イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

Go! プリンセスプリキュア:第35話『やっと会えた…! カナタと失われた記憶!』感想

新番組『記憶をなくしたヴァイオリン職人見習いの僕が、実は異世界の王子だと変身魔法少女の妹(自称)が言い出して!?』はじまります!! という感じのカナタ再登場回。
正直一話で治るかと思ってたんですが、結構ヘヴィに後に引きました。
『歩いて息をするサバイバーズ・ギルト』ことトワ様の重たいリアクションと、痛みをこらえて患者最優先で決断したはるかが良い対比になってて、優しい話だった。
二度目のボーイ・ミーツ・ガールも、演出すっごい綺麗だったしなぁ……。

プリプリは主人公はるかの成長物語であり、その曲線はかなり丁寧、かつ無理がないものです。
みなみやシャムールといった良い師に恵まれ、背中を支えてくれるきららやゆいといった友もいる。
素直さや努力を苦にしない姿勢はもともとはるかに備わっていた美徳だし、それが成長をブーストする説得力も、かなり素直に受け取れます。

そんな彼女の原動力になっているのは、やはりカナタ王子との出会い。
幼い時に夢を守ってくれたカナタへの憧れあればこそ、プリンセスという無茶苦茶な夢に向かって頑張ることも出来るわけです。
自分の夢を土足で踏みにじられた時、それを守ってくれる存在がどれだけ有り難いのか知っているからこそ、彼女は『強く』『優しく』『美しく』のプリプリ三美徳のうち、『優しさ』を担当しているのでしょう。

これまで約9ヶ月、ドンガメだったはるかも様々な経験を経て、立派な少女になりました。
今回のエピソードは、記憶を失ったカナタと、かつてのはるかと同じ夢を持つ少女というゲストキャラクターを巧く使うことで、はるかが到達した成長をよく見せる話になったと思います。
性急に兄を求めるトワと同じように、カナタに対して劇的なものをはるかも抱えている。
しかしトワとは違ってカナタの苦しみに気付き、それを優先して自分を抑えることが出来る『優しさ』と『強さ』は『美しく』もある。
これは物語開始時(もっと言えば最初にカナタと出会った幼少期)には持っていなかった美徳であり、はるかが作中で果たした成長を如実に示すものだといえます。
いうなればあの二度目の出会いのシーンは、プリプリが目指してきた三美徳が初めて、バランスよく実現するシーンだったんじゃなかろうか。

更に言うと、カナタ優先で先送りするだけではなく、『いつか、きっと、必ず』という希望を添えて保留を決めているところは、凄くプリプリっぽいなと思いました。
『いつか、きっと、必ず』というのは、プリンセスという非現実的な夢を追いかけてきたはるかが、とても大事にしてきた姿勢のはず。
かつて希望を教えてくれたカナタを(一時的とはいえ)諦める選択を取る時も、『いつか、きっと、必ず』という希望を捨てないことは、このアニメがヒーローの話でもあることを考えると、凄く大事なんじゃないでしょうか。


そういうはるかを際だたせるために、トワはすっげー重たくてすっげーメソメソしてました。
あんだけトラウマ克服編に時間を使ってなお、気持ちを暴走させる辺り兄貴は別格といいますか。
逆に言うと、トワにちゃんと時間を使ったからこそ、今回の暴走も『まぁ、そうなるよね』と見ていられるというか。
はるかが『強さ』の極だとすると、めそめそトワちゃんは『弱さ』の極だった感じですね。
そういうトワも最後は自分の気持に整理を付け、「お兄様と呼んでもいいですか!」で落ち着く辺り、人間力高いよねプリプリの子ら。

カナタの記憶が戻らない状況は、カナタの現在が過去に強く繋がっているはるかにとっても、償うべき過去を沢山持っているトワにとっても、苦しい状況。
しかし都合のいい奇跡がパーッと起こって一発解決とはならない以上、時間の治癒力を信じて待つことが正解ではある。
そんな理屈自体に気づけないのトワの情、情を飲み込んで正解を選んだはるかの成長。
両方が伝わってくる、良い対比だったなぁ今回。

サブに回った他の三人も、兄と妹とフィアンセの人間模様を静かに見守りつつ、良いトスあげてました。
戦闘がないと、人間関係の視野が広いゆいちゃんはほんといい仕事するなぁ。
個人的には、立場が邪魔をして及び腰だったみなみさんが、カナタの背中を押す描写があったのがスンゴイ良かった。
はるかだけではなく、師匠ポジションの優秀な人達も成長しているつーのは、プリプリが毎回怠けないところですね。

カナタの記憶は戻らないけど、記憶をなくしたカナタをそのまま受け入れ、ゼロから始めていこうという勇気と優しさ。
ヒーローに、そしてプリンセスに必要なものが何かをくっきりと見せる、良いエピソードでした。
やっぱプリプリは自分たちが何を描いているのか、その自覚が強いのがとっても良い。

しばらくカナタ触るのかなー、と思ってたら来週はみなみとペンギン回。
考えてみりゃ後1クール強しかないし、個別のラストエピソードが来るタイミングだよね。
具体的な夢を持たなかったみなみさんが何と出会うのか、彼女のファンとしては楽しみであります。