イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ラブライブ! サンシャイン!!:第1話『輝きたい!!』感想

女神が去った後でも伝説は続くッ!! この水溢れる暖かな地、沼津でッッ!!!! ッて感じの、ラブライブ第二章ついに開幕。
衣鉢だけを残して伝説の彼方に消えていったμ'sの思いを受け継ぎ、今オレンジ系元気末っ子主人公のハートに火が灯る……って感じのお話でした。
手早く濃い口のキャラクターと舞台を紹介するAパート、主人公のモチベーションと2つの運命の出逢いを描くBパートと、非常に巧緻な作りの第一話だったと思います。
やるべきことが多いのに、テンション高めキャラ濃い目で一気に引っ張ったなぁ……凄いや。


G,sの場末企画から始まり社会現象……というより、青春のアイコンにまで上り詰めた前作。
その名前を引き継ぐということで期待と不安が高まる出だしでしたが、スタートダッシュはまず良好と感じました。
μ'sの伝説を正統に受け止めつつ、主人公・千歌ちゃんがなぜスクールアイドルに熱を上げるのか、スクールアイドルの何が人を魅了するのか、サンシャイン個別の物語に足場をしっかり置いていたのが、とても良かったですね。

主人公こそがお話のエンジンである以上、スクールアイドルに対し誰よりも高いモチベーションを、千歌がしっかり持っていることはとても大事だと思います。
千歌の情熱にほだされて『知らないモノ』同士が集まり、時間を共有して『仲間』になっていくドラマは、オーソドックスながらやはり堅牢な面白さを持っている。
その物語を進めていくエンジンは主人公になるわけで、とにかく相手の領域にグイグイ踏み込んでいって、熱を分け与える千歌の勢いには可能性を感じます。

多め濃い目のキャラ紹介をAパートで終わらし、Bパートは梨子とスクールアイドルという、2つの運命の出逢いに絞って描写を積み上げたのも、なかなか良かった。
μ'sの物語の中でスクールアイドルの魅力は余すことなく描かれたわけですが、それはあくまでμ'sの物語。
これからはじまるAqoursの物語には、やはり『私達はなぜ、何を目指すのか』をはっきりした形で語り、真正面から魅力を見せるシーンが必要だと思うわけです。
『謎の美少女転校生・ふたりきりの海辺・運命の出会い』とムーディーな道具立てを揃えて、元気だったお話のペースをスローダウンさせてしっとり語ったあのシーンは、大事だしとても良かった。

ある意味不格好なほどド直球に『私はなぜ、スクールアイドルを目指すのか』を海辺で語るシーンは、千歌が既にスクールアイドルの魅力を知っている既存のファンを、そしてその語りを聞く梨子が新規のファンを、それぞれ代表する構図になっていたとも思います。
千歌の物語が転がり出す理由がμ'sであること含めて、丁寧に前作の遺志を引き継ぎつつ、新しい物語を始める姿勢がよく表れていた気がします。
第1話でお話が始まる基盤をしっかり固め、モチベーションを明確にしたのはとても良かったな。

エネルギー満点なのは共有しつつ、直感的に正解を引き続けた人間関係の天才・高坂穂乃果に比べると、千歌は後先考えない大暴れキャラだと感じました。(あんま前作との比較をしてもしょうがないんですが、同時に看板と歴史を共有する以上気になるのも事実。なので今回は『あえて』で)
ここら辺は末っ子というキャラ設定が生きているところで、自分勝手にガンガン行っても誰かが支えてくれるという、引っ張っているように見えて危うさを放っておけない、他人が支えるタイプのリーダーなのかなぁと思います。
μ'sの物語は希代のカリスマが直感した正解に向かって、仲間を引っ張りまくるお話だったので、リーダー=主人公のタイプを変えることで、お話全体の傾向を変えるのはとても良いと思いますね。


そんな主人公を支える脇キャラクターは、全体的に濃い口の味付け。
音ノ木坂からの刺客、負け犬オーラ漂う幼馴染、家の事情で休学中なお姉ちゃん、融通聞かない生徒会長。
キメきれない中二病患者にずらずらうっせー正統派美少女、そして対人恐怖症の小動物とエセ外人。
記号一発でキャラを立てていく、正統派美少女ゲームの文法を全面に押し出してきたなぁという印象ですね。

まずは全キャラ出して印象に残したうえで、千歌と梨子のしっとりした関係性、そしてそこに板挟みになるであろうよーちゃんを重点的に描いたのは、なかなか手際が良かったと思います。
よーちゃんが末っ子の面倒をしっかり見るいい子であればあるほど、その関係性に割り込んできた転校生の鮮やかさはキラメクわけで。
『あ、運命に出会っちゃったんだな……よーちゃんは優しくて好きだけど、やっぱ音ノ木坂のオーラには勝てないんだな……』と予感させる出会いのシーンといい、梨子と千歌の間にあるスペシャルな感じは、期待が高まってスゲー良い。
そしてよーちゃんが複雑な関係に気持ちをこじらせた後、『秋葉原がなんぼのもんじゃい! ワイが千歌の一番なんじゃ!! それはさておき転校生、オヌシ良い奴じゃから友達になって!!』と吹っ切れる展開にもな!!

他のメンバーはやや薄味の描写でしたが、記号の合間に今後の展開の足場になりそうな『弱点』を入れ込んでいたのは、非常にグッドでした。
果南は家の手伝いで高校に通えていないし、『小原家』に因縁がありそうな描写もあり。
生徒会長ダイヤさんはツンツンしつつも、『スクールアイドル』に詳しくて何か裏がありそう。
一年組は素直で無邪気だけど、それぞれ性格に難あり。
こういう『弱点』は、それをみんなで乗り越えていく団結のドラマの足場になるわけで、コンパクトながら要点を絞って見せていたのは、とても良いと思います。
影のある三年組と、マルよしに幼馴染属性を付けることで風通しを良くしてとにかく明るく仕上げた一年組の対比とか、期待高まるわ。
マリーさんだけはどういう『弱点』持ってるのかわかんねぇけど、まぁそれはおいおい果南ちゃんと絡めながら描写されるだろう、多分。

結局記号だけでは彼女たちが背負うドラマが胸を打つことはないわけで、千歌がBパートで見せたような真心を背負うことで初めて、キャラクターには血肉が生まれる。
手際よくキャラが背負う記号を見せてフックを作りつつ、『今後このコラは、こういう主題で自分の物語を展開しますよ』という予告をしっかり入れていたのは、非常にスマートな処理の仕方だと感じました。
今ん所ベッタベタで油っぽい記号だけが見える彼女たちが、実は涙も熱い血潮も持っている人間なんだと巧く示せれば、それは凄く心に迫る物語になると思うんですよね。

典型的美少女アニメの様式美をしっかり抑えつつ、青春物語のもつベーシックな熱量を描き切ったからこそ、前作はあれだけ視聴者の心に届くアニメになったと思います。
その衣鉢を継いだサンシャインが、様々に描写の角度を変え前作とは違った魅力を出しつつも、一番大事な部分を共有しているか、否か。
それは今後の展開を見守るしかない部分なんですが、少なくとも第一話の構成と『何かがはじまる感じ』がみっしり詰まった楽しいお話を見るに、期待して良いところだなと思います。


サンシャインは陽性の末っ子主人公・千歌に引っ張られる感じで、非常に勢い良く進んでいます。
『廃校』という外部のドラマを背負っていた前作にくらべ、とにかく主人公の弾むエモーションからはじまるサンシャインは、明るく元気でアップテンポな印象を強く受けました。
出だしが元気なのは、今後物語が加速していく予感を強めてくれて、やっぱ良いですね。
キャラの味付けを濃い目に、キャッチーな要素を強化してテンション高く進めていく続編という意味では、『プリティーリズム』から『プリパラ』への変化に似てるね。
偉大な過去作をリスペクトしつつも、おんなじ話を二度やってもしょうがないわけで、同じ所と変える所のバランスは非常に良いんじゃいでしょうか。

陽性の空気を下支えしているのが沼津の描写で、太陽は常にキラキラ、海は澄み切ってどこまでも美しい、『身近な異界』って雰囲気がよく出ていました。
世界最強の人工都市・秋葉原に比べて緑と水が多いセッティングでして、その活力を巧く物語に活かし、加速させる燃料として使いこなしていた印象です。(TRPGゲーマー的には、シティアドベンチャーからウィルダネスにシステムが変わった感じ)
『水と裸足』は異常に強調されてたなぁ……少女たちの飾らない気持ちがよく見えるグッドなモチーフなんですが、それにしたって足にこだわり過ぎだろ……素晴らしい。
今後も『身近な異界』である沼津を巧く描いて、彼女たちの弾ける生命力を伝えてくれると良いな、と思います。


と言うわけで、ポップでヴィヴィッドでポジティブ、とにかく元気に滑りだす第一話でした。
二年生三人のしっとりした関係をメインで描写しつつ、残りの六人もズバズバ胸に刺さる見せ場の作り方で、素晴らしい出だしだったと思います。
この話が何について描き、その魅力は一体何なのか、照れずにまっすぐ描いていたのも好きだな。
光りあふれる沼津に、千歌とAqoursがどんな物語を刻んでいくのか。
期待がドンドコ高まる、良い序章だったと思います。