イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

のんのんびより りぴーと:第8話『給食当番をした』感想

緑色をした時の牢獄のお話、今回はサマータイム・トラベラー。
大まかに分けてれんげと夏美の工作コント、のんのんびよりZERO、小吉さん再生計画という三幕構成なのですが、笑わせるところはガッツリ笑わせ、ノスタルジー満載のメロウなオチでシメるという、非常にのんのんらしい作り。
バラエティ豊かなお話ながら、最初に夏美が言った『タイムトラベラー』というテーマで一本筋を通している所が、散漫な印象を受けない大きな足場だと思う。

一発目は『れんげは天才でぶっ飛んだ発送をする』という事前知識を巧く活かした、脱線式のコント。
本題からどんどん外れていくれんげ&夏美を強調するこまほたコンビや、全く独自路線で曲げわっぱを完成させる兄ちゃんなど、メイン以外のくすぐりが良く効いていました。
どんどん脱線して『もしやれんちょん、今回は天才っぷりを発揮しないのでは……?』と思わせたところで、グイーっと話が収束し居眠り防止装置が完成するのが、凄く好き。

そして幕をまたいで、駄菓子屋んところでもう一回やるのが好き。
学校の工作をわざわざ見せてあげちゃうところに、れんちょん駄菓子屋好きすぎ感がでていて素晴らしい。
省略するべき所、省略した方が視聴者に効果的に届く所をよく見切ってる演出は、このアニメらしいなとか思います。


そしてやってくる、れんちょんベイビーの恐怖。
一期第10話で思う存分ベイビータイフーン加減を見せつけていたれんげ(一歳)ですが、あの時と違って舞台が学校なので、キャラクターの若いころが良く見えるお話になってました。
駄菓子屋とれんげの絆を見せる一期10話と、おなじみのキャラのおなじみではない姿を見せる今回では、お話の狙いも違うしね。

美術がしっかりしているアニメなので、学校というおなじみの箱のなかで、馴染みのないキャラクターが動いている違和感が楽しくなってくる、なかなか面白い絵だったと思います。

大体5年前くらいの学校は人も多く、今では店に通ったり東京に出ている人たちが、制服を着ている意外性。
宮内三兄妹は今も学校通っているけど、まだまだ幼い感じというか、まだこまちゃんがお姉ちゃんらしいとか、なっつんが純真だとか、共通点より差異が強調される見せ方でした。
せっかく時間が巻き戻ってんだから、その方がいいよね。

一期第10話で見せた仕草へのこだわりは今回も爆発していて、赤ん坊らしい奔放さで歩きまわるれんげとか、異常な執念でぬるっと回るペドなっつんとか、随所から気合が立ち昇る動きでした。
赤ん坊への対応に慣れていないので、ワーワー言うだけでれんげを止めないし、事故が起きても自分の絶望に手一杯でれんげを気にかける余裕が無い子どもたちの描写とかも、五年間の時間を感じさせる。
ここら辺、れんげ←(見る)-こども←(見る)-視聴者っていう、視線の三層構造に意識的なんだなぁと思った。
いい意味で、作中世界と視聴者の世界が乖離していて、箱庭感が良くでているというか。


そして時間が現在に戻って、こまちゃんの小吉さん再生計画がはじまる。
二幕目はギャグの文脈で使われていた小吉さんを、三幕目では非常にノスタルジック、かつ感動的なお話に飛び込ませる落差は、凄く良かった。
同じ小道具を印象的に使うことで五年前と現在がつながってる感じがあって、エピソードが孤立していないのが、とっても素晴らしい。

小吉さん再生のために蛍亭を訪れ、直してもらうのではなく直し方を教えてもらう流れも、こまちゃんの気持ちがゆるっと伝わってきて良い。
最初に小吉さんを見つけた時、「もういらないかな?」と残酷で、しかしよくありそうな言葉を言わせているのが、とても良く効いていると思う。
思い出を静止できるアルバムという小道具も、エモーショナルでグッドだ。
感動で押し流す時は密かに、しかし圧倒的に攻め立てるというこのアニメの演出方針は、僕の好みにバッチリフィットであり素晴らしい。

蛍ルームはどう考えてもマーダーケースブックの付録になるヤバさだが、こまちゃん純真だからそこが虎口だと気づいていないね。
二期はこまキチほたるん推しを弱めることにしたのか、学校の友人やその周辺の人々の人形を見せ、蛍の中で田舎がどんどん馴染んでいる様子を見せるのも忘れない。
やっぱ二期は、蛍の戸惑いが一年を通して氷解し、場所と人に馴染んでいく様子を追いかけて行くことが、大きな軸として設定されてんだなぁ。


幕を細かく分けつつも、エピソードごとの繋がりをしっかり確保し、統一感と満足感のあるお話でした。
24分フルに使って一つのテーマを追いかける展開も、色んなジャンルを横断しつつオムニバスに仕上げる展開も、両方丁寧できれいなのは流石だなぁ。
このアニメの強いところがグッと凝縮されたような、中身の詰まったお話でした。