3月のライオンを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
行きはよいよい帰りはこわい、恐る恐るで帰ってきた故郷は、再び走り出すための元気をチャージしてくれるとても暖かい場所だった。
島田さんと零くんが手に入れたホームの温かみを、天童と三月町、2つの水彩調の街に重ね合わせながら描いていく回。
先週までの冷たく陰鬱な圧力も決着とともに抜けて、朗らかないい具合のコメディ調子が復活。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
緩急陰陽、どっちを描いても独特の描画力と美術が活きて、描かれているものをグッと盛り上げる異化作用が生まれてくるのは制作集団の味であり、強みでもあろう。ファンタジック成分の使い方が上手いアニメだ
Aパートは天童、Bパートは川本家と、2つの故郷を描く話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
『そこ』があるから厳しい戦いで傷つき、倒れても立ち上がれる場所はおんなじ調子で明るく優しく楽しく描かれ、月は怜悧な切断面ではなく、シャガールの丸い輪郭で二度輝く。美術哲学の積み重ねが生きる、良い演出だった。
Aパートは『通りゃんせ』の使い方が非常に巧く、最初は曇天のもと不気味に響いていた音楽が、帰る頃には心温まるアンセムに聞こえてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
それは敗北を背負って故郷に帰還した島田八段が、故郷の表情をその目で確認し、心のなかの曇りを晴らす動きと的確に呼応している。認識が世界を作るのだ。
故郷は良いもので、俺はまだ死んでいなくて、戦いは続くのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
そういう前向きな結論に至るために必要な具体的な描写は、みっしりと詰まっている。
楽しい人間将棋、手渡される地元の食材、善行を見逃さない優しい人々。ここら辺の積み重ねが明瞭なことが、復活に説得力と体温を与えている。
先週までは重く、非常に真剣で人を傷つけるものとして描かれていた将棋のもう一つの顔が描かれていたのも、なかなか面白いところだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
人間将棋も百面指しも、笑顔の絶えない楽しい『遊び』であり、それもまた将棋の一つの顔だ。
人を溺れさせることだけが水の仕事でないように、将棋も多相だ、
もう一つの顔が見えるのは島田八段も同じで、将棋という競技のプロフェッショナルであると同時に、寒村を活かすためのシステムを考案・実行する有徳の人としての側面が、じんわり描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
まじで歴史の教科書に乗るくらい、兄者は立派。零くんが思いっきり食らいついて『良いよね…』するのも分かる
そろそろこのアニメも終わりだが、零くんは全然知らなかった男の人を『凄く良いんです! 最高なんです!!』と大声で叫べるようになった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
終盤かなりの時間を使った島田編がどういう話だったかをまとめるにあたり、『人を好きだと胸を張って言えるようになった』零くんの姿は感慨深い。
零くんを主人公にして進むこのお話、僕らも島田八段を知らない状況で彼と出会う形だ(僕は漫画で知ってるけど、それは横に置く)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
わけわかんねーハゲにぶっ飛ばされ、迷い、救われて手を繋ぎ、戦いに立ち会い、故郷に同行する。その旅路をじっくり共有することで、僕らも自然『良いんです!』と言える
ときに丁寧すぎるほどにゆったりと、原作を丁寧に使ってアニメにしてくれた醍醐味みたいなものを、今回の零くんの食いつきっぷりには感じた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
零くんの孤独を、ジジババの期待と寂しさを、頂点を目指し戦う辛さを、色んな物を背負って再度立ち上がる島田さんのことを、僕もあなたも多分好きだ。
その気持を生み出すためにエピソードの『量』を積み上げていくスタイルは、実は特異な演出よりもこの作品の色なのではないかな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
じわりと流れていく時間の中で、傷ついたり強くなったり笑ったりする人間種。そのリズムと重ね合わせて、どっしりと展開する物語の時計こそが。
水は流れる。水面に写った優しい月が滲んで、柔らかく暖かい時間を閉じ込める。天童の思い出を胸に抱えて、零くんも島田さんもまた、あの厳しく冷たく尊い場所に帰っていくだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
それは終わりであると同時に始まりで、そういう形で島田編に一つの幕が下りるのは、幸せで豊かなことだったと思う。
そんな天童と重ね合わされつつ、独特のジオマンシーと住人を持つBパート。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
千葉さんの『圧』が圧倒的にハイテンションで、動きの少ないお座敷コメディを爆笑の場へと変えてくれていた。おじいちゃんが面白いのは、やっぱ川本家パートの強みだと思うなぁ…千葉さんありがとう。
メインでカメラが当たるのは久々な三姉妹だが、相変わらず可憐で可愛らしく、元気でいてくれていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
どっしり腰を落として家族漫才を見せるカメラは、変わらぬ日常が具体的にはどういううものなのか、気負わず追いかける。それは楽しくて賑やかで、とても良い。天童と同じように。
ガヤガヤと家族で騒いで、ちょっとした苦境を乗り越えるいいアイデアも出て、ぼんやりとした未来への明るい希望があって。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
それは水面の月のように不確かなものかもしれないけど、やっぱりとっても良いものだ。そういう場所に零くんが『帰って』くる。彼は21話使って、『ホーム』を手に入れたのだ。
今週はひなちゃんの可憐なヒロイン力がゲージ全開であり、零くんと電話で蜂合わせるところなど、アニメで『声がついて、動く』強いをマキシマムに活かしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
既に『ホーム』を手に入れてるひなちゃんは、今回そこに足場を置いたまま、頑是ない未来の夢を語る。小さくて綺麗な、和菓子のような夢。
零くんが歩く将棋道がそうであるように、ひなちゃんの小さな夢も荒波に晒され、冷たさに凍えることになるだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
でもそれは、今回描かれた小さな暖かさ、2つのホームを無意味化するものではない。故郷と戦場は並走しているし、混じり合うし、食い合ったり支え合ったりする。複雑な色をしている。
故郷の温かみがあればこそ再起/再帰も出来る。地のものを食べればこそ次へのパワーも生まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
島田さんが示したホームの力、未来への可能性が、川本家と零くんの未来と呼応しあうような、豊かな構成を持った回だと思う。違うけど似ていて、似ているけど違うことは、とても良いことなのだ。
来週は最終回であり、再び大きな波が来る前の一瞬の凪を捉えて、多分このアニメは終わる。いいタイミングだな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
同時に並の時代の描き方も巧くて面白いので、『それもアニメでみたい』という気持ちも強くある。『いいアニメだったなあ』という満足感もある。
あと1話あるのにそういう気持ちになるのは、今回のエピソードが作品の軸と呼応する良いエピソードだったこと、このアニメがとてもたくさんのものを、丁寧に描いてきたことの証明だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年3月11日
いいアニメの最終回は、良いものであって欲しい。その期待は多分、来週かなえられるだろう。楽しみです。