イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

12歳。:第5話『バースディ』感想

世間的には黄金週間(ゴールデン・ウィーク)だけど、ボンクラ共はどう? キュンキュンしてる!? とばかりに、トキメキの凶器をぶっ刺してくるアニメも五話目。
無邪気すぎて無自覚ビッチの領域までぶっこんでる花日ちゃんが、オラオラ系ピュアボーイ堤くんをブンブン左右に振り回し、弱ったところを高尾様の無敵流イケメンコンバットで丸め込みに行くという、約束された敗北者エピソードでした。
丁寧かつ効果的に堤くんのイイヤツっぷりを描写するだけに、『こんな普通に良いやつでは、イケメン道ブラックベルトの高尾様には勝てない……』という絶望感が迫ってきて、胸が痛い。
メイン三キャラの描写がどれも濃くて、たっぷり楽しめる回でした。

今週は帝王の描写を太くやって彼に共感させる回というか、ままならない感情に振り回されつつも、花日の魅力をしっかり受け取り、好きな子に何かしてやりたいという好青年っぷりを魅せつける回でした。
もっとオラオラするのかと思いきや、そこら辺は小学六年生ですので、幼い花火ちゃんをリードしつつ守る男っぷりを存分に発揮。
この話の主役のボーイズはみんな、他人の気持ちを考えられる良い子が多くて好きよ……モブ男子の人間の体温分からない煽りっぷりもスゲェけどな。

同時に彼氏いるのにすんごい距離感で恋愛グラップリングを仕掛けてくる花日に、グラングランに揺さぶられる豊かな感受性もしっかり描写されてて、イケメンとシャイボーイの間を行ったり来たりするギャップにオッサンもメロメロ。
このお話は一種のスタンドバトル的な側面があって、最後まで自分の感情を制御しきり状況をコントロールした側が勝つマインドゲーム。
ゲストキャラとして敗北が確定している帝王をグラグラ揺さぶりつつ、王者である高尾様の圧倒的余裕は切り崩さないすみ分けは、残忍ながら効果的だ。
『俺は遅れてやってきたから、勝つ資格が無いんだ』とこの段階で自分から言っちゃう物分りの良さは、冷静で好感が持てると同時に哀れでもあるなぁ……でもここで負ける理由説明しておかないと、帝王良い奴過ぎて、お話すっきりおわんないよね多分。

あんまりにもお話の都合を飲み込みすぎているキャラクターは不自然に見えて、『』お前もうちょっと我儘言ってもいいよ?』という気持ちになるわけですが、堤くんはいい塩梅に感情を持て余していて、バランスの良いキャラだと思います。
『花日が好き』っていうピュアな気持ち故に嘘も尽くしちょっとズルいこともするけど、根本的に自分のことしか考えないエゴイストというわけではなく、子供から一歩踏み出して花日の成長を認め、接し方も変えることが出来る冷静で優しい側面もある。
ともすれば高尾様の完全防御力で緊張感のないさや当てになってしまいそうな所を、溢れるパッションと地頭の良さで存在感をアピールし、ライバルとして申し分のない動き(自分が負ける理由の徹底した説明含む)をしているのは、ゲストにしか出来ないナイスムーブだ。

このアニメの直線的な演出は、このグラグラ揺れる感情を視聴者にダイレクトに伝える仕事をちゃんとしてて、トレンディドラマみてぇなBGMが流れる度に『古ッ!』とツッコみつつ心拍数上げています。
堤くんの心が大事なコーナーに差し掛かるたび、分かりやすい演出で気持ちの変化を視聴者にも教えてくれることで、彼の心の変化と視聴者の感情がちゃんとシンクロできんのよね……ベタな攻めって大事。
そして堤くんが好きになることで、『メインカップルが維持されてよかった』という気持ちと『俺の好きなシャイボーイが負けてしまう……』という不安を両立させて、グイグイ話に引き込むパワーを生んでいるわけだ。
BGMが果たす仕事の大きさは、"12歳。"と"影鰐"が教えてくれてるなぁ今期……そのうち奇獣に襲われた花日を高尾様がイケメンレスキューして、画面にポワポワが溢れる展開来るな……(来ません)。


堤くんがエゴと優しさの間で大迷走するなか、無敗王者高尾様は相変わらずのコントロールっぷりで、逆境すらもイケメン力を発揮する舞台に変えていました。
ライバル登場に狼狽え走り回ることで、人間味を隙なくアピールしたり、ヒッソリとレジデンスマンションから登場して自分の家の財力を誇示したり、マジで勝つためにだけ生まれてきた圧倒的強者。
人間らしいミスまで計算されつくされた完璧さは、キャラクターの感情が走り過ぎてお話がコースアウトしないためのセーフティでもあるし、どんな状況でも絶対に負けない無敵っぷりを楽しむという、独自の面白さにもなってる気がする。
頭の天辺からつま先まで『女子の理想』で構成された無敵っぷりと、あらゆる局面でそれを崩さないキャラクターコントロールの巧さは、『幼い花日が、イケメンたちに超チヤホヤされつつドギマギする』という花日サイドの物語にしっかり筋を通してますな。

そんな花日ちゃんは、今週も望まれるまま思う存分幼かった。
無邪気に純度100%の好意を叩きつけることで、どんだけオスが勘違いするか。
自分の性別を全く理解していないベイビーっぷりは、ともすれば邪悪さすら漂ってきますが、この子がナチュラルに解っていないというのは見ていれば分かります。
堤くんが『花日は可愛いなぁ……』と心揺さぶられるシーンが、ちゃんとそういう印象を与えるよう可愛く仕上がっているのは、とっても良い。
堤くんがその無邪気な振る舞いで、どんだけモヤモヤグダグダしているかもたっぷり解るがな!!

純粋さという個性を大事にしつつ、恋を通して一歩ずつ成長していく話なのか、はたまた特権的な幼さを維持したまま高尾様の手のひらの上でコロコロされる話なのか。
愛ゆえに傷つき一歩オトナになるだろう帝王の良い奴っぷりを見ていると、花日もこの騒動から学んで成長してほしいなぁ、とは思う。
それはこのアニメが12歳。を対象にした一種教育的な側面を持つというだけではなく、不本意ながらぶつかり、他人の精神を無意識のまま削ってしまった事実を誠実に受け止めてくれたほうが、花日のことが好きになれると思うからです。
『花日はそういう奴なんで、一生変わりません』でも悪くはないけど、やっぱ作品に風が通っていたほうが、見ていて気持ちが良い。
『恋を知ってからの変化』というのは結構大事しているように思うので、あんま心配するところでもないですけど。


そんなわけで、帝王のドキドキ青春デイズを追体験することで、心騒がせる花日のピュアネスとか、高尾様の無敵っぷりとかをたっぷり楽しめるエピソードでした。
帝王自身が周回遅れを自覚していること、高尾のプロテクトが完璧すぎること、当の花日が高尾様にぞっこんであることなど、勝ち目のなさを思い知らされる回でもあったな。
読みきり作品としてイベントをぶっ込みまくり、お話の密度を極大化させてた序盤に比べ、連載が確定してじっくり攻めれるゆえの余裕のある展開でした。
みっしり詰まっているがゆえのスピード感も良いけど、長い尺の中でキャラを自由に動かして、描写に奥行きをつけていく展開も面白いな。

たっぷり好感度を稼いだ帝王は可愛いシャイボーイの印象を崩すことなく、健全に体育で高尾と競り合って自分の気持に決着をつける腹づもりのようです。
うう……負けると解っている戦いに、それでも全力で飛び込んでいく堤くんの勇気が眩しすぎる……もっと感情暴走させてバイオレンスな展開になってもいいのに、この子ら心理制御能力高いなぁ……特殊な訓練でも受けたのかなぁ。
ガンバレ堤、負けてもいいが無敗の帝王に冷や汗一つぐらいはかかせろ堤ッ!
人間がいかにしてグッドルーザーとして一つの物語を終えるべきか、人生に大事な示唆を与えてくれそうな来週が、心から楽しみです。