イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

美男高校防衛部LOVE! LOVE!:第6話『愛してる! みんな誰かを』感想

愛と無関心が交錯するヒーロー・クロスファイト、今週は喧嘩する程なんとやら。
防衛部の二年コンビがギスギスし、有基のピュアハートがどんどん出血し、それとは一切関係なくパンダ怪人が暴れ倒す回でした。
『二年生がギスギスしてる事情』『三年組が語る過去』『パンダ怪人の襲来』という諸要素が基本交じり合わないまま展開して、最後に力技で終わらせるやる気の無さが防衛部っぽい……といえば良いのだろうか?
もしくは既に完成した二年コンビの関係性を徹底的に押して、細かいシチュエーションに萌えたい人を満足させるエピソード……なのかな?

今回のお話は、基本的に男子のゆるふわ仲良し空間を楽しむはずの防衛部の空気が最悪なところから始まり、その源泉である二年コンビへの『なんで喧嘩しているの?』という疑問を引っ張ることで展開していきます。
その合間合間に三年組が過去エピを語ることで、間接的にキャラを掘り下げていくわけですが、過去エピソードでしかも第三者からの証言という、二重にクッションかかった話法を使っています。
結果としてそこまで感情の流れが濃くないというか、キャラエピなのに当事者性と関係の変化が薄いという、不思議な作りになってました。

ぶつかり合っていた原因も『お互いが好きすぎて頭おかしかった』という解決のしようがない(というか、実は物語が始まった段階で解決されている)もので、これを解くことでキャラクターが前に進んだり、キャラクター性に変化が見えたりということは起こりえない構成。
衝突に思えたものを解決していくのではなく、それが実は誤解で問題は最初から起きていなかったという方向に転がしていくのは、衝突と変化のオーソドックスな物語をはなっから拒絶するスタンスで、中々にシニカルだと思う。
こういう運びにしたのは、周囲の環境から影響を受けない二年組のキャラ性を活かした結果かね。
三年組もそうなんだけど、基本的に防衛部は物事に熱くならず、日々をユルッとダラっと過ごし、地球防衛も熱を込めずにこなしている感じだもんな。
それだけに、ギスギスした空気にダメージを負いまくる、共感能力に長けたヒーロー・有基が主人公足りえるんだろう。


他者の状態に共感しない二年組のシニカルさを強調するために、今回の怪人はポジティブな感情もネガティブな感情も力に変える、怪奇パンダ怪人。
可愛いパンダちゃんを思いっきり足蹴にするヒドい絵面が面白かったが、それを成立させてるのは二年生コンビのクールな心根なわけで、『お前ら。それはヒーローとしてどうなんだ』と思わなくもない。
ないのだが、本来ヒーロー足り得ない『今時の若者』に変身ヒロインという立ち位置が舞い込んできたギャップがこの話の面白みである以上、二年生コンビがヒーローらしからぬのは正しいのだと思う。
ヒーロー物に必要な綺麗事は、放っておいても有基が言ってくれるしな!!(特定キャラにワリを押し付ける、ダイナシな発言)

完全に二年生カップルがイチャコラする当て馬だったパンダのみならず、別府兄弟にも全然踏み込まない防衛部。
あのチョロ蔵共と交流したら、おそらくあっという間に状況が動いてしまうので、接触を絞っている感じかなぁ。
本筋をそこまで複雑にこじらせず、空いた時間でファンサービスを徹底する作りだというなら、今回の展開も結構納得は行く。
このアニメ、お話の骨格に必要な要素だけをざっくり抜き出して、他の要素を書割レベルに省略する作劇を、一切ためらわない部分あるよね……悪い意味での女児アニ的稚拙さを、意図的に突っ込んでいるというか。
その冷静な使い方が、作品のシニカルさを加速している感じもあるか。

二期から見てる視聴者の気持ちを素直に言えば、二年コンビの関係性を上手く飲み込めていない状況で完成品だけを見せられてもあまりのめり込めないので、ゼロベースでもう一度語り直す構成にしてくれたほうが助かったけども、既存ファンには余計ごとになっちゃうかな。
語り直す過程で宿る感情の熱を拒絶して、すでに仕上がっている関係に落とし込んでいったのは、民衆に石もて追われる『アツい展開』を最高に雑にほおりこみ、メタなギャグとして使い倒す姿勢と似通っているのだろう。
シニカルな方向性は毒でもあって、どっかで『それでも』防衛部はヒーローなんだって話を見せないとシリーズ全体が倒れてしまう気がしないでもないけど……そこら辺は別府兄弟に切り込んでいく時にやるんかね?


と言うわけで、『ヒーロー物語のパロディ』としてのシニカルさが前に出たお話でした。
コアラ怪人にされた生徒の内面に一切切り込んでいかない割りきった姿勢は、このアニメが持っている知性と冷たさを、如実に示していたように思う。
そこを半歩超えた熱が宿ることで、パロディとしても物語としても鋭さを増していくとは思うけども……このアニメを『とにかく美少年たちがイチャイチャ半裸でセクシャルなサービスする話』だけではなく、『シニカルな視点で変身ヒロインを語り直す、批評的パロディ』としても見てる僕の視点が、そもそも場違いなのかもしれけどね。

正直な話、冷たいぶっちゃけを続けられるだけだと隔意を感じてきちゃうので、比較的冷たい二三年が自分なりの『正義』や『真実』に熱を込めるシーンがあと少しあってくれたほうが、個人的な好みには合うかな。
ともあれ、このお話も折り返し。
別府兄弟とのコンタクトを今後どう取っていくかも含めて、今後が気になるところですね。