イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

ドリフェス!!!!!!:第1話『絆を奏でるニューフェイス』感想

アイドル女児アニの金字塔"アイカツ"のスタッフが、男性アイドルアニメ戦国時代に殴り込みッ!!
キラッキラのファンタジーと熱血、汗と憧れと笑顔を詰め込んで走り出した、男子アイドルど根性ストーリー第一話であります。
何も知らない主人公がアイドルの魅力、仲間の輝きに気づいていくオーソドックスな話運びに、加藤脚本のキャッチーな無茶さがズバッとハマって、楽しく気持ち良く見れる30分でした。
この現実にしっかり足をつけつつ、三歩半上にぶっ飛ぶさじ加減……男子に河岸を変えても、やっぱ最高にしっくり来るぜ……。

というわけで色々面白かったドリフェス第一話ですが、やはりパッと見のわかりやすさ、フックの強さを一番最初に感じます。
戦隊モノのように色と性格を直結させたキャラクター配置、『無理っしょ』『やれるっしょ』というパンチラインをしつこく繰り返すセリフ運び、目に見えない『期待』を『ドリカ』に集約することでアイドルの妙味をギュッと濃縮する(ついでに製品に導線を引く)展開。
初めて物語とキャラクターに出会う今回でも、一瞬で『だいたいこういうやつ』と言うのは理解できるし、『だいたいこういう話』というのもスッと飲み込める。
むしろ飲み込みたいという渇きをどんどん加速させるような、不思議な魅力が会話や演出にしっかり仕込まれていて、判りやすくて面白かったです。

そういう派手めなフックをしっかり引っ掛けつつも、非常にオーソドックスかつ堅牢な価値観、話運びを忘れないのも強さを感じました。
『熱くなれるものを見失った主人公が、最初はバカにしていた何かに飛び込んで、その本質を感じる』という展開は、何億回やっても胸にグッと迫るエバーグリーンであり、そういう王道をしっかり、衒いなくやりきってくれることで、奏くんの熱血に視聴者も感じ入ることが出来ます。
使い古された定形をなぞるのではなく、キャラを立てる記号を半分捻り、幾度も畳み掛けることで独特の味を出してくるところも、安定感と新鮮さを同居させる良い運び方でした。

『アイドル』という主題に対し、『ただ明るいわけではないが、やはり良いものである』というポジティブな結論から入っている前向きな姿勢も、見ていて気分が明るくなる大事なポイント。
『楽しいことばっかりで最高だぜ!!』っていう思考停止のユーフォリアも困るけど、せっかく主題に選んだものを『辛くて下らなくて、何の意味もない』みたいな描き方されたら、見ている側としては楽しくもないし迷ってもしまう。
三神というメンターの言葉をうまく借りて、『アイドルは何が素晴らしいのか』を真っ直ぐ伝え、自分たちが信じる価値をライトアップして見せるシーンがちゃんとあるのは、作品の核心がはっきりと見え、非常に良かったです。
奏くんのアイドルへの姿勢が変わっていく内に、一部の視聴者にあるアイドルへの斜めの理解も自然と薄れていくのが、巧い運び方ですね。


『全力を超える尊さ』『笑顔を生み出す快楽』『ファンの重たいエールに答える喜び』と、このお話がアイドルを題材にする理由を第一話から明瞭に、骨太に打ち出し、正面から答えているのも、作品の行く末を信頼できてとても良かったです。
最後に奏くんがナレーションでまとめていますが、この話は何も知らなかった少年がアイドルの辛さと素晴らしさに飛び込み、仲間や強敵と共に輝きに向かって走る、自己実現の物語です。
その過程で何を大事にして、青春のどういう側面を掘り下げていくのか、この第一話で明瞭に打ち出している所が、充実感と信頼感を支えてくれていると思います。
個人的な好みとしては、第一話は思わせぶりにテーマを隠して引っ張られるより、堂々と胸を張って『このアニメはこういう話だ!!』と宣言してくれたほうが、先を見たくなるのです。

アイドルが背負うべき『声援』『期待』が祝福であると同時に呪いでもあって、その危うさをどう受け止めるかが大事なんだってのは、普通話結構尺使わないと描ききれない部分だと思います。
しかしそれを『ドリカ』というフェティッシュ一つにまとめあげ、ステージ成立に不可欠な『衣装』と組み合わせることで、抽象的なものを判りやすくまとめ上げているのは、このアニメ独特の強さだと感じました。
『ぶっつけ本番のデビューステージでも、『ドリカ』をファンから寄せられ、受け止められることこそが、主人公が主人公として選ばれた才能であり、特質なのだ』というのが、非常にスマートに判るわけで。
ここら辺は女児アニで培った具体化・統合化の巧さと強さだよなぁと思います……腕力でなぎ倒せるときは、思いっきりぶっ飛ばすの気持ちよくて好きよ。

楽な職業ではないアイドルの苦労を一番わかり易い形で伝えるべく、とりあえず汗水たっぷりかかせるスポ根主義は、『ああ、アイカツのもう一つの後継者だな』と感じさせるのに充分でした。
とりあえず必死に走り、食らいついていく姿を見てしまうと、なぜだか応援したくなってしまうのよね……ズルいが正しい使い方だ。
ただ体をいじめるのではなく、苦労を共にしたことで突っかかっていた純哉くんの態度が柔らかくなったり、アイドルナメてた奏くんがグッと惹きつけられたり、心の面でも変化があるのが良いよね。


キャラ個人の立て方、チームとしての配置も明瞭かつ魅力的で、物語を加速させそうな予感にあふれていました。
『全力を超えて、人を笑顔にする』というアイドル最高の資質を備えた熱血主人公、奏くんを中心に、訳ありクールガイの慎くん、ストイック反発系な純哉くん、可愛いマスコット知弦くん、チームの潤滑剤になってくれそうないつきくんと、役割分担がはっきりしたキャラ立ちです。
パッと並べただけで『ああ、これからこういうことが起きるんだろうなぁ……起きてほしいなぁ』と思えるストレートな魅力があるのは、非常に良いと思う。

「無理っしょ」で奏くんを試しまくり、どんどん話に引き込んでくれる純哉くんの仕事っぷりがマジ半端なくて、『俺……この子の事好きになっちまうよッ!!』と思わざるをえない。
ずーっと「いけるっしょ」「無理っしょ」で進めてきておいて、勝負どころのステージで奏くんが弱気に「無理っしょ……」ってなったら純哉くんが「いけるっしょ!」になるの、マジ最高だしなぁ……関係性の変化をこの会話だけでスパッと見せちゃうの、マジ魔法。
世界観や演出もそうなんですが、オーソドックスな『捻らない強さ』が発揮できる造形にした上で、ちょっとだけひねってクセをつけるキャラクター造形も、いい感じに機能していたと思います。

あと他人のことを徹底的に悪く言わず、素直に感動や感謝を言葉にしまくる描き方も、濁りがなくて見てて気持ちがいいです。
初ステージの感想を聞かれて、アイドルへの感服や胸の高鳴りだけではなく、肩を並べてステージを作った二人を『凄い』と言えるあたり、奏くんの人徳が強く感じられる。
ここら辺は作品全体に漂うポジティブな空気をうまく顕在化させていて、こういう台詞回しを徹底することで、前向きで明るい世界が実態を持っていく大事な部分でしょうね。

奏くんの資質を見抜き、物語に上げる三神さんが良いことしか言わない、正着しか打たないのも、お話を引っ張るメンターの頼りがいを感じさせ、大変グッドでした。
レジェンドアイドルとしての圧力もキッチリあるし、奏くんが三神さんの背中に引き寄せられる引力の強さも感じられたし、凄く良い出会いの描写でした。
いろんな試練が襲い来る中で少年たちが迷ったり、苦しんだりすることもあるんだろうけど、それを見守り導く立場の存在がしっかりしていることで、ネガティブなシーンを不要に引っ張らない期待感が高まりますね。


そんなわけで、『捻らないで真っ直ぐ行く強さ』を正面から叩きつけ、楽しく気持ち良く見れる第一話でした。
やっぱこの徹底的なポジティブさ、流した汗が無駄にならない世界の厳しさと優しさは、見てて元気になれるなぁ。
男子に河岸を変えたことで、また違った表現もできると思いますし、今後に期待大です。

今週は純哉くんがゴスゴス奏くんに突っ込んで行ってくれて話が盛り上がりましたが、来週は慎くん軸で話が進むようです。
主人公の奏くんが素直で優しいボーイなので、心がふれあいお互い判り合う展開も楽しく見れそうなのが、非常に良い。
ミステリアスなクールガイの心の壁を、熱血アイドル一年生がどう切り崩していくのか。
楽しみですね。