イマワノキワ

TRPGやアニメのことをガンガン書き連ねていくコバヤシのブログ

スロウスタート:第7話『ぐるぐるのてくび』感想ツイートまとめ

スロウスタート第7話を見る。 シェンツ先生が『見てないやつは”モグリ”』と言ってきた(誇張)ので取り急ぎ見たが、見てないやつはモグリだわ。 前のお話を抑えていないのでざっくりとしか言えないが、舛成コンテとリッチな作画が最高の噛合を見せて、重い話を支える湿度と存在感を作ってきた。

色々凄いんだが、単純な画の作り、重たい象徴を細やかな作画力、綺麗な光の使い方でサラッと見せる料理法の妙味が、まず目につく。 キレイな女たちの、キレイな感情にふさわしく、キレイなアニメを24分仕上げる。凄まじい。画の下支えがあって、陰影の深い感情の重なり合いがどっしり映える。

先生とえーこの分厚い感情(作者が咲部キャプの偉い人だと知って、色々得心がいった)が目立つし、実際その描画の解像度はとんでもないことになってる(コーヒー飲むシーンの、ストールが造る細い影、そこを乗り越える瞬間)が、かむりやはなへの感情投射も見事に果たしていた。

ヘアピンはモテるえーこの撃墜マークであり、彼女の強さ、豊かさの象徴だ。あらゆる人が愛を捧げ、えーこはそれを誇る。 そこから出れる特権は、指輪を選んだかむりと、そっけないクリップを差し出した先生にある。

クリップはハートマークに折りたたまれ、えーこの特別な恋心を反映した特別な象徴になる。しかし、先生はあくまで『ヘアピンの一種』を送った。 かむりは『ヘアピン』から唯一出る。えーこが何を与えられ、何に飽きているかを把握し、そこから一緒に抜け出たいと思っているのは、彼女なのだ。

かむりにとってはエンゲージリング、えーこにとっては小指を飾るアクセサリ。指のサイズは、相互の愛情がいかにすれ違っているかを反映する。 えーこが欲しいアクセサリ、自分の真心を込めた装飾品は、先生の旨を飾るネックレスである。それは赤心を映して青い。

Aパートの細やかな作画から感じ取れる、圧倒的強者としてのえーこ。高校生とは思えない対応で酔っ払いを処理し、適度に距離を取ってプライベートに踏み込める余裕。 それが、最後の最後で決壊する。その瞬間を際だたせるために、あのヌルヌル作画はある。

余裕を壊して、素っ裸の自分のまま駆け寄ってしまうような。撃墜マークを飾る百合のエース・オブ・エースから、撃墜されるただの獲物になってしまう、特別な相手。 そういう無防備さを目撃してしまう特権も、はなにはある。秘密の告白は、完全にアウティングの文法だ。

そこで交換されたのが、恋なのか自己実現の喜びなのか相互理解の歓喜なのか、このアニメは区別しない。 ヘアピンで飾られていない弱いえーこを、全ての感情を飲み込んで共有してくれる距離感を、はなは与えらてしまう、また受け止めもする。それは友情の喜びに満ちている。

そういう感じの話であった。 OPで垣間見える肌触り、こう言って良ければ『いかにもきらら』な仕上がりとは異質な解像度が、多方面に放射される感情を丁寧に受け止め、操作し、一つの大きなうねりを作っていた。巧すぎる。 一話だけ摘んだので不誠実で的外れな感想だが、まぁ凄い。圧倒的だ。

あ、カウンターでの緊張感のある戯れを切り取る時、一切BGMを外して『ナマの女と女』がむき出しで殴り合う感情を『音』で見せてくる演出、マジで二億兆点です。 戯れが終わった瞬間、『いかにもきらら』な音入れて緊張感抜くあたり、完全に掌の上。巧すぎる。