決着は必然だったのだと思う。<br /> しかしまぁ、そうなるようにしか生きられなかったのだから、しょうがない。</p> <p> </p> <p> 死んでいく薄汚れた<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EF%A5%A4%A5%D0%A1%BC%A5%F3">ワイバーン</a>に対し、生き残るハルゲントのおっさんはずいぶん正しく、不自由な生き方をしているように思えた。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EF%A5%A4%A5%D0%A1%BC%A5%F3">ワイバーン</a>は死ぬべき、人は死なないべき、世界は正されるべき。<br /> 何もかも”べき”で語っている割に、そのルールを他人に押し付けるだけの実力には欠けていて、しかし誰かが押し付けてくるルールを黙って飲むほど、心が冷えているわけでもない。<br /> ずいぶん半端なところをフラフラして、薄汚い<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%E3%CE%B5">翼竜</a>と美しい天使の間に確かに在った絆に、目を向ける眼力も受け止める優しさもない。<br /> しかしその半端さが、なんとも人間らしくてなかなか良いポジションである。</p> <p> 今回の悲劇は、曲りなりとも二十九宮の一人であるハルゲントにとって見慣れたもののはずで、彼の半端な英雄志願を揺るがすほどの強烈さは持たないのだと思う。<br /> 当たり前に可哀想に思って、当たり前に廃墟の中に置き去りにして、当たり前に記憶の中にとどめて、そういう半端で煮えきらない男がどこかしら行き着く物語は、この惨状の先にある。<br /> 死んで物語を完遂するリチ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%B5%A5%A4">アサイ</a>ドの人間に対し、黄都側、あるいは彼らに見初められる勇者候補はまだまだ余白を残してアニメの範囲を終えるので、なかなか感想が難しい部分がある。<br /> レグネジィとカーテの死は、それを見届け手を下したハルゲントとアルスの物語がどうなっていくかで真価が決まって来ると思うわけだが、それを描ききるのはまだまだ先の話なのだろう。<br /> ここら辺、舞台に上がる人数がとにかく多い群像劇故の難しさって感じはあるが、最高の宝を見つけて満足できたレグネジィと、見えずともその真の祈りを聞き届けていたカーテの終わり方は、強者になりえなかったが弱者としては終わらなかった稀有な例として、とても良かったと思う。<br /> そういう生き方も、この修羅の巷に確かにあるのだと認める度量が、欲深き三本腕と英雄志願の無能者に、あるのかないのか。<br /> その片鱗くらいを最後に見せて終わってくれると、収まりが良いかなと思う。</p> <p> </p> <p> さて、弱者と強者のワルツは剣を交えつつも語られ、ダカイが死にソウジロウが生きる。<br /> 前回ニヒロから勝利を盗んだ大怪盗であるが、剣技……というより魂に刻まれた殺傷の本質から縁遠く、観察力と獲物の強さで勝ってきたダカイは、ソウジロウが手にした武器を魔剣と誤解し、無様に死んでいく。<br /> 巨大ゴーレム相手に物語の開幕を告げた異形の無刀取りは、極めて正当な形で柄頭を抑え足先を制し、盗まれた鈍らの一撃を意にも介さず、修羅たり得なかった客人を切り捨てていく。<br /> 超加速した思考と幾重ものハメ手が交錯するたった一合の決着は、何かと大火力ぶっ放して街を焼き人を殺してきた後半戦に、静かなメリハリを生んでくれたと思う。<br /> 目を武器に勝ってきた男が負けるなら、そらー眼違いが死因になるよなぁ……良いオチだ。</p> <p> そんな死地に、ソウジロウを引き寄せたユノの狡猾も、爪無き獣なりの噛みつき方が鮮烈で大変良かった。<br /> 弱者である自分の無力を自分に引き受け、修行して強者に変わるなり、絶望に飲まれて怪物になるなり、色んなルートがユノには開けていたと思うのだが、狡さも弱さも開き直って強者にすがるという、メチャクチャ生臭い道を選んだのは、このロクでもない世界のロクでもないお話らしくて素晴らしい。<br /> ”強い”とは相対的かつ多彩なもので、自分自身が個として圧倒的に強いのもその一つだろうし、強いやつを自在に操れる強さもあるし、強さが成立する土台を切り崩してしまう強さもあるだろう。<br /> ユノは自分を翻弄した運命の流れの中、確かに掴んだソウジロウとの縁、旅の中で見てきた強者を求める気質を武器に、決死の時間稼ぎでダカイを足止めして、勝てる状況を作った。<br /> 十分以上に、それは”強い”。</p> <p> </p> <p> しかしそれでスカッとするかっつーと別の話で、本当にするべきなのは弱い自分を受け入れ先に進むことだし、こんな勝ち方で自分が納得も出来ないと、ユノは理解っている。<br /> 弱者が真実強くなるためには、一体どうしたらいいのか。<br /> 絶対負けるとは思えないクソチート野郎どもが、それ以上のチートでバッタバッタぶっ倒される弱肉強食の世界で、ユノは今後彼女なりの答えを探らなければいけない。<br /> そしてそれは、個人としてのユノのあり方を問うだけでなく、人間が寄り集まって作られる社会の形を、血のインクで描く旅になるだろう。</p> <p> 理不尽に翻弄され、苦しみに塗れ、生来己の意を通せない弱者として世に生み出されてきた人間は、群れることで<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%B8%C2%B8%B8%A2">生存権</a>を世界に打ち立ててきた。<br /> たった一人で何もかも選び、押し通せる孤独な怪物たちは、それ故社会から浮き上がり、魔王呼ばわりされて討伐対象にもなっていくだろう。<br /> 強者を強者のままでいさせない<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EB%A5%B5%A5%F3%A5%C1%A5%DE%A5%F3">ルサンチマン</a>と、たった一人の存在で世界のあり方が左右される理不尽を認めぬ、社会のあり方。<br /> 魔王一人に世界のルールを決められていた時代がようやく終わり、群れる人間たちの弱くて強い社会が到来しつつある今、孤独な修羅達は世界に君臨する暴君ではなく、駆り立てられる獣のように思える。<br /> ここら辺、”私の街、私の人たち”が肉ミンチになってトラウマ背負った、現地民だからこその<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%A2%C2%B0%B0%D5%BC%B1">帰属意識</a>が強いラナと、元々の故地にも愛着を持てず、流浪の傭兵としてリチアを置き去りに逃げ去ろうとしてるダカイとの対話に、低住民と流浪民の対比/対立が匂って面白い所でもある。<br /> この戦争の後に始まるだろうトーナメント本番では、そういう<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C4%EA">不定</a>形な社会の怖さ、突出した個人を食い殺す負の平等主義が掘り下げられるかなー……って感じなんだが、アニメで確かめてる余裕はもちろんねぇッ!<br /> ダカイとソウジロウの、個と個の鮮烈な激突が印象的だからこそ、そういう孤独な強さを包み込み窒息させるもう一つのチートを、どういうキャラとどういうドラマで描くつもりなのか、見たい気持ちは強い。<br /> ここら辺、”将”であるタレンが担当するかなとも思ってた部分なんだが、チート野郎の引き立て役として、国ごとボーボー燃やされちゃったからな……。</p> <p> </p> <p> かくして、”遠い鉤爪”が引き寄せた牙が鵲を捉え、廃墟にまた一つ命が消える回でした。<br /> ナガン壊滅のトラウマを解決するには、真実強い人間として己の弱さを認めなきゃいけないと頭で解っていても、インスタントに誰かにぶっ殺してもらって復讐完了! となるの、最高にロクでもなくてよかった。<br /> そういう倫理の教科書に乗ってそうな立派な人格達成は、まだまだ沢山ロクでもない地獄見た後で成し遂げるもんだよねッ!</p> <p> レグネジィくん達も死んじゃったけど、途中で言葉にしてハラ固めておいたし、『こういう死に方して!』って推し団扇振りながら見守ってきたところに落ち着きもしたので、まぁ納得で満足です。<br /> 天使たちが生きていくには、このクソ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%DB%C0%A4%B3%A6">異世界</a>クソすぎっからね……死ぬしか無いよ。<br /> そんな命の薪を最後に燃やして、崩れ行くリチアに何が描かれるのか。<br /> この地獄を現臨させた張本人、警めのタレンが何考えて魔王になろうとしたのかがやっぱ、最後に知りたいところです。<br /> 次回も楽しみッ!</p> <p> </p> <p><strong>・追記 盗人が盗まれて死ぬのならば、剣士は剣に依って斃れるのだろう。</strong></p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">異修羅追記<br />ダカイの末路は、剣士ではなく盗人であることを<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A4%A5%C7%A5%F3%A5%C6%A5%A3%A5%C6%A5%A3">アイデンティティ</a>にしていた彼が、無刀取りによって”剣を盗られる”ことで、盗人としても上回れた結果負ける形になっていて、スジの収まりが良いなと思う。<br />チート合戦は概念戦なので、こういう納得は大事。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1768050639316382057?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月13日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p> </p> Lastbreath ゆびさきと恋々:第10話『桜志の世界』感想 hatenablog://entry/6801883189090427602 2024-03-13T15:12:09+09:00 2024-03-13T15:14:52+09:00 夏の風に照らされた君の横顔が、あの時僕の世界から音を消した。 雪と桜、交わらぬ定めをその名に刻まれた青年の閉ざされた心を、常識の外を爽やかに吹く風が心地良く攫っていく、ゆび恋アニメ第10話である。 大変良かった。 恋に限らず青春の物語は『選ぶ』ということが非常に大事で、それを際立たせるために作中には『選ばれない』存在が必ず生まれる。 ガキで身勝手で狭い場所に自分も好きになった子も閉じ込めようとする桜志くんは、コミュニケーション応力に優れた大人で、広い空へと雪ちゃんの望みを解き放ってくれる逸臣さんとは真逆の『選ばれない』側である。 彼が無様なクソガキであるほど、雪ちゃんが大学で出会った特別な運命… <p> 夏の風に照らされた君の横顔が、あの時僕の世界から音を消した。<br /> 雪と桜、交わらぬ定めをその名に刻まれた青年の閉ざされた心を、常識の外を爽やかに吹く風が心地良く攫っていく、ゆび恋アニメ第10話である。</p> <p> 大変良かった。<br /> 恋に限らず青春の物語は『選ぶ』ということが非常に大事で、それを際立たせるために作中には『選ばれない』存在が必ず生まれる。<br /> ガキで身勝手で狭い場所に自分も好きになった子も閉じ込めようとする桜志くんは、コミュニケーション応力に優れた大人で、広い空へと雪ちゃんの望みを解き放ってくれる逸臣さんとは真逆の『選ばれない』側である。<br /> 彼が無様なクソガキであるほど、雪ちゃんが大学で出会った特別な運命、そこから跳ね上がるトキメキは素直に見るものの心に届いて、作品のメインエンジンはガンガン加速していく。<br /> 桜志くんが選ばれない負け犬であることは重要で必要な、物語の必然だ。</p> <p> </p> <p> しかし物語を都合の良い書割として窒息させるのではなく、意思と尊厳に満ちた人間の場所として呼吸させたいのならば、そういう選ばれない存在にもプライドを認め、届かなかったあがきに報いる必要はあるだろう。<br /> 作品の丁寧な筆致はここまで桜志くんの身勝手が、雪ちゃんを思う真っ直ぐな気持ち、幼い頃から見つめていたからこその不自由故であり、彼は彼なりに雪ちゃんを愛しているのだと、豊かに告げてきた。<br /> そのトーンに惹かれて、彼の挙動に注目するようになった自分としては、恋が彼を外野に置いたまま成就したこのタイミングで、逸臣さんがヤバい横恋慕野郎にどう向き合うかに強く注目していた。<br /> 運命の恋人と狭く緊密な関係を築き、そこに入らない他人を関係ないと踏みつけにして高く飛ぶのか、それとも自分が出会っていなかった時代、雪ちゃんを大事にしてくれた人を大事に出来るのか。<br /> かなりハラハラして迎えた話数であったが、持ち前のコミュニケーション能力と他者への善い興味は桜志くんの心を叩き、鷹揚に迎い入れて彼の世界を広げてくれる決着となった。</p> <p> 『雪の世界』で恋に落ちてスタートしたお話が、恋からちょっと離れた場所で『桜志の世界』もまた広げて幕引きを見据えていくの、構造としてあまりに綺麗すぎて震えが来るんだよな……。<br /> 男女関係を飛び越えた、人間としての爽やかな影響力が恋敵にすら及ぶことで、逸臣さんのイケメンっぷりが顔面だけでなく魂の全部に及んでいると、確認できたのも良かった。<br /> 複雑な三角関係に取り込まれた心くんが、桜志くんを恨まない理由を『カッコいいじゃん』と呟いていたのが、良い補助線にもなっていたね。</p> <p> </p> <p> 俺はこのお話のメインターゲットとは、ちょっとズレたところに立っている視聴者だ。<br /> 雪ちゃんのような最強天使に自分を重ねるにはヒゲが濃すぎるし、逸臣さんに選ばれるトキメキを素直に齧るには、男性としての自己認識がちと邪魔をする。<br /> そういう視線からすると、恋人になりうる子だけに優しい男にはそこまで惹かれず、雪ちゃんとの関係構築にフォーカスして進んできたここまでの物語では、逸臣さんの人間を判断しかねる部分があった。<br /> 無論ここまでの語り口で既に、恋人との狭い関係性だけで人生判断しない人格を備えていることは十分感じ取れたわけだが、今回酒の飲み方も知らない弟分にしっかり向き合い、奇妙で彼らしいアプローチでもって厄介な恋敵の心を解してくれたことに、強い侠気を感じた。<br /> 雪ちゃんとの幸せな暮らしを思えば、ぶん殴って関係を壊して終わりでも良いところを、極めて面倒くさい敵対姿勢にあえて分け入って、行き場のない少年の心を抱きしめてやる。<br /> そういう事ができる男はねぇ……本当に偉い。</p> <p> 逸臣さんの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%CE%CF">人間力</a>に抱きとめられることで、宙ぶらりんになっていた桜志くんの思いも叩きつけるべき壁を、その形を測る鏡を得て、美しい涙とともに凝り固まった心から流れていった。<br /> あの美しい涙が、どこか”雪解け”のイメージを宿していること……つまり彼と彼らが追い求めた美しい少女と重なっているのが、恋がすれ違うどころか近づくことも出来ぬまま、それでも真っ直ぐに一人を愛した青年が報われた感じがして良かった。<br /> ぐうの音も出ないほど、好きだった女を盗っていった男に解らされてしまった立場だが、こうも気持ちよくノックダウンされてしまうと、青春の予後はだいぶ良いように感じる。</p> <p> 相手の顔を見て、伝えるべきを伝える。<br /> ろう者である雪ちゃんとの恋の中で、とても大事なことだと描かれ、今回もセックスに至るまでの同意形成を追う過程で新鮮に描かれ直したお話のテーマが、サブキャラ救済に腰を据えた話運びの中で、もう一度輝いたように思う。<br /> とにかくコンセンサスを大事に、恋を含んだ人間関係を展開しているのは大変現代的な感覚だと思うが、こうも鮮烈に描かれてみると『そらー大事だよね……勝手に決めつけて良いことなんて、何もないよね……』という気持ちになる。<br /> 『俺はコイツが嫌いなんだ』で凝り固まっていた桜志くんが、逸臣アニキに抱きしめられて(酒の力も借りて)自分と対峙し直し、『嫌いになれねぇ……』という結論を導く話でもあって、このお話で繋がる手ってのは恋人や他者だけでもなく、見えにくい自分自身もそうなんだなぁ、と思った。<br /> 一貫した太いテーマでもって、多彩な相手や問題をビシバシしばきながら進んでいく物語には力強い推進力が宿るわけで、『このアニメ……オモシロッ!』となる理由を、自分の中に改めて確認できる回でもありました。<br /> 本当に、大変良かったです。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312062353.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312062404.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312062414.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312062439.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312062449.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用</figcaption> </figure> <p> というわけで物語は、桜志くんの心に運命が滑り込んできた夏をまず描く。<br /> 子供らしい自意識に遮られて、少女の視線から目をそらしてしまったあの時に炸裂した、恋の花火。<br /> それは桜志くんの心に深く突き刺さって、しかしガキっぽい意固地だけで片付けられない思いを確かに宿して、恋という名前を与えられないまま残響し続けている。<br /> 幼い頃に出会ってしまったからこその呪いのようなものが、桜志くんと雪ちゃんには絡みついていて、雪ちゃんが携帯電話からメッセージを受け取った時のイメージは、『アホアホ言ってくる嫌な桜志くん』で止まっている関係性を、コミカルに反射している。</p> <p> そういう出会い方をして、それが大事な繋がりだからこそ変えられず、足踏みしている間に頭を飛び越えて、誰かに何かを変えられてしまった。<br /> そんな状況は前回鮮烈に描かれた、心くんとエマちゃんの距離感とも重なるものがあり、常人が足踏みしてしまう心の痛みで蹲らず、高く自由に飛ぶ強さこそが、逸臣さんを主役足らしめている感じがする。<br /> あの夏の日の呪いが胸に疼いて、どんな名前をつけてどこに行くべきか分からないまま見守っていたら、同じように運命に出会ってしまった男は素早く力強く、雪ちゃんとの距離を縮めて恋人になった。<br /> 進める逸臣さんが凄いんか、立ち止まった桜志くんが悪いんか。<br /> 是非を判断する場所じゃないが、運命の残酷さというものを少し考えさせる構図ではある。<br /> ここら辺の苦さを適切に薄め、見ている側が『桜志くんから雪ちゃんを盗った』という印象にならないよう、桜志くんを『ボーっとしてたバカ』と思わないように、このお勝負の前にしっかり描写を編んで来たのは、巧いしありがたいね。</p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312063430.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312063439.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312063448.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312063456.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312063504.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312063512.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312063521.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240312/20240312063529.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用</figcaption> </figure> <p> 腐れ縁の幼馴染には、けして見えない情欲と慕情の混ざりあった甘い微熱が、逸臣さんの家に招かれた雪ちゃんからは消えない。<br /> 自分の”ぜんぶ”を与えてもいいと思える、特別な相手との特別な間柄。<br /> 世間一般では人間と人間が、そういう場所にまで上り詰めたのなら必然として起こるのだと、知識だけはあるし恥じらいとともに憧れてもいる、セックス・コミュニケーションへの門は、雪ちゃんの前に確かに開かれている。<br /> 解らなぬからこそ戸惑い憧れる”大人の階段”を、しかし逸臣さんはゆったりと一段ずつ進もうと、言葉と唇と手のひらで伝えてくる。<br /> 自分の経験と内面が反射する私室に招き入れ、休日をどう過ごすかを伝え、”雪の世界”を知ろうと映画の音を消し、キスはしても肌には触れない距離感を保つ。<br /> 自分と極めて個人的で親密なコミュニケーションを取ることに、喜びよりも緊張のほうが勝っている乙女の現状をしっかり見据えて、静かに滾っているだろう性欲にきっちり首輪をつけて立ち止まる。</p> <p> それは雪ちゃんを大事にしたいからだと、逸臣さんは学び取った手話でしっかり伝える。<br /> 『ただ思うだけで終わらず、相手に受け取れるメッセージを手書きで整えた上で、受け取りやすいように手渡す』という能力が、逸臣さんは高い。<br /> 雪ちゃんは逸臣さんが好きだからこそ、素肌に触れられ何かが始まってしまうことに怯え、また憧れてもいる。<br /> そういう彼女に何も告げず、ただ見守って”大事にする”だけでは、愛を感じられず不安になるかも知れないから、『する。だが今ではない!』としっかり告げることで、適切な同意を形作っていく。<br /> ここら辺の距離感と歩調は、『恋人にもなったしセックスすっか~~~』という定形を全力で否定し、二人だけのラブストーリーを手捻りで作っていく気合を感じれて大変良かった。<br /> 大切なことだからこそ秘され、特別扱いされている”それ”をストイックに消去するわけでも、当然視してこなすでもなく、重要なコミュニケーションの一つとして段階を踏み、一つ一つの歩みに宿るときめきを暖かく描きながら、そこに在るものとして描く。<br /> エロティシズムに向き合う姿勢も、やっぱりこの話好みである。</p> <p> </p> <p> 自分の生き方が宿っている領域を見せて、映画を流しながら触れ合い、心の奥底に入る。<br /> ここで雪ちゃんと逸臣さんが形成したコミュニケーションが、後に恋敵と語らう時になぞられているのが、大変に面白かった。<br /> 男と女、好きな人と警戒するべき相手。<br /> 真逆に見えて二人は確かな縁で結ばれていて、心のどっかに透明で綺麗なものを残している。<br /> そういう相手と逸臣さんが向き合う時、かなり似通ったアプローチをたどるのだと、今回のエピソードは鮮明に描いてくれていて良かった。<br /> 奥ゆかしく慎重な日本的<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%DC%BF%A8">接触</a>法ではないけども、あけすけながら無遠慮ではない踏み込みでもって心を開き、その自由さが相対する者をも解き放っていく。</p> <p> 雪ちゃんがあの出会いの日に見上げた空は、今回セックスの手前で慎重に立ち止まった時、眩い星空として新たにもう一度、胸の中にひろがる。<br /> 逸臣さんはこのアニメにおいて、空の擬人として描かれ続けているわけだが、この認識が恋人である雪ちゃんだけでなく、恋敵である桜志くんにも共通していくのも、また面白い。<br /> 純情な月明かりを雲が隠す場所にいた彼が、尖ってぶつかって酔っ払ってたどり着いた場所でようやく見上げた、遮るもののない夜空。<br /> そういう存在として、波岐逸臣という男はあり続けている。<br /> ……雪ちゃんの存在が桜志の心に這入ったのも、夏夜空に舞い上がる花火の日だったことを思うと、人生の様々な季節ごと、心が揺れる時に空が広がるお話なんだな。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313141039.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313141046.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313141052.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313141058.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用</figcaption> </figure> <p> 桜志くんの世界に分け入っていく前の閑話として、あるいは次回以降心くんとエマちゃんの世界へ踏み込んでいく前走として、店長に一人相談に来る青年の表情も切り取られている。<br /> 雪ちゃんがドキドキお泊りに始めて眼にした私室、あるいは桜志くんとの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%DC%BF%A8">接触</a>の中で導くサークル棟と同じように、灯の落ちたオシャレな酒場にはプライベートな匂いがあり、そこに二人きり身を置いている時の親密な空気が、独特の表情を照らしている。<br /> 逸臣のこと、嫌いにならないの?<br /> 特別な関係性を構築できていないのなら、なかなか聞きにくいこともここでは/この人相手には親身に語り合うことが出来て、そう出来る相手がいるから苦しい恋にも負けずにいられる。<br /> あるいは負けないために、わざわざ真夜中にこの温かな場所へと足を運んでいる。<br /> 出会いが恋となり、全てを許しあえる特別な関係へと成就していく歩みを追いかけてきた物語が、少し別の角度から、男と男の不思議な信頼感を照らす時、作品の武器である繊細な鮮明さはけして緩むことなく、優しく迷い子を写していく。</p> <p> やはり作品全体において、『眼を上げて、相手の顔を見る』という行為は大切に扱われているように思う。<br /> ろう者である雪ちゃんにとって、顔が見えないコミュニケーションがどれだけの不安を生むか、このアニメは丁寧に積み重ねてきたわけだが、自分の気持の中にだけ沈んでいけば周りを見る余裕も、瞳を合わせる勇気も消えていってしまう。<br /> 前髪で瞳が見えない<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B7%A5%E3%A5%A4%A5%DC">シャイボ</a>ーイ達が、抱え込んだ恋に一人苦しんでいる様子が心くんを……あるいは桜志くんを被写体に幾度か描かれてきたわけだが、店長の言葉はそういう深みから友達を引っ張り上げて、眼の前の相手がどんな顔でいるのか、心くんに見させる。<br /> そうやって、自分が孤独だと思い込みそうなどん詰まりから助けてくれる人の温かさが、明暗同居する夜に灯るオレンジでもって描かれ続けているのも、このアニメが積み上げてきた映像<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BB%ED%B3%D8">詩学</a>と言えるだろう。<br /> この店長の助け舟に心を休めて、心くんがどこへ踏み出していくかも、彼が好きな自分としてはなかなか気になるところだ。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313142421.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313142429.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313142437.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313142442.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313142450.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313142458.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313142506.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313142511.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用</figcaption> </figure> <p> それはこの先綴られる物語として、逸臣さんは遂に桜志くんとの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%DC%BF%A8">接触</a>を図る。<br /> 逸臣さん<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>たら桜志くんは彼女に良くないアプローチを仕掛けてくるヤバいガキであり、数年間の足踏みを一気に追い抜いて恋愛勝者のポジションを勝ち取った負け犬なわけだが、年下の不器用な青年を相手に、雪ちゃんとまだ恋仲になる前見せていたような強引な気さくさを、思う存分発揮する。<br /> 面倒見が良い……ともちょっと違う、自分と関わった人間を前にして色んな面倒くささから逃げず、相手がどういう人間なのか、自分をさらけ出して解ってもらった上で対応する鷹揚が、そこにはある気がする。<br /> あの改札で桜志くんが自分に見せた、負けん気と当惑と庇護意識の入り混じった視線の奥に、一体何があるのか。<br /> ”身近な異国”として雪ちゃんに興味惹かれたように、かなり複雑な内面を尖った態度で覆い隠している青年の、色を見届けてみたくなったのかも知れない。</p> <p> 彼女を自分の家に呼び寄せ、口づけだけして抱きはしない間合いで向かい合った時のように、逸臣さんは自分を形作っている空間に桜志くんを招き入れ、食事を共にし、映画を見る。<br /> あの部屋では雪ちゃんが『手を引いてくれる存在』として逸臣さんをスクリーンに重ねてたわけだが、今回は『ガキな自分をからかい、導く存在』として、桜志くんは恋敵を見ることになる。<br /> 受け入れてしまえば何かが壊れると、強がりの奥に恐怖を隠して逸臣さんを遠ざける桜志くんの姿勢は、最初傾いで遠い。<br /> しかし男相手にも距離感バグった逸臣さんの、『俺はこういう人間だ』というあけすけなメッセージを無視できるほど、感受性が薄い……瞳を伏せて他人の顔を見ない人間でもない。<br /> 雪ちゃんを好きでい続けるために、雪ちゃんが好きになった人を好きにはなりたくない。<br /> 複雑にこじれた純情にしがみつきつつも、逸臣さんの歩み寄りとそれを無視できない自分の誠実さに切り崩されて、気づけば投げ捨てても良い約束を守り、共に酒を飲む関係性が構築されていく。</p> <p> 物理的、あるいは身体的な距離がそのまま、社会的、精神的な間合いを反射して雄弁に関係性を物語る筆致は、映像表現の基本であるし、だからこそ難しく面白いものだ。<br /> ヤバそうでもあり面白そうでもある若造の内側が、どんなもんかと身を乗り出し方を組んで乗り込んでくる逸臣さんのアプローチには、雪ちゃんを相手取って積み上げていった関係性と同じ、遠慮がないけど心地よい距離感覚が確かにある。<br /> 背を向け、相手の顔と目を見ないように逸臣さんを遠ざけようとする桜志くんの内側に、恋敵がどう滑り込んで、酒席を同じくする関係になっていくのか。<br /> そういう無言の表現が、巧くて強いのがこのアニメの好きなところだ。<br /> 雪ちゃん相手には使わなかった(未成年なんで使えなかった)アルコールの魔力を借りて、頑なボーイの防壁切り崩す手管なども見せつつ、嫌いになりたい男の真っ直ぐな瞳を見てしまった桜志くんは、否応なく自分がどこにいて、何を守りたかったを見つめることになる。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313143958.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313144006.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313144013.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313144021.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313144029.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313144037.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313144044.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313144050.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用</figcaption> </figure> <p> そこは逸臣さんよりもっと早く、もっと幼い季節に出会ってしまった、美しい思い出の国だ。<br /> 自分の中に湧き上がっているものが確かに空いなのだと、認めるには気恥ずかしくも怖く、しかし諦めるには湧き上がる想いはあまりに熱く、目をそらしては向き合い、手にとっては遠ざけ、心地良く中途半端な距離で、名前のないままに転がしていた想い。<br /> 第8話で描かれた高校時代を思えば、そんな愛しい未熟は逸臣さんにもあって、エマちゃんや心くんとの甘酸っぱく少し痛い時代を経た後だからこそ、雪ちゃんが求めた立派な大人として、幸運にも出会うことが出来た。<br /> 桜志くんにはそういう好機は訪れず、花火と一緒に心を揺らした美しい少女とどう向き合うべきなのか、わからないまま『アホ』と手のひらで綴ってしまうような、微笑ましくも残酷な繋がり方が、鎖のように彼を縛る。<br /> 手話を覚え、影から守り続けていれば好きになった女の子と、確かに繋がっていられる。<br /> そんな安心は同時に、より自分の心の真実に近く、より新たな可能性へと開けた関係性……心ちゃんが逸臣さんに求め答えられた間柄へと、彼らを解き放つことを許さない。</p> <p> 雪ちゃんが優しいステン<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C9%A5%AC">ドガ</a>ラスの檻から自分を解き放ち、一般大学へと進み出し恋に新生活に挑もうと思った裏で、桜志くんは手話のテキストに視線を落として、変わっていく彼女を真っ直ぐは見られなかった。<br /> その帰結として、鳶に油揚げ掻っ攫わられたこの体たらくもあるのだが、ではその幼い想いが、夏の日の出会いが、無駄で無意味で無価値なのだろうか?<br /> ここまで桜志くんを描いてきた筆と同じように、作品はその無様さを、頑なさを、ままならなさを、愛しく肯定する。<br /> それは確かにそこにあって、桜志くんがいてくれたから雪ちゃんが微笑えた場面が沢山あって、でも恋という形にはならず、あるいは恋にするための一歩が怖くて踏み出せず、それでもあの子と繋がるための特別に、呪いのようにしがみついた。<br /> もっと颯爽と、もっと成熟した選択を賢く取れたと、傍から言うのは簡単だけども、桜志くんにとってそれが精一杯の決断であり、夏の呪いが痛みと停滞だけではなく、柔らかで温かなものを確かに生み出せていたのだと、彼の追憶を描く筆は確かに語る。</p> <p> 桜志くんのナイーブな内面は、その視線のゆらぎに常に表されてきた。<br /> あの改札で、明確な敵意を持って雪ちゃんへの視線とことばを遮られた時、桜志くんは敵意を自分の中から絞り上げる前に、凄く当惑し傷ついた表情を一瞬見せる。<br /> 大人はそんな顔しないから、この子はすごく子どもなのだと、僕はあの時解って、だから見届けてあげなきゃ行かないと、勝手な思い入れを彼に抱いた。<br /> 雪ちゃんが花火の中投げかける視線から、気恥ずかしく顔を反らして、しかし確かに繋がりたいと願って学んだ『アホ』で、真っ直ぐと自分の恋を見つめる視線で、彼なりに応える、一連のシーケンス。<br /> 『目を逸らす』ところで今回冒頭の回想が終わっていて、『その延長線上に停滞してたから、逸臣さんに負けたんだね……』と思わせておいて、桜志くんも視線のことばをしっかり返していたと描き直すことで、彼なり必死の戦い方を、確かにそこにあった愛を、しっかり教えてくれた。</p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <p> </p> <figure class="figure-image figure-image-fotolife mceNonEditable" title="画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用"> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313145545.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313145553.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313145602.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313145610.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313145618.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313145626.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313145632.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <p><img src="https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/L/Lastbreath/20240313/20240313145640.png" width="1200" height="675" loading="lazy" title="" class="hatena-fotolife" itemprop="image" /></p> <figcaption class="mceEditable">画像は”ゆびさきと恋々”第10話より引用</figcaption> </figure> <p> 桜志くんが頭を擦り付けて、前に進めなくなっていた行き止まりを、逸臣さんは何の問題にもせず軽々飛び越えて、雪ちゃんが本当に欲しいものを見つめ、手渡し、受け取った。<br /> 恋の鞘当てにすらならないまま、名前もつかない幼い恋にしがみついていた桜志くんは、逸臣さんがわざわざ時間を作って、くっそ面倒くさい若造に向き合ってくれたことで、行き止まりから向き直って、眼の前の相手を……見るまで、やっぱ手はかかる。<br /> 別れろとか、両思いを横から盗りたくねーとか、七面倒くさいグダグダを酒の勢いで吐き出しながら、桜志くんは眼の前の相手の顔を見ないように顔を伏せ、しかし真っ直ぐ自分を見てくれる大人の男を無視も出来ず、二人を隔てる一線を越えていく。<br /> そうすることで、月にかかっていた叢雲は晴れて、静かな春の月光に照らされて少年は、自分が失ってしまったものと、まだ自分の心の中にたしかに残っているもの、そして今目の前、新しく出会ったものをしっかり見る。<br /> 桜志くんと逸臣さんの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%B4%CD%FD%C5%AA">心理的</a>距離が、決定的に変化する瞬間を切り取る舞台として、縦方向に画面を貫通する街頭と看板、月光のライティングがビシッと決まっている。</p> <p> 自分が雪ちゃんとどうなりたかったのか、もう絶対に取り返せない状況になった後で認識してしまうのは残酷だが、必要な施術でもある。<br /> それが恋なのか憧れなのか、庇護欲なのか良く分からない柔らかな気持ちに、名前をつけたくなかった桜志くんの願いを、逸臣さんがそうするように、僕はけして嘲笑わない。<br /> 奪われてようやく、それが恋だったのだと認めた時、流れていく温かな涙。<br /> それは逸臣さんが雪ちゃんに惹かれた、美しい透明さを同じく宿していて、ヤバい恋敵がもしかしたら、結構面白い男なのかもと踏み込んでみたからこそ、嫌いになれない……というか好きになっちゃう相手と肩を並べ、悪友のように歩き始めることも出来る。<br /> 優しい檻から己を解き放った鳥が、広い空を求めて羽ばたくように、時に陰り暗がりに沈みながらも、あの夏出会った眩しさを反射し続ける月光もまた、自分を解き放つ空を求めていた。<br /> ”桜志の世界”に”雪の世界”が確かにあり、その両方に”逸臣の世界”が清々しい自由と、頼もしい優しさを手渡した場面で、このエピソードは終わる。<br /> 大変に良かった。</p> <p> </p> <p> というわけで、雪ちゃんのドキドキLOVEレッスンお泊り編と、桜志くん月下の男泣きでした。<br /> 桜志くんのめんどくさく拗れた幼さを、彼だけの宝物として凄く大事にして描き、別れてほしいんだかほしくないんだかワケ解んないメチャクチャに、揺れ動かなきゃどこにも行けない青春ど真ん中を、堪能させてくれる回でした。<br /> こういう面倒くさい旅を経ないと前に進めないヤツってのは確かにいて、そういうやつと真正面から向き合い、顔を挙げさせるほど強く見つめて、熱く透明な涙を受け止めてくれる男なのだと、逸臣さんのこともっと好きになれて良かったです。<br /> 終わってみると、雪ちゃん関与しないところで青春の地雷原が撤去されて、彼女(を主役とする作品全体)の特徴であり魅力でもある透明感が全然濁らず決着したの、巧いなぁと感心もする。</p> <p> 桜志くんは逸臣さんがどんだけ大人で、雪ちゃんを束縛せず自由に羽ばたかせ、新しい出会いと可能性を届けてくれるか教えるための、惨めな鏡だ。<br /> しかしそんな存在にも人としての尊厳があり、青年としての想いと迷いがあり、間違っていたとしても愛しく抱きしめていたかった、かけがえない思い出がある。<br /> 世の中、そういう不格好な宝石を抱えた連中ばっかりで出来上がっているのだと、群像劇として背筋の伸びたメッセージが、負け犬をきっちり負けさせることで未来に顔を向けさせるお話から、しっかり飛び出していました。<br /> つえーわこのアニメ、マジ……。<br /> 次回も楽しみです。</p> Lastbreath うる星やつら:第32話『扉を開けて 後編/涙の家庭訪問 禁じられた三宅家編』感想 hatenablog://entry/6801883189089931838 2024-03-11T18:05:34+09:00 2024-03-11T18:05:34+09:00 無限の可能性を秘めた扉を巡る、不思議な冒険の果てにたどり着いたのは、仲間が一人増えたいつもの友引町。 SFマインドと豊かなイマジネーションが綾なす、奇妙奇天烈なモラトリアム・チェイスを描く令和うる星第32話である。 新キャラ因幡くんを起爆剤に、ラムとあたるの関係性、そこから結果的に宙ぶらりんにはみ出す形になってしまったしのぶを掘り下げていく、長編エピソード完結となった。 三角関係を維持するにはしのぶからあたるへの矢印が薄く、コミカルに怪力をぶん回す”いい友達”になっていたしのぶが、因幡くんというチャーミングな青年をヒロインに据えることで、淡い恋色に自分の物語を染め直す手付きが良かった。 終盤凄… <p> 無限の可能性を秘めた扉を巡る、不思議な冒険の果てにたどり着いたのは、仲間が一人増えたいつもの友引町。<br /> SFマインドと豊かなイマジネーションが綾なす、奇妙奇天烈なモラトリアム・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C1%A5%A7%A5%A4%A5%B9">チェイス</a>を描く令和うる星第32話である。</p> <p> 新キャラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんを<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%AF%C7%FA%BA%DE">起爆剤</a>に、ラムとあたるの関係性、そこから結果的に宙ぶらりんにはみ出す形になってしまったしのぶを掘り下げていく、長編エピソード完結となった。<br /> 三角関係を維持するにはしのぶからあたるへの矢印が薄く、コミカルに怪力をぶん回す”いい友達”になっていたしのぶが、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんというチャーミングな青年をヒロインに据えることで、淡い恋色に自分の物語を染め直す手付きが良かった。<br /> 終盤凄い勢いで時空系<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B5%E3%A4%AD%A5%B2">泣きゲ</a>ーのヒロインみたいな動きを積み重ね、一気にしのぶの隣に腰を据えた<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんの立ち回りも良かったが、『運命と決断』という青年期の一大事を、をとってもるーみっくな味わいであくまでコミカルに、永遠のモラトリアムを壊さないように削り出していく筆致は、作品の中核に何があるのか、第3クール最終盤に明瞭に示してくれた。</p> <p> 都合の良いハーレム幻想をドデカハンマーで殴り飛ばし、その身が炎に焼かれてもラムが隣りにいる未来を死守しようとするあたるが、ずっと探し求めていた未来、彼だけの花嫁を見つけた時の表情は、この長編で一番いい顔だった。<br /> ああいうピュアな顔を見せるからラムも俺もダーリンに夢中であるが、浮気性でちゃらんぽらんな普段の仮面を引っ剥がし、自分にとって何が大事で何を守りたいのか、珍しくマジなあたるを掘り出すためには、数多の可能性を股にかける一大冒険絵巻が必要だったのだろう。<br /> 基本的にはラムがあたるを健気に追う構図で進むこのお話、どっかであたるがラムの献身に報いる描写がないと彼を好きになりきれないわけで、令和うる星ではかなり多めに(そして的確に)、あたるの純情な側面が解るエピソードを選んで編じていると感じる。<br /> 第5話”君待てども…”、第10話”君去りし後”、第22話”大ビン小ビン”、あるいは第29話”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%E0%A4%C1%A4%E3%A4%F3">ラムちゃん</a>、ウシになる”。<br /> いい加減で何事にも真剣にならない、人生の猶予期間真っ只中なあたるがラムの危機にはどんだけマジな顔で繊細な少年らしさをむき出しに、楽しい日々の終わりに抗おうとするかを、令和のうる星はかなり強く描いてきた。<br /> 今回あたるが見せた炎の意思もその一つなわけだが、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんが持ってきた可能性を可視化するSF的ギミックを鏡にすることで、どんな未来が気に食わなくて、望み通りだと思っていたハーレムは情けなさ過ぎて認められなくて、じゃあ何が一番大事か、ゴリゴリ削り出して説得力出していたのは、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%BF%A5%EB%A5%B7%A5%B9">カタルシス</a>があって良かった。<br /> やっぱ俺は、なんだかんだラムにはマジなダーリンが好きだからさ……。</p> <p> </p> <p> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんの親切であたる達は数多の可能性を覗き込み、自分が望む未来をその手で作るチャンスを得る。<br /> ガラス工房のような運命制作工場、無数の扉が浮遊する因果地平へ”墜ちて、潜る”仕草など、ちょっとシュールで可愛くファンシーな描写が、後に定番化する<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%E9%A5%EC%A5%EB%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9">パラレルワールド</a>物語の描線に、うる星らしい独自性を与えている。<br /> 『未来が選ばれる/閉ざされる』というテーマは重く描こうとすれば、いくらでも重くなる題材だと思うし、そういうシリアスさをかすかに混入させてマジな願いを暴くための道具立てだとも思うのがだ、あくまで今回の度はドタバタと楽しく、明るくコミカルだ。<br /> 結局選び取り帰っていく場所が『いつもの友引町』である以上、そういううる星テイストを崩さないのはとても大事だし、『やっぱあのドタバタは楽しいもんだなぁ……』と思えればこそ、あたる達の帰還(それを後押ししてくれる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんの犠牲)にはホッと安心もする。</p> <p> 軽い味わいを選んでいるから真芯を捉えた描写がないかというと、もちろんそんな事はない。<br /> ハーレムを求めてラムを不幸にした自分を殴り飛ばし、あんだけ求めていたはずの未来を自分の手で閉ざしたあたるは、たしかに何か一つ、とても大事なものを見届け選んでいる。<br /> 何が自分の夢か。<br /> 恋のライバル立ち位置から幸福に<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C9%A5%ED%A5%C3%A5%D7%A5%A2%A5%A6%A5%C8">ドロップアウト</a>していたしのぶは、扉を探す中で自分に問いただし、学生服を脱いで少し年を取って、でも恋の決着が先延ばしにされた新たなモラトリアムを夢に定める。<br /> それはとてもスタンダードな青年期の問いかけを、極めてこのお話らしい不思議で楽しい冒険の中で問いただし、終わらない狂騒の中に閉じ込められることを宿命付けられている子ども達を、物語が幕を閉じた後の可能性を探る旅へ誘う。<br /> そうやって、止まった時の中で永遠を踊り続けているキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ター達に、人が生きておとなになってしまう遠い必然を近づけてあげれるよう、こういうエピソードを長尺で手渡すのは、僕はすごく大事で良いことだと思う。</p> <p> </p> <p> しのぶが世界で一番愛しいものと選び取った、今まで通りの友引町。<br /> その引力は他ならぬしのぶ自身を捉え、ラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>ディの相手役という初期属性を剥奪して、あやふやで不確かで心地よい場所へと追いやった。<br /> 面堂も交え、ワイワイ騒がしくも楽しく過ごす日々は僕らが見ていても幸せなものだったが、しのぶ自身何もかもがハッキリしないあの時間が、とても好きだったのだ。<br /> そんな彼女の中の真実を確かめさせつつ、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんという素敵な青年が新たに迷い込むことで、しのぶは恋ができる少女としての<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%A4%A5%C7%A5%F3%A5%C6%A5%A3%A5%C6%A5%A3">アイデンティティ</a>を取り戻し、彼のために泣き彼のために微笑む。<br /> それはあたると恋愛関係になりうる可能性をほぼ完全に葬り、新しい相手とラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>するリスタートなのだが、ここまで32話積み上げてきた物語が強く、そういう新生を祝福しているようにも思う。<br /> こういう形に話が転がっちゃうと、ラムと牽制し合いながらあたるを取り合うってルートにしのぶを乗せるの、もう無理だからな。<br /> (ここら辺の変遷を踏まえた上で、次作となる”らんま1/2”では許嫁設定を多角的に活かし、かわいくねぇ色気がねぇおまけに素直じゃねぇ相手とツンツン距離感を図ったり、猛烈にアタックしてくるライバルを複数用意したのかな……などとも考えるわけだが、もちろん余談である)</p> <p> あたるが彼の青い鳥を見つけ、そのために身を焦がして可能性を守ったように、しのぶもこの騒々しい旅の中で自分の中にある一番大事にしたいものを見つけ、新しい可能性への扉を開く。<br /> 結婚とか就職とか、分かり易い成熟のアイコンを扉の向こう側から持ってくるのではなく、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんという新しいキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターが友引町にやってきて、しのぶの微かな恋心が新たな芽吹きを始める事でエピソードが収まるのも、僕はとても好きだ。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C4%EA">不定</a>形だからこそ力強く脈打つ、青年たちの未来の前で延々足踏みを続けるこの物語であるけど、それが閉鎖され腐敗していく閉じた理想郷にならないように、物語的な新陳<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%E5%BC%D5">代謝</a>へ挑戦する姿勢があればこそ、終わらない狂騒には活力が宿る。<br /> あたるが幾度目か気付いたラムへの思いは、また話が回った先で華やかに咲き誇るだろうし、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%E9%A5%EC%A5%EB%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9">パラレルワールド</a>を巡る大冒険の果てに掴み取った、新しい友達との微かな慕情もまた、なかったことにはならないだろう。<br /> そういう風に、慣れ親しんだ『いつものうる星』に慎重に新しい風を吹かせ、”らしい”楽しさを維持したまま作品とキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターを活かし続けようと頑張ってくれているのが、やっぱり好きだ。<br /> 可能性の扉という形で、永遠の日常を生きるあたる達にも未来があって、それは彼らの決断と意思で変えていけるものだと示してくれたのは、子どもを主役とするから明るく元気なこのお話が、背筋を伸ばして自分と向き合う上でかなり大事なことだと思う。<br /> 普通のラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>なら学内行事とかと絡めて展開するだろう自己との対峙、望ましい世界の選択が、こういうSFテイスト満載の奇妙で素敵なお話にまとまるのも、この物語の持つチャーミングだろうしね。</p> <p> </p> <p> というわけで、終わらない日常のちょっと先にある世界を、少し覗き込んでお家に返ってくる回でした。<br /> メチャクチャ超越的なことをやっとるんだけども、兎の顔をした運命神をハンマーで殴るわ電撃ぶち込むわ、いつもどおりの超暴力で対峙している所とか、そんだけ元気に走り回って手に入れたのは新しい仲間一人って慎ましさとか、やっぱ好きだわこの話。<br /> 友引町の引力はいつもの喧騒の中にあたる達を飲み込んでいきますが、それでも未来への可能性を閉じきらず誠実に扉を開けているからこそ、終わらないモラトリアムが心地よい。<br /> そういう作品の背骨を、強く感じられるエピソードでもありました。<br /> 大変面白かったです、次回も楽しみッ!</p> Lastbreath 葬送のフリーレン:第26話『魔法の高み』感想 hatenablog://entry/6801883189089898311 2024-03-11T15:29:59+09:00 2024-03-11T15:29:59+09:00 最強の大魔道士を相手取るフリーレンとフェルンを支援するべく、デンケン達は玄室に集い来る複製体達を相手取る。 隣に立つ誰かを信じ、それぞれの強さで相手の弱みを射抜く。 激戦に人間の証明が眩い、葬送のフリーレン第26話である。 つーわけで鏡写しの大魔導決戦、久々のアクション作画大暴れ回である。 アニメになってみると、魔族相手には振るう機会がなかった美しき殺し芸をフリーレンが山程蓄えてて、自分を追い込める強敵以外には使うまでもなかった事実に、良い作画が鋭い迫力を与えていた。 魔王打倒からたかだか100年、人間どもが権力闘争の中で積み上げた対人魔術から距離を取りつつ、自分と同等の怪物を相手取る時はそこ… <p> 最強の大魔道士を相手取るフリーレンとフェルンを支援するべく、デンケン達は玄室に集い来る複製体達を相手取る。<br /> 隣に立つ誰かを信じ、それぞれの強さで相手の弱みを射抜く。<br /> 激戦に<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%A4%CE%BE%DA%CC%C0">人間の証明</a>が眩い、葬送のフリーレン第26話である。</p> <p> </p> <p> つーわけで鏡写しの大魔導決戦、久々のアクション作画大暴れ回である。<br /> アニメになってみると、魔族相手には振るう機会がなかった美しき殺し芸をフリーレンが山程蓄えてて、自分を追い込める強敵以外には使うまでもなかった事実に、良い作画が鋭い迫力を与えていた。<br /> 魔王打倒からたかだか100年、人間どもが権力闘争の中で積み上げた対人魔術から距離を取りつつ、自分と同等の怪物を相手取る時はそこを遥かに飛び越えた摩訶不思議で可憐な殺戮技芸を振り回せる、フリーレンの底知れなさ。<br /> 彼女の秘められた強さが表に出てくると、魔王打倒の偉業とそれを共に成した仲間たちの株も上がるので、アニメで気合い入れてフリーレンのみ到達可能な闘争の高みを描いてくれたのは、大変良かった。<br /> 平和主義に殺意を錆びつかせて実戦で『使えないの』と、そのつもりもないし機会もないから研ぎ澄まされた技を『使わないの』じゃ、強キャラとしての格が全然違うからなー……。<br /> 試験の中で描かれた、デンケン達常人が必死こいて積み上げた多彩な技を遥かに上回る、不可思議で迫力ある破壊が複製フリーレン戦に踊っていたのは、強さの説得力を”動く絵”で支えていて、大変アニメらしい演出だった。</p> <p> フリーレンの凄みが際立つほどに、あの破壊の大嵐の中何とか生き延び、複製体を仕留める決定的な隙を作り出したフェルンの格も上がっていく。<br /> 同時にあわやその生命を奪いかけた師匠の隠し芸、無拍子の魔術に圧倒される姿は、まだまだ大魔道士の高みには遠いことを教えてもくれる。<br /> 生きるか死ぬかの瀬戸際で、フリーレンが絶対に自分を守りきり勝ってくれることを信じながら、目の当たりにした魔術の粋に当然としているのは、なかなか<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>レてて良かった。<br /> ゼンゼを圧倒したユーベルが示すように、魔法使いの強さは思い込む強さであり、不可能をねじ伏せるある種の狂気が、強者にはつきまとう。<br /> 『魔族のいない世界』を信じ切って実際に引き寄せたフリーレンの夢が、今回描かれた多種多様な破壊の技によって支えられ、『何でも壊せるがめったに壊さない』という超然とした精神性でもって、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DF%A5%DF%A5%C3%A5%AF">ミミック</a>に食われたり義娘に甘えたりしていることも分かった。<br /> あそこでうっとりと、自分を殺しかけてる大魔道士を見つめれるあたり、フェルンも結構ネジ外れてんなぁ……と思った。<br /> まぁ魔族に家族皆殺しにされて、常軌を逸した修行でたっぷりフリーレン式を仕込まれ、俗世の栄達に一切興味を向けず師匠の酔狂に付き合ってんだから、どっか壊れてるほうが自然よね。</p> <p> ソロで玄室への扉を封じる複製体に対し、フリーレンは最も信頼できる仲間であるフェルンと、コンビで戦う。<br /> お互いの命を天秤に乗せて、危うく揺らしながらも実力を信じて戦い抜き、一人で挑んでいたら生まれ得ない隙をついて勝つ姿は、デンケンが対複製体戦……というか多分彼の人生の中で選び取った、人が一人ではないからこその強さを体現している。<br /> 生物種として共感や尊敬を持ちえず、コミュニケーションの本質に迫れない魔族に比べて、人類は……まぁ魔法を政治や戦争の道具に貶めたりもするが、一応言葉を通じ伴に戦うことができる。<br /> フェルンというイレギュラーを戦いの方程式にねじ込んだことで、相打ちに終わりそうな<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C9%A5%C3%A5%DA%A5%EB%A5%B2%A5%F3%A5%AC%A1%BC">ドッペルゲンガー</a>との戦いを、フリーレンは師弟生存で終える。<br /> フリーレン一人でも、フェルン一人でも勝ち得ないと、見ているだけで納得できるような超絶魔導大戦が描かれたおかげで、フリーレンの勝因がどこにあるのか、彼女たちがお互いをどれだけ信じているのかが、良く見えたのはとても良かった。<br /> 軽口叩いてキャッキャする間柄だが、二人は命の取り合いを前提に魔術を真摯に磨く求道者でもあって、そういうシリアスで研ぎ澄まされた関係性こそが勝利の鍵になったのは、激戦にこそ映える美しい花だった。</p> <p> </p> <p> そんな死闘に水をさしかねない一級魔法使いの複製体を討ち取ったのは、殺戮に特化した三級魔法使いだった。<br /> 『揺るがぬ信頼が生み出す勝利のイメージこそが、大魔道士にも勝ちうる最強の武器』と、フリーレン達の戦いで示す隣に、魔法学の常識を全部蹴っ飛ばして『私が切れると思ったのなら、なんだろうが切れる』を地で行くユーベルがいるの、なかなか面白い構図だった。<br /> ナントカと刃物は使いよう……正しい方向付が伴えばイマジネーションは無限の力を生み出すが、しかしそういう力は危険な方向にも開かれているわけで、魔術師というより超能力者のような佇まいで、我が道を行くユーベルの存在感は、独特で大きい。<br /> ゼンゼ撃破の異常性を際立たせるべく、撫で斬りにされたラヴィーナ達には残念なことだったが、『魔法戦は相性』という世界律を示す意味でも、かなり興味深いマッチアップだった。</p> <p> 文字通り切れすぎる刃物のように、扱いが難しいユーベルのイマジネーションがこのまま、殺戮の方向に進んでいくのか、はたまた今回の試験を切っ掛けにネジ曲がっていくのか。<br /> 一級試験を契機に、群像劇としての色合いを強めてきたお話の中でも、彼女の行く末はなかなか面白いネタだと思う。<br /> メガネくんに興味を持っていたり、自分と鏡合わせの殺戮者に見えて、その実不要な殺しを徹底して避けるヴィ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>と闘ったり、何か起きそうな気配は随所に転がっている……んだけども、生粋のぶっ壊れ人間なのもまた間違いなく。<br /> そうして壊れている精神性が尖った強さとなり、勝利を揺るがしかねない強敵をあっさり倒すのだから、魔法が実在する世界の善悪是非もなかなか、単純には割り切れないなと思う。</p> <p> 変わり者ながら非常に真っ当な倫理観でもって、人相手に魔法は使わず人類の天敵ぶっ倒してきたフリーレン達だけだと、こういう捻れた価値観は表現しにくいと思うので、やっぱ一級試験でキャラ増えたのは良いことだわな。<br /> デンケンやヴィ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A2%A5%D9%A5%EB">アベル</a>が、魔法を人間相手に使うのが当たり前になった社会をどう生き延びてきて、何が摩耗しどんな芯が魂の奥に残っているのか描けたのも、そういう風にキャラ増やして、俗世の権勢に興味一切なしな変人以外の視点を、お話に盛り込んだおかげだろうしね。<br /> そういう多角的な視線を盛り込みつつ、ただただ魔法の高みを追い求めて莫大な時間を費やしてきた存在が、どれだけ恐ろしくどれだけ美しく見えるのか、フェルンの恍惚にしっかり刻んでいるのも、また良い。<br /> 時の流れ、人の定めに押し流されて虚しくなってしまいがちな、遠くて美しい理想をそれでも追い求める良さってのを主役が背負ってるのが、僕がこのお話見てて好きだなぁと感じるところなので、偉業達成の最大功労者となったフリーレンの戦いが、魔王の如く強く、星のように眩しかったのは嬉しい。<br /> 綺麗で遠い存在は、どっかに恐ろしさを残してくれていたほうが好きになれるね、僕は。</p> <p> </p> <p> というわけで二次試験かくして終了! やっぱ主役が一番チートだわ!! なお話でした。<br /> ほんわか可愛い旅の日常ばかりだと、うっかり忘れてしまいそうな魔法師弟の緊張感ある関係性が、華やかな命の取り合いの中で鮮烈に輝いていて、大変良かったです。<br /> 力入れてアニメにしてくれてるおかげで、俺が見たい大魔道士の破壊技芸が山盛り良い作画で堪能できて、最高に良かった。<br /> 世界最高の魔法使いってんなら、あんぐらい摩訶不思議な絵面で闘ってほしいと思っとるからな……ありがたい。</p> <p> 毎度おなじみ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DF%A5%DF%A5%C3%A5%AF">ミミック</a>オチで綺麗にサゲて、遂に一級魔法使い試験も最終局面。<br /> 最後に待つ試練はどんなものになるのか、それをアニメがどう描くか。<br /> 次回も楽しみです!</p> Lastbreath ダンジョン飯:第10話『大ガエル/地上にて』感想 hatenablog://entry/6801883189089294239 2024-03-09T06:36:40+09:00 2024-03-09T06:36:40+09:00 妹を喰らった火竜を求め、地下深き廃都市へと踏み込むもの。 地上へと戻り、欲望と術数が渦を巻く迷宮全体を見据えるもの。 冒険者がそれぞれの探索に向き合い、未来へ進む足取りを描く、ダンジョン飯アニメ第10話である。 前回一話どっしり、ライオス一行の外側にいる冒険者を掘り下げた後だからこそ出来る、横幅と奥行きの広い決戦準備回であった。 主役と縁のないもの、人となりのわからない誰かとしてナマリやタンスが存在しているのなら、彼らが地上に戻った後の風景もどこか空々しく、実感のないものとして感じられただろう。 しかし前回、ピリピリしたファーストコンタクトから命がけの激戦を共にし、同じ釜の飯を食う所まで関係を… <p> 妹を喰らった火竜を求め、地下深き廃都市へと踏み込むもの。<br /> 地上へと戻り、欲望と術数が渦を巻く迷宮全体を見据えるもの。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%C1%B8%B1%BC%D4">冒険者</a>がそれぞれの探索に向き合い、未来へ進む足取りを描く、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>アニメ第10話である。</p> <p> 前回一話どっしり、ライオス一行の外側にいる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%C1%B8%B1%BC%D4">冒険者</a>を掘り下げた後だからこそ出来る、横幅と奥行きの広い決戦準備回であった。<br /> 主役と縁のないもの、人となりのわからない誰かとしてナマリやタンスが存在しているのなら、彼らが地上に戻った後の風景もどこか空々しく、実感のないものとして感じられただろう。<br /> しかし前回、ピリピリしたファーストコンタクトから命がけの激戦を共にし、同じ釜の飯を食う所まで関係を深めたことで、変人一行が突き進む迷宮の外側にも、色んな事情と算段があり、別れた後もファリンを探してくれているナマリの情も、暖かく此方側に迫ってくる。</p> <p> 魔物食という、ファンタ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A1%BC">ジー</a>世界でも常識外れなネタを真ん中に据える以上、ライオス一行はそれぞれどっか世間の当たり前から外れた、珍妙で愉快な連中である。<br /> 第1クールは彼らの旅に焦点を絞り、戦って食べて必死に進む奇人集団を好きになれるよう、その好意を作り込まれた世界へ潜っていく足場に出来るよう話が進んできたが、そんな歩みもある程度の落ち着きを得て、ようやく主役の視界の外側に何があるのか、手応えを込めて描けるタイミングが来た印象があった。<br /> もちろんライオス一行の旅がハチャメチャながら面白く、美味そうだからこそそういう横幅も確保できるわけで、大ガエルと戦い廃都市を探索し、一度敗れた強敵にどう打ち勝つのか、作戦を練り腹ごしらえをする様子も大変良かった。<br /> 地上に戻るタンス一行と、地下深く進むライオス一行を対照で描きつつも、片や妹の命、片や未来の命運と、話のタイトルにもなっている”ダンジョン”が持つ不思議な引力に引き寄せられて、同じ道を歩んでいる感じがする回だったと思う。<br /> 『色んな連中が色んな思惑を持ってそれぞれの道を進んでいるが、その真中には確かな核があって、それこそが作品のメインテーマになっている』という実感を掴めると、群像劇は一気に瑞々しさを増すなぁ……。</p> <p> </p> <p> というわけでライオス(テンタクルスの階段)→タンス/ナマリ(地上)→ライオス(五層)と、視点を取り替えながら進んでいく今回。<br /> 映像の時系列を<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%C3%A5%C8%A5%A2%A5%C3%A5%D7">カットアップ</a>し、地上組の話をまずしようと思う。<br /> 前回の戦いでただの弾除けではなく、パー<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A1%BC">ティー</a>の一員として絆を深める決意を雇い主に告げたナマリだが、ツンツン実利的な態度の奥で死体置き場にファリンを探す、城の深いところが描かれていた。<br /> マルシルへのそっけない態度は、チルチャックが指摘した<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%C1%B8%B1%BC%D4">冒険者</a>としての下降線をどうにか跳ね除けて、一端の戦士として家業を続けるための鎧……って部分もあったのだろう。<br /> 無論情一本で生きてるのならば、マルシルのように損得抜きで冒険に付き合っていただろうし、実利と感情のバランスを取りつつ、自分のできる事をできる場所でやり続けているナマリの生き方は、とても好ましいものだ。<br /> よくよく考えると、どんくさエルフの気持ち最優先で突っ走って社会の常識置き去りにするところ、色々危ういからな……。</p> <p> </p> <p> 雇い主であるタンスも、賢者の装いに相応しいバランス感覚と叡智でもって、ごろつき共が気にしないダンジョンの秘密とか、種族間政治とかと闘っていた。<br /> 彼が島長を訪れる時、食事をしているのがつくづく”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C0%A5%F3%A5%B8%A5%E7%A5%F3%C8%D3">ダンジョン飯</a>”だなぁと思うが、迷宮需要で立派に膨れた彼の館で食べられているのは、ライオス達が決戦を前に戦地で腹に収める魔物職とは違う、まさに”飽食”である。<br /> 自分は迷宮に潜らず、探索者が掘り出してきた富で腹を膨らませ、支配者然と構えている島長は見た目ほど楽な立場ではなく、島と迷宮は長命種達の政治の焦点として、色々突っつかれる傷口だ。<br /> タンスが報告する迷宮の現状は、彼の高御座を保証する富が迷宮から枯れかけて、治安が悪化し秩序が崩れていることを教える。<br /> どうにか手を打たないと、迷宮の中にも外にもひろがる経済と政治は悪化し、飽食を貪るどころではなくなっていくが、そういう危機感を持っている人はごくごく僅かだ。<br /> 主役<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>て、妹復活と魔物観察、モンスター・グルメにばっか興味あるしな……。</p> <p> 戦士がクラーケンとの戦い/料理を通じて身にしみた、探索者をもその一部として取り込んで成立している、ダンジョンという生態系。<br /> 気楽なライオス達だけにフォーカスしていると見えないが、人間の欲がそこに混ざることで既にそこは乱され、ダンジョンの外側へと不穏な気配が広がりかけている。<br /> 魔物は迷宮から出てこず、富は無限に収奪できて、死んでも安心復活可能!<br /> そんな<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CF%A5%C3%A5%AF%A1%F5%A5%B9%A5%E9%A5%C3%A5%B7%A5%E5">ハック&スラッシュ</a>の夢とは、ちょっと違う現実主義で持ってこのお話の”ダンジョン”が動いていることを、賢者タンスの報告は良く教えてくれる。</p> <p> 地上にひろがる世間から、良い意味でも悪い意味でも距離を取っているライオス達にとって、タンスがナマリを雇って挑んでいる彼の”冒険”は、縁遠い世界の物語だ。<br /> 政治も経済もどっか遠い場所で踊るべきで、自分はただ迷宮に潜り魔物を倒し……それで、何がしたいのか?<br /> 今は『ファリンを助ける』という眼の前の使命に突き動かされて動いているが、彼が人生の舞台と選んだ迷宮をエルフ宮廷が遠くに睨んでいる以上、遠いはずの政治や経済は思いの外身近になり得、ライオスなりの答えを出さなければ自分自身の願いも叶えられない。<br /> というかその願いを迷宮探索行の中で見つけていく、ダンジョン・<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A5%E5%A5%D6%A5%CA%A5%A4%A5%EB">ジュブナイル</a>としての味わいが結構石あるのだと示す意味でも、現状遠くにある迷宮政治、迷宮経済の手触りをタンスを通じて描いたのは、結構大事な一手だと思った。<br /> いかにもゲーム的に、尽きない始原で無限の富を得れそうだったダンジョンが、有限のリソースに適切に対処しなきゃ問題ドバドバ溢れてくる、極めて現実的な場所だって今回解るの、ホント面白い逆立ちだよなぁ……。</p> <p> </p> <p> まーそういう地上の喧騒ははるか上方、主役はともかく自分たちのク<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%B9">エス</a>トへ突き進む!<br /> 強敵<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A6%A5%F3%A5%C7%A5%A3%A1%BC%A5%CD">ウンディーネ</a>を倒し、オークの隠し通路で一気に五層! ……とはいかず、まーた一悶着あるのがいかにも、ライオス達らしい旅と言える。<br /> 俺は非戦闘員のチルチャックが、シーフとしての罠知識と鋭い知恵を活かして戦闘でも活躍する場面が好きなので、丸呑みにされかけながら大ガエルをぶっ倒す活躍してくれたのは、大変良かった。<br /> 魔物知識はライオスの領分なんだが、前回マルシルが手ずから料理を作ったように、大ガエルの生態を活かして危機を乗り越える描写があったのは、キャラがパーティに馴染み各々の垣根が崩れてきた感じを受ける。<br /> お互い私生活も過去も語らず、流されるまま”パーティ”になっていた連中が、大冒険の中で自分を形作るものを語り、あるいは見つめ直し、仲間に解ってもらうドラマがドッタン<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%C3%A5%BF%A5%F3">バッタン</a>大騒ぎの中にちゃんと在るの、俺は好きだ。</p> <p> そういう硬い芯をしっかり確保しつつ、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>れてカワイイ絵面で思わず笑っちまうのもこのお話の強みで、お手製<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%A8%A5%EB%A5%B9%A1%BC%A5%C4">カエルスーツ</a>で危険領域を越えていく、ファンシーなんだか狂ってんだか良くわからない場面、素晴らしく良かった。<br /> 片手にお皿抱えて、モグモグ飯食ってるのが”狂い”を加速させててなお良いんだよなぁ……。<br /> 僕はこのお話が、料理を食べるだけだけではなく作る物語であり、食材と命懸けの死闘を繰り広げる所<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>っかり描いているのが好きなのだが。<br /> 自分たちの生活を支える糧がどう得られ、どう調理されて食事となるか、過程を楽しく余す所なく各筆が、今回は衣食住全面に伸びていて良かった。<br /> センシが”食”を、ライオスとチルチャックが”衣”をそれぞれ担当し、マルシルのツッコミが惑っている隙に、極めて迷宮的な<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>レスーツが完成している様子は、”飯”を主題にしつつそれだけで終わらない、人間が生きる根底を様々な角度から描くこのお話の多彩さを、コミカルに削り出していた。<br /> 普通の服では切り抜けられないテンタクルスのダメージゾーンを、大ガエルアーマーを<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/DIY">DIY</a>することで乗り越え、目的地へとたどり着く。<br /> それが血まみれの生臭い作業だという事も含めて、”衣”がどう作られ何の役に立つのか、しっかり描いてくれるのが良かった。<br /> ここら辺の複眼はケルピーの石鹸作りでも生きていたところで、エンジンかかってきたお話が豊かな作品世界へと、貪欲に画角を広げつつ在るのを感じる。</p> <p> </p> <p> 黄金の野を抜けてたどり着いたのは、オークが廃棄した古き廃都。<br /> ファリンを助ける旅の最終目的地、火竜彷徨う第五層である。<br /> おそらくTRIGGERアクション班が大暴れするだろう、大怪獣決戦は次回にとって置いて、今回はメインディッシュ前の下ごしらえ、腹ごなしと事前調査が描かれた。<br /> ここも”過程”を飛ばさない丁寧な手つきが生きているところで、変人ながら熟練の探索者であるライオス一行がどういう風に、ネームドモンスターを攻略していくのか……丁寧に描いてくれた。<br /> いざ本番を前にマルシルがナイーブになっている描写が、『やっとる場合か!』なセンシの食事の支度が今こそ必要であり、一大事だからこそ人間の根底を丁寧に満たし、しっかり食ってしっかり戦える姿勢を作る意味と価値を、良く際立たせてくれた。<br /> センシ抜きのパー<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A1%BC">ティー</a>が空腹で負けた冒頭の描写が、ホスピタリティ溢れるセンシおじさんが一向に加わってくれた意味をこの決戦前夜、しんみり確認させてくれた良かったな。<br /> オレ、センシスキダイスキ。(センシの話になると語彙力低下マン)</p> <p> 今回はパー<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A1%BC">ティー</a>リーダーとしてのライオスの頼もしさが、事前準備の手際に良く映える回だったと思う。<br /> 人間に興味のない、手のつけようがない魔物マニアではあるのだが、剣の腕だけでなく魔物の知識、観察力と戦術立案、集団統率力に優れたライオスは、確かに五層までたどり着ける力を持っている。<br /> 行き当たりばったりの力押しではなく、現有戦力と地勢を確認した上で打てる手を探っていく慎重さは、ベテラン<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%C1%B8%B1%BC%D4">冒険者</a>であるが故の知恵であり、一回負けているからこその痛い教訓でもあるのだろう。(この失敗から学ぶ姿勢は、タンスの苦言を嫌そうに聞いてる島長の怠惰と面白い対照で、こういう対比ができるから群像劇は面白いと思う)</p> <p> 最終決戦を前に仲間への感謝を言葉にし、この旅で得たものを振り返るのは正解だし大事……なんだが、モグモグ口いっぱい食べてる真っ最中に突きつける間の悪さは、まぁここまで彼の旅に付き合ってきた僕らもよく知るところだ。<br /> 気づけば10話。<br /> <a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>れた所も優れた所も、全部ひっくるめてライオスが好きになっていて、彼と彼の仲間が本懐を遂げるのか、火竜決戦をハラハラ見守る気持ちが自分の中に生まれていることを、美味そうなカエル・カツレツによだれ流しながら確認する回であった。</p> <p> </p> <p> というわけで、迷宮の深奥と明るい地上、複数の画角から作品全体を照らす回でした。<br /> 火竜との決戦場が廃都になったことで、ドラゴンのスケール感がより強く感じられるのは、シチュエーションの妙味だな。<br /> TRIGGERが描くとモロに<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B4%A5%B8%A5%E9">ゴジラ</a>になってるのはマジ面白かったが、絆を確かめ腹を満たし、やるだけやっての大決戦。<br /> 次回一体何が描かれるのか、大変楽しみです!</p> Lastbreath 異修羅:第10話『消える災厄』感想 hatenablog://entry/6801883189089160122 2024-03-08T17:03:21+09:00 2024-03-10T17:46:09+09:00 燃え盛る街に満ちる虐殺の音色が、夢の終わりを告げる。 敗勢濃厚な街でたった一人、不壊の鉄蜘蛛に挑む修羅。 世界の理を書き換える異能を、幸せを呼ぶ力だと信じる修羅。 たった一人で戦争の行方を左右できる怪物たちの横顔が、滅びゆく街に照らされる異修羅アニメ第10話である。 群像それぞれの戦争を切り取るカメラは、ダカイとニヒロの激戦を、あるいはキアと彼女の”先生”の足取りを追いかけていく。 血で血を洗う残酷な世界こそが自分の晴れ舞台だと、堂々胸を張って死地に挑む盗賊と、燃え盛る炎を前にしてなお希望を紡ぐ言霊使いの在り方は真逆だが、国家レベルの暴力を単独で跳ね除けうる怪物だということは共通している。 ユ… <p> 燃え盛る街に満ちる虐殺の音色が、夢の終わりを告げる。<br /> 敗勢濃厚な街でたった一人、不壊の鉄蜘蛛に挑む修羅。<br /> 世界の理を書き換える異能を、幸せを呼ぶ力だと信じる修羅。<br /> たった一人で戦争の行方を左右できる怪物たちの横顔が、滅びゆく街に照らされる異修羅アニメ第10話である。</p> <p> </p> <p> 群像それぞれの戦争を切り取るカメラは、ダカイとニヒロの激戦を、あるいはキアと彼女の”先生”の足取りを追いかけていく。<br /> 血で血を洗う残酷な世界こそが自分の晴れ舞台だと、堂々胸を張って死地に挑む盗賊と、燃え盛る炎を前にしてなお希望を紡ぐ言霊使いの在り方は真逆だが、国家レベルの暴力を単独で跳ね除けうる怪物だということは共通している。<br /> ユノがソウジロウの隣で薄暗く燃やしている強者への怨念は、戦争という暴力の嵐に何も出来ないまま翻弄されたラナにも共通であり、彼女が理不尽な世界に牙を突き立てるべく握った”冷たい星”は、世界詞の異能に虚しくかき消されていく。<br /> リチア新公国が、魔王亡き後の黄都新秩序に反旗を翻してなお勝てると信じる大きな要因だった<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CB%BD%CE%CF%C1%F5%C3%D6">暴力装置</a>は、世界最急の生体戦車一つ潰せず、発射担当を薙ぎ払われれば二の打ちも効かない、ひどく脆い理不尽だった。<br /> あまりにも圧倒的すぎる”個”がせめぎ合う中、そもそも勝てない戦争に頭から突っ込んでいったタレンが何考えていたのか、彼女の街が燃えきる前に聞いてみたい気持ちは強いが……魔王自称者には魔王自称者なりの、譲れぬ何かがあったのだろう。</p> <p> 燃え盛る敗勢の中でダカイは、ニヒロとの修羅比べに生きがいを見出し、軽口を交えて盗賊らしく戦い切る。<br /> 幾度も『自分は剣士じゃない』と否定してきた彼が、剣士の極限たるソウジロウが無敵装甲ぶった切った剣筋を読みきれず、自分には到達できない神秘としていたのが、なかなか印象的だった。<br /> それは剣に生き剣に死ぬソウジロウだけが実現可能な異能であり、ダカイの怪物的観察力、見えた結果に何が何でもたどり着く実行力と同じ、生き様とチートの入り混じった力だ。<br /> キャラが立った人でなし同士がガチガチぶつかり、『どうやって倒すんだコイツ!』という視聴者の予断を堂々乗り越えていく腕前こそが、こういうお話の醍醐味だと思う。<br /> なので極めて盗賊らしく、剣士には出来ない勝ち筋に身を投げて、戦略兵器の直撃すら耐えきる鉄壁金城を攻略しに行った足取りは、とても鮮やかで良かった。</p> <p> 『神経毒を適切なところに注入したら、物理ハッキングかませてハッチが開くんだよ!』はこうしてまとめてしまえばヨタ以外の何物でもないが、”盗む”という在り方に全霊を賭し、”らしく”勝ち切る勇姿を良い作画で描かれてしまうと、飲み込まざるを得ない。<br /> おまけに声が、なかなか聞けないけどずっと聞いていたいタイプの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%DD%BB%D6%C1%ED%B0%EC%CF%AF">保志総一朗</a>とくりゃ、不死不滅を殺した手際に天晴というしかない。<br /> 普通にゃ飲み込めないヨタを、異様な迫力の語り口と激しい描写、修羅が修羅として生きざるを得ない定めと共にかかれて納得してしまう、強引なパワー勝負を受け止めたくてこういう話見ている部分もあるので、ダカイの戦いは大変良かった。<br /> ニヒロ側にもう一二枚、隠し芸があって勝敗がひっくり返りそうな迫力も、都市を蹂躙し破城の光を耐えきる戦いにあったが、さてはてどうなっていくかねぇ……。</p> <p> </p> <p> ダカイが胸を張って堂々、盗むしか能がなく”盗む”という範疇にねじ込めるなら何でも達成できる、修羅の己を誇ったのに対し、キアはなんとも青臭く人間臭く、血みどろの炎で汚れた街に眩しかった。<br /> ラナやエレナが諦めざるを得なかった、人が人として真っ直ぐ生きられる幸せを、何もかもを言葉で書き換えられるキアは諦めなくて良い。<br /> 逆に言えば魔王が死んでなお戦乱の火種がくすぶる異修羅世界、”普通に”幸せに生きるためには、世界の理を捻じ曲げうる圧倒的な力が必要になるのだろう。<br /> キアの力ある言葉は街を覆う炎を消し、新公国逆転の要であったはずの戦略兵器を無効化する。<br /> 灼かれ殺され、焼き返し殺し返す修羅の巷に汚れることなく、善良で正常な理想を甘ったるく語っていられるのは、そういう巨大すぎる暴力があればこそだ。</p> <p> 同時にキアがシャルクに告げた、力を宿さないごくごく普通の言葉は、命と一緒に記憶と過去を置き去りにし、傭兵稼業に流れ着くしかなかった男の虚無を、微かに揺らす。<br /> あの時のキアは、その力を秘匿されることで戦略的アドバンテージすら得れる”世界詞”ではなく、残酷な現実を前に何も諦めたくないと、あまりに若くあまりに甘い夢を見る、小さな子供でしかなかった。<br /> そんな子どもの寝言に一理ありと、ニ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%EB">ヒル</a>に笑って道を示す<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%EB%DF%EB%E2">諧謔</a>がシャルクにもまだあって、この精神的余裕が真実強者たる資格を、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%B5%A4%EC%A4%B3%A4%A6%A4%D9">されこうべ</a>に宿してもいた。<br /> シャルクさん、独特のユーモアが鉄火場でも衰えず、どんなときでも髑髏に嘲笑を浮かべたまんま戦い続けている所が、クールでいいと思う。</p> <p> </p> <p> 世の中そんな風に<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CA%B9%A4%AF%BC%AA">聞く耳</a>持ってくれる相手ばかりではなく、自分が運命に翻弄されるだけの弱者だと思い知らされたラナは、キアを怪物と見て怯える。<br /> ユノが憎悪へと反転させた無力感を、町ごと何もかも焼き尽くす衝動に繋げ、あるいは我を見失うほどの恐怖と絶望に転化させているのは、なかなか面白い在り方だと思う。<br /> ラナの反応は嵐の如き暴力に理不尽に巻き込まれた弱者としては、ごくごく一般的なものだと思う。<br /> それがありふれているから、暴力に魂の真ん中をぶん殴られたものが暴力を握り返し、何も出来ない虫けらではないと他人の屍で世界に墨書する行為は、世界のあらゆる場所で火を吹く。<br /> そんな虫けらのような人間、唯一の存在証明を言葉一つでぶっ潰せる存在は、確かに怪物以外の何物でもなかろう。</p> <p> その上でキアは優しく正しく気高くあろうとする震える子どもでしかなく、”世界詞”はその存在だけで戦争の行方を左右できる人型戦略兵器だ。<br /> この精神と異能のアンバランスは、この窮地を切り抜けて政争の道具に使おうとしてるエレアにとって、結構な急所になりうると思う。<br /> やっぱ自由意志とまともな感性もったまま、あんだけのインチキをノーモーションノー代償でぶっ放せる存在を扱うのは至難であり、洗脳なり心酔なり、良い首輪をつけなきゃエレアの望みは遠そうだと思った。<br /> 言葉よりも、意思よりも早く少女を殺せる修羅もこの世界にはありふれてる(例えばナス<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A1%BC">ティー</a>クとか)のだろうし、”先生”も<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D4%A1%BC%A5%AD%A1%BC">ピーキー</a>な札に運命張ったなぁ……。</p> <p> そんなエレアは、かつて失った己の可能性に似た、キアの幼さに感化されラナを見過ごす……のか?<br /> 腐っても黄都二十九官、裏切りと殺戮の泥濘に身を投げてでも生き延び、叶えたい理想があってその位置にいるだろう女が、ガキンチョ一人の生き様で果たして揺らぐか、否か。<br /> 優しい<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D2%A5%E5%A1%BC%A5%DE%A5%CB%A5%BA%A5%E0">ヒューマニズム</a>が全部を解決するような、ヌルいお話ではないと感じているので、こっちもまた一つ二つ、反転の札を隠しているような感じもある。<br /> まー世界の残酷さを諦めきって現実に適応した女が、若く真っ直ぐな心意気に触れて生き方を変えるドラマも面白いので、殺そうが見逃そうが、変わろうが変われなかろうが、どっちもアリかなと思う。</p> <p> </p> <p> というわけで、街は燃え人は死に、そんな当たり前の絶望と理不尽を踏み潰せる怪物たちもまた、生き方を背負う一人の人間……というお話でした。<br /> ながーい前フリでコトコト煮込んできた、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A4%A5%AB">イカ</a>れた異能群像劇の本領がいい感じにアクセル踏んでる感じがあって、大変良かったです。<br /> 能力比べの面白さだけでなく、それぞれの力と密接に結びついた譲れぬ在り方、それぞれの歪み方がぶつかり空い、照らし合い、軋みながら絡んでいく様子を描くためには、やっぱある程度以上の準備がいるよね。</p> <p> それを承知でこの形式を選んだ異修羅アニメが、残りの話数で何を描くのか。<br /> 楽しく見届けたいと思います。<br /> 次回も楽しみ。<br /><br /><br /><strong>・3/10追記 転生チートでスカッと超人! ……というには、あまりに”社会”の強さと強さを細かく積み上げているので、『群れ/社会的動物であるが故に強い』ってキャラが出てきた時に、一気に物語の画角が変わるとは思う。</strong></p> <blockquote class="twitter-tweet" data-conversation="none" data-lang="ja"> <p dir="ltr" lang="ja">異修羅、群れなければ生きていけない圧倒的大多数の弱者と、運命捻じ曲げるほどの強さを持った孤独な強者の桎梏が主題だとすると、かなり<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CB%A1%BC%A5%C1%A5%A7">ニーチェ</a>な話なんだな。<br />超人幻想を顔のない群れとしての社会が飲み込んでいくのか、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C4%EA">不定</a>形でありふれているゆえに圧倒的な弱者の怨嗟を怪物が飲み干すのか。</p> — コバヤシ (@lastbreath0902) <a href="https://twitter.com/lastbreath0902/status/1766746666827465014?ref_src=twsrc%5Etfw">2024年3月10日</a></blockquote> <p> <script async="" src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> </p> <p> </p> Lastbreath うる星やつら:第31話『扉を開けて 前編』感想 hatenablog://entry/6801883189088971760 2024-03-07T22:14:14+09:00 2024-03-07T22:14:14+09:00 神様ウサギが落とした鍵で、騒がしいアリスたちは可能性の国の扉を開けていく。 あり得るかも知れない未来を覗き込み、求める結末を求め彷徨う不思議な旅路。 令和うる星第31話である。 というわけで満を持しての因幡くん登場、物語が終わったその先を紐解いていく多言世界旅行記エピソードである。 今となってはマルチバースもパラレルワールドもオタクのド定番となっているが、40年前は当然目新しい新機軸であり、コミカルで騒々しいうる星テイストを濃厚に交えつつも、SFマインド濃い目の話で面白かった。 多元世界を渡り歩く旅のきっかけになる因幡くんは、複数の世界を観察・管理可能な神様みたいな存在であるが、すぐさまいつも… <p> 神様ウサギが落とした鍵で、騒がしいアリスたちは可能性の国の扉を開けていく。<br /> あり得るかも知れない未来を覗き込み、求める結末を求め彷徨う不思議な旅路。<br /> 令和うる星第31話である。</p> <p> というわけで満を持しての<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くん登場、物語が終わったその先を紐解いていく多言世界<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%CE%B9%B9%D4%B5%AD">旅行記</a>エピソードである。<br /> 今となっては<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%DE%A5%EB%A5%C1%A5%D0%A1%BC%A5%B9">マルチバース</a>も<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D1%A5%E9%A5%EC%A5%EB%A5%EF%A1%BC%A5%EB%A5%C9">パラレルワールド</a>もオタクのド定番となっているが、40年前は当然目新しい新機軸であり、コミカルで騒々しいうる星テイストを濃厚に交えつつも、SFマインド濃い目の話で面白かった。<br /> 多元世界を渡り歩く旅のきっかけになる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんは、複数の世界を観察・管理可能な神様みたいな存在であるが、すぐさまいつものノリに波長を合わせて騒がしく駆けずり回り、しのぶといい感じのオーラを出していく。<br /> 最初はラムとあたるを取り合う三角形の一点を担っていたのに、話数が積み重なるほどにマッタリいい感じの友情物語に引っ張られていって、ラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>の相手役としては存在感が消えていたしのぶにとって、待ってましての固定カプ候補とも言える。<br /> しのぶがあたるに対してあんま太い矢印を伸ばしておらず、ラムと気さくな友達関係をすぐさま作ってしまった結果、緊張感ある三角関係が維持できてないって意味では、面堂くんも似た所あるな……。</p> <p> </p> <p> さておき、結構トンデモナイことが起こっているのにお話はいつもの調子で進み、不可侵なはずの可能世界にラムは扉を作り、好奇心旺盛に土足で駆け抜けていく。<br /> 思えば前回Bパート、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B9%A5%CA%A5%C3%A5%AF%B4%B6%B3%D0">スナック感覚</a>で通学路にショートカットを作ろうとして、あり得るかも知れない未来に迷い込んでる時点で、鬼ッ娘宇宙人の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/DIY">DIY</a>は時空間移動や因果操作の領域に手をかけていたわけで、スルスルと神様領域まで話がぶっ飛んでいくのもまぁまぁ納得である。<br /> そうして覗き込んだ未来は主に、誰と誰がくっついて家庭を築くかという一点に集約していて、ここら辺は確かにラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>らしい味わいである。</p> <p> どんだけ扉を開けても、主人公とメインヒロインがくっつく未来は観測されず、お互い納得行かないガッカリ未来を否定するために、一行は扉を開けては観測し、別の未来へと乗り換えていく。<br /> ここら辺のノリの軽いお試し感覚はいかにもこのお話らしくて、ドタバタワイワイ騒がしい珍道中と合わせて、不要な重たさがなくて良い。<br /> 管理局のウサギ達とドッタン<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D0%A5%C3%A5%BF%A5%F3">バッタン</a>大騒ぎしている所は、”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%D5%A4%B7%A4%AE%A4%CE%B9%F1%A4%CE%A5%A2%A5%EA%A5%B9">ふしぎの国のアリス</a>”と”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%ED%CA%B8%A4%CE%C2%BF%A4%A4%CE%C1%CD%FD%C5%B9">注文の多い料理店</a>”をかき混ぜて、SF味のスパイスを効かせた感じがあって面白かったな……。</p> <p> </p> <p> あり得るかも知れない未来を覗き見て、あれが気に食わないこれを認めないとワイワイ騒ぐ行為は、可能性を狭めると同時にどんな未来を望んでいるのか、暴き立てる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%EA%A5%C8%A5%DE%A5%B9%BB%EE%B8%B3%BB%E6">リトマス試験紙</a>のような意味合いも持つ。<br /> なにしろ永遠の狂騒を駆け抜けていくハイテンション・コメディ、『真実の望み』とかいうマジで重たいものを真っ直ぐ見据えるチャンスもなかなかないわけで、そういう場所に楽しく騒がしく……つまりは”うる星”らしくたどり着くための道具立てとして、運命を観測し製造できる稲葉くんが選ばれた感じもある。<br /> 彼の手を取って一緒に走りつつ、自分は本当は何を望んでいるのか、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C4%EA">不定</a>形の未来を鏡にして考える仕事は、そういうエピソードがさっぱり無いまま終わりなき日常に埋没仕掛けていた、三宅しのぶが主に担当することになる。<br /> 旅の果てに彼女が見つける望みこそが、彼女がどんなキャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターであり、この物語において何を求め何を為すのか、一つの答えを照らすだろう。<br /> そういう感じで、キャ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%E9%A5%AF">ラク</a>ターの核にある小さな祈りを結晶化出来るエピソードがあるのは、やっぱ良いことだと思う。</p> <p> 話のど真ん中からちょっと外れたところで、ワイワイや<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%DE%A4%B7">かまし</a>い掛け合いしながら望む未来を探している主役<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%AB%A5%C3%A5%D7">カップ</a>ルは、では何を望むのか。<br /> ラムの場合はダーリン一筋で分かりやすいが、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C2%A8%CA%AA%C5%AA">即物的</a>で多情に思えるあたるが何を望んでいるのかは、分かりにくいようでいてバレバレではある。<br /> ここまで幾度かあった、シリアスな手応えのエピソードで示されているように、プレイボーイ気取りで空振りばかりの<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BD%F4%C0%B1%A4%A2%A4%BF%A4%EB">諸星あたる</a>の本当に大事なものは、傍から見ているとバレバレなのに、あたるはそれをけして正面から見ない。<br /> そんな自分のマジを観測してしまえば、物語の未来は一つに固まってしまい、永遠の狂騒は終わりを告げるしかなくなってしまう……のかもしれない。<br /> 友引町が終わらないカーニバルの只中で、宇宙人から妖怪まで、常識ブッ壊れた何でもありの混沌を踊り続けるためには、それなりの幕引きを用意しなければならず、それはまだまだ……具体的には三ヶ月ちょっとぐらい先の物語なのだろう。</p> <p> </p> <p> 自分が何者であるのか、観察せず確定させない浮っついた浮遊は、友引町の物語が長い長いモラトリアムであることを示す。<br /> 猶予期間であるからにはいつか年貢の納めどきがやってきて、その先にある未来が思いの外多様性に満ちて、色々ハチャメチャであるってのを<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B0%F8%C8%A8">因幡</a>くんの力を借りて、観察している真っ最中であるが。<br /> どんなふうにも転がりうる、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C9%D4%C4%EA">不定</a>形の未来をどんな形に固めていきたいのか。<br /> 次回後編は、それぞれの願いが照らされる話になっていくだろう。</p> <p> もっと地道に、もっと当たり前の普遍性を持たせて掘り下げても良いテーマなのだが、あくまで騒々しくもSFマインドに溢れた、大変”うる星”味わいでそこにアプローチしていくのが、やっぱこのSFラ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D6%A5%B3%A5%E1">ブコメ</a>の金字塔という感じはある。<br /> ヒロインが空を飛ばず電撃を出さず、世界は野放図なやりたい放題を許さず、時間も運命も飛び越えていけない当たり前の窮屈さは、やっぱりこのお話には似合わないのだ。<br /> 同時にそういうぶっ飛んだ作風でありながら、どっか思春期の普遍的な柔らかさをしっかり捉えて、SF的道具立てを活かして<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%B8%A5%E5%A5%D6%A5%CA%A5%A4%A5%EB">ジュブナイル</a>の真ん中に突き進んでいく手応えも、またうる星らしさであろう。<br /> ここら辺、やっぱ”<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C9%A5%E9%A4%A8%A4%E2%A4%F3">ドラえもん</a>”イズムの正統後継者というか、児童誌から少年誌へ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%B8%EC%A4%EA%C9%F4">語り部</a>を変えて継承されてるものがある感じなんだよなぁ……。</p> <p> 可能性の扉を開け放って、迷い道の先に望むのはどんな未来か。<br /> アニメがこの重要エピソードを、どういう色合いで書ききるか。<br /> 次回後編、楽しみですね!</p> Lastbreath 外科医エリーゼ:第9話『嵐の後』感想 hatenablog://entry/6801883189088897943 2024-03-07T16:49:16+09:00 2024-03-07T16:49:16+09:00 医療無双も素敵なロマンスも、今日はお休み……。 その代わりと言っちゃあなんだが、素敵なお姫様との爆裂濃厚友情絵巻を喰らえッ! という、外科医エリーゼ第9話である。 いやーマジ、このアニメで摂取できるとは微塵も思っていなかったタイプの栄養素が脳髄へダイレクトに注入されて、俺ァ頭がおかしくなっちまったよ……。 雨に濡れながらの共同人命救助、カノシャツ借りてのお泊りに髪結い許容、アフターヌーンティーに談笑しながらの『私、貴方のこと嫌いだったの……』と、定番ながらド強いムーヴを山盛り叩き込んできて、完膚なきまでにぶっ飛ばされてしまった。 思えばエリーゼもユリエン様も相当な人格者なわけで、そんな二人が正… <p> 医療無双も素敵なロマンスも、今日はお休み……。<br /> その代わりと言っちゃあなんだが、素敵なお姫様との爆裂濃厚友情絵巻を喰らえッ! という、外科医<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>第9話である。</p> <p> いやーマジ、このアニメで摂取できるとは<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%F9%BF%D0%A4%E2">微塵も</a>思っていなかったタイプの栄養素が脳髄へダイレクトに注入されて、俺ァ頭がおかしくなっちまったよ……。<br /> 雨に濡れながらの共同人命救助、カノシャツ借りてのお泊りに髪結い許容、アフターヌーン<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%C6%A5%A3%A1%BC">ティー</a>に談笑しながらの『私、貴方のこと嫌いだったの……』と、定番ながらド強いムーヴを山盛り叩き込んできて、完膚なきまでにぶっ飛ばされてしまった。<br /> 思えば<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>もユリエン様も相当な人格者なわけで、そんな二人が正面衝突すれば”事件”が起きちまうのは当然といえば当然なんだが、こっち方面にまでカバー範囲広げてくるとは思っていなかったので、嬉しい不意打ちだった。<br /> 顔見世ではキャラの深い所まで掘り下げられてなかった感じもあったので、一話丸々ユリエン様に回すことでその魅力もたっぷり堪能できたし、彼女と<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>を取り巻く王室派・貴族派の対立構造もちいと鮮明になった。<br /> ガンガン医療技術と真っ直ぐな生き様で無双ぶっこむ足取りを弱めて、グレアム先生やユリエン様といったサブキャラとの交流を描くターンに入ってきたわけだが、ヤダ味の少ないド直球な話運びが、作品の持つ良さをしっかり引き出している感じがある。<br /> 善人ばっかり出てくる話なんで、こういう味わいで煮込むと良いコク出てくるわなぁ……。</p> <p> </p> <p> というわけで、立ち位置的には恋のライバルであり不倶戴天の政敵でもあるユリエン様は、超がつくほど人格者だったので、主人公に嫌がらせをすることもないし、転生を経て修行が成った<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>とは超仲良くキャフフするのであった。<br /> この世界の貴族、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>周辺の人達が特別なんかも知れないが、特権に胡座かいて他者を虐げることも、我欲に振り回されて誰かから奪うことも、無能を棚に上げて権力を恣にすることもなく、皆やるべきことをしっかりやってるのがオモロイ。<br /> 泥に汚れて患者を治す、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の働きに感じ入って手を貸すユリエン様もまた、雨に濡れることを厭わぬ誠実なお人柄であり、『この人善人ですッ!』とわかりやすく示すのが上手いこのアニメの、いいとこ出てる<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%D5%A5%A1%A1%BC%A5%B9%A5%C8%A5%BF%A5%C3%A5%C1">ファーストタッチ</a>だったと思う。<br /> 転生<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>は謙虚で話しやすい人柄しとるので、恋敵に色々感じるところもあったユリエン様も素直に邸宅に真似きれ衣装を貸し、己の心を真っ直ぐ告げる。<br /> 家や派閥がどんだけ複雑に絡み合っていようが、魂が綺麗な女二人がひとつ屋根の下、膝つき合わせ髪を溶かせば、大体の問題は氷解するってのが、百合ジャンルの鉄板である。(多分このアニメ、”百合ジャンル”ではない)<br /> 色々複雑にこじれていそうな権力闘争を遠くにスケッチしつつも、主役とライバルがわだ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%DE%A4%EA">かまり</a>なく率直に心を繋げていく描写は、何かいい感じの未来を引き寄せてくれそうで大変良かった。</p> <p> 医者である<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>が風邪を貰って、彼女に惹かれて医術を学んでみたユリエン様が看病する構図は、転生チート野郎の才覚に気圧されつつも、憧れを力に変えて新た化可能性を開いた女(ひと)の強さが、自然と出ている良い展開だった。<br /> 何しろ超絶チート女なので、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>はめったに弱みや負け筋を見せることがないのだが、そんな彼女の弱った姿を寝床に受け止め、他でもない<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>に影響されて学んだ誰かをケアする技術でもって、優しく向き合う姿は美しい。<br /> 追いつけないかもと心の何処かで思いつつ、負け犬に甘んじてはいられず、しかし足引っ張って恋愛レースに勝つような卑劣は考えもせず、ゼロから医術学びに行くユリエン様、人間が真っ直ぐすぎて眩しかった。<br /> そういう人が身につけた技術が、誰かのためにびしょ濡れになって頑張った主人公を助け、素直な思いが絆を深める助けになるってのは、真っ直ぐで気持ちの良いもんだ。<br /> こういう時に幼くすらある透明度の高い善因善果は、俺はこのお話の強みだと感じているので、ユリエン様を鏡に全力でブン回ってくれて、大変良かったです。</p> <p> </p> <p> チャイルド家令嬢たるユリエン様が話の真ん中に立つことで、貴族派と王室派、リンデン派とロマノフ派で色々めんどくさいことになってるっぽい、ブリチアの国内事情もいい感じに見えてきた。<br /> このネトネトした因縁と権勢の絡み合いを、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の真っ直ぐな生き様が快刀乱麻を断つがごとくどうにかしていく話も面白そう……なんだが、アニメの残り話数で描けるものか、ちと不安でもある。<br /> まぁ医術無双に足場置いてきたアニメの筋立てからすると、ハードル上がってる資格試験を突破さえすれば大筋いい具合に収まる感じではあるし、完全解決とは行かずとも、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の存在が王国に吹き溜まるイヤーな空気を追い出す気配だけで十分……かなぁ。<br /> 個人的な興味として、”一周目”国が燃えた原因だろう政情不安を、”三周目”の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>がどういう塩梅でぶっ飛ばしていって、ハッピーエンドへと話を引っ張っていくかは見届けたい気持ちがあり、コッチ方面にも話が広がっていくと、なお面白いかなと思った。</p> <p> 色んな対立に転生者<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>が橋をかけていく時、彼女の真っ直ぐな生き方が生み出した数多の縁が足場になるはずで、そういう意味でも今回散々イチャコラした、ユリエン様との絆は大事なのだろう。<br /> 家族がまさかと色めき立つ、政敵の娘との<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%DC%BF%A8">接触</a>を気負いなくこなし、新しい風が女二人を中心に巻き起こっていく脈動がいい感じに描かれたことで、今後(もしあるならば)複雑怪奇な政治に切り込んでいく時も、<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の活躍を飲み込む足場が出来たと思う。<br /> ここら辺の『良い人が良いことしてたら、なんか未来はいい感じになっていきそうだぞ!』つう漠然とながら気持ちの良い期待感は、リンデン王子とのロマンスにも上手く漂っている魅力で、終盤戦どう効かせてくるのか、なかなか楽しみだったりする。<br /> バッドエンドまっしぐらだった”一周目”の悪縁を、人生三回目の<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%BF%CD%B4%D6%CE%CF">人間力</a>で軒並み平らにして、生き様一つで運命捻じ曲げにかかっている<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>の逞しさをより楽しむ意味でも、国全部を視野に入れたスケールデカい展開やってくれると、面白くて良いと思う。<br /> そういうデカい部隊でも<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%A8%A5%EA%A1%BC%A5%BC">エリーゼ</a>が頑張れるだろう説得力は、今回ユリエン様と大変いい感じの関係作れたことで、しっかり打ち立てられたしね。<br /> いやー……やっぱ少し前まで感情のわだ<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%DE%A4%EA">かまり</a>を抱え込んでいた女から飛び出す、『こんなに素直に、あの女(ひと)に全部話すつもりなんてなかったのに……』<a class="keyword" href="https://d.hatena.ne.jp/keyword/%A4%AB%A4%E9%A4%B7">からし</a>か獲れない栄養素ってのはあるね!</p> <p> </p> <p> というわけで、前回に引き続きサブキャラとガッツリ絡み掘り下げる、気持ちの良い寄り道でした。<br /> 本筋を医術と人格でガッシガッシ無双していく爽快感も好きだが、こうしていい感じに横幅広い話をやってくれると、キャラや世界観が持っている面白さがいい感じに膨らんでいって、お話に奥行きが出てくる感じがある。<br /> 今回拡張した政治方面のネタをアニメで扱い切れるのか、正直良く解んないところもあるのだが、単独の話数としても大変いいものが見れて、凄く良かったです。<br /> マージで想定してなかったからな……こういう方面でのこの”強さ”は……ありがたいッ!<br /> 次回も楽しみです!!</p> Lastbreath