レヴュースタァライトを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
乙女の心は漂う海月、ゆらゆら揺れて、よせては返す。
真矢の圧倒的な存在感の前に、なんら自分を示せなかったオーディション。ひかりは荷物を抱えて寮を出て、華恋はそれを追って東京を走る。
待つもの、追うもの、取り残されるもの。少女たちの関係性が、東京を踊る。
というわけで、ひかりちゃんのコミュ障と華恋のバカが東京輪舞曲を踊る、レヴューなしの変化球回である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
ここまで四話、形を見せ買って負けて、お話の基本形を描いたところでパターンを外す…と言いたいところだが、実は今回全体が一つの大きなレヴューだったような気もする。
今回のお話はとにかくシンプルで、なおかつ難しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
描かれているものは少女と少女の心の距離、それだけだ。離れて、追いかけて、すれ違って、抱きしめあう。とても他愛のない、だからこそ誰にも通じる当たり前の距離感。
これを様々な角度から、かなり高度な演出で歪めてみせるのが、今回の手法だ。
レヴューもまた、とてもオーソドックスなものを特徴的な演出で歪め、スペクタクルに仕上げて届けてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
地下劇場での舞台装置バトルも、携帯メディアを駆使した心理交錯も、東京すれ違い日記も、非常にシンプルな心理を特殊な筆で描く点で、よく似ている。
多分、それがこのアニメの基本文法なのだ。
喧嘩して、逃げ出して、追いかけて、仲直り。青春のよくある風景に、爽やかな友情が絡む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
99組総出で、不在の二人を演じきる舞台は、剣戟は交わされないがいきいきと面白い。みんなバカで優しくて、気持ちのいい子たちなんだと、しみじみよく判る。
そういうオーソドックスなものを描くために、特殊な魅せ方をする。特別な色彩が、ありきたりの感情をみずみずしく描き直す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
レヴューなしの今回は、実は最も色濃くこのアニメの方法論を宿したエピソードだと感じた。全ては、友情と青春を描ききるために選ばれているのだ。
加えて、レヴューシーン冒頭で印象的な『アタシ再生産』は、今回も果たされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
ひかりを追いかけることで、華恋に追いかけてもらうことで、二人はお互いの距離感を作り直し、思い出を再誕させていく。どこから自分たちが始まり、どこを目指すかを確認していく。
心のきらめきが勝敗(を超えた評価)に繋がる、地下のレヴュー。戦い、勝ち、負けるたびに少女は何かを手に入れ、何かを奪われる。どういう形にせよ、戦う前と後では、己を生まれ変わらせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
日常の中での交流を描いた今回も、それは変わらない。劇的空間を使わない分、変化は見やすいかもしれない。
剣を交わさないがレヴューに似た日常を見ることで、異質なレヴューが実はとても日常的なものを扱っているのだと、読解(あるいは誤読)すること。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
四話目の変化球は、そういう意識を視聴者に与える意味合いがあるのかなと感じた。全ては地続きで、しかし離れて個別なのだ。
さて、今回のお話はひかりと華恋のすれ違いを扱う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
不在の布団から始まり、LINEメッセージによる冷たいコミュニケーション、電話による会話、実際に顔を合わせての対話と抱擁に至る、メディアと距離感の物語。ちとマクルーハン的なロマンス。
(C)Project Revue Starlight pic.twitter.com/JNOneTXPUH
ビンタで離れた心の距離が、近づくたびにコミュニケーション・メディアが変わる。その変遷が、心の距離を象徴化もしている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
地理的な距離感も、学園を出て東京水族館巡りに飛び込む中で、多彩な色合いを見せている。東京名所をザッピングし続ける歩みが、都市論的でちょっと面白い。
媒介と舞台を取り替え、通話シーンでは因果と時系列をズラしながら展開する、二人の追いかけっこ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
本当に愛想を尽かしたなら、何も受け取らずに逃げればいいのに、ちょっと振り返ってヒントを出す。本当は、追いかけてほしいから。
神楽ひかり、クールぶってるが存外ズルい女である。そこが好き。
二人の気持ちは前に進みつつ、その原点に帰還していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
二人で観たレヴュー、繋いだ手と手、くまさんのぬいぐるみ。二人が大親友でいられた過去を確かめることで、二人の関係は再生産されていく。
クニャクニャ迷った道の証に、クラゲの人形が付け加えられて幕だ。
(C)Project Revue Starlight pic.twitter.com/B1EGw5rJgV
LINEのアイコンを見ても、白いくまがひかりの象徴なのは判る。では、クラゲは華恋の象徴なのか?
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
芯がなく、何処かふにゃふにゃしていて、しかし自在に泳ぐ姿に目を引かれる。確かに、クラゲは華恋によく似ている。
とすれば、東京クラゲ巡りをしながら、ひかりは水中に遊ぶ華恋を探していたことに…?
そこら辺の図象学はまたおいおい顔をだすだろうが、一度離れた二人の距離は、様々なメディアを通じ接近していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
その最たるものが身体であり、最終的に二人は身体が近づくことで、過去の関係性に帰還し、新しい目標を再生産することになる。ハグは少女を救うのだ。
(C)Project Revue Starlight pic.twitter.com/Ck8K5nk05b
それは古くて絶対的な心象を思い出すことであり、そこにはなかったものを取り戻すことでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
子供時代の二人に、クラゲはなかった。交換した髪飾りも、ロンドン留学の体験も。それでも、二人の道は重なって、二つ星として頂点に輝く夢想を叶えるかもしれない。
時間とともに変わるものと、変わらないもの。二人の追いかけっ子はそれを追いかける歩みでもあり、コミュニケーションはそれを確認する作業でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
一手ずつ、お互いをさらけ出しつつ、奇妙にズレてしまった自分たちを肯定していく。だから、通話の内容は奇妙にズレるのだろう。
ひかりと華恋が電話で話しながら、東京をさまよう時。アニメに再編集(再生産)された対話は噛み合わない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
食べ物の話をしたり、思い出の話をしたり、ズレながらしかし重なっている。それは二人の心理であるし、これを反映して彼女たちは東京の別々の場所(でありつつ、東京である場所)をさまよう。
その放浪が”東京タワー”で合流するのは、見栄え的にも象徴学的にも必然の帰結だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
東京という地理カテゴリーをさまよいながら、二人の共通点、心のラグランジュポイントを探してきた二人は、”東京”を関する巨大な塔、約束タワーの前で出会い直す。思い出と未来は、同時にそこにある。
遠く離れて向かい合う、オレンジ色の照明のステージ。赤と青の遊具が並び立つさまが、二人の未来を象徴していて素晴らしい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
華恋は主人公特権の無垢さで、全てが上手く行く魔法を夢見る。無茶苦茶な願い、遠い星を見上げられる場所に、ひかりも自分の足で上がる。
(C)Project Revue Starlight pic.twitter.com/3aEPv7CT6f
そうして思い出と未来を共有し、ひかりが一人で抱え込んでいた荷物を一緒に持つことで、二人の関係は無事再生産される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
このエピソードが面白いのは、二人きりの綿密な間合いを切り取りつつ、それをしっかり拡大し、みんなの魅力を引き出したことだ。
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今回のエピソードの基本として、『女と女が二人いて、それがくっついたり離れたりする』運動が大事にされている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
ひかりと華恋が、場所と時間を切り刻みながら接近していくことで、これは一つのルールとなり、他のキャラクターを照らす。
心の距離が近いものは、体の距離も近いのだ、今回。
例えばクロちゃんと真矢様。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
オフでも憧れの星をPCに閉じ込め、追いつけ追い越せとズーッと見ているクロちゃんを、真矢様もしっかり見ている。心の強さを取り戻したライバルを、正当に評価して称える関係は、ダンスの間合いで示される。
(C)Project Revue Starlight pic.twitter.com/es8huN2xLL
例えば香子と双葉。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
『髪を触る』という、身体接触の極限をすでに、何度も見せつけている二人は、しかし明暗の別れる場所に立っている。
膝枕をしていても、オーディションの勝敗を問われたら、『重い』と外してしまう関係。 pic.twitter.com/TnIn4qsXyo
双葉は香子べったりのようでいて、視野の広い子だというのは、前回のクロちゃんとの関わりの中でしっかり描写している。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
そんな双葉が見据える、明瞭な勝ち負けがつくオーディション。そこに身を投げても掴み取りたいものと、いつまでも”二人”ではいられない運命。
香子が見ていない(あるいは目をそらしている)ものを、双葉はまっすぐ見据えているからこそ『勝ちを譲ってくれ』という問いかけには、答えを返せない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
今回ひかりと華恋が迷い繋がった道筋とは、似て非なる”ふたり”の歩みが巧妙に予感されている。
何しろ青銅の鳩ですら”ふたり”でいるようなエピソードだから、その射程は広くて強い。その広さと強さが、距離のあったひかりのために猿芝居を打ち、仲間を助けようとする動き…それに導かれ、ひかりが”みんな”に近づく動きに繋がる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
(C)Project Revue Starlight pic.twitter.com/dsIAJEjf9P
そんな原則から、離れている存在が二名。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
じゅんじゅんは第2話のレヴューを経て、華恋と魂を通じ合った(そういうオーディションの可能性を見せるために、第二話があったと言える。)
なので、華恋はスッと抱きつく。それが二人の距離なわけだ。
(C)Project Revue Starlight pic.twitter.com/o1cY30vUuL
それを遠巻きに見ているばななとまひる。抱きつきたいのに抱きつけないまひると、何を願っているのか読みきれないばなな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
望む距離に入れないもどかしさと、望む距離がなんなのか見えない不穏さ。これも、距離をテーマに日常を踊らせた今回だから見える絵だ。
過去を共有し、同じ未来を夢見る二人。華恋を希う廊下の女神様は、追う/追われるの共犯関係から離れたところで、いじましく待ち続ける。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
その重たさと片恋を、華恋には見落としてほしくないな、と思う。約束タワーに灯る星が、まひるでないにしても。
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ほんっと廊下でトンチキやってるまひるちゃんは可愛くて、『コイツを負け犬言ったやつは殺す。微塵に変える』と王気(オーラ)出しちゃうくらい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
アリバイ小芝居といい、今回は彼女たちが演劇人であることを、コミカルに大事に扱った笑いがとても良かった。みずみずしくて、愛おしい笑いだった。
というわけで、レヴューから離れることでレヴューを描き、想い人を追うことで自分を見つけ出す、裏腹で鮮明なエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
”メイドインアビス”でも吠え猛っていた小島監督のヴィジュアルセンスが随所で爆裂し、軽妙と詩情が同居する、見事な変化球でした。3ストライク、取られちまったな…。
世界観を飲み込み、物語の基本形を食べるのに手一杯だった冒頭から、キャラの魅力や関係性の魅惑に馴染んできた頃合い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
ここで、遊び心に満ちた演出で楽しく魅せてくれて、より作品とキャラクターが好きになれるエピソードだと思いました。楽しいだけでなく、複層的な意味の織物に、知性があった。
かくして雨の離別を乗り越え、二人の距離は縮まった。華恋が夢見る、二星が煌く天。そこにたどり着くまでには、数多のレヴュー、数多の想いを乗り越えていく必要がある。そしてそれを、とても鮮明に普遍的に描けるアニメだという証明は、今回もしっかり唸っていました。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月5日
来週も楽しみです。