イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

紅殻のパンドラ:第1話『適合者 -アデプタ-』感想

ろこどるの監督と! デレアニのシリーズ構成と! きんモザの制作会社がお送りする!! サイバー魔法少女ガール・ミーツ・ガールアクションコメディアニメの第一話。
"攻殻機動隊"の世界観に位置するスピンオフアニメっつーと"RD 潜脳調査室"を思い出しますが、デブとジジイとガイノイドがIQ高くSFしてたそっちとはまた別な、懐かしくて食べやすい味付けの、しかしちゃんと2016に通用するアニメになっております。
方向性としてはソリッドなサイバーパンクというより、女の子キャイキャイアニメに近いかなぁ……『機械製のゆるゆり』というか『でんのうモザイク』というか。
こっちの舞台も人工島ですが、『攻機スピンオフは、海の側の綺麗な島じゃなきゃダメ』というルールがあるのかしら……そもそも新浜が人工島か。

原案:士郎正宗、作画:六道神士(オマケにエンドカードは薗田健一。アンタ今そういう画風じゃないだろ)という90年台の脂が漂う原作チームですが、あくまでポップにライトに明るく楽しく、お互いの良さを引っ張りあげるような展開だなぁと思いました。
イノセンスからこっちシロマサアニメってハードでシリアスな部分が強調されてきたけど、結構俗かつ洒脱な明るい部分がしっかりある『笑える』話なわけで、そこを強調しながら進んでいく今作は、これまであまり光を浴びなかった魅力にリーチしていている気がします。
いや、球体関節義体使いレズ少女とか、猫耳メイド戦闘用アンドロイドとか、懐かしい油っこさはたっぷり感じるわけだけどさ。

90'sにかぎらずリバイバル要素を含んだ創作は『どや、懐かしいやろ!』というノスタルジーと、『どや、新鮮やろ!』というフレッシュさをいかに両立させるかが大事だと思います。
ノスタルジーを大事にしつつも結構サラッと流し、テンポよく進めていく名和監督の料理の仕方は、原作組から放っといても溢れてくるオールド・スクール・フレイバーの油っ気を巧く切っていて、いいバランスだと思います。
ろこどるにしてもそうなんですが、結構ずっしりしたネタを扱いつつもするすると入ってくる『ゴクゴクイケる映像』を仕上げるセンスが、多分優れてるんだろうな。
ここら辺のスマートな視聴感覚は、音楽を担当しているTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDの力も大きいかなと思います。。

同時にコテコテにして笑いや楽しさを作るポイントはちゃんと踏まえていて、主役二人のクソレズ漫才とか、下腹部で繋がるコミニケーションとか、謎の秘密結社のドタバタした空気とか、アップテンポで良かったです。
光学迷彩を利用した衣装チェンジとか、アプリ書き換えによるモードチェンジとか、濃い目のSF設定(攻機スピンオフなんだから当然ちゃ当然)を過剰に見せるのではなく、ポップな小道具として使いこなしてる感じがグッド。
今後もこの軽やかな流れが続くのか、はたまたヘヴィーウェイトなお話に変わるのかは分かりませんけども、湿り気と蔑みの少ない笑いの作り方はとっても気に入ったので、できれば継続して欲しいところです。


話としては素直なガール・ミーツ・ガールであり、同時に人間と機械の境界線が薄くなっていくサイバーエイジのラブ・ロマンスでもある。
七転くんがクラリオン好き過ぎ病な理由はそういう性傾向なのか、義体適合者という新人類の孤独を、自律型アンドロイドに重ねあわせた共感なのかは、いまいち読み切れないぜ。
……クソレズで寂しがり屋の新人類ってことか! 控えめに言って最高だな!!
愛情や正義感といったポジティブな感情が溢れてるキャラは僕好きですし、今後『はじめまして』な二人の関係構築がお話しの軸になるなら、七転くんのモチベーションが高いのはとても良いと思います。
七転びくんという主人公にとって、クラリオンというバディだけではなく、セナンクル島という場所、サイバーエイジという時代にも『はじめまして』なセッティングの巧さは、中々のもんだと思う。
視聴者にとってはこのお話自体と『はじめまして』な状況が、主人公とちゃんと重なり合ってるってのはやっぱ、物語とのシンクロ率を高める手管として重要よね。

七転くんは『世界にも数人しかいないサイボーグ適合者』というタレントを持つと同時に、両親の思い出を大事にして世界を良くしたいと願う善性も兼ね備えています。
鉄火場に飛び込む前に怯えを描写していたことで、『人間性の薄い、スーパースペシャルな超人様』ではなく、『震えもすれば血も流す、小さな人間』だという説得力が生まれていて、キャラが好きになれる見せ方だったと思います。
世界観が魅力的なのは関連作品で証明済みなので、初心な七転くんの目を通して、サイバーエイジが秘めている魅力が表に出てくると面白いなぁ。
そういう意味では、義体の特殊性とかAI技術とかをコメディの合間合間に見せてくれた今回は、異世界体験としてもなかなか良かった……下腹部と指でコネクト(電子)するのは新しすぎる絵面だが、悪くない。(良いクソレズが出てくればだいたい満足マン)

そんな七転くんの相棒になるクラリオンは、ダウナー気味のあざとい猫耳
色んな意味でグイグイ来る七転くんに当惑しつつ、クールに状況を回していくクラリオンのキャラ描写は、早くも一種の相棒感が感じられる気持ちの良いものでした。
七転くんがサイバー魔法少女だとすると、プログラム供給源になるクラリオンは妖精ポジションでもあるのか……。
人間の脳と自由意志が機械の中に入ってる七転くんと、博士の命令で行動規範を書き換えられるクラリオンとの対比も含めて、今後二人の関係がどう変化していくか楽しみです。
……レトリーといい、沼倉さんはケモミミ系過積載レズの役が多いな……。

狂言回しと解説役を担当してた博士ですが、何の説明もなく秘密結社の首魁であり、部下に造反されており、お話を加速させる役目も担ってました。
超ドスゲェロボが暴走して島は大変なことになってますけど、現場のアッパーでコメディチックな空気から一歩離れた時、その被害がどう描写されるかはちょっと気になってます。
賢くて物分りが良い人なので、七転くんの良いメンターになると思うわけですが、クラリオンのマスター権限を彼女が握りっぱだと関係性がブレるなぁ……退場か譲渡か、なんかテコが入ると思うけど。


というわけで、サイバーパンクに百合に魔法少女に正義の味方と、色々混じりつつも元気に進んだ第一話でした。
ともすれば重たい設定と作家性に足を取られそうなところを華麗に回避し、シャープでポップなお話に仕上げてくれたのは、食べやすくてありがたい。
七転くんが弱さと強さと優しさを兼ね備えた、非常に好感度の高いヒーロー候補生であること、バディであるクラリオンとの関係性描写が心地よいことが、今後の展開への期待を高めてくれます。

少し懐かしい未来予想図にどっぷり腰まで浸かるもよし、サラリとした笑いを楽しむもよし、新世代の少女たちの交流を眺めるもよし、機械の力で正義の味方をする話として楽しむもよし。
いろんな楽しさが詰まっていそうな、期待度の高まる第一話でした。
まぁ取り敢えず、キャイキャイ重点で頼みます!!(結局誰かと誰かが仲良しだと大満足マン)