イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

コメット・ルシファー:第10話『深淵の祭壇』感想

冒険の切符で改札を抜けて北口から南口に抜けたアニメ、目的地に付いたらラスボス登場な第10話。
黒いガーディアンさんが出てくる気配が一切なかったとか、ドモン死んで即座に『良い旅だったなぁ』ムード出されてもなぁとか、コメルシ粒子の濃い展開だった。
相変わらず美術設定は最高に良いなぁ……遺跡の雰囲気とかすげー良い。

話も10話を回ったということでまとめムードに入りましたけども、奇天烈な冒険の旅も、人外娘に芽生えた恋心も、超越的な星の意志も、体を張って前向きだったらしい主人公も、今回いい話風にまとめに行った要素全てを実感できないのは、このアニメらしいところだ。
時間自体はそれなりに使ってるはずなんだが、やっぱりキャラに乗れないままそれっぽいイベントが進んで、視聴者が十分物語的な物語にシンクロする前に話が進んでイベントが終わったことになるという繰り返しは、共感を育むのには力不足だったのだろう。
まとめがある事自体は話全体の尺考えれば当然だし必要ではあるんだが、言われること言われること全部『……そうだっけ? どうだっけ?』と首をひねってしまうのであれば、そりゃまとまってねぇだろと。
形式だけなぞって内実が心に迫らないと、逆に虚しさは強調されると感じた。

フェリアの恋心、ソウゴの恋心、それを奪いに来る黒いガーディアンさん。
構図としては盛り上がる配置なんだけど、二人の関係が結局擬似親子なのか恋なのか、そもそもソウゴが何考えてフェリアにくっついてきたのか僕は理解できていないので、フェリアが覚悟を込めてサヨナラを言ったとしても、そしてソウゴがそれにショックを受けたとしても、なんだか乗りきれないのであった。
フェリアが大人になったタイミングでソウゴとの関係変化に時間を使い、異質知性に芽生える恋心をじわっと届けてくれれば、今回の別れとかグッと来たと思うのだが、まぁそういうことよりカレーを蔑ろにしたり車を盗んだりするほうが大事と判断したから、尺が僕が見たアニメのように割り振られたのだろう。
黒い同型機とのバトルとか、ロボット物の文法としては素晴らしいネタなんだけどねぇ……過去作の文脈はこのアニメ結構的確に抑えてんだけど、それが逆になぞっている感じを強調している感じがあるな。

ロマンは相変わらず卓が破綻しないよう最高の動きをしていて、急に出て来た遺跡の演出意図を解説したり、カオンのモチベーションを整理したり、腑抜けたソウゴにまず一発入れてカオンを動きやすくしたり、涙なしではみれない獅子奮迅だった。
そのトス上げでキメるスパイクが『体張ってるソウゴが好き!』と来るもんだから、『ほうほう、ロボに乗り込んだの何話でしたっけこの主人公?』という意地悪な返しもしたくなる。
カオンはまた悪い意味での物分りの良さを発揮して、フェリアの正ヒロインへの道を譲ってあげていたけれども、今回フラグ立てたロマンの婚約者のほうが、段違いに美味しい収まり方に見えてしまうのは、ロマンが魅力的にかけているからか、俺がはたまたソウゴに魅力を感じないからか。
うっぜーウジウジが手早く纏まったことはありがたいのだが、その原因が『電話』ってのがなんとも……こう言う仕事をするためのミツバチさんだったのだろうか。

ドモンの死に関しては伝わるのがおせーっていうか、そらあんだけ尺とモチベーションを集めて死んだんだから話が一気に重くなるのも分かるけど、情報断絶が呑気な空気を悪い意味で強調してしまっていて尻の座りが悪かった。
楽しそうなキャフフの風景を見た感想が『そんなにラブコメしたいの? 前回すげー後味悪くドモン死んだんだよ?』というツッコミに押し流されていくのは、製作者も狙ってるわけじゃないだろうけど。
無事生存したガスくんは想定通りスーパーショックを受けていたが、これが原因でラスボス戦で共闘とかなったらマジがっかりである……すげーなりそうだけど。
天文台おじさんも無茶苦茶興奮してたなぁ……意味深な言葉ばっかり言ってたけど、おじさんが何に興奮してて、フェリアが光ると具体的に何が起こるのか、俺はまだ理解してないけどさ。

まぁそんな感じで、クライマックス直前のまとめも、クライマックスへの入り方も非常にコメルシらしい回でした。
お話という構造物の最終的な結果は、積み上げてきた要素の化学反応で総和を超えることはあっても、咬み合わない積み上げ方をした要素は化学反応を起こさないということを教えてくれた気がする。
やるべきシーンとやりたいシーンをしっかり厳選して映像を組み立てていくことは、一話の内部のみならずシリーズ全体としても大事だなぁと、つくづく思う終盤戦突入でした。