イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

刀剣乱舞 花丸:第8話『幽霊退治戦隊、結成!』感想

不思議な隠れ里で、みんな仲良し大冒険。
ジャンルとしては"楽しいムーミン一家"に良く似た女性向けコンテンツトップランナーのアニメ化、八話目です。
夏休みに相応しいゆるーっとしたお話二本でして、三名槍の筋肉オジサン達が虫取りならぬ鳥追いで走り回ったり、ニッカリくんと愉快な仲間たちが肝試しをしたり、楽しく優しいだけの息抜き回でした。
いやー、最高ですね、楽しくて優しいだけのアニメ……それだけで世界が構築されてると嘘っぽくて食えなくなるんだが、甘みの合間に滋味のある要素をしっかり挟んで続けてきたので、こういう肩肘張らない構成も素直に楽しめるわな。

というわけで、前編は槍のオジサンたちが仲良く組体操したり、駆けずり回ったり、思う存分夏を堪能する話でした。
話の構成としては、過去エピソードでいくつか見られたような『メインのキャラたちが色んな場所を走りまわり、その場に居合わせたキャラが1ネタ披露するシーンを細かくつなぎ合わせる』感じ。
お話を大きく脱線させることなく、たくさんの人数を登場させ見せ場を与えることが出来る形式なので、『色んなキャラがたくさん出てきて、健気で楽しい』という花丸の方向性とマッチした、便利な構成なんでしょうね。
Bパートもサーフェスは違えど、構造としては同じ話だしな。

眉目秀麗な青年や、無垢で可愛い美少年たちを愛でるのも楽しかったんですが、筋肉モリモリの頼れるオジサン達が出てきてくれたのは、刀剣乱舞に僕が感じる魅力である『キャラ表現の幅の広さ』が元気になって、凄く良いと思います。
マッチョで優しいおじさんが一等好きって個人的な好みだけではなく、元気なやつ・落ち着いてるやつ、太いの・細いの、色んな個性がひしめきつつ、仲良くやってる花丸の理想郷な感じは、このアニメの持つパワーの源泉だと思うのです。
極端な例えをすると『猛獣と草食動物が共に暮らしている、諍いのない世界』という、仏教的往生楽土感といいますか……差異がありつつそれが対立を産まない世界のルールを確認するためには、凸凹違いがある連中が沢山いてくれたほうが、やっぱ楽しいんだよね。

こういう多種多様な個性が一箇所に詰め込まれ、各々尊重しつつ強く繋がったり、ベッタリはしないがいい間合いを維持している気持ちよさの裏には、キャラ商売の冷静な計算があると思います。
いろんなニーズに答えるべく、様々な属性や設定を組み合わせて生まれてくるキャラが噛み合った時、偶発的に生まれる素敵な関係性や、組み合わせの妙味。
本丸の空気の良さはは『可能な限り網を広げ、引っかかるだけ根こそぎにする』というコンテンツ商売の戦術が生み出した、面白い副産物だと思うんですよね。
上手く料理しないとあざとい商売っ気ばかりが目立ってノレないわけですが、本丸はキャラに人間味を出すのが巧いので、今回の五虎退くんと日本号さんの間合いみたいな、いい感じの空気がスッと出てくる。
そういうのを自然に食わせてくれるのは、凄く良いなと思います。

お話の方もお膝でご本を読んでくれる蜻蛉切さんの優しさとか、五虎退くんを傷つけてしまって気に病む日本号さんとか、優しいおじさん達とイノセントな子供たちの触れ合いが凄く良かったです。
平安生まれのジジイたちほど達観できないけど、子供に何かしてやろうと思えるくらいには大人で、バカな思いつきで全力ダッシュできるくらいには元気な三名槍たちは、これまでの本丸にちょっといなかったタイプの個性を持っていました。
やっぱムキムキマッチョなのにお母さんってヤベーよな、蜻蛉切さん……英語で言うとSUKI。
カトゥーンみたいな外見した青い鳥も、のどかなエピソードの空気をうまく強化していて、名脇役だなぁと思ったりしました。


Bパートは藤四郎少年団とニッカリくんによる、真夏の夜の怪談タイム。
こっちも色んな場所を駆けずり回り、色んなキャラにちょっとした見せ場を用意するタイプのお話でした。
『軸になるキャラクターが明瞭に存在し、テーマを掘りながらいい話でまとめる』というパターンに並ぶ、安定感のある基本形って感じですね。
人数をどう捌くかは花丸が絶対上手くやらねばならない重要ポイントなわけで、こういう基本形がはっきり存在していることで、最大多数をしっかりすくい上げるファンサービスが可能になっているのは、よく考えられているなと思います。

内容的には、Aパートの汗臭い展開とはうって変わって、色んな美少年が徹底的にあざとく下から攻めてくるお話でした。
前回一期一振を軸にメイン話をやった直後に、掴みどころのないニッカリくんの意外な面倒見の良さも引き出すあたり、粟田口兄弟は束で扱いやすいキャラクターなんだろうな。
アニメでしか知らない身からすると、『無垢なる少年』という共通属性でまとめつつ、年齢と個性を細かく出してくる見せ方は手際が良くて、キャラが好きになれて良いなと思います。

僕は左文字兄弟の不思議な空気がすごく好きなので、江雪兄貴が思いっきりトンチキに振る舞いつつ、小夜くんを優しく扱うイベントはご褒美すぎた。
日本号と五虎退の描写にも繋がるところですが、ちょっと距離感があるところを巧く調節して、各々歩み寄って間合いを作る描写が、僕は好きなんですよね。
なので、あからさまにエキセントリックな左文字兄弟が兄弟で仲良くしつつ、その他のキャラと縁が切れているわけではない描写が見れると、凄く楽しい。
もちろん、粟田口兄弟とニッカリくんのようにスムーズに関係が繋がるのも良いし、第5話の加州くんと三日月のように悩んでぶつかっていく関係も良いし、柔らかい空気の中で色んな繋がり方が許されている感じが、花丸の大きな魅力だと思います。


そんなわけで、花丸の平和な日常をひたすらにスケッチする、肩の力が抜けた回でした。
一言『優しい話』と言っても、色んなキャラクターが色んな魅力を持っていて、色んな繋がり方が出来る良さを忘れず、沢山の見せ場をつなぎ合わせてサービスしてくれるのが、非常にありがたい。
ここらへんは、大人数のキャラがわんさか出てくるソシャゲ原作の良さを最大限活かした作りで、やっぱ強いなと感じます。

気づけば季節も秋に差し掛かり、お話の終わりも見えてきました。
キャラだけではなく、お話の起伏の付け方にもバリエーションがあって、見ていて楽しい刀剣乱舞花丸。
残りの季節でどういう物語を紡ぎ、どういう楽しさを提供してくれるのか、期待はつきませんね。