ボールルームへようこそ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
ド素人主人公、ついにやってきた見せ場。他人の動きが見えすぎる男が、ファイナルソロで見せる彼だけのダンス。咲き誇る美しい花と、消えていく額縁。
1クール目の達成点とも言えるダンスを24分どっしり演出し、その迫力と異質性を叩きつけてくるエピソード。
というわけで、暴走したり覚醒したり、色々凸凹道を歩いて多々良-まこペアがたどり着いた境地が今回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
『見られる』競技ダンスの特権に快楽を感じていた、『誰にも見られない』少年。そんな彼が選んだのは、自己を滅却しパートナーを極限まで目立たせる、異形のダンスだった。
清春が親切に教えてくれたように、今回の勝利条件は『まこを勝たすこと』である。『多々良が勝つこと』ではない…のだが、ダンサーは基本エゴイスト、自分が見られる快楽が巨大であることは、ここまでしっかり演出されてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
乗り越えがたい承認の快楽をあえて捨て、多々良はまこのためだけに踊る。
競技として勝てなくても、勝負としては勝ちに行く。このズレが、ド素人のリーダーがリーダの立ち位置を捨て、異端のダンスを踊りきる展開とシンクロしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
リードが先に立ちフォローが後に着く競技ダンスの常識は、ド素人のちには馴染んでいない。控えめで優しい人格そのままに、後ろに引く踊り。
それでも周囲を引き込み、ダンスとして成立させてしまうのは、多々良の才覚をフル動員した決死のパフォーマンスだからだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
憧れの対象をえぐる程に『見て』盗み、己の動きに変えてしまう目の良さ。身体言語を肌で受け取る感受性。ただ優しいだけではない異才が、ギリギリフロアを成立させている。
前半は多々良がどのような戦術を取り、どのように踊りを成立させているかがメインを占めるのだが、彼が己を手放していくに従い、画面の中心にはまこが居座っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
多々良によって開花させられたエロティシズム、強烈な自己主張。それは兄が対等の存在として望みつつ叶えられなかった夢でもある。
ガジュの強烈なキャラクターを跳ね返す強さが、多々良に出会う前のまこにはなかった。その柔弱さがガジュを追い込み、しずくを横からかっさらう暴挙に走らせもした。被害者は加害者でもあったわけだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
ダンス競技者としての致命点を、まこは多々良と踊る中で修正していく。それをガジュが『見る』。
ボディライン、上気した表情、潤んだ瞳と唇。まこに秘められていたエロティシズム(それは生の躍動であり、身体表現たるダンスの根幹でもある)と同じように、ガジュの表情もこれまで見せなかった、険しさのない柔らかいものになる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
まこが表現の中で問題を解決して咲いた花が、ガジュを癒やしていく
こんがらがった結び目を解くような、変化の伝播。一言も言葉は使わず、だからこそ言葉よりも雄弁な身体の言語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
ダンサーゆえの共感性とメッセージを交換することで、妹は兄に己の成長、あの時言い返せなかった答えと主張を伝えていく。必要だったのはパートナーの略奪ではなく、コミュニケーション。
『負けるが勝ち』、あるいは『負けても勝ち』な普通じゃない対決が求めていたのは、まぁそういうことである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
主張の強い赤城賀寿という競技者に、対等に向き合えるほどの主張を赤城まこが手に入れること。ダンサーとして成長すること。パートナーシップを再構築すること。
エピソードは答えとピークにたどり着いてしまった感じもあるが、それを素直に受け取れるならこんなことにはなっていない。賀寿もまた、沸騰させられた血をフロアにぶつけ、ダンスへの誠実と熱意を証明しなければいけない。言葉ではなく踊りで、誰かを過剰に意識するのではなく、己と向かい合って。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
一足先にまこをそういう境地まで引っ張り上げた多々良のリードは、しかしまこと同じ袋小路に飛び込んでもいる。パートナーだけを輝かせ、自分がないダンス。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
その優しさは美徳であるが、同時に嘘でもある。だって、『見られる』快楽は多々良を真実に導いてきたし、それを求めて踊ってもいるのだから。
この歪さの解消は今後、長い時間をかけて踊っていく厄介なパートナーだ。原作ですら、まったくもって解消されてはいない。それはこの先、また別の話として進展していく問題だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
なので、今はまこが新しいステージに進んだことを寿ぐ形になる。それが他の人を解決に導きもするしね。
じっくり時間を使ったことで、多々良のダンスが異質ながら観客を引き込み、評価される領域まで上がってきたこともよく伝わってきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
具体的には、モブのリアクションがしっかり言語化され、演出されている。専門用語の解説よりそっちを優先したことに、何を描きたかったのかがよく見える。
多々良の奮戦も人の目を引きつけていたが、やはり圧巻は咲き誇る花、赤城まこだ。ケレン味たっぷりの花びらの演出はとても綺麗で、主張に満ちたものだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
ああいう映像の支えがあると、彼女がたどり着いた(多々良がたどり着かせた)境地に説得力が出る。言葉だけではない無言の重さがある。
あそこまで咲くことが出来たのだから、賀寿もわだかまりを解き、妹を一人前のパートナーとして認めることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
しずくもモヤモヤした感情を思い切りぶつけるに足りる相手と認め、玉と砕けて虚心にやり直すことが出来る。
こんがらがった状況があるべき位置に戻る動因が、しっかり描かれたのだ。
そこに多々良はいない。多々良が『どうなりたいか』という問題は、今回は解決されないからだ。でも、大切な誰かのために己を押さえ、言葉では解けないしないまこ(達)の問題を解決に導いたのは、消えてしまったリーダーだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
汗塗れになってそういうことが出来るやつは、偉い。本当に偉い。
ボーっと見ているようで、惚れた男の晴れ舞台に血が沸き立っている清春の描写が面白い。お前ホント多々良好きな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
様々な人を巻き込み、ワルツは終わり踊りは続く。次は圧倒的な実力を持つ歪なペアのターンだ。あの踊りから何を受け取り、何を返すのか。対話はペアの間だけで成立しているわけではない
濃厚な感情を載せた視線と身体情報が、ビリビリとやり取りされ人を変えていく。その張り詰めた緊張感、変化のダイナミズムこそが、このお話最大の魅力だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年9月4日
賀寿としずくのダンスは、そういうコミュニケーションの一端を見せてくれるはずだ。来週も非常に楽しみである。