イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない:第18話『「重ちー」の収穫(ハーヴェスト) その1』感想

街を脅かすどす黒い殺意に正義の戦士が立ち上がるアニメ、そんなことは横に置いといて今週は銭! 銭!! 銭!!!
スタンドを『金儲け』に使い倒す現実的中学二年生と一緒に、バカ高校生が欲に目をくらませるお話でした。
バカ高校生とバカ中学生が小銭集めに奔走し、ゲスな本性をむき出しにしてハイテンションで踊り狂うさまが面白くてしょうがなかったですね。
最初はいつもどおりの仗助なので、銭が絡んでどんどん判断を狂わせていくところとかも、破滅型のクライム・サスペンスみたいで良かったです。
最初は街の平和を守ろうとしたり、新しい友だちと仲良くしようとしたり、善意から始まってんだけどなぁ……黄金の輝きは全てを腐らせる、怖いわぁ……。

今週はとにかくオーバーテンションなコメディが楽しくて楽しくて、ゲラゲラ笑いながら見れる回でした。
感情の起伏に合わせて劇伴が激しく鳴る、ちょっとサイレントムービーっぽい演出が場面をよく盛り上げてくれて、アホバカ中高生が調子に乗る流れがスッと胸に入ってきました。
もちろん声優さんたちの怪演も見事にハマっていて、普段通りクールな所から入ってどんどんゲスくなる小野さんや、アドリブ演技全開の高木さん、『ちょっと頭足りない子の演技』全一山口勝平のアンサンブルが、どんどんコメディを加速させていった。

なんでかしらないけど人間の本性がむき出しになる瞬間というのは笑えるもので、性欲にしろ暴力にしろ、過剰にすると不可思議なことにコメディとして成立してしまいます。
むき出しになった人間性を突きつけられることで、普段は隠されている真実が眼前に突きつけられた結果、新しいニューロンの繋がりが『笑い』として出力されんのかなとか思いますが、今回は『金銭欲』に向けてどんどん突っ走る話。
普段はキリッとした表情で街を守っている正義の戦士が、魂にじゃぶじゃぶ小銭を突っ込まえて、ゲス顔アホ顔アヘ顔晒しまくりの大惨事が、面白くてしょうがない。
ヒドい展開なのに『こんなの仗助じゃない!』とならないのは、銭に狂う当たり前の人間っぽさを、普段から描写できているからなんでしょうね。

この話は最初なんかうまく行きそうだと思える雰囲気があって、それがどんどん狂っていく破滅型の笑いでできています。
明言はされないけど、おそらく軽度の障害を背負っていて『パパとママ以外は褒めてくれない』重ちーと、その『非日常』の力を共有できるチョイ悪高校生が出会う。
ハートウォーミングな方向に進んでいきそうな出だしは、『銭』という最悪の麻薬が脳味噌に直接ぶっかけられることで、どんどんひどい方向に転がっていきます。

『銭』は同時に薄暗い欲望を満たすクライム・サスペンスの喜びも提供していて、スーパークールな頭脳をこすっからい銭稼ぎに使い倒し、様々なアイデアで儲けていく三人の姿には、『成り上がりの快楽』がたしかにある。
そしてその成功が非道徳的なものである以上、それはいつか崩れることを前提にした砂上の楼閣なわけで、バカの破滅を笑って見守るどす黒い楽しみも、同時に供給しています。
銭に目がくらんだゴミカス共の破滅劇は来週見られるんですが、まぁヒドいことになるな、確実に。


そういうゲスい笑いだけではなく、これまでも僕らが見てきたバカ高校生の根の良さもまた、今週はよく出ていて。
『非日常』の戦いを人知れず続ける戦士たちが、『日常』の中では普段どういう会話をし、どういう雰囲気で仲良くやっているかという、『俺はそれが見たいんだよッ!』な部分がちゃんと満たされるのも、このエピソードを見て感じる満足の源泉でしょう。
ジョジョは全部そうなんだけど、仲間たちがどーでもいい会話を共有して、巧く言葉に出来ないけどなんかいい感じの雰囲気に包まれているシーンの仕上がりが圧倒的に良いのだ。
『ああ、俺もこの場所を共有したいな』と思えるムードがしっかり出るからこそ、キャラクターを好きになるし、彼らが命をかける戦いも思わず応援してしまうのだと思う。
『非日常』を視聴者に飲み込ませるためには、『日常』をスムーズかつ魅力的に描く努力がとても大事、ということなのだろう。

スタンド使い』で『頭が弱い』重ちーは、二重の意味で『日常』から弾き出された少年です。
あまり友達がいない彼に億泰と仗助はフレンドリーに話しかけますが、それは銭の絡んだ欲の視線だけでは、けしてない。
元々彼らはそういう気安い優しい奴らで、出会いの切っ掛けも『街を守るために、スタンドに警戒する』という善なる行動なのです。
まぁそういう『いいこと』があれよあれよというまに『悪いこと』に吸い込まれちゃう吸引力が、ダメダメ人間のダメコメディを成り立たせたりすんだけどさ。

ともあれバカ中高生三人のゴミクズ以下の関係は、『銭のためなら嘘もつく!』という悪い人間性だけではなく、徳に満ちた善なる人間性でも繋がっている。
露悪的に人間の悪性だけをクローズアップするのではなく、その裏にどうしても存在してしまう善性も同時に切り取る視線があればこそ、このエピソードはクズだけど憎みきれない、人間喜劇として成り立っているのだと思います。
そういう意味では、結構ギリギリな重ちーの『足りない』描写も、笑いを武器にしてタブーに踏み込むコメディの強みを活かしているのかもしれんね。

この喜劇はゴミゲス人間だけが画面にいることで成り立っているわけですが、クソ真面目優等生である康一くんがなぜ割って入らなかったかを、"シンデレラ"への伏線を張りつつ補足していました。
まー康一くんがいたら確実に止めるからな! 小銭集めの辺りでギャーギャー言って止める!!
それはそれで正しい行動なんだけど、正しいことばっかやっててもお話しは面白くならないわけで、ストッパーをあえて外して話を転がしていくのは正しい展開だと思います。
いつもの三角形から康一くんを抜いて重ちーを入れることで、億泰と仗助が閉じた人間関係に安住するのではなく、新しい関係を作っていけるタフさを持っていると描写できるのは、実は結構重要な副産物な気がする。

あと色と動きがついた"ハーヴェスト"は健気で可愛い奴らで、エピソード全体に漂うコメディ味をいい具合に加速してくれてた。
"エコーズ"とかもそうだけど、第四部は小動物としてのスタンド描写がかなり仕上がっていて、動物系ゆるふわ日常コメディ要素も貪欲に取り込んでいると思う。
元々ジョジョはジャンルを横断する豊かさがある作品だけど、四部は特に色んな話、色んなジャンルのエピソードが組み合わさる貪欲さが楽しいと感じるネ。


と言うわけで、陽気なギャングが地球を回すお話でした。
今週思う存分仲良くなった小悪党どもが、どんだけ醜い内輪もめを経て破滅していくのか。
まさか二周かけるとは思っていなかったので嬉しいサプライズですが、ジックリと演出を太らせながら進んでくれるのは非常に楽しいです。
さてはて、来週も笑わせてくれるんだろうなぁ……四部アニメマジおもしれーなマジ。