イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ルミナスウィッチーズ:第12話『みんなの世界、そしてFlying Skyhigh』感想ツイートまとめ


・総論


・最終回感想

風都探偵:第8話『閉ざされたk/連鎖する悪意』感想ツイートまとめ

シャドーハウス 2nd Season:第12話『抗う者たち』感想ツイートまとめ

デリシャスパーティ♡プリキュア:第29話『おいしいパラダイス!レッツゴー!クッキングダム!』感想ツイートまとめ

松虫暑気を送る -2022年7月期アニメ 総評&ベストエピソード-

・はじめに
この記事は、2022年7~9月期に僕が見たアニメ、見終えたアニメを総論し、ベストエピソードを選出していく記事です。
各話で感想を書いていくと、どうしてもトータルどうだったかを書き記す場所がないし、あえて『最高の一話』を選ぶことで、作品に僕が感じた共鳴とかを浮き彫りにできるかな、と思い、やってみることにしました。
作品が最終話を迎えるたびに、ここに感想が増えていきますので、よろしくご確認を。


・ちみも
ベストエピソード第6話『地獄マター/しあわせ地獄』

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この話数……というよりAパート”地獄マター”なんだけども。
ドラマとしてみると第11話Aパート『この地獄をいつかボクが思い出す時、
キミはどこにいるのだろうか。
』が大変良くて、SNS越しの承認欲求に縛られていためいちゃんが、ふみおの身勝手で人情味ある暴走に付き合う形で自分を見つけ、半歩成長する手触りは大変いい。
こういう爽やかな味わいで日常を切り取るのもこの作品の魅力だったし、ちみもの可愛さにどっぷり尺を使ってサービス満点、癒やしアニメとして勝負を仕掛ける強さもあった。
軽い歯ざわりでサックリ楽しめるわりに、細かい細工が行き届いていて思いの外堅牢なのは、結構欲張りに色んな要素を載せていたアニメが座礁しないための、大事な羅針盤だったのだと思う。

同時にぶっ飛んだ投げっぱなし力も高く、そのシニカルでシュールな魅力を存分に味わえるこの話数を、結局ベストに選ぶ。
堅牢なフレームを守りつつ、時折とんでもない暴投を素知らぬ顔でぶん投げるのを許してくれるのも、短いエピソードをまとめ上げたオムニバスの強みだと思う。
そんなジャンルの先達である”スペース☆ダンディ”の気配を何処か感じ取って、『どっかで思いっきりビーンボール投げねぇかな……』とワクワク、待ち構えてたところに来たラスト三十秒の急転直下。
最高に良かった。
この味わいだけを求めてみてたアニメでは勿論ないのだけども、なんだかんだそういう知的で冷笑的で、可愛さで覆いきれない毒の強さを求めてみてた部分は強いので、自分の悦楽に素直にベストを選ぶ。
マスコット・コンテンツとして上手く軌道に乗ったら、いくらでも続編が作れる作風だとは思うので、成功を祈りつつ続きを待ちたいと思う。


・シャドーハウス 2nd Season
ベストエピソード:第5話『深夜の同期会』

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二期は亡霊騒動の犯人探しと、館の真実を暴いていく二重のミステリ構造が、ケイト世代とマリーローズ世代を重ね合わせながら進んでいく、結構ねじれた作りだったと思う。
洗脳密告社会である館で味方を見つけるのは難しく、立ち向かうためには慎重さと大胆さのバランスが大事になる。
そこを賢く渡っているだけでは、人間にとって大事なものを取りこぼしてしまう……というのが、このエピソードで描かれることになる。
怜悧なケイトは問題解決のために、味気ない最短距離を走りすぎようとして周囲の反発を買い、自分を楽しませてくれたエミリコとの豊かな回り道を思い出して、理と利を引っ込めともに遊ぶ。
”お披露目”を終えて『無邪気な子供時代の冒険』という味わいも薄くなり、”大人のなりかけ”という側面が濃く描かれるようになったケイト達が、それでもやはり”育った子供”であることが大事にされるエピソードでもある。

そんな皆を繋ぐ大事なかすがいとして、”遊び”が重要視されるお話でもある。
効率と規範の最悪な側面が支配する館において、遊びとは無駄であり、そこで生まれる笑顔や思い、絆は無価値とされる。
人間を食って恥じず、人を貶め陥れて顧みない人非人こそを館は求めていて、ケイトはそんなモノが人間だと思いたくないから叛逆の牙を研いでいる。
その歩みは一見無駄に思えるものを取りこぼさないからこそ厳しく、また価値がある旅路であり、”遊び”はそこでとても大事な役割を果たしている。
花に微笑み、共に笑う。
そういう感性が残酷な館の中でまだ残っているからこそ、子どもたちは遊びを通じて心を繋ぎ、共に死地に進むだけの信頼を育んでいく。
わかり易い指標に現れるもの、システムが是とするものだけが価値なのではなく、一見無駄に思えるものにこそ得難い輝きがあり、人間を人間たらしめる大いなる無駄が、とても大事なのだ。
そんな事を堂々告げる一つの遊戯論としても、このエピソードはとても優れている。
オタクとして、TRPGという趣味を持つ人間として、”遊ぶ”ことをケイトが選んだこと、遠くにある理想だけでなく目の前の人間も大事にしたことが、結果として革命を加速させる話運びには、不思議と勇気づけられるものがあった。
亡霊騒動解決に直接繋がる大きなエピソードではないが、自分的にとても大事な、得難い物語だったのだ。

 

 

・ルミナスウィッチーズ
ベストエピソード:第9話『星と共に』

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……むっちゃ悩むな。
ぶっちゃけ今クールどころか今年一、十年一クラスで刺さった作品になったので、ベストエピソードは全部である。大変良かった。
話のゆったりしたテンポとか、やや緩めな作画とか、”ストライクウィッチーズ”と聴いて想像するものの大胆な切り捨てっぷりとか、世間様的にはどーなの? と首をひねられるポイントも、ここまで見届けてしまえばもはや遥か彼方、実感の薄い意見になってしまった。
最高のアニメです。見てねぇ奴らは皆見ろ。

お話との向き合い方、作中を流れる空気の香りを教えてくれた第1話第2話、顔見世が終わり具体的なドラマがこちらをグリップしだす第3話、ブリタニア編総決算として手応えのある第4話。
ワールドツアーが始まり、特別な二人を選び出して濃い感情と関係性に踏み込んでいく第5話、第6話、正伝との見事な共鳴で圧倒的な奥行きを出した第7話、扶桑帝都の夏が爽やかに香る第8話。
終盤戦のアクセルを全力で踏み込み、飄々としたエリーのゆらぎ、ジニーの秘めたる心の強さが顕になっていく第10話。
決断を果たした主役が特別な誰かではなく、”みんな”の歌を受け取って自分の一番を決める第11話。
そして全ての総決算として、たどり着くべき結末とその先へ物語が導かれる最終話。
全部いい。

その上でこの話数を選ぶのは、深夜アニメが滅多に扱わない……扱ったとしてもその真芯までたどり着かない”貧困”というものを、悲惨にも同情的にもならず描き切り、ジョーという少女の霊がどこから来てどこへ行くのか、個人的なドラマと違和感なく溶け合わせているからだ。
ネクタイを締める名士たちにだけ開放されたステージと、ネクタイを締めないジョーの家族達。
華やかなる摩天楼の影になる場所にこそ人の営みがあり、それを忘れず万人への唄を歌うことが、”ルミナスウィッチーズ”の天命なのだと、匂いのある描写の中で描いている。
世界各地を巡り、その土地に宿る地霊の個性を画面に切り取りつつ青春を描いてきた筆が、戦地から遠いリベリアンだからこそ描ける物語を、そこから巣立ち帰ってきたジョーの物語を、しっかり刻む。

しかもこの描写は、どこかの英雄が己の手の届かぬ所で成し遂げた、ガリア解放の知らせを受け取って何も言えぬまま震えるエリーの影絵として、ここから続いていく物語に生きる。
ルミナス後半の畳み掛ける構成、一話をもたせるのに十分な素材を惜しげもなく投げ込んで物語の連鎖爆発を起こす手筈は見事なものだが、その初発が起きているのも、ベストに選んだ理由である。
やはりラスト10秒、余りに大きなものを前に慄くエリーと、苦楽をともにした戦友の代わりに『ガリアが帰ってくるよ』と言ってくれたアイラ……二人の肖像は美しすぎる。
そういうのを全部ひっくるめて、あえてのベストを選んだ。

 

 

メイドインアビス 烈日の黄金郷
ベストエピソード:第1話『羅針盤は闇を指した』

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”原作そのまま”って、アニメに対する褒め言葉としてはあんま適切じゃないな、と常々僕は思っていて。
最近そういう価値観で原作付きアニメを評価することが多いように思うけども、こと漫画からアニメーションに媒体が変化する時、静止画から映像、読者依存から固定された時間体験への変化を踏まえて、見せ方伝え方を時に変え、作品が持つ魅力を何十倍にして伝えられるアニメが、僕は好きだ。
無論そういう工夫が作品を殺すことも在るし、”原作そのまま”に思えるように異様なまでの努力を重ねてアニメならではの表現を探っている作品も、たくさんある。
描き方はたしかに様々にあって、大事なのは個別のアニメ作品として視聴者に一人向き合うしか無い表現の現場において、どんな仕草を選び取って力強く立つかという、とても基本的で普遍的なことなのだろう。

この二期は”ガンジャ”というアビス最初の探窟隊がいかに夢に挑んで絆で結ばれ、無惨な現実に捻じ曲がって人でなしに成り果て、それでもなお輝ける闇と暖かな光が行き着く果てを求めていた過去が、分厚く背後にある。
それが主人公たちの未来への旅路とシンクロしているのは明瞭で、この第一話は原作から大きな変更を加えて、”ガンジャ”とかいうよく知らねぇ連中の旅を、第一期と劇場版でパンッパンに機体が高まった第二期の始まりに置いた。
奇策であり、しかし裏切りではない。
後に判明していく成れ果て村の建国神話、おぞましくも悲愴なる”ガンジャ”の末路を馴染み在るものとして受け止めるためには、初手から尺を割り振り深く描かれる特別な存在として彼らを見せるこのスタートが、必要だったのだ。
そう納得させられる必然の奇手は、”継承”というエピソードテーマをより深く際立たせ、新たな旅の仲間として禊と親離れと生まれた使命を果たすファプタの因縁を、的確に見ている側に突き刺すための妙手でもあった。

地上に広がるドス黒い奈落を抜け出し、冒険の果てに光を夢見た者たちがどう人でなしに成れ果て、それでもなぜ人は夢を見続けてしまうのか。
闇に思えるものの中にこそ烈日が輝き、過酷な光は闇よりも強く人間を切り裂く矛盾の中で、過去と未来は強く繋がり、愛は呪いとなり呪いは祝福へと変わって、不可思議にして魅力的な奈落の冒険は継がれていく。
そういう物語を心地よく、強烈に、面白く、1クールのアニメで描き切るためには相当な工夫と腕前、知恵の限りが必要であり、そんな現実的アビスダイブを見事成功させる鍵はやはり、このスタートにこそ在る。
そう思える話数だ。


リコリス・リコイル
ベストエピソード:第3話『More haste, less speed』

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間違いなく、錦木千束という卓越したキャラクターを軸に、その強さを的確にぶん回して走りきった作品であると思う。
あんま強くなくて不器用で間違えきっているたきなを、抱き上げ導く超越者としての千束がこの話数で見えているより脆く人間的で、一般的水準を遥かに超えて聖人的であることを、この物語を結末まで見た僕は知っている。
記号にはありえない陰影をしっかり確保しつつ、キャラクターだからこその透明度と力強さを兼ね備えた造形の片鱗と核心は既にこの話数で見えていて、というかたきなへの影響力を通じて感じ取れる人格的質量、色んな人が狂わされていくチャーミングな天才性、選択の正しさを担保するバランスの良さは、このエピソードに刻まれた黄金色の抱擁が最も強く、決定的に担保している。

持ち前の優しさの使い方を、親代わり気取るくせに人生で大事なことは何も教えてくれない腐れ国家暗殺機関で当然教えられず、そこを追い出され愛着に迷ってる女の子を抱き上げて、人生で一番大事なものを至近距離で与えて一緒に進んでいく事が出来る人間は、俺は好きだ。
あんたも好きだろうし、好きになるようにこの物語はかなり必死で、錦木千束というキャラクターを描いている。
たきなはこの話数に刻まれた、『自分は愛されているのだ』という実感を飴玉のように……あるいは失われた乳房のようにしゃぶりながら、自分が何を愛するべきなのか探り当ててお話を進んでいき、そんな二人の歩みがこの物語の柱だ。
もう一つの柱たるシンジとミカの愛の形が、鮮明になる第7話ともちょっと迷ったが、やはり千束とたきなの爽やかで体温あるふれあいが”主”だとは思うので、コッチをベストに選んでいる。
間違えきって別れ、そんな過去にどう決着を付けるか苦しむ男たちの愛と、今まさに二人で未来を切り開くための足場を、ここでの抱擁からスタートさせていく女たちの物語は、靭やかな強度でお互いを支え合いつつ、絡み合って作品を支えている。
そういう”私”の領域において、この作品はずっと的確に真芯を捉えてキャラとその感情を切り取り、瑞々しく時に暴力的に青春が揺れる様を描いてきた。
その後景に打ち捨てられた”公”のみすぼらしさも、話数が転がる中で際立ってはくるが、その粗さがここから本格的に動きだす嵐の価値を、力強さと精度を無にするわけでは、勿論ない。
未だ難しいアンバランスに僕の中で揺れているが、凄くて面白いアニメであったと思う。

 

 

ラブライブ!スーパースター!! 二期
ベストエピソード:第3話『優勝候補』

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 ラブライブスーパースター二期が終わった。
 当然のことながら、ベスト選出は悩む。
 楽曲は”ビタミンSUMMER!”が一番好きで、エピソード単体の破壊力としてはやはり9話、あるいは全部終わってみると葉月恋を解体再構築しえた屈指のバカエピ第7話なんかも、大変に良かった。
 僕は嵐千砂都と澁谷かのんが好きなので、彼女たちの距離感に静かに切り込んでいった最終二話も好きだ。
 詩情と表現力という意味では第4話も良いし、第8話の風通しとバランスの良さも素晴らしい。
 終わり方(というか終わらなさ、引っ張り方)に色々思うところはあれど、スーパースターにだけ描けるラブライブが色濃く出て、賑やかながら染みる部分も多々あった、良い物語だったと思っている。

 その上でこの話数を選ぶのは、第三話単品というよりここまでの三話全体が、二期を受け止め期待する足場をちゃんと作ってくれたから、こんだけ気持ちよく見終われたからだ。
 きな子が東京にやってきて、Liella!とスクールアイドルに出会い、へろっヘロになりながらなんとか初ステージに挑むまで。
 初めて出来た後輩が、どういうふうに”部”や学校に影響を及ぼし、一年分頼もしくなった二年生たちの顔を照らし、新しい難しさと可能性を連れてきてくれるか。
 新たにLiella!に加わる仲間が、どんだけ健気で元気で可愛いか。
 たっぷり時間を使って描いたことが、『スーパースターの二期は、こういう話を描くんだ……』という納得を、僕の中に作ってくれた。
 あと、桜小路きな子という少女への愛着と慈しみも。ホントに可愛い子だよ……。

 一年間に凝縮され、『先輩禁止!』で進んできた”ラブライブ!”が、巨大コンテンツとしての売上と信頼をしっかり稼いできたからこそ可能な、TVシリーズ三期という新境地。
 その構成を前提として、結ケ丘が学校として育ち、少女たちが”先輩”になっていく面白さ、頼もしさ。
 学園生活、部活モノの美味しい部位でありながら、”ラブライブ!”が噛みつけなかった美味しさに全力でかぶりつき、その瑞々しい面白さを形にしてくれた二期が、僕は好きだ。
 ラブライブ世界における”後輩”、そのファーストサンプルになるきな子の、クセがなくコクが強い魅力を存分に味あわせて、『この子に続く連中も、多分良いぞ!』と期待させてくれた……そしてそのとおり、それ以上に個性的で魅力的だった物語への、信頼の土台。
 それを焦らず積み上げたこと、そう動ける構成を掴み取れていたことが、自分の中ではとても大きい。

 

 

・シャインポスト
 ベストエピソード:第8話『祇園寺雪音は《許せない》』

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 ……やっぱまぁ、ここにはなるよな。
 このお話の主人公・青天国春が秘めていた大きな”嘘”を成立させるべく、構成も演出も考えられてきたお話の炸裂点は明らかにこの話数に設定されており、それに相応しい破壊力を持った、勝負のエピソードだった。
 春が練習で汗をかかないのも、どこか取り澄ましたツルンと綺麗な関係性を維持し続けているのも、その奥に”何か”を隠している気配も、この話数で暴かれる真実を際立たせるための仕掛けであり、ある意味サスペンス・スリラー的な組み立てをここまでの9話、積み上げていくアニメだったとも言える。
 暴かれると納得の真相でもあり、いかにも”アイドルアニメの主役”っぽい濁りのなさで描かれてきた春の強烈なエゴイズム、それに巻き込まれてズタズタになっていく雪音の描き方含め、強烈な印象を残すエピソードだった。

 ここで示された春の存在質量に負けないヤバさを宿した黒鉄蓮が引っ張る形で、この後のクライマックスもテンション下げずに走りきって、アニメにひとまずの幕をしっかり下ろせたこと含めて、なかなか良い展開だった……と言い切ってしまうのも、また難しいのだが。
 ぶっちゃけ蓮ちゃんのイカレ方にTINGSのグルーヴが追いついておらず、最後に自分たちが積み上げた作品がどんなもので、己がどんな存在かを吠えきれずにまとまってしまった感じも正直ある。
 その上で驚異的な表現力でライブステージを描き切り、兎にも角にも納得させてしまうフィジカルの強さを見せつけるのも、またこのアニメらしいのだが。

 僕がここで開陳された真相と人格見る青天国春は、ズルくて身勝手で残酷で、そのあまりに人間的な生き方に無自覚なまま、自分がまだ綺麗な子供だと信じられている救いがたい愚か者だ。
 これが僕の期待に歪んだ虚像なのか、作中描かれたものを素直に受け取った実像なのか、ずっと確信が持てないまま終盤戦を見届けた。
 僕の中では春はどう考えても怪物で、だからこそ面白く、それを生かしたお話を是非に楽しみたかったのだが、創る側としてはそういう意識があんまないのかもな……という疑問は、ずっと付きまとう。
 こういうズレは大概致命傷となり、作品と別れていく決定機になるものだが、現状『まぁ、それはそれとして……』くらいの食感で噛み締められているのは、自分の経験としても結構なレアケースだ。
 そうさせるだけの可愛げと生真面目が作品に宿っているからこそ、ブツクサ文句たれつつも最後まで見て、『見てよかったな』と見終えられたんだと、今は思っている。
 そう思わせてくれた大きな震源地は、やっぱりこの話数なのだ。

 

 

・風都探偵
ベストエピソード:第3話『tに気をつけろ/仮面の守護神』

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 僕はアニメから”風都探偵”二であったので、第1エピソードの総まとめと為るこの第3話がしっかり収まり、かなりしっかりした構造でお話を届けてくれるアニメなのだと、安心して作品に向き合う姿勢を作ることが出来た。
 そういう構造の確かさは芸能界を舞台にしたギークテイストの第2エピ、和製ミステリの本道をひた走る第3エピを経て、”街の探偵”の本道に戻ってしっかりアニメの物語を纏める第4エピソードへと続いていく。
 そういう3話ひとまとまりの安定性と同じくらい……否、それ以上に僕をこのアニメに惹きつけてくれた話数なので、ベストに選ぶことにする。

 主役というのはお話においてとても大事なもので、主人公を通じて僕らは作品の中に入っていくし、その魅力こそが最大の入り口ともなる。
 左翔太郎という青年が、自分を騙しガイアメモリの魔力に魅入られた依頼人に対し『この街を好きになってほしかった。でもアンタは、この街の最悪の部分におぼれてしまった』と熱い涙を流した時、僕はこのアニメを……傲慢な言い方にもなるが、信用して良いのだと思った。
 それは悪魔の薬に果敢な戦いを挑む、汚れた街の気高き騎士そのものであり、”仮面ライダー”に全く造詣が深くない自分でも、体内のディテクティブ・ストーリー分解酵素でちゃんと、この話を食べれるな……と感じるのに十分な、真っ直ぐな雫だった。
 ハードボイルドを任じつつも、目の前の男の卑劣な弱さと、それを超えて街の魅力を伝えられなかった自分の弱さに堂々涙し、悔しさを滲ませる男の熱さが、ガッと強く僕を捉えた瞬間だった。

 翔太郎に限らずこのお話のキャラクターは魅力的で、同時に異能ミステリとしての組み立ての巧さ、多彩なアクションの魅せ方、ヒーロー物語としての真っ直ぐな強さなど、見所が多彩かつ分かりやすく、自分的に新鮮な部分も多かった。
 ミステリアスでコケトリーなヒロイン、ときめが”探偵”になって行く物語も骨が太く、裏風都の全容がだんだん見えてくる構造と合わせて、上手く視聴意欲をそそってくれた。
 しかしやはり何よりも、この話数で見えた翔太郎の真っ直ぐな強さと優しさ、主人公として話を牽引し視聴者を引き付ける魅力の強さが、作品を最後まで楽しく見届けられた大きな要因だろう。