有頂天家族を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
二代目偽右衛門、決議迫る。天狗の都合に振り回されつつ、丁々発止の言葉化け。怖い男と女に挟まれついつ、矢三郎の化けの皮の分厚さが生きるネゴシエーションの回。
冒頭長めに取った矢二郎の旅立ちにも場があり、次回の決戦が楽しみになる見事な運びであった。
というわけで、前回までの家族と狸のゴタゴタにピリオドを打ちつつ、新しいイベントに飛び込んでいく回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
京都駅改札での別れはしみじみと情と希望があり、非常にいいシーンだった。あの場面に玉蘭が同席し、赤いマフラー(『運命の赤い糸』の暗喩か)が矢一郎とお揃いなのが、凄まじくエモい。
玉蘭とのロマンス、早雲との因縁と、ここ最近は狸メイン、家族メインで話が進んでいた感じがある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
そこで生まれたうねりを受けて、矢二郎も井戸を出て、カエルではなく人の姿で世界に飛び出していく。それがまた、新しいうねりを生む。
変化へのポジティブさが矢二郎の出立にはあって、良かった。
母は情愛ゆえに見送りには来れない。一瞬アップになるコーヒーの揺れは、そのまま感情のうねりだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
しかしそれは飲み込まれ、遠くから母は息子の旅立ちを祝福する。そういう親子の繋がりもあれば、憎悪と愛情で捻れまくった天狗の慕情も京都には在る。そこに飛び込むのが矢三郎である。
ここ最近、狸の腹芸ではどうにもならないハードコアな事件が多発していた。ので忘れてしまいがちだが、矢三郎はひょうきんで阿呆、トリックスター気質のネゴシエーターだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
弁天の天狗風でも唯一、化けの皮を剥がされないタフさが、この主人公には在る。色々あって最近揺らぎがちだが(それが良い)。
赤玉先生がすっかり不貞腐れ、狸喰いの怪物を代理に寄越す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
天狗の権威に寄り添いつつ、天狗の気まぐれに振り回される狸の立場が、偽右衛門襲名を巡る騒動からはよく見える。
そういう厄介事をどうにか出来るのも、既存の権力構造に従わない自由人、矢三郎の資質ということか。
赤玉先生のアパート、移動対策本部、二代目の住居、寺の境内。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
場所を取り替えつつ交渉と会話が続く今回は、このアニメの美術の強さを堪能できる回でもある。
特に流麗でありつつバロックの異形も併せ持つ二代目の住居は、長尺で会話劇が展開されるのに飽きない、見事な舞台だ。
あのシーンが楽しいのは、もちろん二代目のキャラが良い、というのもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
他の天狗のように威張り散らすではないが、穏やかな態度の奥に凄みがあり、どこに導火線があるのかわからない。静謐な怖さが立ち居振る舞いに漂っていることで、交渉相手としての緊張感が切れないのだ。
そういう強敵を相手に、詭弁スレスレで論を積み重ねる矢三郎の姿も頼もしい。有馬では事態を変えるに至らなかった言葉の力が、二代目相手には見事に刺さる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
鉄面皮と剽げ面、お互い仮面をかぶったままの交渉戦は、激しい活劇とはまた違った凄みと面白さがあり、大変楽しかった。
矢三郎との会話を通して、二代目のメンタリティが見えるのも面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
父を罵倒しつつ、父との関係にこだわる。天狗を継ぐ気はないと言いつつ、弁天は天狗に相応しくないという。
阿呆な狸の能天気さとは違ったねじれが彼の精神の中にはあって、それが凄みにつながってもいる。面白い男だ。
天狗である父を憎みつつ愛しているので、天狗であり続けたいし、天狗ではなくなりたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
総一朗の息子であること、狸であることを全面的に肯定している矢三郎とは正反対の態度で、その葛藤が天狗の強さでもあろう。能天気ではないからこそ、シリアスなパワーを自分のものにすることが出来るわけだ。
矢三郎の無理筋を受けたのも、『狸程度には借りを作りたくない』というナチュラルな差別意識故だろうし、それが人間出身の弁天を下に見る態度にも繋がっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
血縁を否定するくせに、生粋の二代目であることがアイデンティティの大きな部分を占めているのだ。天狗マジめんどくせえ。
二代目と鏡写しなのは弁天も同じで、天狗になりきれないからいかにも天狗な増上慢で暴れまわりつつ、狸相手には『狸鍋だって食べるわ、人間ですもの』と言い張る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
純血と新参、どっちの岸に身をおいても、コンプレックスはこじれて自意識を束縛する。本当に天狗というのは面倒くさい生き物である。
天狗でありながら、天狗でい続けたくない二代目。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
人間として生まれつつ、天狗になってしまい、天狗であろうとつっぱりつつも、人間にノスタルジーを覚えている弁天。
狸が太刀打ちできるはずのない感情の怪物たちが、境内で出会ってしまった。その状況をつくったのは、他でもない矢三郎だ。
軽快に状況を引っ掻き回し、化けの皮の厚さで都合の良い結果を連れてくるトリックスター・ネゴシエイター。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
矢三郎の自己認識がけして虚像ではないことを、今回の二代目との交渉は証明した。しかし、狸に出来ないことが厳密にあることはこれまでも描かれてたし、今回の衝突でも証明されている。
弁天相手には吹き飛ばされない面の皮が、海星を目にした瞬間ぶっ飛んでしまうところに、狸と天狗とはまた違う、女と男の距離感を感じたりもする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
矢三郎は、そういうものも巧く乗りこなさなければいけない。兄は泥まみれで向かい合って、赤いマフラーを手に入れた。公の場では私情を外す分別もある。
そういう硬さや確かさがないことが、矢三郎の強みでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月4日
母が飲み込んだコーヒー、二代目が曇天に吐き出した紫煙、狸を吹き飛ばす弁天の天狗風。
色んなものが口と心を出入りする今回を受けて、矢三郎はこの窮地から何を飲み込み、何を吐き出すのか。天狗決戦の行方は。
来週も楽しみである。