BANANA FISHを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
明らかになる"バナナ・フィッシュ"の真実。悪の精髄(エリクシル)は権力の中枢に及び、アメリカを腐らせる。
暴力と抑圧を握りしめ、その舳先に立つゴルツィネ。片手で握手、片手で短剣を握り対峙するチャイニーズマフィア。巨悪に挟まれる孤影の悲しみ。夜が全てを飲む。
というわけで、終始辛い痛い中盤戦である。強姦されたり殴られたり縛られたり、意に反した裏切りを強要されたり。気持ちのいい連中が軒並み、重油のような悪意に絡め取られる展開が重たい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
抗いようのない巨大なものを前に、身一つのちっぽけさを思い知る。青い空は、どこまでも遠い。
状況としては巨大な悪が"バナナ・フィッシュ"を中心にうねり、偽りの協調関係が結晶化していく展開。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
CIAの『MKウルトラ計画』を思わせるプロジェクトを後押しすることで、ゴルツィネは国家公認の犯罪組織にのし上がろうとする。そのオコボレを狙いつつ、いつでも短刀を刺す用意をする中国マフィア。
巨悪二つの巨大なうねりに、個人の、家族の因縁と欲望が絡まり、世界はねっとりと重たい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
悪趣味な金色、曖昧な紫色が入り交じる、陳腐な悪徳の部屋。NYとLA,イタリア系と中国系。立場は違えど、悪のカラーリングはよく似ている。
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今回はそんな金と紫の腕が、色んな人を食いつぶす回である。出だしからしてマックスの嫁さんが強姦され、英二は中国武術の秘技で肉人形に変えられ、ショーターは"家"と正義の板挟みに。アッシュたちにも長い手が伸びてきて、縛られ家は燃やされ、いやはやストレスが強い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
マイケルを前にしたアッシュが、非常に柔らかい態度をとっているのが印象的だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
後に"バナナ・フィッシュ"を生み出したアレクシスを前に見せる激情は、かつての自分のように性と暴力で傷ついた少年を前に、綺麗に鎮火している。それは二面性…というより、本来そうありたい脆い願いに見える。
可能ならば善なる存在でいたい。隣人に優しく、誰も傷つけず、お互い助け合いたい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
そんな陳腐な願いを、陳腐な悪に溺れた連中が踏みにじる。なら、自分も銃を取って悪になるしかない。そんな山猫の牙は、子供の前ではきれいに収められている。
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かつて傷つけられた子供と、今傷ついている子供。悪の支配する世界で、二人はそれぞれ世界を分断する境界線を超え、抱擁を交わす。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
悪のざらついた感触ばかりが目立つ今回、アッシュとマイケルの交流は一筋の光だ。他の場面がキツすぎるんだがな…。
悪と欲望の誘惑に膝を屈してしまうのは、とても楽なことだ。ショーターだって、ナイフなんぞ握らず英二を売っぱらって、何処にでもいる薄汚れたおとなになってしまえばいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
しかし紫トサカの雄鶏は、無力な少年を抱き寄せて必死に吠える。お前らの悪に汚されるくらいなら、いっそこの刃で。
英二と己の操を守ろうと、弱々しい刃を振り回す(しかもそれが自分たちに向く)ショーターの無力と純情が、なんとも痛ましかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
現実的な生き方に身を落としたマフィアたちは、そんな抵抗をあざ笑う。でも、綺麗なもののために一緒に死んでやるという決意は、踏みにじっていいものなのだろうか。
金と紫の光は、いつでも目をくらませる。他人の尊厳も、自分の真意も分からないまま、毒に侵されて悪が増幅していく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
"バナナ・フィッシュ"を投与しなくても、人類はずっと悪の増幅機能を抱え込んできた。悪魔のクスリが顕にするのは、それが偏在しているという陳腐さなのかもしれない。
とはいえ、爪を隠し隣人の手を取れる善人の、人生を壊していいわけがない。ましてや、モルモットにして弄ぶなど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
許されざる悪徳が、しかし現実に存在してしまっていて、しかも国家という巨大な"正義"がそれを是認・保護してしまっている現実。あまりにも
banalな現実。
(banalの語源は古フランス語で"奉仕に関する"であり、そこから"社会全体の利用に供される"→平凡な"と転換する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
上院議員と軍大佐が、国家の安寧のため"バナナ・フィッシュ"を求め、ゴルツィネの長い腕を取る今回には相応しいサブタイトルと言えよう。
小悪は大善のため。陳腐な麻酔だ)
同族の脅迫を断れば、ショーターの家族はマックスの嫁さんと同じ、あるいはそれより悪い地獄に叩き落とされる。血の繋がった"家族"を護るために、"血"の繋がらない仲間を売る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
そのジレンマに揉まれつつ、自分の命を秤に載せて、英二の操を守ろうと必死なショーター。その決死のあがき。
月龍もまた、マフィアの巨大な掟、兄弟との確執、失われた母の血の中で、複雑な感情を育てている。悪に取り囲まれ、悪に同質化しつつ、尚何処かに陳腐ではない自分を探そうとあがいている姿は、アッシュの歪んだ鏡と言えよう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
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金の衝立、紫の衣、赤の装飾。アッシュを取り巻く悪の色合いに見を染めつつ、月龍の立ち居振る舞いには何処か"芯"がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
龍の爪が誰に向き、何を噛み砕くのか。山猫の牙が縛り付けられた今、突破口はそこにあるのだろう。どこもかしこもドロドロやな…。
アッシュがゴルツィネという"父"に陵辱を受けていたように、月龍も異母兄から性的な視線、抑圧を向けられている描写がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
セックスを強要する側もまた、欲望に振り回され自由に見えない所が、このアニメの複雑な部分だ。利益を求めるだけの機械なら、もっと鮮明に悪をなせるのに。
誰かのぬくもりを求めつつ、その尊厳を踏みにじる。愛を素直に表現できず、欲望の対象を壊す。どこもかしこもねじれて曲がって、善を諦めたため息と苦笑いに満ちている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
そんなくすんだ色彩の中で、青年たちのかすかな足掻きが、弱々しい光を見せる。そんなエピソードでした。
英二が月龍神拳で秘孔を突かれ、肉人形になる流れはなかなかパワーが有ったが、英二の物語的役割を考えると納得も行く。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
青空に向かって唯一飛べる善の結晶は、欲と打算と暴力に塗れた、陳腐な悪を前に麻痺してしまう。無力な彼を護るためには、隠したナイフが必要になる。
それがショーター自身に向くのか、未来を切り開いていくのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
男娼のポーズで無力化されたアッシュは、何処に流れていくのか。
従順に悪に染まるように見える月龍は、どんな爪牙を隠し持つか。
重たく暗い暴力の渦に飲まれつつ、まだ何処かに希望があるような。そんなモノ最初からなかったような。
そんなLA急展開でした。いやー、展開早いな…ホントラストまで突っ走るんだな。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
ゴルツィネの犬になったオーサーが何処か苦しそうなのが、良い描写だと思った。暴力を振るわれる側、振るう側。どちらにも出口はないのだ。
そんな陳腐な無明の中で、さて、運命は何処に流れる。来週も楽しみ。
追記
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年8月24日
伊部さんが無力化されるのが『毒入りのお茶を飲んだから』なのが、逆説的に月龍の手から餌を食べなかったアッシュの野性味、感覚の鋭さを鮮明に演出するのは、凄く好き。
結構メシを大事にしているアニメだと思う。協調や未来の象徴ではなく、悪しき連帯とか大事なものを足蹴にする道具としてだが