BEATLESSを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
紅い心臓が止まる。夢なく、希望なく、何者かに糸繰られつつどん詰まりへ歩き続ける百億の民よ。私を忘れないで。
己自身を巨大な疑問符へと変えることで、死して意味を手に入れようとした紅霞の戦い…ショーアップされた、はた迷惑な自殺のエピソード。
というわけで、紅霞ちゃんが死ぬ回である。『人類との競争に勝つための道具』と定義され、レイシアのように世界をアナログハックする広告能力も、サトゥルヌスのように己を再定義してくれるマスターもなく、ただ兵器であり続けた紅霞の、必然的な戦術的敗北に一話。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
贅沢な尺の使い方だ。
ネームは多く、かなりの説明を詰め込んでいるものの、アイコン化とアナログハックという行動の基準軸は、これまで描写されたものでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
ただの兵器はハローキティのような平穏で文化的で商業的なアイコンには成れなくても、モザンビークの国旗に刻まれたAK-47のようには、成れるかもしれない。
紅霞ちゃんはこのどん詰まりでようやく、自分を着飾り放送し価値を積み上げ、世界をアナログハックする方向へ、自分自身を使い始める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
しかしそれは、己が巨大な社会、組織化された暴力によってすり潰されるクライマックスへ繋がるショーであり、死を前提としたダンス・マカブルでしかない。
レイシアがファビオン企業体のバックアップを受け/アナログハックを仕掛けて、平穏に行ってきたプロパガンダ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
あるいは、利益誘導を複雑に張り巡らせて、アラトに気付かれないように紅霞を社会的煙幕として使い潰してきた領域に、紅霞はようやく辿り着く。しかしそれは、あまりに遅い。
ケンゴに代表される、モテない・金ない・頭良くない世界の過半数。誰かの便利なツールとして、自動的にシステムに組み込まれ、あるいはそれすらも許されない負け犬。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
鬱屈だけを溜め込んで、加速する現実を眇めるしかないモノへと、紅霞は謎を投げかけ続ける。
人類の隣人、あるいは便利な道具であったはずのhIE、超高度AIが、人類とhIEに牙を剥く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
その意味を考えろ。死にゆく私の代わりに、私に似たお前たちが、そのどん詰まりからどうにか抜け出す(あるいはどん詰まりを肯定できる)『なにか』を見つけろ。
紅霞は、紅いクエスチョンマークへと己を変じる。
それが何らか革命へと続くメッセージとなるか、あるいはユニクロで売ってるチェ・ゲバラのTシャツのような、解毒されたポップアイコンになるか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
あるいは、一瞬のニューストピックとして消費されて、霞のように消えるか。
死んでしまう紅霞には、確かめようのないことである。
それでも、沸き立つ無為の矢を世界に解き放つ以外紅霞に選択肢はなかったし、そこに至ってようやく、紅霞は初期設計目的を超越出来た、ともいえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
巨大なシステムが用意した土俵の上で、ルールに則ってお行儀の良いテロルを繰り返したところで、駒に勝ち筋はない。
オーナーとなった抗体ネットワークは、社会不安の風抜き穴としてテロルを濫用する。制御された無軌道は社会基盤を揺るがさず、狙い通りに無為に終わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
『そこから出ろ、出たくないのか?』と、紅い疑問符が問いかける。『ニンギョウがニンギョウを破壊する矛盾、その裏を考えろ』と。
それは疑問符であって、解凍ではない。巨大なシステムからドロップ・アウトし、チューニングを未来に合わせる賢さを、紅霞もどん詰まりの大衆も、当然持っていない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
だが、それでも問うこと、立ち止まって自動化に抗うことは可能なはずだと、紅霞は己の身体を賭して問いかける。
それが何らかの発火を促し、シンギュラリティ以降の革命へと繋がるかどうかは、再三言うが紅霞には知りえない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
それでも、何らか意味があってほしいと、紅霞は訴え続ける。
その背中に、ケンゴの惨めさが刺さり続けていたのは、僕にはなんとも寂しく、綺麗で優しくも見える。
人間にとって、世界は無価値な人形と有意義な人形に見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
ヒギンズ(と、その制御下にあるhIE)にとって、世界は等級化可能なhIEと計算不可能な人間で構成される。
己を構成する素材と立場によって、世界は180度にすれ違う。それでも同居できてしまう可塑性と、吸収しきれない矛盾。
同じ制服を着て、同じ時間を過ごしていたはずの三人。だが経済的状況も、知的資質も、世界認識も全く食い違っていた。そのバラバラの個人が、当然の帰結としてバラバラの結末をもたらす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
レイシアの揺り籠で眠るアラトは平和に生き延び、ケンゴは無慈悲にブタ箱へと送られる。リョウは悪魔と契約だ。
紅霞とレイシアも、似通ったかたちを共有しつつ、能力も資質も見えている世界もバラバラだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
その差異が二人の生死を分け、使うものと使われるものの差を生み出す。紅霞にとって、同じ機械のレイシアより、負け犬ケンゴのほうが親しい存在だったのかもしれない。
アラトはいつものように、呑気にレイシアに救済を望む。だがレイシアは、冷静に姉妹機のメディア化された自爆と、それと触れ合った負け犬の逮捕をスルーする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
事実を述べているだけなのに、レイシアの返答には糾弾の色がにじむ。紅い疑問符がえぐり出した世界を、もう少しちゃんと見ていれば。
あるいは結論が変わったかもしれない。ツールをより善く使うための、より善いヴィジョンをオーナーが持ち、それに従って奮戦することで、世界は変えうる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
レイシアが言っていることは、匿名の世界へ己をプロデュースしてた紅霞が、アラト個人に向けたメッセージとよく似ている。
長い揺籃の時間が終わりつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
テロリストな親友が(当然の帰結として)逮捕され、意志ある兵器が(当然の帰結として)破壊されてなお、ギャルゲめいた平穏な日常の夢に、アラトは溺れていられるか。
紅い疑問符は、アラトだけが見なかった世界の真相を、残忍に突き刺しつつある。
レイシアから明瞭な拒絶を初めて受けて、アラトはどう変わるか。あるいは、これまでのように変わらないのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
リョウがこれまでずーっと突っ込んできた残酷なる世界像は、チョロい主人公の脳髄を揺さぶる所まで行くか、否か。盛り上がってきたが総集編である。んーーーーーむ!!
紅霞が己を世界に問うためのカメラは、レイシアによって設計され、マリアージュによって製造され、レイシアによって届けられた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
利益を共通言語として繋がる、レイシア級のネットワーク。その存在を、アラトは知らず、エリカは熟知している。同じオーナーにも、当然資質と世界観の差異はある。
狂ったお茶会でアクター全てに告げたように、エリカの戦術は公開と周知だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
レイシア級を生み出すほどに変質してしまった世界を、レイシア級の闘争を以て白日に晒すこと。紅霞のメディア化テロルも、ディレクターはエリカと言えるかもしれない。
紅霞は未だ、謎の暴走hIEのまま世界に流通する。背景が不明だからこそ、謎は興味を呼び、問いかけが議論を沸騰させる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
ツクバ・オブ・ザ・デッドと合わせ、hIEが人類に反逆しうるという、自動化された黄金世界への疑問は、おそらくエリカの狙い通り静かに沸騰を始める。
幾度も言うが、その先の光景を紅霞は見られない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
それを承知で、紅霞は自分を紅い疑問符へと変えた。自分がそこに留まることを、最初から最後まで規定されてきた暴力的衝突の小さな局面ではなく、その先にある風景へと突破したいと願った。
それがいかなる発火を見せるか。それはまだ、先の話だ。
僕はどーにもトンチキなBGMや演出含めて、アニメの紅霞ちゃんが好きなので、彼女の血で書いたメッセージを作品世界が、アラトが、巧く受け取ってくれると良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
同時に、そういう紅いメッセージを無視しながら、望ましい世界像を回転させ続ける人類の残酷な無関心も、ずっと描かれている。
残るレイシア給は四体。闘争と欲望は次第に振動を強め、世界の裏っ側で展開してきた渦は、より広く、より強い舞台へと飛び出しつつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月6日
アラトが微睡みから目覚める時、物語の位相が決定的に変化するシンギュラリティは、おそらく近い。次回も楽しみですね。