イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ふらいんぐうぃっち:第9話『明日の明日は今にある』感想

優しさに包まれて世界のメッセージを読み解けるようになるアニメ、今週はある意味総集編。
第4話を担当した脚本:福田&コンテ・演出:倉川コンビが再登板して、犬養さんが再登場したり、育った畑が描写されたり、小さく積み上げてきた変化をまとめて出すような話でした。
時の止まったエリュシオンのような弘前の暮らしですが、それでも確かに蓄積されている変化と成長はあって、それは小さいからといって価値の無いものではありえない。
優しい視線で世界を切り取るエピソードで、穏やかに良い気分になれる素敵な仕上がりでした。

お話の展開自体はいつもの様にゆったりしたもので、犬養さんが占いして、那央と畑仕事して、お姉ちゃんがダラダラグダグダするだけという、いかにもふらいんぐうぃっちな光景が展開されていました。
前回おもいっきりファンタジーで静謐なお話をやったので、小春日和でポカポカした今回の話しのありがたみが新鮮に見えてくるのは、構成の妙味だ。
やっぱその作品『らしさ』を残しつつ、別の角度から世界を掘り下げていく話は大事だなぁ……キレる変化球あってこそ、速球が刺さる感じ。

魔法より日常に寄せた今回は、心象の演出が非常に巧かったです。
アバンで寄り添う倉本母子と雀の重ねあわせ、Aパート終わりで『おばあちゃんみたい』と言われた時のバレーボール。
人間と人間以外の描写を小気味良く繋いでテンポを作りつつ、コミカルかつ暖かくシーンを作っていく手腕が非常に冴えていたと思います。
こうして抽象度の高いカットを的確に入れると、ただ人間を追いかけているだけでは描ききれない『お話しの解像度』みたいのが出てきて、非常に僕好みになってくれますね。
元々画面が美麗なアニメなんで、キャラクターの感じているムードや感覚を背景や天気、本筋とは無関係なはずのフェティッシュに託す作り方とは、相性が良いんでしょうね。


キャラたちも焦らず穏やかに暮らすいつも通りをしっかり守って、お互い和やかに暮らしていました。
千夏ちゃんが時々バカなことを言うんだけど、それを上から認めてやるんじゃなくて、心の底から愛おしく抱きしめてる関係がマジ好きなんだオレ……。
アバンでママンと絵本の読み合わせしている所は、千夏ちゃんが心躍らせる『魔法の世界』と、ママンが足場を置いている『魔法のない世界』が優しく交流してて、凄く良かったなぁ。
否定せず、むりくり敷居を乗り越えるでもなく、隣り合って混ざり合うこの間合いこそ、僕がふらいんぐうぃっち好きな理由かも知れん。

全体的にゆったりした話なんですが、始まりと終わりに『犬養さんの占い』を配置して収まり良くまとめる手際は見事でした。
あれがあることで、日常のスケッチが散漫にならず、なんとなーくお話がまとまった感じするのよね。
前回はパニックに振り回されて元気な感じだった犬養さんも、今回は気を落ち着け弘前っぽい和やかな表情を見せてくれて、再登場した甲斐があった感じ。

あとお姉ちゃんのオッサンなんだかオバサンなんだかお姉さんなんだか、うなぎのようにのたくって掴みきれないキャラクターも好きだ。
転移魔法を駆使して、いるんだかいないんだかよく解らない不思議な立ち位置を維持しつつ、しかしいると面白いというスタンスは軽くつげ義春漫画入っていると思う。(ご多分に漏れずガロとか大好きマン)
お姉ちゃんが寝てる時の仕草が妙に細かくて、そういうの見てるだけで面白くなっちゃうのも良かったですね……あと占いのシーン、千夏ちゃんが立ち上がるところにフェティッシュ込めすぎだろマジてん…ありがとうございます!


そんなわけで、今週も弘前オモシロ愉快桃源郷日記でした。
毎回おんなじなのに毎回楽しいってのは、『いつもと同じ』を大事にしつつ、気づかれないように 「いつもとは違う部分』を要所要所に盛り込み、『日常とは同じ時間の集積ではなく、流れる時間にはそれぞれの肌理がある』という言外の主張をアニメに落とし込んでいるからなんだろうなぁ。
そして『掛け替えのない日常』の価値をセリフでは一回もガナリたてない、ストイックなスタンス。
やっぱオレ、このアニメ好きだなぁ。