イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

スタミュ -高校星歌劇-:第9話感想

引き裂かれた魂達が今お互いを求め合うアニメ、今週は先輩二人の過去話。
これまで意味ありげにお互いを見つめたり視線をそらしたりしまくってた鳳&柊のWリーダーが、どうしてこういう面倒くさいことになったのかを説明する回でした。
過去に視線を向けることで、現在や未来に繋がる夢も守り人の系譜も見えてきて、ググッと二人の存在感が増す話でした。

前々から『鳳くんが好き過ぎて頭がオカシイ人』オーラをムンムン出していた柊先輩ですが、なんとバッチリ血縁実の兄弟でした。
僕は男であれ女であれユニコーンであれ、誰か一人に濃厚な情念を燃やししかもそれを素直に表明できない捻れたキャラが大好きであり、柊さんにはそういう好みバッチリの気配を感じていたので、今週そのものドンピシャな球が来たのは、ありがとう……ホンマありがとうスタミュ……って感じです。
柊本家に引き取られる形で引き裂かれ、高校で再会するも昔通りにはならない、というダブルバインド
魂の形からして自由人である鳳さんとは、ほんとに正反対の立場なのだな。

兄と自分を引き離し、体罰込みの教育で雁字搦めにし、やりたいこと全てを押さえつけて柊の『家』に奉仕させられてるのに、全てをひっくり返して出て行かない辺り、柊さんは責任感のある優しい人だと思います。
その優しさが檻から出る気概を奪い、柊に選ばれず、自由に羽ばたいている兄への複雑な感情を生み出す。
柊家という立場だけではなく、愛憎の感情もまた柊さんを縛り、身動きを取れなくしているわけです。

チーム月皇を鳳さんが抜けて激高したのも、形は変わったけど兄弟でもう一度チャンスが潰れたというだけではなく、苦しくて苦しくて仕方ないのに、自分をおいて出て行ってしまう兄が恨めしい、という気持ちがあったのでしょう。
あそこで『俺は柊にはなれない。だが柊を支える鳳にはなれるッ!』と、もしくは『お兄ちゃんとやりたいの、ミュージカルやりたいの! だから、行かないで!!』と叫んでおけば、"ススメ→トゥモロウ"流れだして講堂で一曲やってHappyEndだったのに……。(拗らせ系のお話は全部、一期13話ラストっぽく解決すればいいと思っている男)
高校一年生の彼等に、そこまでの行動力を望むのも酷ですかねぇ。


これまで頼れるメンターとしてチーム鳳を導いてきた鳳さんですが、人間らしさというか、一種の狡さも見えた回でした。
彩薙の伝統に熱くなれない感性は判るんだが、それを貫くことと、弟の叫びに背を向けるのは別の話だからなぁ。
鳳さんがベストな答えを出せなかった結果、柊くんとの関係は拗れてしまったわけで、2年間の間を空けて成長した自分で弟を受け止めるのが、彼の物語のシメになるのかな?
とにかく柊くんからの好き好きビームが強烈なので、それに答えるだけの熱量を弟にも剥けてやって欲しいところ。

弟の重さを半分背負わず、自分だけ自由になってしまった形の鳳さんですが、その自由さの後ろには月皇兄からの温かい言葉があった。
「お前はそれでいい。絶対に負けるな、自由でいろ」というエールは、鳳さんからチームへの言葉であると同時に、自分の感性を羽ばたかせてくれた過去からのエールでもあるわけです。
そして、これからの未来であり、可愛い後輩でもある星谷の言葉で一歩踏み出す勇気をもらう。
オレンジジュースもそうなんですが、今回は小道具をうまく使った叙情性の作りが良くて、スタミュらしからぬ洗練を感じます。
洗練といえば、過去回想での「まず呼吸を合わせるんだ」はさりげない見せ方ながら、ダンスに本気で向かい合うものの生々しさがある一言で、リアリティのある言葉でした

PVの挿入タイミングもまさに完璧で、分かたれた兄弟の気持ちが最高に高まった瞬間に入り込むデュエットは、一度も目線を合わせない映像構成と併せて、彼らの現状をよく伝えてきました。
どう考えてもホモの悲恋ソングとした思えないのは僕の心が汚れているからですが、根っこにあるのはお互いを思いやる兄弟の絆であり、『革新』と『伝統』というお互いの足場を裏切れない誠実さ。
なにか悪いものが原因で仲違いしているのではなく、拗らせた結果背中合わせになっているので、素直にお互い向き合えるような終わり方を期待できる、良いイメージ曲だったと思います。
スタミュは回を重ねるごとに、泥臭くしっかりしたお話の軸を失わないまま、演出に慣れていっている感じがしますね。

そしてCパート、後輩に泥を被せないために華桜会を抜けた結果、スター枠から外れるチーム鳳。
ピンチといえばピンチなのだけど、もともとフリーダムさが売りのチーム鳳なので、後ろ盾を失ってもそんなにダメージ無いかな、という印象。
『設備は乏しいけど、当たればデカい』という野外ステージの伏線も、ちゃんと貼ってあるしね。
Cパートのざっくりとした演出は、視聴者にショックを与えると同時に、それを晴らすためにどうするのか想像させ、膨らませる魅力もあった鮮烈なシーンだったと思います。

というわけで、拗らせに拗らせた先輩チームの状況を説明し、チーム鳳に試練を与える回でした。
根っこの部分で好きあっているのがよく伝わってきたので、鳳&柊の問題はいいところに着陸しそうで、安心しました。
こりゃ暁くんはマジで挟まる隙間がねぇな……ただの横恋慕ならともかく、謀略の結果後輩にまで泥飛ばしてるからなぁ……。
臆病な兄と優しすぎる弟の関係は、どういうふうにまとまるのか。
温室を出た野生児軍団は、一体どんなステージを見せてくれるのか。
障害だらけの現状を見せながらも、それを乗り越えた先の風景に期待を持たせてくれる、良い繋ぎ回だったと思います。
うーむ、スタミュ、良い飛び方をしているぞ。