イマワノキワ

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ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第6話『広瀬康一 エコーズ』感想

少年も歩けば猫を轢き殺す、この世の悪徳を煮詰めた町の物語第六話目は、『情』故に心にかかる『錠前』のお話し。
アンジェロや形兆といった『殺し』の覚悟はないけども、小物故に死ぬほど厄介な小悪党、小林玉美を康一くんが相手取るお話でした。
直接暴力や陰謀で支配するのではなくて、とにかく目の前のゲスな欲望を満たそうとする身近な、それ故生々しく嫌な感じを醸し出す敵ってのも、『日常』が近い四部ゆえだよなぁ。
"ザ・ロック"も"エコーズ"も精神攻撃系のスタンドで、目に見える殴り合いとは少し次元を変えたバトルになってるのも、中々に面白い。
凄みを利かせる時のサイケな色彩や、能力の表現がとても面白く、コンパクトながら食べごたえ十分なお話でした。

今回のお話しは『ちょっと弱々しい康一くんが、強い億泰や仗助に助けられ窮地を脱するAパート』と、『助力者抜きで玉美に立ち向かい、スタンド能力に覚醒するBパート』に分けられています。
玉美も言っていたように『スタンド能力は精神力の強さ』なので、殻を破った"エコーズ"はそのまま、ちょいワルな友達の影に隠れがちな康一くんが、彼らと対等に並ぶために必要な『踏ん切り』の表現なわけです。
ここで独り立ちしないと、『非日常』の悪に対峙する二人のそばで、弱々しく『日常』を象徴するだけになっちゃうからな……一種の通過儀礼として、すげー生々しく嫌な"ザ・ロック"は良い相手だったわけだ。
殴るも治すも思いのままな"クレイジー・ダイヤモンド"、能力だけ見れば絶大に強い"ザ・ハンド"に比べれば直接戦闘能力は落ちますが、小さい体に勇気を秘めた康一くんらしい、トリッキーなスタンドだと思います。
最終的な活躍が玉美を追い詰めることではなく、お母さんの信頼を取り戻すところなのが、非常に康一くんらしいですね。
描き文字が音に変わる能力は映像表現であるアニメと相性が良くて、見ていて楽しい聞いて面白い演出になっていたと思います。

Aパートの仗助と億泰の対応は、とにかく即座にプッツン来て殴りに行く短絡的な億泰と、クールに状況を整理して厄介事も完璧に解決しちゃう仗助のクレバーさがよく出てて、なかなか面白かった。
玉美の過剰演技でしっかり罪悪感感じちゃう辺り、億泰はほんと可愛いやつだな……。
"ザ・ロック"が責め立てる罪悪感というのは、つまり共感であり優しさでして、それを失ってしまえばヒーローたる資格を失う勘所を的確に攻めてくる辺り、玉美は康一くん以外にとっても試金石だったのね。
あと二人で歩いてくるところの、なんとも言えない仲良し感な……高校生男子三人組のダチっぷりがチャーミングなのも、四部で好きなところだなぁ俺。

康一くんは時々凄まじい覚悟を見せつつも、その内実は感情豊かな高校生です。
今回初のメインエピソードをもらって、浮かれたりビビったり調子に乗ったり、豊かでチャーミングな表情を沢山見せてくれました。
ここら辺は梶さんの演技の幅が生きたところでもあるし、特殊な画面効果を活かしてズバッと決める演出が刺さるところでもある。
キャラクターが見せる多彩な表情がジョジョの魅力の一つなわけで、今回ちょっとオーバーに広瀬康一の色んな顔を見せてたのは、なかなか良かったなぁ。


玉美は偉大な『非日常』の能力を最高にゲスい目的に使うキャラクターでして、しかし"錠前"の能力に説得力があるので、そのゲスい脅迫に『あー……こういう使い方するクズもいるんだろうなぁ……』と納得してしまいもする。
アンジェロのように己の殺戮欲求を満たしたり、形兆のように失われた過去にケリを付けるために使うやつもいれば、玉美のように身近で厄介な邪悪さを発揮する奴もいる。
『日常』に親しい舞台と、スタンドという『非日常』を組み合わせた四部は、乗り越えるべき『悪』の顔も色々あるわけです。
直接命を取らない"ザ・ロック"の能力も含めて、ここら辺の横幅の広さ(が生み出すストーリー展開の幅広さ)が四分で好きな部分なのよね。

お互いの精神をぶつけ合う戦いは結局、康一くんが育った環境への信頼が決め手となって、悪の敗北という形で決着が付きます。
スタンド能力という『非日常』の後押しを受けつつ、結局これまで生きてきた人生の清らかさという『日常』への信頼で事態が解決する所は、単純な力のあるなしを善悪に結び付けない、ジョジョらしい結論です。
能力の後押しを受けたとはいえ息子を信じ切り"ザ・ロック"を乗り越えるママンを見て、『俺の親なら絶対信じねぇ!』と言ってしまう玉美は、ちょっと寂しくもあるなぁ。
あとアニメで描かれると、ママンとお姉ちゃんが置かれた状況があまりにもエロ同人誌の導入すぎて、色々困った……エロかったなぁあの辺り。

と言うわけで、善意すらも逆手に取ってくるゲスな悪意を、断固たる決意で跳ね返すお話でした。
アンジェロに形兆という超暴力主義者が続いた所で、悪知恵の効くゲスにスタンド能力持たせて主人公たちの正義に挑戦してくるのは、良い変化球だよなぁ。
色んなことが起こる杜王町の不思議な日常を、今後主人公たちがどう乗りこなしていくのか。
コンパクトにお話を纏める手腕もしっかり感じさせてくれて、今後への期待が高まる技ありエピソードでした。