イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

初恋モンスター:第1話~第3話感想

遅れてきた夏のダークホース、今更ながら感想とか書くよ。
『頭のおかしいほっさん声の高校生が、イケメンボイス&外見の小学生と彼氏彼女になって、トンチキ人間に囲まれつつ日々を楽しく生きる』という感じのお話し。
ネタ方面の火力も頭おかしくて面白いんだけど、トンチキ人間どもがたまに見せる人情や愛情、誠実さがぐっと身に迫って、非常に楽しく見れています。

お話の形としては、『頭おかしいお嬢様が出会った運命の人は、イケメン過ぎる小学六年生でした……という所』からはじまるコメディ・ラブロマンス。
まず単純に絵の力が強いですよね、このアニメ。
線が細くて顎尖ってる感じの、耽美な少女漫画の絵柄で展開されるのは、その外見を裏切る生々しい小学生ギャグと、トンチキ彼氏に振り回されているように見えてその実頭おかしい主人公と、頭おかしい奴しかいないアパートの住人。
画風から受ける第一印象を全力で裏切りギャップで笑いを造りつつも、夏歩ちゃんは太ももムッチムチでエロ可愛いし、奏くんはイケメンだし、絵のパワーを振り回すところではしっかりブンブン殴ってくるのが、強みをわかっていて素晴らしい。

この落差をしっかり活かして、『12歳。のイケメンマスターっぷりとかマジスーパー系だから。リアルな小学五年生ってこんくらいバカだから』と殴りつけてくる、生々しい小学生ギャグが良く刺さる。
アラフォー男性声優共が大喜びでうんこちんこ言ってるのが透けて見える、油の乗ったバカ演技が非常に素晴らしいのです。
絵とのギャップで見せるだけなら一発ネタなんだけど、小学生をよく観察した細かいネタにリアリティがあって、ネタの広げ方もパターンが多いことで、出落ちで終わらず畳み掛けてくる所が強いよね。

主人公の夏歩ちゃんも相当いい性格してるし、それを取り巻く下宿の仲間もトンチキ人間ばかり。
特にツダケン声が大暴走している嵐さんのダメダメっぷりは破壊力が高くて、あの二次元の女装子アイドルでしか勃起できないクソダメ人間をよく許してるな……って気になる。
アクの強い連中が勢い良くぶつかるコメディの火力は、この作品の大きいな魅力です。


んで。
三話まで感想の様子を見た理由にも繋がるんだけど、こういう非現実的なトンチキ人間の集団を描くとき、たまーに『トンチキ』を強調し過ぎるあまり『人間』を置き去りにしてしまうことがあって。
僕はどんだけ極端なキャラを背負っていても、創作上の人間も血の通った人間として描かれる物語が好きで、そこをないがしろにすると笑えるもんも笑えなくなってきたりします。
道化師の仮面の奥に真顔を感じ取れないと、キャラの分厚さがなくなっていくってのもあるし、単純にネタ一辺倒の押し方は濃いくちすぎて飽きるってのもある。

このアニメは濃厚なコメディであると同時に、恋という人間の一番柔らかい感情を扱うラブロマンスでもありまして、トンチキ人間がどういう悩みを抱え、どういう誠実さを持っているのか見えるシーンが結構しっかりとあります。
ネタで押し流しつつも、主に主人公である夏歩が思い悩むシーンは結構挟まれるし、トンチキな住人がそれをしっかり受け止めて、真顔になる瞬間もちゃんと描かれる。

そこら辺のバランスが一番いいのが、主人公を真正面から受け止める恋人役の奏なのは、なかなか強い構造だと思います。
奏はクソバカ小学生なんだけど、『女の子が泣いているのはよくない』『彼氏になったら、彼女を楽しい気持ちにしてあげなきゃいけない』という、当たり前故に貴重な真実を直感的に把握している、倫理的な強者でもある。
彼女が泣かされたら怒るし、デートは最大限楽しくしようと務めるし、トンチキなんだけど常に正解を選べる、『いい奴』なのがすごく好きなんですよ。
二話ラストで見せた『テントウムシの嘘で騙されたことはデコピンで済ませて、彼女を泣かせたことにはグーパン入れる』っていう区別の付け方とか、『このバカガキ……外見だけじゃなく中身もイケメンだったー!!』って気持ちにさせられた。
恋愛物はやっぱ、男の子も好きになれる方がより胸キュンなの僕は!!

世間体とか他人の気持ちとか、少し大人なだけに余計ごとに気を取られている夏歩を、バカガキだけど純粋で優しい奏が、その真っ直ぐさで引っ張っていくっていう基本的な関係性が、見ててすごく気持ちいいんだよね。
年下の彼氏に教えられることで、世間知らずのキチったお嬢様がちょっとずつ人生を学習していくっていう、成長物語の要素も入れ込んでいるし。
ここらへん、年齢ギャップがギャグ方面だけではなく、シリアスな方面でもよく効いている欲張りな構造だと思います。

まつげバチバチでうんこちんこ言ってる奏はどっから見てもコメディアンなんだけど、亡くなったお母さんの教えを守って恋人を大事にし、自分に出来る精一杯で夏歩を愛そうとする。
性欲がない以上、思春期な夏歩の恋と奏の恋はどうしてもすれ違ってしまって、それはとても面白いコメディなんだけど、ただ認識のズレを嘲笑うだけではない、二人の出会いに込められた温かみをしっかり見守る視点が、ちゃんとあるわけです。
『デートなのに、砂山作ってトンネル掘り』っていう惨めなはずの状況で、手と手が繋がる胸キュンなシーンをしっかり入れて、なんで夏歩は奏でが好きなのか視聴者が再体験できる描写をフレッシュに磨き上げてくる。
そういう態度はいかにラブコメとはいえ『ラブ』を扱う上ですごく大事なものだし、奏の純情と、それを受け取ってちょっとずつ人生をより良くしている夏歩を怠けず描くことで、思いがけずシリアスな土台が背骨が作品に宿ってもいるわけです。

もちろん、デカいイケメンショタがズレた恋愛してる状況自体がとんでもなく面白いものだし、真面目にやればやるほどズレは強調されるわけで、真面目さが笑いを、笑いが真面目さを支え合う、良い循環が生まれているように思います。
それはやっぱり、ラブの部分もコメディの部分も本気の本気でやり通すエネルギーだけが可能にしている。
突飛な行動で僕たちを笑わせてくれるエイリアンたちが、しかしエイリアンなりの真心を持って世界を生きている物語をしっかり描いてくれるのは、僕にとっては作品への信頼感を強めてくれるとても大事な足場なわけです。
三話まで見てみて、そういう真っ直ぐさと巧さ、優しさと強さを感じ取れたので、今更ながら感想を書いております。


んでまぁ、三話になる今回もほんとにヒドかった……。
奏と愉快な仲間たちは最悪にバカだし、嵐はフィギュア撮影会はじめるし、やりたい放題し放題ですよアイツら。
そういう状況でも、バカはバカなりに彼氏の義務を思い出して、夏歩を幸せにしようと色々差し出してくれる姿が僕は好き。
『今日は彼氏として、夏歩を最高に幸せにするぞー!』って奏の言葉は、確かに普通の恋人じゃないんだろうけど、とっても優しくて素敵だと思う。
キメるときはきっちり唇奪ってキメるしなあ……確実に精通してないんで、その意味とか全然わかっていないんだろうが、そのギャップがさらに胸キュンよ。

トンチキな世界を描いているけど、一般常識から生まれる違和感を完全には捨てず、一回拾って検討し直す動きがしっかりしているのも良かったです。
『小学生の彼氏なんておかしいのかな?』『このデートって本当にデートなのかな?』っていう、視聴者とシンクロする疑問を夏歩がちゃんと抱いて、千秋がアドバイスすることで『ああ、ヘンテコだけどこれで良いんだ』って思い直す手順をきっちり踏んでいることで、うまいことトンチキな世界を視聴者に引き寄せてるのよね。
こうすることで、『一見トンチキなんだけど、実は普通の状態では気付けない真実がそこにはある』っていう発見の楽しみがキャラクターに生まれるし、それを視聴者がスムーズに受け取ることも出来るわけで、とにかく巧妙だ。
第2話では嵐が相談役になったわけで、アドバイザーを話数ごとに変えてキャラクターの存在意義を分担しているのも、いい具合ですね。

目隠れナードの横恋慕も炸裂していましたが、奏が常に正解を選び続ける頼れる男なので、あんまややこしい事にはならなそうな予感。
恋愛関係を今後、どう転がしてくるのか。
胸キュン描写はどれだけフレッシュに仕上げてくるのか。(トンネル越しの握手、ベタだけど最高でした。あからさまにセックスの暗示なところとか)
おっさん声優幼稚園の悪ノリは、どこまで加速するのか。
いろんな要素が楽しめる、贅沢なラブコメディですね。