Infini-T Foreceを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
ヴィランとヒーローの対峙回第三弾は、新造人間 VS 鋼鉄の覇王。
鉄の悪魔を砕くため、肉親の手によって人間の姿を捨てた二人の運命は、交錯しつつも反発する。
心に秘めた願い、歪んでしまった思い。キャシャーンがやらねば誰がやる。
お話の圧縮率を高め、色んなことをテンポよく勧めていく横幅は今回も健在。だが、軸はこれまでと同じく、英雄と悪漢の共通点・相似点をしっかり描写し、現代的で虚無主義なナル・ヒーローな主人公、笑に照射していくことにある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
過去作を最大限リスペクトしつつ、主役の物語燃料に使い切る姿勢が良い
人と人。必ずどこか似ていて、どこか違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
父の手で新造人間へと改造され、その父を失ってしまったキャシャーンと、父に焦がれつつその不在に憎しみを燃やす笑の姿は、よく似ている。
違う部分は、キャシャーンの物語が結末を迎えているのに対し、笑の物語は今正に現在進行系である、ということだ。
正義を貫くだけの自分も、世界を守るだけの愛もない…と思い込んでいて、その心の壁を突破できない笑が、自分の本当の願いに素直になれるまでの物語。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
それが彼女を主役に据える、Infini-T Foceのメインシャフトだ。ヒーロー達は既に終わった己の物語をそこに注ぎ込み、エネルギーにする
こういう構図だとどっちかに偏りが出るものだが、初期設定の上手さと過去作リスペクトに助けられ、両方が両方を押し上げる構造(少なくとも、その準備)は出来ている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
44年前に放送されたキャシャーンの物語。そこで失われた父が、今正に失われつつある笑の父への思いを照らし、陰影を付ける。
タツノコヒーローを取り巻く因縁は重く、苦しい。テツヤだけでなく、ケンだって父の不在を恨み、それをぶつける前に死んでしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
身を切るほどの後悔を既に経験しているからこそ、若人が同じ苦しみを味わうのは止めたい。
だが他人にできるのは、あくまで決断の手助け。そこで踏みとどまる節制。
呪わしい鋼鉄の身体が、毒象さんの毒ガスに倒れない幸運を呼んできたり、今回は(も)対比が上手いアニメだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
ラジャ・カーンの目指す楽園は、醜い自分の姿を他人に押し付ける悪平等。自分の経験を踏まえつつ、決断の尊厳を尊び踏みとどまるヒーロー達と、面白い対比になっている。
ここまでのヴィランズの描き方を見ても、彼らがヒーローの鏡となるべく誂えられているのはよく分かる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
友情を望みとするタケシと、孤独な完璧主義者ダミィ。
種を滅ぼし種を守るジョウジとベル・リン。
鋼鉄の身体、父との因縁に縛られたテツヤとラジャ・カーン。
英雄が間違えかけ、押しとどまった一線を超えてしまった(そして戻れるかもしれない希望を秘めた)存在として、ヴィランを描く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
正義は悪にもなり、悪は正義へと変わりうる危うさを物語の根本に据え、激しく対決させることで、メインテーマも善悪の間で悩む主人公も、しっかり目鼻がついていく。
自分の物語で『楽園』を求めていたキャシャーンにとって、ラジャ・カーンの言葉は魅力的だ。笑と同じように。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
しかし彼は決定的な一線を越えて、父への憎しみを世界に撒き散らし、(おそらく)人間を奇っ怪な動物へと変える。世界から投げつけられた呪詛を、世界へと反射する。
そうなってもおかしくない過去を背負うからこそ、キャシャーンはその一線に踏み込み、ラジャ・カーンと闘う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
既に果たされてしまった決断、それに縛られる悪もまた、やり直しが効くのだと。そう信じることで、鉄の体を恨まずに戦える。
踏みとどまる善もあれば、踏み込む善もある。ウザくて結構!!
テツヤが笑と同年代の子供であることは、これまで細かい芝居の中で描写されてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
今回もラジャ・カーンに引き寄せられつつ、ケンのちょっとした助けを足場に道を定め直す『揺れ』が丁寧に描写されていて、キャラの要素を大事にしていると感じた。それは、永遠に子供でなければいけない哀しさを孕む
世界から投げかけられた呪いを、理不尽な運命を、鋼鉄の醜い身体を、失ってしまった父を。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
溢れかえるほどの憎悪に飲み込まれず、強く正しく生きろ。
キャシャーンの叫びはとても苛烈で、普通なら正しすぎて飲み込めないくらいだ。これを食わせているのは、ラジャ・カーンの豊かなキャラ性が大きい。
先週の強力なヒキを裏切らず、いい具合の安元魅惑ボイスで理性的なところを見せる、異形の怪人。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
パット見だけで『キモいな』『悪そうだな』と判断してしまった偏見は、彼を排斥した世界と同じもの。視聴者が誘導される罪悪感を巧く活かし、裏切り、カーンの過去が明らかになり、彼の人間が見える。
これまで隠されていた『中の人』を写すことで、ヴィランの人間性が可視化される展開を分かりやすくしているのは、とても良い演出だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
怪物の中には人がいるし、人は怪物になってしまう。怪物になることでしか戦えない悪がいて、怪物になっても善を貫くのは、とても難しい。
親を愛する人と、親殺しの怪物。その狭間で揺れる子どもたちとして、笑もキャシャーンもカーンも描かれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
しかしカーンは歪な楽園を心に作り上げ、それを世界に押し付けている。一旦視聴者にも共感を作ってから、『あ、やっぱこいつアカン』と思わせる起伏の作り方が良い。
カーンの危険性を暗示するべく、人と触れ合う手は後ろに縛られ、尖った触腕で接触してきたり、真っ赤なタバスコが血のように白いテーブルに広がったり、自分のいいように情報開示を制御したり、交流パートでも暗示を巧く使っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
良いやつとして描きすぎると、対決ん時に心が迷うからね。
歪んだ心を反映した、鋼鉄の体をさらけ出し、キャシャーンと激しくぶつかるカーン。金管楽器を融合したガルーダのような異形が、これまでのヴィランとはまた違った戦闘を盛り上げる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
敵デザインにヴァラエティがあって、皆かっけぇのほんと良いよなぁ。単純に体温上がるし、暗喩としての機能も強い。
鉄の悪魔を叩いて砕く。キャシャーンが電光パンチでぶっ叩くのは、自分の歪んだ鏡像であるカーンであり、己の中に秘めた悲しみであり、笑の未来を閉ざす絶望。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
ここまでクールな側面を強く見せていたテツヤが、過去と現在と未来をアツく吠える決戦は、非常に良かった。
『アボガドパスタの味を、自分で確認したい』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
これまでの食事描写がズバッとハマる、コンパクトで哀しい、良い願いだと思う。
人間の味覚を失ってしまった少年は、仲間が美味しいと言ってくれたパスタの味を、自分で確かめることは出来ない。でも、だからこそ確かめたい。自分が人であると。
その願いはカーンが置き去りにしてしまった過去にもつながっているし、すっかり不貞腐れてしまった笑にも通じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
皆親に捨て置かれた子供なれど、その親がいなければ己もない。愛憎は輪廻を描いて出口を探す凶暴な牙だ。
ここら辺、大野さんが構成やった”スイートプリキュア”にも通じる桎梏やな。
不在の父を強く求め、愛し憎む笑の願いを叶えるように、ケンは今週もアツく踏み込み、正義と愛を叫ぶ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
カーンの殺害依頼を壁にして『ヒーローと殺人』というテーマにも目配せしていたのは、このアニメらしい欲張り感だ。やっぱそこは大事。カーンを殺すのではなく捕らえる解決にも繋がるしね。
『キミに未来はない』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
カーンの呪いを即座に否定してくれるケンも、笑は素直に受け入れられない。父親的存在を心底求めてるのに拒絶の壁が分厚いの、マジ面倒くさいとけどもしょうがねぇ。
笑ちゃん、おそらく過去自体が存在してないので、ニヒリズムに抵抗する材料が極端に少ないんだよな。
ここら辺は既に物語を終え、レジェンドとして幾度も再話されるほどの『過去』を背負ったヒーロー達と、面白い対比だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
蓄えた思い出と力があるから、諦めずに闘うことが出来る。それなら、それを持っていない存在は闘うに値しないのか。ニヒリズムに負ければ良いのか。
そういう笑の叫びに答えてコードがうなり、ダミーが再登場して超常パワーを奪う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
常人とは違う力があるから、ヒーローはヒーローなのか。力を奪われた英雄は、まだ英雄でいられるのか。ベタながら最重要なテーマに真正面から切り込むのに、ダミーのコピー能力を活用してきたのはシビレた。
ベル・リンの危機に、ジョージが素裸で突っ込んでいったように、ケンはコスチュームを奪われても闘うだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
というか、力を奪われる一連の流れで既に、生身のまま笑を庇ってるわけだしね。それは第1話からずっと変わらない描写で、答えはある意味、既にでている。用意のいいアニメだ。
しかし準備は本番で思いっきり爆発させて意味を持つわけで、六話にしてタイトル回収の勝負回で何が描かれるか、非常に楽しみです。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
前半で初期配置の物語をテンポ良く終わらせて、いまだ描かれざる物語を後ろでやる構造、マジ欲張りだし成功もしてるのほんと凄いな。
未知の展開で大事になるのは、虚無の住人である笑のヒロイズムだと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
マリアちゃんのヒロイン力を活かし、このままではいけない理由、心の中の虚無に立ち向かう足場をちょっと構築してみせたのは、すごく良かった。
愛に報いたいと思えるなら、笑は人間なのだ。いや、クソ女ではあるけども。
『父』なる存在への複雑な感情を描いた今回。これを助走路に、不在の父とそれを補う英雄が交錯する次回へと続く。非常にいい流れだと思います。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2017年10月31日
毎回良い粒立ちで、ヴィランとヒーローの対峙を描いてきた道もついに土壇場。大鷲の健とZが激突するだろう次回、非常に楽しみです。マジおもしれぇな。