イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

クロムクロ:第6話『神通の川原に舞う』感想

クロムクロ・アァァァクション! IN 富山きときと空港~!!
つうわけで、第2話以来となったイエロークラブとのチャンバラエピソードでございます。
巨大ロボットが生々しい殺陣を繰り広げるド迫力はそのままに、避難民やオペレーター、YouTuber気取りで現場でウロチョロする高校生に頼れる仲間と、主人公以外にも気を配った見え方がなかなか良かったです。
敵さんが交流可能なヒューマノイドだってのも分かりましたが、詳しい事情は謎のままで、むしろ疑問が増えたまであるね。

アクション回ということでまず殺陣の話をすると、鍔迫りの間合いと、少し離れた間合いの違いが上手く描かれ、緊張感とテンポを作ってました。
打刀を武装にするクロムクロは至近距離以外の手筋がないんですが、イエロークラブは前回落とされた腕の代わりに、青い収縮腕を付けていて、これがいい具合に中距離で効果を発揮する。
加えて折りたたみ式のブレードも使いこなし、数の優位も相手にありと、クロムクロには中々苦しい状況でした。
不利な状況でも油断なく立ちまわる剣之介の武士力も説得力を込めて描写できたし、なかなか良い苦境の作り方だったと思います。

前半クロムクロを追い詰めた間合の優位が反転し、最終的に懐に入っての太刀取りで決着する終わり方も、カタルシスがあってとても良かったです。
イエロークラブは最初から二刀で構えていれば太刀を盗まれることもなかったわけですが、収縮腕は物を握る機能がついていないので生まれた隙を、クロムクロが上手くついた形ですね。
第2話の富山市街決戦で腕一本取っていた努力が、最終的に勝利を呼び込んだわけで、話数をまたいだ気持ちよさの作り方も巧かったなぁ。


間合いのことはガウスも気にしていて、貫通力を発揮するまで距離が必要な徹甲弾と、爆発力で敵を粉砕する粘着榴弾を使い分ける描写がありました。
飛び道具は軒並みバリアで無効化されるので、『間合いの長さ=強さ』として発達してきた人類の兵器思想とは、また違う運用しなきゃいけない感じですね。
しかし人型ということを活かし、組討や抑えこみ、逆技なども使いこなすガウスは、本当に頼りになる仲間ロボだな……。

ガウスの参戦は数のプレッシャーを跳ね除け、戦の潮目が変わる気持ちよさもちゃんと産んでくれて、良い見せ方でした。
"キャット忍伝てやんでぇ"を思わせる加速射出だけど、鬼の襲撃があったから作ったんじゃ間に合わない規模だし、この状況を予測して準備してたのか、はたまた別の目的で作ったのを転用したのか……そのうち説明がほしい。
超技術の産物であるクロムクロを立てるためにやられ役を押し付けるのではなく、連携と技術力、知恵と勇気で自分たちに出来ることをやりぬくガウスパイロットたちの描き方は、とても好きです。
やっぱ敵の強みをちゃんと描写してピンチを作り、窮地でも諦めない味方の頼もしさ、それを脱する救援のありがたさをちゃんと盛り上げるのは、アクションの醍醐味だね。

今回はオーバーテクノロジーであるクロムクロの扱いづらさ、戦闘教育を受けていない由希奈の弱さを描く回でもあり、パイロット含めたガウス運用の確かさが、そこら辺を上手く対照的に描いていました。
機体を支える技術もわからない、モニターに出る文字も読めないのはちょっと頼りないけど、まぁ無理くり乗せられてる状況だし、ここら辺は今後頼もしくなっていくところでしょう。
というか、コックピット貫通して刀がぶっ刺さってる状況でパニックにならないだけでも、由希奈は頑張っていると思う。


今回は避難民や研究所といった、戦場の外側の描写も太めで、このアニメの良いところである『世界の広さ』が生きた回だったと思います。
敵さん衛星軌道上からいきなり射出してくるんで、適切な避難誘導が間に合わない状況とか、ちょっとパニックもののテイストを入れて上手く描いてました。
AC130のパイロットとか、避難誘導の警察官とか、名もなき人たちの必死の努力をちゃんと切り取って、バカにせず描いている所が好きなのね。

そんな中ノコノコ戦場に顔を出したYouTuber気取りですが、爆発に巻き込まれて死んだんかなあれは……。
メタ的な話をすると、情報を握りこんで混乱を防ぎたい研究所側だけだと『敵は人間』という情報が拡散しないので、規制を掻い潜る存在が必要だったということなんだろうし、彼にとっては戦場は『日常』の延長線上でしかなかったってことなんだろうけど。
クラスメイトが戦場という『もう一つの日常』に巻き込まれたことで、由希奈がどう感じるかってのが今後の重要点になるんでしょうね。
今回剣之介と由希奈は操縦に手一杯であまり感情を出すシーンがなかったので、この戦いをどう受け止めるかは非常に気になるところです。
キャラクターの感情表現がスムーズで面白いアニメなので、イベントそれ自体の描写を楽しむだけではなく、イベントをどう受け止め、キャラクターがどう変化するかへの期待が自然と高くなるのよね。

そして敵さんが顔を見せてもいましたが、わけの分からねーことをべらべら喋った挙句、肝心なことは何も言わず自爆しやがったので、いまいちよく分かりません。
クロムクロが鬼と同根の技術であること、それをもたらした存在が『裏切り者』であること、モニターの文字は日本語ではないのに会話は日本語で行えること辺りが、今回出た情報か。
技術知識がないと務まらないオペレーターを担当していたことから考えても、『裏切り者』は姫なんだろうなぁ……剣之介、動かして敵を斬ること以外はよく分かってないパイロットだし。

今回はセバスチャンが指摘していた火力不足や、クロムクロを支えるテクノロジーへの理解不足が色濃く描かれていました。
ここを突破する鍵は鬼への事前研究、つまり由希奈の父親にあるわけで、戦場で己の力不足を認識して、コンプレックスを乗り越えて父親の存在(そして不在)に向かい合う筋道が立った感じですね。
オペレーターという『戦場』での役割を果たせるよう己を磨く手段が、同時に『日常』をより良くするためにはいつか乗り越えなければいけない感情に繋がっているのは、なかなか上手い作りだ。
しかもこれを探っていくことで、剣之介の過去への知識も深まっていくというね……ホント巧妙だな。


と言うわけで、目の前の脅威を排除したものの謎は深まり、己の力不足を突きつけられるというお話でした。
やはり巨大ロボット同士の殺陣が良く仕上がっていて、ただサイズを拡大したチャンバラをやるのではなく、ロボット故の異形の戦い方をしっかり入れ込んでいるのが、非常に興奮しました。
ストレスがかかってもキャラクター同士の協力でそれを跳ね返し、成長や変化のカタルシスに変えてくれアニメだというのは、すでによくよく分かっております。
掘り下げると美味しそうな要素がたっぷり撒かれたので、顔は見せても腹が見えない敵も含めて今後どうなるか、とても楽しみです。
とりあえず次回予告で餃子が大写しになってるところに、このアニメの『飯』の描き方への信頼感がさらに高まるな……。