サクラクエストを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
冬の足音が近づく間野山、太鼓も廃校もいまいち煮え切らない真希ちゃんも、ガワがあるのに中身がない。不器用な人たちがちょっとずつ言葉を使って、夢に中身を入れていく回。
丑松&国王、緑川一家の夕食、夕日の中の親子と、静かなダイアログに切れ味がある回だった。
今回は煮え切らない真希と家族を中心に、見えてきた終わりをじっくり縁取っていく回だったように思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
ぼんやりと見えている祭りの終わりが、具体的にどういうものなのか。廃校や太鼓という『中身のないモノ』を修復していく過程が、本当に欲しいものを浮き彫りにしていく。
それなりに失敗し、それなりに成功してきた間野山クエストが、真希を現状に縛り付ける鎖になってしまっている描写は、なかなかに面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
楽しいPTとだんだん仲良くなって、自分たちだけが共有する『何か』を積み上げていく過程は、夢破れた真希にとって心安らぐ成功体験だったのだと思う。
しかし第6話・第7話で確認したように、真希の中にはみっしりと、芝居への憧れが詰まっている。それは一度逃げ帰った東京に向かい合うことでしか解消されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
丑松がボートで『過去に向き合わざるを得なくなった』と言っていたのと、東京と間野山の中間点でウロウロする真希の姿勢が重なり合う。
丑松も真希も、最終的に背中を押すのは国王だが、その過程にはいろいろな人が関わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
千登勢さんが凄く分かりにくい言葉で『丑松リベンジチャンス! マジ頑張れ!!』と言っていたのと、緑川パパンの『昔はよく笑う子だった。役者頑張れ』というエールもまた、重なり合っている。
今回は真希を主役に据えつつ、これまで積み上げてきたもの・これから終わっていくものを横幅広く切り取る回だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
『外』から見れば怪談スポットでしかない廃校は、『中』から見れば生きている。ヨソモノが土足で踏み荒らしていい場所じゃないから、パパンは見回りを欠かさない。
空っぽで終わっているように見えて、ヒトの思いが空疎の中に詰まっている。蘇生を待つ太鼓も、由来を忘却された祭りも、蘇るときを待っている。いい感じなのに噛み合わない緑川家も、同じだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
『蘇生を待つ空疎』というモチーフ最大のものは、当然間野山そのものである。
空っぽに中身を詰めていく作業は、ひどくしんどい。太鼓の皮の張替えは10万単位で金が飛び、祭りの復興委員会はあくまで(仮)だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
なりたい自分を見つけられない国王も、一度見つけたローカルな自己実現にしがみつく真希も、迷いながら道を探っている。その先に、『桜の咲く頃』がある。
空疎を埋める作業は一人では難しすぎるので、色んな人が手伝う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
お歌を復活させようとするりりちゃんに、舞台人である真希が手を貸したように。
過去から逃げていた丑松が、国王に引っ張られる形で覚悟を決めたように
夢のカタチをみつけている真希の特別さを、国王が後押しするように。
そして最大の支援者が緑川家であることは、パパンの男ツンデレ黒帯な立ち回りでしっかり見えた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
あの『素直に好きだとはいいたくないが、良い人なのは判る』っぷりは良い。ママンに捧げるお歌をがなり立てながら、ゴキゲンで帰宅してくるシーン。前回の教授といい、エピソードゲストの切れ味が鋭い。
屈辱の象徴でしかなかったおでんを挟みつつ、家族の食卓が進んでいく。言い争いともエールとも、なんてことない日常とも大切な癒やしとも取れる、不可思議な空間。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
そういう白黒ハッキリ付けられない温もりこそが、空疎を埋めていくのだと、あのシーンは雄弁に語っていた。
面倒くさい父と姉に挟まれつつ、その衝突すら愛おしく笑い、姉の夢を後押しする弟。笑顔で朗らかに暮らしつつ、家族の手綱をしっかり握る母。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
家族の後押しを受けて、真希は役者の夢という『おおきなかぶ』を抜く。みんなだから抜けたものは同時に、真希だけのかけがえない夢でもある。
サンダルさんの演目が『おおきなかぶ』なのは、最終的に決断を後押しした国王PTも、もう真希の家族なのだ、というメッセージなのかもしれない。しおりちゃんが決断の場にいないのが意味深よな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
王国という現状に根を下ろす早苗、旅立ちの気配を見せる凛々子や真希。それぞれの終わりが見えてきた。
前回は集落の問題を追いかける歩みに、剣鉾が追いついてきた。今回は物語が始まる前段階で太鼓は手に入れてしまっていて、それをどう蘇生されるかが問題になる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
共通しているのは、モノそれ自体が目的になるのではなく、そこにどういう過程があり、想いがあるかが焦点、という姿勢だ。
同時に『祭器集め・祭りの復活』という形があってこそ、不定形の思いは方向性を手に入れ、実りある結末にたどり着ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
夢の『外側』も『内側』も、どちらか一方だけに価値があるというわけではなく、合い補うことで本領を発揮できる、掛け替えのない相棒ということなのだろう。
間野山に残るか、去るか。桜が咲く頃に、PTの夢のあとさきは形になっているだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
その決断自体は、価値でも無価値でもない。どちらの選択肢にも価値があるように、自分がよくわからない人々がダラダラ生きつつ、空疎に中身を埋めていくまでの奮戦を、このアニメは切り取ってきた。
その途中で色んなものを手に入れて、愛着と友情が生まれた。自分の中に何が詰まっているのか、それを生み出してくれたものが何なのかを忘れなければ、土地という実体を離れたとしても、故郷は常に側にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
多様性のある結論を導くための助走として、なかなか良いエピソードだったと思う。
今回真希ちゃんが歩いた、故郷と家族と自分を三角測量する道のり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
それは辿り着く場所、歩き方は違えど、国王PTの仲間、あるいは間野山という場所全てに重なり合う、共通の歩みだ。
過程自体から意味を発掘し、己を見対していくこと。そこから己自身で、己の進む道を見据えること。
物語が収まりよく終わるために必要な補助線を、キャラクター個別の問題を追いつつしっかり引くこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
それはこの、地道でありふれた物語がキラっと輝くために、絶対に必要な物語的手管だろう。予感は期待を生み、期待がかなえられるからこその大団円と満足である。語調がさりげなくて豊かなのが良い。
神輿の飾りが完成する『桜の咲く頃』は、国王が国王でなくなる頃合い、物語が終わるタイミングだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年8月9日
そこを見据えつつも、来週大事なのは真希の決断の始末である。旅立つことを選んだ彼女が、胸を満たした家族と故郷への思いを武器に、東京でどう戦うか。奮戦を期待したい。頑張れ、真希ちゃん。