ID-0を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
無酸素、極低温、極低圧。人類の生存を拒む宇宙という荒野。そこに生きるということは、綺麗事ではない。
ド素人であるマヤの背負う普通の倫理と、船長が守らなければならない責務が衝突し、幼女と素粒子雲が追いかけっこするお話。イドも含め、みんな善人なのがとても良い。
アマンザも無事クルーとなり、一段落付いた第5話。素粒子モンスターの襲撃で場を温めつつも、どっしりと腰を落としてキャラクターの根っこを掘る展開が続く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
色んなキャラが掘り下げられていたが、メインはやっぱり主人公たるマヤとイド。それに反射する形で、船長とアマンザも素顔が見えた。
マヤはこれまでとおなじように、人間として普通で当たり前の価値観に準じて、アリスの命を助けようとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
これに対し社長は、社会のセーフティネット（=常識）から外れたアウトローとして、宇宙空間を仕事場にする労働者として、命に優劣をつけるシビアな価値観を主張する。
マヤの意見は甘ちゃんで、社長の意見は冷酷。そういう風に見ることも出来るが、このお話は両者の倫理を『双方正しい』と描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
Iマシーンに転写しなければ宇宙活動が出来ない、というこれまでの描写が、社長の冷たい方程式の背後にある厳しさをしっかり支えている。一理あるのだ。
その上で、アマンザ含めてクルーたち全員が『命は助けるに値するものだ』という根本原理には同意をしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
余裕があるのなら、全てを助けたい。それが許されないシビアな状況の中で、理想を追って共倒れか、手を離して一人だけ助かるか。その選択は究極的なものであり、無条件の正解はない。
倫理をめぐる今回の描写で秀逸なのは、マヤがブリッジという安全圏を離れ、現場に飛び込んだことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
マヤは己の理想のために命を張り、リスクを共有していく。自分の血で描いたなら、綺麗事はもはや信念に変わる。可愛い狸小娘は可愛いだけでなく、そういう決断が可能なヒーローでもあるわけだ。
記憶もIDもなく、クールに見えるイドもマヤの熱意に当てられ、シビアな状況に倫理の贅沢を持ち込める余地を、必死で考える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
イドは表面的なキャラから想像できないくらいに熱血漢で、命と誇りを大事にするヒーローだと、ここまで見てきて判る。高潔で、好きになれるキャラだ。行動早いし。
窮地を一緒にくぐり抜け、イドの鋼鉄の体に流れる倫理の血を知っているから、マヤも迷わずザイルを預ける。『自分には出来なくても、あの人なら』という信頼感は、既に二人の間に形成されているのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
巻き込まれて始まった物語が、こういう関係を無理なく描けるところに来ているのは素晴らしい。
二人の主人公にカウンターを当てる立場にいるのが、社長とアマンザだ。両方共『軍』という社会的バックボーンを共有し、命の値札つけに慣れている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
シビアな選択を職務として受け入れつつも、個人的選択として死を押し付ける悪人ではなく、可能な限りの命を救いたい善人であるところも似ている。
社長が『綺麗事じゃ生きていけねぇ！』『ここはアウトローの世界、不毛の宇宙！』と強調するのは、マヤと同時に自分にも言い聞かせているのだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
社長が肉体を失った事件はまだ描写されていないが、それに巻き込まれる前はマヤと同じような（もしかするとそれ以上の）お人好しだった気がする。
理想がシビアな現実に砕かれ、己の命含めた守りたいものがぶっ壊される経験をしているからこそ、マヤの純粋で、危なっかしい理念に釘を差しておきたいのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
船長として、鋼鉄の疑似家族の家長として、クルーを守る責任もあるだろうし。それは、マヤの倫理と同じくらい大事なものだ。
痛い目見た大人として、子供な同じ間違いをしないように釘を刺す。それはとても立派な行動なのだが、同時に子供の純粋な理想を諦めてしまってもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
マヤの思いを引き継いだイドが、7年間の記憶しか持たない子供でもあるとを考えると、子供が大人から学び、大人が子供に教えられる構造が見えてくる
そういう相互作用があるのは、とても良いなぁと思う。アリスと名付けられた少女は被保護者であると同時に、珪素を体内に取り込んだ超常者であり、命の危機を呼び込む厄種でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
人物が持つ多様性が様々な接点を呼び込み、多様な関係性が生まれる。そういう話には立体感があるし、面白い。
イドの過去も一部解説されていたが、なかなかにシビアだった。失った過去にしがみつくのではなく、自分の血で描いた現在を肯定し、鋼鉄の身体、ゼロの社会的ID、白紙の記憶こそ『ID-0』だと宣言する姿には、強いプライドがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
ここら辺の高潔さを、アマンザを通して視聴者に見せるのが巧い。
記憶がなかろうと、体が鉄だろうと、命を救うために奮戦するイドの行いは尊いし、意味のある行動だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
己の存在意義/価値とは社会や肉体から無条件に与えられる特権ではなく、体と精神を動かした結果生まれ、獲得するものとだいう、活動的な倫理観がイドには反映されていると思う。
珪素生命体だろうと、ロボットだろうと、生きているって良いことだし、それを守ろうとするのは良いことだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
クルーの人種構成が横幅広いところとか見ても、このアニメはやっぱ凄くベーシックな平等意識に裏打ちされているし、それがSFアドベンチャーという舞台設定と噛み合ってもいる、
ここら辺の意識はただくっちゃべってるだけなら空疎な題目だが、具体的に命を脅かしてくるモンスターが現れることで、グッと質量が生まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
素粒子レベルまで己を分解し、トンネルエフェクトで迫りくる赤い雲。クリーチャーパニック的な要素を巧く活かし、大活劇で興奮させてくれた。
ベーシックなテーマ性を大事にしつつも、自分で選び取ったSF要素も凄く好きで、『俺はこういうのが好きなんだよ！』をむき出しに設定モリモリ作ってくるところが、オタク的で好みだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
大量の設定を惜しげなく切り捨てて、劇作に必要な分だけ出してくる目も良い。ここらはファンタジスタドールと共通
衛星が何らかの意志を持ってアリスを追いかけていることが今回わかったが、教授が口にしていた『アマツミカボシ』も記紀神話にある星の神、反逆する星の意思だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
ここら辺の要素がかみ合って一つの答えが出ると、凄く気持ちが良いんじゃないかなぁ、と思う。
イドは少女をオーアと名付け、アリスと名付け直す。二つの名前はID（O-A）LICEの融合体であり、オーア（ラテン語で金）を掘り返す鋼の炭鉱夫と、セピア色の記憶を持つ生身の父としての記憶…イドの二つのIDから生み出されているのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
超常のパワーとして、守るべき価値ある黄金として、マヤだけではなくイドもアリスに強いつながりを持ち、モチベが高まったのはすごく良いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
二人の主人公のモチベがアリスを焦点に集中することで、お話に軸が入ってブレなくなるしね。倫理の物語としての輪郭も、よりくっきりする。
イドの記憶、アリスの秘密、迫り来る衛星と軍。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月7日
色々気になるポイントが明らかになりつつ、幼いマヤの成長と、成熟したイドの変化という大きな二つの軸もはっきりと見える、明瞭なお話でした。
無音の宇宙シーンに代表されるSF力もエンジン快調、サブキャラクターも魅力的。おもしれーなこのアニメ
