イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

美男高校地球防衛部Love! Love!:第8話『愛は雪のように』感想

君の肩に悲しみが雪のように積もる夜には心の底から誰かを愛することが出来るアニメ、今週は雪が連れてきた童心。
相変わらず強羅あんちゃんが好きすぎて頭がおかしい別府兄弟が、大晦日にいろいろちょっかいを出してくるお話でした。
先週に引き続き暴力ではなく受容と対話で問題を解決した結果、敵幹部が自分から正体を明かすというマサカの展開。
こういうひっくり返し方は、ヒーロー・フィクションを斜めの角度から描いているこのアニメ独特のものだと思うので、非常に面白かったですね。

子供っぽい独占欲を全開にしてちょっかい出してくる別府兄弟と、いまいちキマらない雪だるま怪人と、のんびりキャフフする防衛部のすれ違いが面白い今回。
雪だるま怪人の悪意に気づかず、童心に帰ってスキップする煙ちゃんと蔵王くんが可愛かったですが、『敵』の悪意を正面から受け止めず、戦いの場それ自体を展開させないのは、『愛』のお話として好きな流れでした。
殴らない解決が許されているのは、お商売の都合とか考えなくていいパロディならではの強みだよなぁ。

防衛部において『子供っぽさ』というのは有基の属性であり、残りの四人は歳相応のクールさで共感性を封じ込め、『大人』の対応をしています。
しかし大晦日と元旦が同時に来る今回は、『大人』の事情が大雪で潰れた辺りからみんな子供に帰り始めて、どんどん無邪気になっていく。
最初は自分の用事に汲々としていた面々が、本格的にこたつで籠城する覚悟を決めてからどんどんゆる~くなっていって、心の警戒レベルを下げていく姿は可愛くて好きでした。
ダルいのなんのと言いつつ、結局本気で遊んでくれるボーイズたちは素直でいいわね、やっぱ。

お兄ちゃんたちが帰っちゃうのを寂しがっていた有基ですが、悪い意味での『子供っぽさ』を振り回さず、他人の都合を優先出来る分別の良さをしっかり見せていたのは、なかなか面白い所。
有基の幼いピュアさが人を救っているのは、ざっくり浄化された雪だるま怪人とのやり取りを見ても判るんだけど、同時に幼さの悪しき部分をしっかりコントロールして、他人に迷惑はかけない。
それはつまり『大人』でもあるということで、有基は自分であることだけにしがみつかず、他人の良いところを受け入れる余裕がある、優れた人間なのだ。
有基は他メンバーやあんちゃんの成熟に学び、防衛部は有基の純粋さにいい影響を受けているわけだな。
そういう相互作用がメンバーの間であるのは、お互いがお互いを必要としている感じが強まり、平等な間柄が強調されるので、見ていて楽しい部分であります。


一方別府兄弟は悪しき『子供っぽさ』を全開にして、他人の幸福の邪魔をしたり、自分を見てくれない相手にちょっかいをかけたり、非常にガキっぽかった。
だんだん描写が増えるうちに、かなり満たされない幼少期を送った反動でこうなっちゃったと分かってきたので、しょうがないといえばしょうがないが。
家の内装とかTV番組とか見るだに、アンドロメダ人とのハーフなのかな別府兄弟……謎が深まる。

別府兄弟の悪意は同時に、寂しい状況から自分たちを助けだして欲しいというSOSでもあるのですが、あんまりにひねくれているので防衛部には届かない。
防衛部は気のいい連中な上にヒーローなので、素直に『助けて下さい!』って言えば一発解決なんだけども、下手に『大人』になってしまっているから、本心を伝えるのは気恥ずかしい。
防衛部が『子供』と『大人』の良い部分を発揮しているのに対し、別府兄弟がその悪い部分を加速させている構図は、良い対比になっているだけではなく、どうやって防衛部が別府兄弟と対峙するのかが巧く予見されていて、安定感があります。
『素直になる』という解決方法が、風呂という『裸の付き合い』のモティーフと強く結びついていて、解決の絵が見えやすいのは凄く良いなぁ。

あんまりにも悪意に鈍感な『子供』に業を煮やした別府兄弟は、まさかの悪役カムアウトを敢行し、『俺たちを見ろ! かまえ!!』と迫ってきました。
なかなかの掟破り展開ですが、そもそもこのアニメパロディアニメですし、別府兄弟の幼さもよく出た行動で、何より意外で面白かったですね。
別府兄弟は『ぶっ倒さなきゃいけない敵』ではなく『助けなきゃいけない被害者』として描かれ続けてきて、ここ2エピソードほど戦わない展開が続いているのもその一貫だと思います。
『ああ、こいつら助けてやんなきゃな……』と思える可愛げは凄く巧く作れているので、このまま素直に喧嘩して仲直りして欲しいもんです。
悪の幹部ってわりに、あんま実害が出ていないところが、ヘイトコントロール上手い。

ダダチャ的には今回の暴走、狙い通りなのか予想外の暴投なのかも気になるなぁ。
別府兄弟の行動原理はだいたい見えたけど、ダダチャが何を狙っているのかはまだ分からんわけで、終盤ここが見えることで話が最後のうねりを手に入れる感じなのかね。
現状良いオカンしてるとは思うんだけど、ところどころ黒いし、別府兄弟がダダチャの影響下から離れる描写も多いしねぇ……今後の掘り下げが楽しみです。


と言うわけで、子供は楽しい大雪を舞台に、キャラクターそれぞれの立場が見えてくるお話でした。
パロディとはいえヒーローフィクション、悪意を過剰に捕まえ過ぎない童心の強さをちゃんと描くことで、悪意に過剰にとらわれている別府兄弟の現状を浮き彫りに仕上げる作りは、中々に巧妙でした。
やっぱ個人的な好みとしては、ネタやほのぼの可愛い描写をぶち込みつつ、ストーリーの中での機能が判りやすい話が好きだね。

別府兄弟まさかの暴投で正体がバレましたが、この事が防衛部との関係にどう影響してくるのか。
『悪しき母』であるダダチャの立ち回りも含めて、後半戦に突入という感じです。
ヒーローという題材に斜めから切り込むことで見えてくるものが必ずあると思うので、そこをしっかり掘ってくれると嬉しいな。