イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

アイカツスターズ!:第19話『真夏のトップダンサー☆』感想

激情から届いた広域型友情爆裂兵器、TVも元気に進行中な第19話。
これまでクローズアップされることの少なかった二階堂ゆず先輩と、彼女をトップに抱く舞組のお話でした。
『自由すぎるアイドル』の看板に偽りなしな、直感と楽しさ重視のゆずISMと、それに振り回されつつ彼女を支える舞組の姿が、スラップスティックに描かれていました。

わりと無茶なことしないスターズだけど、今回はあえてリアリティのハードルを下げて、ミサイルが飛び交いダチョウが走りハルカ☆ルカちゃんがロスに飛ばされる、トンデモな展開が多かったです。
ゆずパイセンのハイテンションな生き方を描く上で、このぐらいリアリズムのねじを外したほうが楽しくていいだろうってことかな。
普段は地味な在来線で移動してんのに、今回はお花畑に路面電車だもんな……空気が違うってことを美術で演出できてたのは、なかなか良かったです。

そんな空気の中で描かれていたのは、直感と楽しさの人、二階堂ゆず。
二年なのに舞組トップに位置し、自分の楽しさのためなら組織的秩序は二の次、才能で野暮なツッコムを制圧する可愛い暴君でした。
自分の素直すぎる結果ちょっと『悪い子』になってんだけど、遅刻の原因は弱者を労った結果だったり、重圧を感じる弱さ自体は持ち合わせていたり、重圧の源泉は舞組を思う気持ちだったり、『いい子』でもある描写が埋め込まれていたのはグッドでした。
『自由すぎる』部分も見ててて楽しいけど、それを理由に他人の気持ちを無碍にするのはちとしんどいわけで、真心を無駄にしない子なのだと解ったのはありがたい限り。


何よりゆず自身が様々なことを本気で楽しんでいる様子は、作画力をぶっ込んだ元気な動きからも察することが出来て、見ているこっちも楽しくなりました。
"8月のマリーナ"がモデリング、演技の付け方、カメラワークともに魅力的だったのも、ゆずの自由さが押し通る状況に巧く説得力を載せていたのも良かったね。
劇場版に割いていたリソースがTV版に吸収される頃合いなのか、はたまた単純に慣れてきたのか、モデリングだけではなくステージ演出全体がまとまってきた印象がある。


芸事を扱う以上、実際のアクティングで人を引きつけ、多少の迷惑も喜んで飲み込んでしまうような重力を持ってるキャラが居るのは、なかなか良いと思います。
最善を尽くした上で交通障害でステージに立てなかった『持ってない』ローラと、自分のやりたいようにダチョウを助けたらそれに乗っかってステージに間に合ってしまう『持ってる』ローラとの対比が、なかなか残忍でスターズらしいなと思う。
努力や誠実さで全てのアイドルを輝かせるのではなく、人事ではどうにもならない『華』や『運』まで引っくるめてアイカツを判断するところは、スターズのシビアな『普通さ』が良く出ている。
細かい配慮を蹴っ飛ばしても、周囲全てを巻き込む『華』があることがアイドルとしてどれだけ強いのか、ゆずの煽りで踊るダチョウと骨で見せたのは、なかなかの豪腕演出だったな。(勢いで押し切ったともいう)

S4という集団を考えても、プロ意識の塊のひめ先輩、努力と気配りの人ツバサ先輩、魔性の小悪魔夜空先輩とも違う、圧倒的な明るさと前向きさで周囲を引っ張るゆず先輩のリーダーシップは、キャラが立ってて良かったです。
みんながみんな『いい子』でも面白く無いし、ゆずの宮廷道化師的な自由さが、ともすれば重圧で押し流されかねないS4に、風通しの良さを生んでもいるんだろうし。
唯一二年生だったり、トップの色がそのまま組の色になってなかったり、ゆず先輩はホントジョーカーとして描かれてるねぇ。


そんな変わり種の才能を受け入れ、自由奔放にすぎる振る舞いを巧く制御してなんとか機能させている舞組は、今回のエピソード二人目の主役だったと思います。
つーか、本来の主役三人組の影が薄いというか、なんというか。
ゆずISMを至近距離で感じて、これまでなかったアイドルの可能性に目を開くって意味じゃ、十分物語的仕事はしてんだけどね……エピソードの盤面に与える影響力がやや薄いというか。
これまで舞組に与えられたリソース量を考えると、今回舞組全体のほうが目立ってたのは、むしろいいことなんだが。

ゆずとは正反対の堅物ちゃんだけど、その才能に引き寄せられ、年下なのに『様』付までしちゃって面倒見てるミッキーとサーヤは、なかなか面白い幹部でした。
ゆりちゃん先輩もそうなんだけど、幹部連はみんなトップを立てる器量と雑務を厭わない献身を兼ね備えてて、全体的に人間力高いね……好きよ、そういう子……。
型にはめようとしても型をぶっ壊すゆずを相手に、徹底的に自由にやらせた上で、組織全体でバックアップしていく運営方法は、他の組と大きく異なった個性と忠誠心、真心を感じさせて興味深かった。
年齢的にも大人な彼女たちを引き寄せる引力があることで、ジョーカーたることを許されるゆずの説得力も強くなってたしね。

グイグイ前に出て元気なキャラを強調していたハルカ☆ルカちゃんは、まさかのロス流しにあってました。
まぁ第三弾の新キャラ、ゆずパイセン対応キャラだから席開けんといかんしな……それにしたって大胆な大鉈すぎて、久々に女児アニを支配する冷徹な経済原理を叩きつけられた。
ロス仕込のダンステクニックを身に着けたハルカ☆ルカちゃんがリベンジを果たす日を、じっくり待ちたい気持ちですね……つーか、リリィ先輩も歌組だし、一年のネームド舞組いなくなっちゃったし、どっかで補強しないと舞組が物語の中心からどんどん遠ざかっていく気が……。
歌組にリソース集めていくのは、話の中心がどこにあるか分かりやすくて良いんだけどね……ここら辺は幹部編に入ってさらに増えてきた人数を、巧く捌く手際に期待したい所。
そういう意味では、ゆず含めた舞組全員のキャラが一気に立った今回は、楽しく見事なエピソードだったと思います。


というわけで、ぶっ飛んだコメディテイストに乗せて、『自由すぎるアイドル』を活写するエピソードでした。
魅力も短所も引っくるめてゆずをしっかり描くことで、彼女に引き寄せられ彼女を支える舞組という組織の顔も見えてきて、これまでの冷遇を埋めるのに十分な、パワーと楽しさのあるお話だったと思います。
世界設定の『普通さ』と並んで無印とスターズを分ける、『組織化された個性』としての組制度を描写するのに、無印的なリアリティラインの跳ね飛ばしを利用してくるのは、個人的に興味深いねじれだったな。

ぐっと彫りを深めた二階堂ゆずに続いては、『厳しすぎるアイドル』ツバサ先輩の個別エピソード。
これまでも努力家で凡人で人情家という愛すべき顔を見せた彼女ですが、カメラがクローズアップすることでどんな魅力が見えてくるのか。
願わくば最近の幹部&組織掘り下げの流れをくんで、劇組の顔も見たいところですが、さてはてどうなるやら。