イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

初恋モンスター:第6話『振ってフラフラフラフープ』感想

ネタとシリアス、恋とバカギャグの間をマッハで反復横跳びするアニメ、今週は奏くん男の旅路。
子供らしい共感能力の無さで夏歩を傷つけた奏が、マジで何の役にも立たない無能な仲間たちと一緒に為すべきことを探す回でした。
同級生も年上も、男も女も軒並みダメすぎて、結局自分で気づいて夏歩と向かい合うしかないあたり、奏もマジ大変だな……。
しかも『フラフープ二百回』という大間違いながら共有できそうなネタは途中で失敗し、バカ特有の思い込みの激しさで別れを切り出すします。
まだまだ引っ張る恋のモヤモヤ、一体どこへたどり着くやら。

今回はバカな子供どもが徒党を組んでウロウロ迷い、年上もバカなのでまともな助言とかも飛んでこない、ウロウロと心が彷徨う回でした。
歳一個上なだけで根本的に奏の同レベルな譲二といい、なんかいいこと言うのかと思ったら女装性癖を満たしにかかった嵐といい、なんかいいこと言うのかと思ったら自分のマゾい変態性欲を全力でパなして終わった真冬といい、ホントろくでもない連中しかいねー。
真顔でストップかけて人生諭してくれるキャラがいると、アホ馬鹿な空間のアホバカ濃度が薄まっちゃうんでみんなバカで正しいんだけどさ。

生きてる連中が倫理的に頼り無さすぎるので、奏はいつも死んでしまったお母さんの言葉に立ち返って、自分で正しい道を見つけ出す。
『お前の楽しみはわたしの楽しさじゃない。ネタで押し流すのもいい加減にしろ』という耕太の抗議もちゃんと聞き届けるし、根本的な意味では間違えない子なのだ。
恋の謝罪にはあまりに難しすぎる『フラフープ二百回』も、バカガキなりに自分の行いを反省し、自分に差し出せる最大の謝意を込めた行いなのだ。
なので、夏歩も当然戸惑いはするが、そこに込められた気持ちを感じ取って『まぁ、許してもいいかも……』というムードになったりする。
まぁ夏歩も相当なバカだから、身体をいじめるとき独特のシリアスさに誤魔化されてるのと、惚れた弱みと顔の良さで押し流されてる感じも当然あるがな。

今回夏歩は描写が殆ど無くて、奏の無神経さに突きつけた抗議と、その結果ギクシャクした関係をどう思っているのかはよく解らない。
彼女は奏よりは『大人』なので、奏が認識していない人格的成熟度のギャップ、世界認識のギャップを、客観的に把握できてはいるんだよな。
『女はよくわかんねぇ!』という小五アーツを全開にして自分を拒む奏に、なかなか寄り添えないのは判るんだが、好きなんだから一歩ずつ歩み寄りゃいいのに……なかなかそうも行かないか。


奏の方も、誠実さが要求される彼氏彼女の関係になった以上、バカ男子だけで遊ぶ自分の快楽に閉じこもるのではなく、『女はよくわかんねぇ!』から歩み寄らなきゃいけないわけで、そういう認識の発露が今回のフラフラだったともいえる。
まぁ内容の方はアホが行き過ぎて、あんまり実りがないままハイテンションなヒドさだけが加速していったわけだが。
高身長イケメンが女装プロレスを続ける絵面のヒドさには散々笑ったが、女を知るっていう意味では大失敗よな……その大惨事っぷりがさらに笑えるわけだが。

子供らしさを暴走させつつ、正しい場所に立ち返れることは奏というキャラクターを信頼する大事な足場。
しかしその源泉たる幼さは、どーでもいい『フラフープ二百回』が達成できなかったから『別れよう』に直結する、バカすぎる実直さにも繋がっている。
ここで『まぁフラフープは約束した回数出来なかったけど、気持ちは伝わったから仲良くしよう。お互いを尊重し思いやる気持ちが、恋には大事だね!』みたいな結論に行くのは、『これ以上ないほど小学五年生だけど、外見はイケメン』という奏のキャラを裏切ることになってしまうのだ。
長所と短所は背中合わせ、どっちか取るわけにも行かないから難しい、という話である。

ギャグというのは常に差別であるから、他人の顔色なんぞ見ずに思う存分暴れまわることで笑いは生まれる。
しかしこの話同時に恋を含めた人情話でもあって、それは耕太が強く抗議≒講義したように、他人の嫌がることを押し付けない優しさで生まれるのだ。
夏歩が女をトロフィーとして扱う無神経さに切れて始まったこのフラフラは、ラブ=コメディというジャンルの中で成立しているこの作品、それじたいのフラフラでもある。
頼りがいのないメンター達に惑わされつつ、ようやく奏らしい答えにたどり着いたと思ったらまだ迷っているこの展開は、シリアスとギャグの狭間でバランスを取らなきゃいけないこのお話し、それ自体の震えでもあるんだろうね。

そんな奏少年の人生旅行の合間に、10歳女子のシビアな恋愛論とか、今後膨らみそうな新キャラの顔見世とか、何故か始まった一男の初恋とか、色々あった。
一男と耕太の邂逅は個人的に面白くて、男同士という『通念上はアモラルとされる恋』という意味合いで奏&夏歩や嵐&千秋の恋愛と響いてんのよね。
な他のガキどもがさっぱりわからない一男の気持ちが、一応同じ『大人』たる夏歩には通じるっていう描写も好きだし、一男が惹かれたポエムが実は相談相手である夏歩に向いているって倒錯も、そもそも性別勘違いしてるってゆがみ方も好み。
この出会いがトンチキなギャグ世界だからこそ『普通の形してなくても、気持ちが通じればそれで漕いでいいじゃない!』というメッセージなのか、単純に奇人どうしの恋愛が好きなのかは、俺にはわかんねぇけども、巧く膨らませて欲しいところです。


と言うわけで、さんざん馬鹿騒ぎをした末にいい具合に落ち着きそうになった所で、さらに一捻り加えてくる展開でした。
僕は奏も夏歩も好きなので早くいい具合に収まって欲しい気持ちあり、徹底的に掘り下げてほしい気持ちあり、色々複雑。
精神的成熟度の違いが生むギャップは、それが最大の武器として機能しているコメディとしても、思いの外人間の気持ちの柔らかい場所に踏み込んでいるラブ・ロマンスとしても、しっかりやり切るべきよね。

ネタで流すにはナイーブな恋愛事情に踏み込んできた気がするけど、どう転がすのか。
過激化すればするほど本筋をどこに収めたら良いのかわからなくなる、切れ味鋭いネタの数々をどうする合わせるのか。
揺れる二人の恋心と合わせて、ジャンルとしてのバランス取りにも注目している初恋モンスターでした。