イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ:第14話『希望を運ぶ船』感想

希望と絶望が交錯したブルワーズ編も終わり、OP/EDも新しいの仕立ててさー2クール目だ! なオルフェンズ。
無法が支配する辺境から文明圏に入ったことで少し落ち着くのかなあと思っていたら、虐げられた労働者による武力闘争あり、それを利用したハメてありで、どこもかしこも対して変わらねぇ地獄だな! って話でした。
この話厳しい世界のお話なので主役としてクローズアップされるとろくでもない事が起きるわけですが、コロニー編はよりにもよって俺のビスケがメインっぽくて、マジ勘弁してくださいって感じだ。
タイトルが『希望を運ぶ船』なのに、実際運んでるのは武器と火種と陰謀っていうギャップが、最高に性格悪くて素晴らしい。

食い詰め者のゴミクズ集団として世間から爪弾きにされてきた鉄華団ですが、今回は盛大にウェルカムされて大満足……とは行かないのがこのアニメ。
現実を誇張した英雄視は非常に座りが悪く、それが正体を隠した存在による情報捜査の結果とあっちゃあ、褒められても全く嬉しくないわけです。
嫌な予感は見事に的中し、キッチリ型に嵌められパブリック・エネミー一歩手前まで、あっという間に追いつめられてしまいました。
今回の件の裏に誰がいるかは、容疑者が多すぎて特定できませんが、なかなかの政治的手腕と陰謀構築能力があるのは間違いないようです。

黒幕の狙い通り不満を煽られ、銃やMWというインスタントな暴力に酔っ払う労働者達は、鉄華団に共感を寄せてくれます。
しかしその姿はこれまで見てきた鉄華団と似ているようでやっぱり違っていて、盤上この一手で暴力を選択する以外道がなかった彼らに比べると、労働者達はそこまで追い詰められてもいないし、暴力を嫌悪しているようにも見えない。
その脳天気な破滅願望がコロニーという場所から来るのか、はたまた彼らを政治ゲームのコマにしている存在の効果的な操作から来ているのかは、現状では読みきれません。
ただまぁ、鉄華団に対して思うような『ゴミみたいな世界だけど、頑張れよ』という感情が湧いてこない集団ではあって、それは多分製作者の狙い通りなんでしょう。

流れるようなハメ手に首まで浸かったオルガですが、流石に鼻は良くて対応も早い。
ステープルトンさんに船とメンバーを預け、即座に離脱させる判断をしているところとかは、頭の回転の速さと同時に生まれつつある信頼関係を思わせました。
ここでお嬢と一緒にぶっ殺されると最高に美味しい状態に追い詰められているわけですが、華麗な逆転を期待したいところです。


反乱に巻き込まれて死ぬところだったお嬢ですが、空気を読まない買い物提案と、フミタンの気の迷いで運命をねじ曲げていました。
アトラ-クーデリア-フミタンの女連合が『男臭さ』を排除するべく連合するところは、鉄華団に漂う危うい連帯感をいい意味でぶち壊しにかかる頼もしさがあって、結構好きです。
なんていうのかな、男臭いままだったら『みんなで一緒に死のう!』って空気になったら一気にタナトス方面に雪崩落ちしそうな気配があるんだけど、女達が元気なおかげで歯止めがかかりそうな安心感というか。
ステープルトンさんもそうですが、集団の中に異物があることの意味、一色に染まらないことの有用性をちゃんと描いているのは、群像劇として安心できるところです。

同時にお嬢は年相応な所と、恋に戸惑うチョロ蔵っぷりをこれでもかと見せつけ、アトラを凄い勢いで周回遅れにしてました。
急なラブコメ濃度の上昇にヤバイ反応が出ちゃいましたけど、お嬢が可愛いのは良いことだ。
陰謀がヒタヒタと迫る中脳天気にラブでコメってて大丈夫なの? とは思うが、野生動物より殺意に敏感なミカがお相手なので、まぁどうにかなんだろ。

フミタンは埋めていた伏線をキッチリ回収し、スパイとしての立場とお嬢かわかわの間で揺れていました。
お嬢が純朴にフミタンを慕っていること、それをフミタンが憎からず思っていることはこれまでもしっかり描写されてきたので、今回表になった苦悩にもスムーズに共感できるのは、巧く積んだなと思います。
まぁろくでもない結果に終わることは覚悟していますが、お嬢の真心とフミタンの躊躇いが、少しでも報われるような終わりだと良いなぁ……どうかなぁ……。

ビスケは唐突に生き別れの肉親がプルアップし、悲しい結末に終わったアルトランド兄弟の物語を思い出した俺がショック状態に入ったりもした。
兄貴が務めている会社がおそらく労働者を操作している黒幕(の一部?)であること、『持てる』側である兄貴は労働者の格好のリベンジ対象であること、鉄華弾の情報をもらった時のうろたえ方から考えると、悲劇役満は既に聴牌だとは思う。
思うのだが、俺はビスケにあんま悲しい目にあって欲しくないわけで、こっちも少しは『何か』が残る物語が展開して欲しいと願うわけである。
ホントなぁ、この子らには幸せになって欲しいんだけど、厳しい作品世界だからどんどん試練がやってくるなぁ……。

というわけで、埋めてた伏線を回収したり、今後回収する伏線を埋めたりする回でした。
鉄華団を陰謀で取り巻くことで、お話しの整理と平行してサスペンスが進行していたのは、おはナシが平坦にならないので良いですね。
コロニーに渦を巻く悪意がどこにたどり着くのか、来週も楽しみです。