イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ:第19話『願いの重力』感想

世界の果てから青い星へ、自由を求めて旅する少年少女のお話、今回はガンダム名物大気圏突入回。
地球に革命爆弾をタッチダウンせんと迫る火星ネズミと、それを阻止せんと防衛戦を張る地球外縁軌道統制統合艦隊&ガエリオとアインくん。
MSアクション多めながらも、オルフェンズらしい人間のスケッチもたっぷり盛り込まれた展開となりました。

今回一番目立っていたのは鉄華団……ではなく、ガエリオさんと愉快な仲間たちだった気がします。
顔も名前もわからない、過去も人となりもさっぱり不明な集団ならぶっ殺してスッキリってのも出来ますが、どうもブルーワーズとは違う仕事を彼らは期待されているようで、ガリガリと麻呂眉は腐れ縁のゆるーい間柄を強調してくるし、アインくんは屈折しつつも救いを求める必死さを見せるし、どうにも愛着が湧いてしまう。
ガエリオ・マクギリス・カルタの三人の出会いシーンは色んな意味で鮮烈で、彼らもまた『家族』のような繋がりで結び付けられたオルフェンズなのだという衝撃があったり、カルタが金髪碧眼の美青年ばっかり周りにおいてる理由がわかったり、ガキの頃からガエリオさん潔癖症だったり、色々面白かった。
アインくんはワイヤーを使った細かい組手で目立ったり、まさかの死神ポジションをがエリオに譲渡して一時退場したり、意外な動きが良かったですね。
……コックピットブロック切り離されてたし、あれ死んでないよね?(いきなり自信がなくなるマン)

カルタと愉快な仲間たちは、あまりに愉快すぎて窓際に左遷されたお飾り艦隊だったとわかりましたが、思いの外職場の空気は明るく楽しそうで、しかし情けも容赦もなく死ぬ奴は死ぬ。
ここら辺の聖域のなさは、オルフェンズらしいシビアさで結構好きななところです。
コールが遅れて怒られてた人は大気圏でも良い殺陣してたけど、ぶっ殺された挙句死体をバリュート代わりに使われ、なかなか戦場の無残を思い知らされた。
しかしこれでカルタと鉄華団に因縁が出来るのだから、印象的な立ち回りをするのは大事よね。

ガエリオやカルタが過去の出会いに思いを馳せる中、肝心のマクギリスは仮面被って敵の後押ししている辺り、本当に皮肉なもんで。
『モンターク』という名前を真実の名前と言ったあたり、ファルド家とはいろいろ複雑怪奇な感情のしこりがあるんだろうなぁ……なんかポエムで過去の因縁について語ってたし。
MS操縦でも腕のある所を見せつけてましたが、これで革命勢力が地上に降りて今後どう動いてくんのかなぁ……一旦マクギリスに戻るのかしら?


一方タッチダウンを決める側の鉄華団は、男も女もみんな頑張っていた。
先週の抱擁を補足する感じで挟まれた握手シーンは、第1話の握手未遂とか、コロニーでの離別とか、色んな積み重ねが生きつつ、ようやくクーデリアと三日月が同じラインに立った感じがあって良かったです。
三日月とオルガノ過去も確認されてましたけど、『この糞の掃き溜めみたいな火星から這い出して、いい景色見せちゃる!』で引っ張ってたオルガへの視線が、徐々にクーデリアに動きつつあるのは面白いなぁ。
結局鉄華団という暴力装置をコントロールすることでしか打って出る手段がないオルガと、教育・広報・政治による社会改革という、質的に全く異なるレイヤーに飛び込んでいるクーデリアじゃあ、そら三日月の足場も揺らぐよな。

蓄積を活かしたといえば、ギャグみたいに流されていた『過剰情報で死にかけるダンテ』という描写が、ユージン男意気の操船に活きていたのは良かった。
事前にダンテがアヘ顔晒してくれたおかげで、今回ユージンがどんだけ無茶なことをやって頑張ったか、視聴者にもちゃんと分かるもんな。
こういう段階をしっかり踏んで、描写に説得力を出すのは良いアニメだ。
格納庫でのシノとユージンのやり取りも、オルガ×ユージンを射程に入れつつシノ生来の軽さを良い方向に活かし、主役だけがカッコいいのではない鉄血イズムを感じさせる、素晴らしいシーンでした。
鉄華団のボーイズはむっつりと真面目なので、流星号を手に入れてからのシノのC調は、良い方向に働いてると思うんだよね。

ガチムチ明宏も頑張って防衛戦してましたけど、ピンチになったら機体を偽装したお姉さんたちがヘルプにやってきてくれるシーンは、如何に実直に好感度を貯めるのが大事か教えてくれる。
ラフタお姉ちゃんは明宏と良い雰囲気であり、グッドな方向にぜひ成就して欲しいカップルなのだが、横殴りであっさり死んだりするからなぁこのアニメ……。
グッドカップルといえば、クーデリアの面倒を見まくり、三日月の帰還を良い作画の泣き顔で迎えたアトラが存在感をだしていたのも、彼女な好きな俺としてはありがたい描写だった。
沢山キャラがいつつ、ちゃんと存在意義と存在感を醸しだしてお話を進めてくれるあたり、群像劇の捌き方がほんとうまいわよね。

そんな中でも、フミタンの死とクーデリアの覚醒以来イマイチ存在感が薄いオルガ。
『三日月に新しい世界を見せる』という凄さ基準で言うと、名前のもととなった三日月を実際に見せる旅路に引っ張ってきたお嬢の方が、ぶっちゃけスケールでかいもんなぁ。
今度は髭のタヌキおやじと騙し合いをするわけだし、そろそろヤクザ配下の武装運送屋から頭を出す、少なくとも切っ掛けくらいは掴まないと、兄貴分の地位が危うい。
ここら辺を促進するためにステープルトンさんが地球降下メンバーに入っていたのかなって感じもするが、さてはて。


そんなわけで、新たな感慨と因縁を生み出しつつ、革命の乙女というボールを無事地球にタッチダウンした鉄華団チームでした。
これで一応旅路には一区切りがつくわけですが、もはやクーデリアの理想と運命をともにする状況になてる鉄華団としては、海千山千を相手に回しての政治的交渉にも踏み込んでいかないとアカン状況。
これまで背中を守ってくれた名瀬の兄貴はいないし、少年たちに地球の重力が通過儀礼を仕掛けてきそうなムードはモリモリであります。
鉄華団地球編、どんな展開になるんでしょうね。