キラキラ☆プリキュアアラモードを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
闘いは終わった…取り戻した平和の中で、戦士たちは各々の道を選び取る。しかしそれは、想い出の場所を去る決断と同義だった。
みんなのため、仲間のため。いちかは相変わらず『イイコ』の仮面を被り、己の心を押し殺して原点にとどまり続ける。
そんな薄暗い一年後から始まる、プリモードラストエピソード。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
宇佐美いちかというキャラクターの薄暗い複雑さ、母と子の関係、そこまで特別でもないプリキュアの存在感と、非常にプリモードっぽい最終話だった。
しっかりコアの部分を貫通させて、闇の中から前に進むお話で終わるところも含めて。
さて、各々の道を見つける個別エピソード(第41-第45話)で意図的に省かれたいちかが、自分の道と向き合うお話が、最後の物語として用意された。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
第31話でも描かれたように、いちかと母・さとみの関係は複雑怪奇であり、光と闇が入り交じる戦いの軌跡と似通っていて、より深い。
冒頭、地球儀の周囲に母の写真を配置するいちかは、母不在の世界で自分が掴み取った居場所、キラパティにも同じように写真を配置する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
愛する母を模倣することで、母と同化するような仕草。あるいは母の一番にどうしてもなれなかった欠落を埋めるような行動。
それは無邪気なあこがれとして描くには、あまりにも薄暗い。主人公・いちかを描く時、常にこの作品の筆がすくい取っていた薄暗さが、あの代償行為にはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
しかし同時に、プリキュアとして戦ったからこそ、いちかは自分の夢に出会えたとも言える。
性別も立場も違えど、同じく『イイコ』として父母の望む善(あるいは悪)になりきろうと決めたエリシオ。彼と殴り愛のコミュニケーションを経て託された希望は、いちかのなかでとても根深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
『みなが手を取り合える世界』が夢でないことを、生涯をかけて証明する。それが宇佐美いちかだけの望みだ。
それが、国境なき医師として世界を飛び回る母と重なったのは、けして偶然ではなかろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
愛ゆえに、子供は親の背中を追いかけ真似をする。同化し、望みを果たして褒められようとする。いちかが選び取った道には、『お母さんといっしょになりたい』という幼い願望が、長い影を伸ばしている。
しかし、さとみの第一の夢はいちかではなく世界だ。それは先週、灰色の世界で心を取り戻した時の台詞からも判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
愛に値段は付けられないとはいえ、自分と同質化したいほどに焦がれる娘を置いて、さとみは世界に出ていく。いちかに流れる血も、運命の戦いも、同じ道を求める。
プリキュアとしての戦いが少女を大人に変えて、夢に向かわせる。幼年期を守ってくれたキラパティに背中を向けて、自分が一番やりたいことに向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
他のキャラが歩いた道を、今回いちかも歩く。プリキュアなのに、プリキュアであり続けることが一番ではないと明言してしまうあたり、凄いシリーズだ
(とはいうものの、ここら辺の継続性と変化はシリーズごとに判断の異なる部分だし、名前を共有しつつ別の物語である以上、当然でもあると思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
個人的には、プリキュアであったからこそプリキュアでなくなることが出来る、という運び方は、ある種の健全さと潔さを感じてとても好きである)
さて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
『みんな』のため、『誰か』のために自分を押し殺すいちかは、相も変わらず『イイコ』のままだ。
そんないちかが大好きなペコリンは、しかしいちかの一番ではない。いちかが、さとみの一番ではないように。だから母たちは、娘を故郷に置き去りに世界に飛び出していく。
その残酷さが再演された時、いちかは凄くショッキングな表情をする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
気づけば背丈が伸びて、幼い誰かに愛されるようになって、でもその愛が自分らしさを縛りもする。どこにもいけない重たさの中で、どんどん世界が閉じていく。
あの瞬間多分、いちかはさとみと同じ領域にまで上がり、『母』となった。
愛する者の最愛になれない辛さを噛み締めつつ、その楔になってしまっている自分を嘆く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
ペコリンはかつてのいちかであり、いちかはかつてのさとみとなった。
これはキツい。プリキュアは泣いている子供を守るものなのに、最も身近な子供を泣かせてしまっている。それでも旅立つのか。己を殺すのか。
そんな出口の無さを、一年かけてスイーツの技量を学び、プリキュアにもなったペコリンは追い抜いていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
第31話でいちかが母に、自分だけが見つけた夢のカタチを突きつけるように『私プリキュアになったの!』と言い放ったように。母がいなくても大丈夫な自分を強がる姿を、晴れやかに見せる。
それは嘘だ。誰もが愛する者の最愛になりたいと願う。でもなれないと知った時、自分の中の衝動と秤にかけて打ち捨てられる時、世界全部を巻き込むほどの痛みと憎悪が生まれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
そこに負けたのがノワールだ(と断言できるよう、やっぱ茶ンと尺使って過去編やるべきだったわな)
その辛さを抱え込んだまま、ホイップとペコリン、二人のプリキュアは『母』の前に立つ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
お母さんが好きだから、お母さんの真似をするけど。でも私だって、好きなもの見つけたよ。だから、大丈夫。だから、自分の思いに素直に、世界に向かって飛び立って、と。
それは嘘だ。だけど、凄く強くて優しい嘘だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
義務感に縛られ、誰かのために心を押し殺している人を開放して、夢に向かって飛び立たす嘘だ。
そういう風に激烈な愛を飲み込めた時、彼女達は大人になるのかもしれない。そう言えるようになるために、プリキュアに変身し、戦うことになったのかもしれない
そう思わせる、母子の地獄の再演であり、そこからの突破であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
空気を読んでしまう、『イイコ』を演じてしまう賢い子供の哀しさを捉え続けた物語が、このテーマを掘って終わるのは凄く正しいと思う。
宇佐美いちかはずっとそういう子で、世の中の『イイコ』は多分、だいたいそういう心を抱えている
自分が閉じ込めていた『大好き』を、いちかに抱擁されて開放したひまりが、義務感の地獄に囚われたいちかに真っ先に飛びつくのが、僕はとても良いと思った。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
あんだけ人を救ってきたんだから、救われてもいいわな。(でも、あの跡のスピリチュアルな演出は、やっぱ良くないカルト臭漂うわな)
エリシオと戦って見つけた理想が、母の残影と同じくらいいちかの未来に影響を及ぼしたこと。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
ある種のおままごと、幼年期の夢の舞台だったキラパティが、『大人』になったあともいちかの夢を支えているところも、要素を巧く拾って大団円に持ち込んでいた。ああいうの好き。
ラストの露骨なノワール&ルミエル転生は、余韻のある良いオチ…なんだが、それを最大化したければやっぱノワール周辺をロジカルに掘っておくべきで、ここは明確な弱点だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
ルミエルもまた、衝動と正しさのバランスを上手く取れなかった『イイコ』だったと見せてると、話が分かりやすかった気もする。
ラスボスが長老のボディだったのは、なんつーかプリモードっぽい展開であった。一年放置されてたら、そら悪霊化もするわなぁ…。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
展開の犠牲となって死に続けた長老に、最後に詫び状書く珍妙な律儀さを褒めるべきか、そもそも展開の犠牲にするなと怒るべきなのか。なんともプリモードである。
しかし最後の最後で、ワリを食い続けた話の調整役、踏み台頑張った『大人』に報いる形になったのは、やっぱ良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
死にっぱ(であることすら女児アニフィルターで検閲され続ける)だと、やっぱ目覚め悪いからな…ラストバトルの敵役にする必要があったかは、正直悩むが。すげーなマジ。
かくして愛の楔は解け、少女たちは一年踊った狭い舞台から飛び立っていく。時間は更に進んで、それぞれの職業、それぞれの『大好き』は別々の場所で光り輝く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
それはあんまベタベタしなかった、キラパティの仲間の物語として、嘘のないエンドマークだと思う。みんなそういう子だったと思う。
色々穴はある。中盤いちかに話の真ん中を寄せすぎて、残り4人があんま掘り下げられなかったとか、それをひっくり返すほどの横の繋がりが後半出るわけではなかったとか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
ゆかあきはウラネプの同人誌やりたいだけだったんかい、とか。ペコ公にもうちょい役割与えなよ、とか。
しかし宇佐美いちかという、明るさを装いつつその実無茶苦茶暗いキャラを主役に据え、人間の薄暗い感情を上から否定せず、光と表裏一体の身近な存在として書き続けたのは、1年の芯として良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
そこで『浄化』しなかった結果、悪役連中も、性格ひん曲がったまま生き直せたし。
スイーツというテーマを一種の共有技術と捕らえ、無力どころか他人を踏みにじる側にすらなる妖精達も、自力で世界を救済できる所に引っ張り上げたのも、結構好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
『そこに芯を入れたければ、ペコ公もうちょい優遇しろ』という声は否定しない。バランス感覚が優れた作品では、けして無かった。
アニマル要素も正直デザインモチーフだけになってたし、肉弾戦禁止も足かせ以外の仕事は正直しなかった。色々挑戦して、色々失敗したが、それ以上に成功している部分も、多数あるシリーズだったと感じる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
それで良いし、それが良いんじゃないかなと、僕は思うのだ。
プリキュアとして出会って、手を繋いで別れていく物語の中で、『親子』がディープに掘り下げられたのは非常に好みだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
さとみといちかとペコリン、ノワールとルミエルとエリシオ。親(あるいは世界)の期待を叶えようと己を押し殺す、正義と悪の照応は、構図として綺麗だ。
まぁエリシオをいちかのシャドウとして配置するなら、彼は早い段階で出てきてもっと接触する形のほうが、スマートではあったかもとは思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
後半幹部として勝負の構造を維持し、プリキュアの心を切開してカウンセリングし、クライマックスでの壁役を略奪しと、本当に頑張ってくれただけに。
とはいえ、終盤の作りがかなり好みの所に収まってくれたので、全体的に満足度が高いというのはある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
あそこでキッチリ自分を掘り、道を探ったことが、皆バラバラになりつつ繋がっている結論を支えていて、充実感のある終わりになった。終わり良ければ全て良し、かなぁ。
誰かを救い、世の中を善くしていくヒロイズムは、プリキュアに変身する異能ではなく、愛と勇気と友情と、薄暗いカルマを切り捨てない寛容さから生まれれる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
スイーツの技術に足場を置くことで、これが言えたのはヒーローフィクションとしてはなかなか良かったと思う。正義は学び、伝承できるのだ。
いちご坂の狭い世界、魂の根っこで繋がるほど激烈じゃない感情に嘘をつかず、あんま話しのスケールを大きくしなかったのも、個人的には良かったと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
ローカルな話に宿るペーソスが、作品に可愛げを与えてた部分は多々あると思うのだ。のんきな話だったのが、僕には良かった。
多様性を描いてきた以上、キラパティから離れプリキュアから卒業していくエンドは一つの必然であるし、かといってヒーローだった日々が消えてなくなるわけではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
ペコ公が想い出の詰まったキラパティを、義務感ではなくエゴとして『自分のお店』として継承し、いちご坂に残るラストが好きなのね。
一年分の思いが詰まったキラパティは、いちかが自分の夢を叶える魔法の杖として、荒廃した世界に持っていった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
魔法少女の力とコスチュームをまとわなくても、あのとき見つけた夢の続きが、現実に輝いている。『プリキュアを辞める話』として、やっぱこの終わりは好きだ。
それは『イイコ』だった宇佐美いちかが、自分の願いと世界への義務をシンクロさせ、よりよい未来に漕ぎ出せたからであるし、そのことに『敵』も含めたプリキュアの戦いが大きな意味を持っていたからである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
そうやってヒロイックな戦いを、暴力以外の者に広げる試みには、やっぱ成功したのではないか
色々穴はありつつ、少女がヒーローとなり『イイコ』を止め、少女自身を見つけて世界に巣立っていく物語として、やっぱ好きな物語である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
一年間の長丁場、大変お疲れ様でした。キラパティの少女たちが見つけた未来が、これからも輝いていることを望んでいます。ありがとうございました。
追記 書きそびれた雑感
プリモード追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
HUGっと! との引き継ぎ要素は、巧く次回作への期待感を高めつつ、雰囲気も楽しく見せつつ、いい具合に乗りこなしたと思う。
『肉弾戦禁止がなんぼのもんじゃい!』とばかりに重いロー入れた所で、ひとしきり爆笑したが。今度はステゴロだ!(1年ぶり13回目)
あんだけ才の無さに悩んでたジュリオが、成長して姉貴と同等のパティシエとして脚光浴びていたのは、相当ありがたいエピローグだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
『非才や無力は、必ず補うことが出来る。諦めず頑張れば、絶対報われる』という綺麗事を、あんま大声ではないがずーっと言ってたのは良いことだと思う。ペコ公とか
あとみんな成長した姿(特にあおちゃん。水嶌め…)ビブ公が全く老いてないのがちっと哀しくて。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
大人を通り越して老人になり、この世を去っていく瞬間でもビブ公は少女のまま、時間に取り残されていちご坂にあり続けるのかなぁ…それもまた道か。ノワール様の罪重くねマジ?
やっぱサブ(特に悪役とおっさん)がチャーミングだったのは、点数高くなるデカい足場だなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年2月2日
口と性格の悪い連中がそのまま味方に入ったことで、『闇は光、光は闇』つー題目が身近になって、飲み込みやすかったと思うし。
オッサンにばっかりモテてたひまりんの話が、通しで見ると統一感あって好き。