有頂天家族を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
最後の平穏、冬至る前の小春日和。のんびりと過ぎていく逃亡生活、静かに進んでいく次男の四国への旅、順風満帆な偽右衛門就任前夜。
当然それは嵐の前触れであり、クライマックスに向けて事態は静かに、しかし確かに進んでいく。破滅の予感を、狸たちだけが知らずにいた。
というわけで、全体的に穏やかに進んでいく回。しかしそこに秘められた不穏さは、二代目と弁天の間を上手く泳ぎきれず、赤玉先生に破門されたところから始まった時点で、かなり表面化している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
天狗と狸と人間、天国と地獄を自在に泳いでいるはずの矢三郎だが、そうそう上手くは行かなかったのだ。
そも、すわ衝突か! と思われた境内の接触が弁天の退却で収まった時、彼女は『私は優しかっ"た"』と過去形を使った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
金曜会に乗り込み、天狗に口を挟む増上慢の阿呆が生きてこれたのは、弁天の気まぐれな、しかし確かな愛情に守られてきたからだ。しかし二代目を担いだことで、決定的な亀裂が入る
それは総一朗の代理として『ダメなオヤジ』を担当していた赤玉先生との縁が、顔を合わせないまま切れてしまうことからも分かる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
矢三郎を阿呆でいさせてくれた天狗たちの庇護が、ぷつりぷつりと切れていく。矢一郎が受けた『敵と同じだけ味方を作れ』という薫陶を、矢三郎は受けていない。
冬の気配を柚子や南瓜で匂わせつつ、季節は穏やかに過ぎていく。寒さよりもぬくもりが感じられる色彩の中で、世界を凍らせる弁天の歩みだけが、透き通って青い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
それは矢三郎の夢、もしくは妄想なのだが、冷え切った関係と心、それが生み出す未来を的確に予言している。阿呆は時折、未来を見抜くのだ
家を飛び出した矢二郎も、偽右衛門就任に挑む矢一郎も、穏やかな晩秋に包まれ、見守られているようにみえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
しかし冬の気配はそこかしこにあって、これまでお話を穏当に進めてくれていた呉一郎の化けの皮が、ちらりほらりと見え隠れする。何が本当で、何が嘘なのか。ジワジワと分からなくなってくる
矢二郎の四国巡礼も非常に面白い表現で、この後の展開を予測するように穴に落ちて、京都を出たのに井戸の中から蛙が空を見上げることとなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
全てが変わってより良くなったように見えて、過去の因業は未来に影を伸ばしている。矢二郎はなかなか、賢く化け切れはしない。
しかし思わぬ落とし穴にハマったことで、みすぼらしい金長神社の裏にある魔法の世界に、矢二郎は導かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
人間の姿では拍子抜けするほど狭い神社の奥には、無限に広がる天狗の座敷が広がっている。それはトンチキな蛙という本性に立ち返らなければ、踏み入ることができなかった領域だ。
何度も言うが、二代目の屋上にしろ弁天の別荘にしろ、『ありえるはずもない広大さが、とんでもなく狭いところに展開する』美術の不思議は、最高にいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
極小と極大が隣接する、シュールレアリスティックな魔法が舞台にかかっていて、アニメじゃなきゃ描けない夢がたっぷり詰まっている。素晴らしい。
穴から不思議の国に繋がったカエル顔のアリスは、褐色ロリータと怠け者に出会う。海星といい、次男はほんとロリ好みだな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
そして呉一郎らしき男。海星が言うところの『本当の兄さん』らしいオーラをムンムン漂わせる男も、魔法の国で出会った不可思議か、はたまた冬の予感か。
ココらへんが見えるのは、もうひとりの呉一郎が支える偽右衛門選挙の行方、そこで長男がどう動かされるか次第であろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
一体誰が化けているのか。矢一郎は『敵と同じだけの味方』を作れているのか。真実はさっぱり分からないが、しかしヤバイ気配だけは伝わってくる。冬が近い。
地獄から抜け出した天満屋が、海星と矢三郎を撃つ。特異の化け技を封じられる相手と一緒に捕まるところが、大ピンチを加速させているが、彼もまた『敵』である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
弁天、赤玉先生、金曜会、天満屋、寿老人。なるほど、矢二郎は阿呆に器用に踊りすぎて、腹を割って話せる『味方』を作りそこねた。
銃で撃たれて鍋の具に。これも阿呆の人生のどん詰まりではあろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
狸の分を弁え、人との繋がりを立ち、天狗は敬して遠ざける。そういうオーソドックスな狸の生き様を守っていれば、そういうことはなかったかもしれない。
しかし、矢三郎は人間も天狗も好きで、線引を弁えない阿呆なのだ。
たとえ味方がいなくとも、三人兄弟だけは傍らにいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
己の阿呆に追い込まれた窮地で、父のもう一つの言葉が頼もしく、そして危うく響く。それぞれがそれぞれの場所に旅立ち、それぞれの窮地に直面する中で、下鴨の兄弟たちはどのような連帯を見せるか。
案外、四男がジョーカーになるかもな。
順調で心地よい流れの中に的確に不穏さを混ぜ込み、クライマックスを告げる銃声に見事に導くエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
この暴発は意図されたものだし、矢三郎が阿呆として生きた結果の必然でもある。そういうのを納得させるために、阿呆でいたことで得られたものをじわりと追いかける。
そういう映像に一話使えるのは、なかなかリッチだなぁと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年6月11日
かくして不穏な夢のとおりに、冷たい冬が下鴨家に到来する。血で繋がった狸の縁、血故に反目する天狗の因縁。どう入り混じり炸裂するか、勝負は師走の二十五日。
呉一郎の正体含め、非常に面白くなってまいりました。来週も楽しみ。