サクラクエストを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
恋とグルメと魔王と家と! C級グルメと結婚をネタに、普通に見えて闇が深い四ノ宮しおりが初めて前面に立つまでのお話。
テンポの良いコメディから人情お茶の間モノ、じわじわ広がる暗雲と衝突。このアニメの持つ横幅の広さが生きる楽しい回だった。
起承転結の起と承を担当する今回は、『こういう問題がありますよー』ってのを見せつつ、合間合間に笑いとイイハナシを詰めていく構成。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
出だしからしてトンチキ衣装の稲刈りでボケつつ、農業のインサイド/アウトサイドのズレを叩きつけてくる構成だ。おい凛々子、お前一応地元民だろ。
『内』と『外』の差異、ズレ、それぞれの長所と短所というのは、このアニメ全体を貫く軸であり、今回に限った話ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
それと同時に、どの角度から内外を切り取っていくかがエピソードの特色でもある。早苗ちゃんなら伝統産業、真希ちゃんなら過去と地縁・血縁との対峙。
内外が向かい合い、衝突し、その炸裂から何かが生まれる過程と、ダメダメ女がダメダメな自分と向き合い、背筋を伸ばし、己を再獲得する過程。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
個人の物語と舞台の物語が、それぞれ別のものでありながら不思議なユニゾンを保っているところが、二話構成と噛み合って面白い味になる。
今回のダメダメ女は、前回ニュルッと濃口の闇を出してきた勇者PTのサタン、しおりちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
PTで唯一間野山から離れたことがない彼女は、外部からの変革を司る主人公サイドの異物であり、そうめんの上のメンマである。自分のことを普通と認識しているけども、その実異様さを大量に孕んでいる。
それが良いものであれ、悪いものであれ、異質性は基本的に外部から観測される。ヨソモノだからこそ、日常に埋没する異常さをチェックできる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
そしてたとえヨソモノが何を言おうが、自分(とその延長線上に在る土地・人間)は自分を肯定する。日常が異常だと思ったまま生きていくことは、とても苦しい
何も問題はない、昨日と同じ今日、今日と同じ明日が続いていく。そう呟き続けることで、自意識に麻酔をかける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
今の四ノ宮家、今の間野山が最高だと認識し続けるしおりは、地元民に望まれない変化を担当する国王PTでは異質な存在だ。だが、安楽と永遠を望む彼女の気持ちは、痛いほど分かる。
その尊さをちゃんと見据えた上で、このアニメは『そうめんにメンマは乗らない』と言い続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
異常に高望みなしおりの結婚条件は、家族だけの食卓では『それだけあれば』『謙虚』ということになる。稲刈りが機械化されている常識は、国王PTには通じない。日常は常に、異質性と隣合わせだ。
新規と伝統、2つのイベントが衝突するのは、話を来週に引き継ぐ大きな事件だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
ここにも異質性に対して譲らない日常、日常の中身を確認しない異物の姿が在る。商店街にナシを通す『暗黙の了解』は、国王達移住者にとっては『常識』ではない。そこら辺は国王ではなく、職員がやっておけマジ。
国王に対立する形の商店街会長だが、言ってることは圧倒的に正論だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
早苗ちゃんが彫刻相手に浮かれた時のように、ポンコツ共が繰り出すダメダメレシピのように、ヨソモノは持続可能な安定性を考えない。
外部の素材でリニューアルした会長の選択が、農家という四ノ宮の家業に重なるのが巧い。
保守的な内部代表としてハードの当たってくる顔だけではなく、祖母として凛々子の魔女料理を食べる顔もちゃんと入れてきたのは、多角性を担保する上で良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
『家』はその内部で特異性を発酵させるだけではなく、外では見せられない柔らかさを守ってくれるシェルターでもある。
間野山という舞台が持っている閉鎖性と保護力が、四ノ宮と織部、2つの『家』によって具体的な顔を得る。この流れはとても良いと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
真希ちゃんエピでもそうだったが、このアニメのホームは基本的に良いものだ。ヨソモノとして厳しい風にあたる国王たちも、ログハウスに守られ耐えることが出来る。
しかし『家』のなかに閉じこもってばかりでは、風は吹かず衰退し腐敗していく。中と外、それぞれ異なるものをどう衝突させ、実りある風を吹かすかというのが、国王と間野山が立ち向かう大きなクエストなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
そう考えると、凛々子が半ヒキなのは面白い。個別エピはどう仕上げてくるかな。
四ノ宮の『家』からも、姉が外へと出ていき、外から夫を迎える気配がある。永遠の無変化を望んでいるしおりの『家』ですら、宿命として時間と軋轢、もしくは成長に常に晒されている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
この対峙がしおり個人にとっても内面化され、これまで避けていた外部に向かい合うところでヒクのは面白い。
料理に圧倒的な才を持ち、C級グルメ開発の適材であるしおりは、『そういうの苦手だから』と己を規定し、リーダーになることを拒む。彼女の才を見せるために、ダメダメ女のダメダメ料理をコミカルに見せているのは良い味付けだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
伝統と革新が衝突した時、彼女は前に出て、国王の権能を簒奪する。
そこを調整するのは、伝統と革新、商店街と国王PT両方にアイデンティティの足場を置くしおりにしか出来ない仕事だからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
ここで前に出ることで、間野山とログハウス、商店街と観光協会という2つの『家』を両方守り、双方にとってより良い未来を作れる…というか、前に出ないと両方不幸になる。
しおりが『これまでの自分』という『家』を出て、風の真ん前に立ったのには、そういう思いがあったのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
後ろ向きに現状を維持したい気持ちと、由乃たちと一緒に変わっていきたい気持ち。愛情ゆえのジレンマが衝突し、行動が炸裂する瞬間は、いつでも熱く美しい。
相反する潮目、仲の悪い2つの『家』を和解させていくのは、会長も言っていたように厳しい道だ。内気なしおり一人では難しいだろうが、PTの仲間はいつでも頼りになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
きっと大丈夫だ、と思えるのは、やっぱここまで個別エピで協力のドラマを楽しく見せてくれた成果だろう。
しおりはゆりかごの中で揺れ続ける幼子だ。四ノ宮の『家』、間野山という『家』…安定した子宮から出たくないとむずがる嬰児であり、その姿は変化を嫌う間野山の住人そのものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
しおりが自分を、そしてもう一つの『家』である国王のログハウスを認めさせた時、間野山は閉鎖されたゆりかごから変わる
…のかもしれない。ここで一気に変化・成長させすぎてしまうと話が終わってしまうので、コンパクトな変化と和解、ちょっとした融和に留める気もする
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
そこで納めるために、ローカルなグルメフェス&納涼会という舞台立てなのかな。コンパクトな成功を積み上げていくスタイルは、やっぱこのアニメの味だ
というわけで、革新と伝統の2つの顔を、両方に足場を置くしおりを掘り下げながら照らし出す回でした。縦と横両方に広い話が、色んなテイストで演出され、賑やかで楽しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
敵役に配置された会長の『理』と『情』が見えたのも、凄く良かったな。凛々子エピでは重要キャラになるだろうし。
姉と熊野の恋路も補助線として的確に使われていて、期待と緊張感を持って来週を待てそうです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
熊野さん、シェフ服のときとTシャツのときで体格三倍くらい違くて、ガタイ系なのにも程があるだろ。魚のとり方が完璧にサーモンハントなのも面白かった。今週、細かいクスグリキレてたなぁ。
サクラクエスト追記。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
このアニメ、服装でお話のムードを調整する演出技法が特徴的なんだが、コスプレ稲刈り→シェフ服→夏服と、話のシリアスさに従ってボンクラ共の服装が移り変わるのが、巧い使い方だった。
だんだん洒落にならなくなってく状況に合わせて、道化の服はやめていくっつーね。
ここまで7話積んで、PT内部の関係性も、個人の性格も、間野山への親しみでも当然変化がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年5月24日
そこら辺反映して新しい夏服に着替えるのも、結構好きな演出です。クロムクロはどっちかっていうとメシ重点だったけども、こっちはフク重点な印象だなぁ。いや、両作使える武器はフル動員なんだけどさ。