メガロボクスを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
持つもの、持たざるもの。歯車となることを拒絶するもの、歯車そのものとなって戦うもの。
拳闘によって社会の上層と下層が交わる時、渦が生まれる。うねる感情、激しい拒絶。
ステージに上る前に、権力の拳で叩きのめされた男たちの、明日はどっちだ。
というわけで、メガロマニア最後の椅子を賭けた勝負が始まる…前に、偽物のチケットが噛み付いてくるお話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
下層民の期待を背負い、虐げられたものたちの代理闘士(チャンピオン)となったジョーは、ID無き野良犬であるが故に、樹生の策謀にハメられる。
ここまでこの物語は、己の肉体を唯一のチップにして、メガロボクスに『何か』を賭ける連中ばかりを書いてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
地下ボクシングのイカサマ屋、故買屋の用心棒、あるいは傷痍軍人。ギアという暴力加速装置を着込んで(あるいはその庇護すら拒絶して)、殴り合うことでしか己を立てられない男たち。
拳以外に切符がない、『下』の連中ののたくりを六話追いかけてきた物語は、今回メガロボクスのもう一つの顔、『白都コンツェルンの支援を受けたビッグビジネス』へと踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
血縁、謀略、権力に財力。シンプルな暴力以外の武器をたっぷり構えた、『持つもの』達の肖像画。
樹生のしかけた盤外戦は、メガロボクス三昧のバカ野郎ばかりを見てきた目には、卑怯…というか、異端に見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
立場もあり方も超えて、殴り合いで通じ合える希望が、血なまぐさいメガロボクスの中にはたしかにあった。そんな身体言語を、拒絶するような殿上人。
ギアとの向き合い方も、これまでとは正反対に見える。AI制御のギアの『歯車』となり、コンピューターがはじき出した最適解で殴りかかるスタイルは、『歯車』になることを拒絶し、拒絶することでしか己を立てられなかった”ギアレス”ジョーとは、真逆の戦い方だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
ギアの補助はあっても、殴る拳は自分のもの、殴られる体も自分のもの。そして殴り殴られる意志こそは、リングでいちばん大事な『歯車』として、ボクサーを支えている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
そういう泥臭い人間主義で動いていたメガロボクスは、樹生のAIボクシングによって揺らぎだす。
樹生はメガロボクスを足場に、過去の復讐を遂げようとしているように見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
妹との権力闘争に破れ、殴り合いの領域に叩き落とされたハイクラス。もう一度輝く場所に返り咲くために、野望の道具としてボクシングを使う。そのためになら、自分の身体を『歯車』にしても構わない。
チーム番外地も、ボクシングの先にある『あした』を求めている。しかしその歩みはボクシングへの真摯なる献身に満ちていて、殴り合いの最中にいる自分と、殴り合いそれ自体に真正面から向き合っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
その真正な歩みを貫いたら、『あした』を掴めるのではないか。
重苦しい経済原則に押し潰されつつ、そんな一縷の望みをジョーの戦いに見たからこそ、女は太ももに”ギアレス・ジョー”を刺青し、街はポスターで溢れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
そんな声を受けて、より真摯に、より強く繋がりながら、チーム番外地は進んでいる。樹生の横槍は、それに水をぶっかけるものだ。
しかし、白都兄妹の過去が未だ伏せ札である以上、樹生のスタイルに何が隠されているかは、まだ未知数だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
『持たざる』チーム番外地とはまた別の、『持つ』からこその痛みと決意。それが、AIボクシングにはあるのかも。長い権力の拳を迷いなく振るうスタイルの奥に、血の通った思いがあるのか。
リングに上げる前に勝負をつける、樹生の一撃。そこから南部のオッサンがどう逆転するかも含めて、なかなか気になる運びであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
ギアレスの生き方をじっくり掘り下げてきたからこそ、自己を捨て身体を機械に変えて戦う樹生のスタイルは、なかなか興味深い。『歯車』になるしかない哀しさが見たいね
樹生を鏡にすることで、ユーリとその飼主、ゆき子も陰影を深めていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
ギアに使われるAIボクシングとはまた違う、ギアと身体、機械と魂を一体化させるサイバネティック・ボクシング。『歯車』であることを放棄できないユーリの不自由さと、それ故の完成度が見えるスタイルで、とても面白い。
ゆき子もまた、メガロボクスに何らかの思いを懐き、会社の連中とやり合い続けている。悪趣味な人間破壊ショーを、強力に後押しするゆき子の願い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
彼女が掴みたい『あした』は、飼い犬であるユーリ、それに魂を惹かれたジョーにも、深く関わってくるだろう。
どん底から這い上がり夢を見るために、チーム番外地が選んだメガロボクス。そこには、世界の一番上にいる貴種たちも、『何か』を預けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
しかし拳以外の手立てをたくさん『持つもの』達は、これまで描かれた唯一性を、メガロボクスには預けない。あくまで手段の一つと切り捨て、安全距離を取る。
そんな金持ち共の立ち回りが、どうにも不純に見える回なのだが、その奥にある譲れないものもチラホラと揺らいでいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
『持つもの』と『持たざるもの』を決定的に分ける、くだらない世の中のルール。それをぶち壊し、魂が共鳴する一瞬をメガロボクスは持ち得るか。
そんな問いかけのある回だった。
南部がジョーの体をケアし、片道飛行の特攻主義から距離を取っている描写は面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
彼にとってメガロニア挑戦は、イカサマ勝負であってもやけっぱちではない。戦って、勝って、『あした』をしっかり掴む。そのためにあらゆる手を尽くす。だから、ミキオのトレーニングもちゃんと褒める。
自分も仲間も大事にして、体も心も豊かに守って。そういう『あした』を見据えた戦い方は、結構”あしたのジョー”とは逆向きにある気もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
人間らしい『あした』を求めつつ、そこで満足できないバーンアウト・ボーイズ。その生き様を追いかける原作と、50年後のリメイクは、結構違うスタンスな感じだ
ジョーが『真っ白に燃え尽きて』行くのか、『あした』を見据え、時
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
には立ち止まる生き方に進んでいくのか。
”あしたのジョー”をしっかりリスペクトしているからこそ、自分の語り方で描きなおしているこの作品にとって、戦う描写と同じくらい、逃げたり癒やしたりの描写は大事な気がする。
そういう意味では、南部の拳がジョーを『止めた』ところで終わっているのは、とても興味深い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年5月19日
足を止め、傷を癒やすのは、勝って『明日』を掴むため。偽物のIDは本物にならず、カスはカスだと罵られ、鉄扉は重たく閉じた。この状況から、南部贋作はどんなイカサマを仕掛けるか。来週も楽しみだ。