3月のライオン 第22話を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
散る花は恋の葬式。去る人、残る人の表情を水彩で切り取りつつ、季節は前に進んでいく。桜の花と春の日差しに見守られつつ、景色はいつもどおりに柔らかく、しかし着実に時を刻んで、前へ。
長いアバンと、青春の甘酸っぱさに満ちた本編。このアニメらしい最終回でした
というわけで、成長を果たした零くんが幸田家に別れを告げに行くアバンと、ひなちゃんの甘酸っぱい青春の終わりと始まりを切り取る本編、大きく二つに分かれる最終話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
アバンの緊張感が、本編でほぐれていく緩急の付け方がなかなかに面白く、しかし共通するテーマもあって、面白い作りだった。
アバンは尺調整と言えば尺調整、全然絵が動かない手抜きと言えば手抜き…なんだが、そうは言わせない圧力と詩情に満ちて、非常に先鋭的だった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
横長の画面、動かない絵、島本須美の圧倒的朗読力。普段とは違うジャンルの『アニメ』を、最後の最後に叩きつけてくるのが挑戦的で、このアニメらしい。
おそらく幸田家が描かれる最後のチャンスで、主役/主体はこれまで一度もマトモに描写されなかった母である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
健全に前をむき、才能を開花させ、努力と地獄を共存させている立派な青年。それを追う本筋に置いていかれる側の視座は、第41話Aパートのめぐみに似ている。
超すごい人が、超すごく前向きにガシガシ進む超特別な話だけを描いていれば、フィクションは気持ちよく進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
しかしこのアニメは、そういう物語に乗っかりきれない凡人、光を前に光を反射できず、むしろ陰りを濃くしてしまう俗人の表情を、どうしても描かざるを得ない。
その割り切らない姿勢が、特別さを描く筆に陰影をつけ、ある意味で都合の良い物語を飲み込ませていると、僕は思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
置いていかれる側。闇に飲まれる側。
勇気を舳先に置いて、荒海を切り裂いていくキャラクターの物語を楽しみつつ、主人公ならぬ僕たちの共感は、そっちに惹かれていく。
これまで出番と言葉を与えられなかった母は、今回過剰に語る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
紙芝居調の動きの少ない画面は逆に、実はとても豊かに弾み、身勝手に悩み、それでも割り切れず日常を繰り返していた人間の告白に、意識を集中させる。
そこには理不尽な妬みがあり、勝手な罪悪感がある。どこにでも転がる凡俗の顔。
零くんはそれを視界に入れ、礼儀正しく挨拶をして、時間を使って立ち寄って。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
自分の物語へと帰還して、歩み去ってしまう。
幸田家は、零くんとこの物語が選び取った『家』ではなく、特別な食卓は川本家にある。夫も子も、もう訪れない冷たい食卓から、当然零くんも去っていく。
しかしそこには情があり、自分の中のモヤモヤを一旦横にどけて、少し傷つきながら敷居をまたぐ勇気がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
前回描いた成長が背中を押して、ようやく再訪できた『家』。毎日訪れる川本家とは違う、失敗してしまった家。
そこを描かなければ、零くんの少年時代は終わらないのだ。
徹底的に動きを殺してきた場面が、老犬を撫でる零くんとともに動き出す。たとえ選ばれなかったとしても、後悔と身勝手に停滞するとしても、零くんはタロウとこの家が好きであったし、今も好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
それは停滞せず、動きの表現を伴って、暖かく駆動し続ける。
そういうエンジンを積んでいるから、零くんは物語の主役であり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
それを駆動させる鍵をどこかに落としてしまったから、母やめぐみは、物語から置き去りにされるのだ。
そういう残酷な断面を描きつつ、零くんの視線も、物語を切り取る視座も、春の日差しのように優しい。そして冷静でもある。
『いい子』であることが、冷たさの源泉ともなる矛盾。それおw解消できない、しない『家』の機能不全。認識しつつどうにも出来ない、怠慢と無力。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
母のモノローグは、あまりにもありふれた失敗を丁寧に追い、キッチンに一人置き去りにする。その孤独と残酷が、僕には痛くて愛おしい。
原作でも好きな挿話であるだけに、瑞々しい表現でしっかりと『アニメ』にしてくれて、非常に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
常時動き続けることだけがアニメートの意義ではない。貯めて貯めて、干支は別の部分を動かして、最後に動かす。多彩な表現を探るシャフトらしい、最後の変化球だった。
これを受けての本編は、本筋にしっかり足をつけて前に進むひなちゃんの、丁寧なモノローグで進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
前回主体を零ちゃんに取られたひなちゃんは、内面吐露多めのポエジーな画風に支えられて、思う存分甘酸っぱくなる。花澤香菜が巧すぎる…今期報瀬もやってっからなざーさん…青春大臣かよ…。
さておき、彼女の青春を反射する高橋くんが、作画力も味方につけて非常に良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
スポーツに本気で打ち込んでいる青年の大きな背丈、デカい背中。もんじゃを作る手付きの細やかさ。『好青年』に細谷さんの声を付けた存在が、ガッシュガッシュと元気に動く。
一つの恋の終わりを彩るように、桜の花がちらほらと散る。なんか切なくて、日差しは暖かいのに別れていく感覚を、ベタ足ド直球でガンガンアゲる演出が、なんともグッドだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
ひなちゃんの表情作画は特にリキ入ってて、勝負どころでど真ん中にきっちり入れた感じがある。
アバンで零ちゃんが、幸田家への細やかな心遣いを見せたように、高橋くんも別れの儀式を前に礼節を保って、努めて明るく去っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
自分の気持を持て余して走ってきた少年たちが、周囲を気にかける様。冬から春へ、移り変わる季節。過ぎゆく時への哀切が、巧く盛り上がる座組であり、演出だ。
ぶっちぎりセンチメンタルでまとめた後は、ドタバタドタバタとしたコメディで明るく、柔らかく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
色んなタッチを持っていたこのアニメらしく、筆の豊かさを最後に並べて終わる、良い最終回だった。色んな表情、色んな季節がある。薄暗いものも、明るいものも。それ全部ひっくるめで、良いものだ。
というわけで、3月のライオンセカンドシーズンも終わった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
一期の丁寧な筆致、先鋭的な演出力をしっかり引き継ぎ、多彩な色合いで楽しませてくれるアニメだった。重たい部分は重たく、軽い部分は軽く。巧く緩急をつけつつも、それが連動する人生の諸相であることを忘れず、統一感を持って話を運んだ。
『水』を統一モチーフに、情景に感情表現を預けることで、セリフで語りすぎず絵に喋らせる演出が巧く行っていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
言葉で伝えるべきところはセリフの力、声優の演技にしっかり頼り、見事な見切りで各エピソードの盛り上がり、重たい下げ調子を作っていた。
シャフトという創作集団が持つ、前衛の気風。ときに悪目立ちするそれを的確に乗りこなして、表現とドラマが相補い合い加速する理想形を、しっかり形にしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
攻めた演出だけが辿り着ける境地を何度も見れて、非常に豊かなアニメ体験でした。
少年少女を包む辛い状況を妥協なく描き、そこから生まれる変化と成長、痛みと淀みも嘘なく描いていた。その重たさだけを目立たせることなく、品のいい笑いとホッコリした温もりで、話が沈みすぎないよううまく調整もしていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
色んなものを贅沢に楽しめる、贅沢なアニメだった。
そんなドラマに乗っかって変化していく人々の顔が、頼もしくも愛おしく、見ていて楽しかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
脇役に大胆に尺を使い、色んな人が色んな人生を背負って、決死に歩いている大事さを、身を持って描いてくれた。将匠戦の重たさとアツさは、本当に良かったです。
安定感と先鋭性を両立させ、毎回色んな角度から楽しくて、見ていてとてもいい気分になれる2クールでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年3月31日
見たいものが見れたし、それ以上のものも見れた。この幸福感の続きを求めたくもなりますが、今はお疲れ様を。
3月のライオンセカンドシーズン、とてもいいアニメでした。ありがとう。