ハッピーシュガーライフを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
正気と狂気を隔てる、薄い一線。既に乗り越えたもの、引き寄せられて転落するもの、その寸前で足を止めるもの。
あるいは、そういうことに思い悩まなくても良くなったもの。
様々な思いを啜り上げて、純情が腐敗する。砂糖菓子で出来た甘い檻へ、踏み込むのは誰か。
そんな感じの、1208号室オリジン…とその先である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
物語の起点となった画家殺害&部屋乗っ取り事件を、ピーキーな演出で描くAパート。
狂ってしまったその先の群像劇を、クレイジー満載で加速させるBパート。
演出方針に落差があり、なかなか面白い回だった。陰のキチと陽のキチ、というか。
BGMを殺し、会話をノイズでぐちゃぐちゃにし、画家の主観一本で走り切る。Aパートの演出はかなりピーキーであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
わざわざ難しい演出を選んだのは何のためかなー、と考えたが、画家をフィルターに作中人物の思考形態をトレースするためかな、という結論に。
画家は自分の視界しか持てず、内元だけが言語化される。さとちゃんとの会話はノイズで乱れ、その文脈は受け答えから推測するしかない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
セックスはなし、金銭はなし、絵のモデルであることで繋がる。プラトニックで人間的な関係に思えた描写は、しおちゃんの乱入で一気に崩れ、暴力と死が増殖する。
マトモなコミュニケーションが成立しない世界。自分の快楽、自分が見たい対象だけが存在している世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
それを守ろうとして画家はしおちゃんを殺しかけ、サイコ力で上廻るさとちゃんに殺される。間違えきったコミュニケーションとしての、連鎖殺人。因果応報ですらない、ノイズだらけの交流譜。
それは画家だけの特権ではない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
しおちゃんを人間ではなく"天使"として特権化し、そのために殺人すらためらわないさとちゃんにも。
"マトモ"になろうと決めたのに、靴下一発で奈落落ちする太陽くんにも。
デフォルトで備わっている、身勝手で凶暴な世界観だ。他人の心や事情は鑑みず、己のみが在る
しおちゃんを保護しているようにみえて、その自由を制限し自分が求める天使を演じさせ続けているさとちゃんは、企てに成功した画家だといえる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
根源的なエゴイズム、それが殺傷に容易に結びつく危うさは、画家もさとちゃんも区別がない。なら、その末路もまた似通ってくるのではないか。
画家は(しょーこちゃん含めた)有象無象と同じく、さとちゃんの欠損を埋めない。ぶっ壊れた心を満たす特権は、しおちゃんだけのものだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
ノイズだらけの世界を生きていた画家にとって、さとちゃんはおんなじような"特別"だったのかもしれない。それを維持するには、"特別の特別"を壊すのも躊躇わない
自分の特別が、自分以外の誰かと繋がっていて、生物として当然に変化・変容していくことに耐えられない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
静止した屍姦主義を維持するためなら、"特別"を死人(あるいは天使)に変えてしまうことに迷いがない。
多かれ少なかれ、このお話の登場人物たちはそういう世界に生きている。画家はその代表だ
さとちゃんと太陽くん。しょーこちゃんとあさひくん。明暗は別れつつ、似た者同士が繋がりを持つ今回。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
その前段として、前者が守り、後者が攻略しようとする砂糖の檻の誕生を描いたのは、作品世界の基調となっている狭く身勝手で凶暴な認識世界を見せるためだったかな、と思った。
さとちゃんは身勝手なばかりでなく、しおちゃんを無私に思って実際助けている部分がある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
ネグられ死にかけてたしおちゃんにとって、砂糖の檻が生存のための唯一のシェルターなのは間違いないし、自分の人形としてではなく、意志ある子供としてしおちゃんによく生きてほしい願いも本当だろう。
しかしそういう、生きた願いを維持するためにはラインが伸びてないといけない。世界へのライン、他者へのライン、可能性へのライン。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
愛なき世界に傷つけられきったさとちゃんは、しおちゃん(に投影されている、傷つかなかった仮想の自分)を守るためにそのラインを切る。優しい自分だけの世界にする
切ったところで縁は生きてて、兄弟であるあさひくんはしおちゃんを探し回り、しょーこちゃんは親友の闇に踏み込もうとしてくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
そういう"マトモ"な働きかけが、破綻を約束された砂糖の檻を壊し、ハッピーシュガーライフを終わりにする。
二人きりで閉じていたいのに、余計なことを。
そういう甘ったるいお願いを、このお話は聞き入れてくれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
人は他人と繋がるもの。生き物は変化と交流の不安定さの中で生き続けるもの。
そういう"マトモ"さは、エゴイズムとはまた違った公平な暴力をぶん回して、歪んだ平穏を求める少女たちを殴りつけてくる。
愛が欲しい、不安でいたくない。人間として当たり前の願望を、当たり前の方法で叶えられない人たち。叶えさせてくれない世界。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
"マトモ"であってもなくても、業で窒息するしか未来がない人たち。約束された破滅への途中経過。それがBパートであろう。
"母"の愛情を確認し、しおちゃんのビラ(救済へのSOS)を身勝手なライナスの毛布に変えて、たいようくんは"マトモ"になろうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
結果さえポジティブならば、そのために少しくらいは歪んでもいいよね!
っていう半端を許さず、さとちゃんは音速で追い込みをかけてくる。靴下で。
花江くんの気持ち悪さ(褒め言葉)が最高にブン回って、今週の太陽くんは最高だった。最高に気持ち悪かった。(褒め言葉)
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
監禁強姦されて心がぶっ壊れて、どうにかマトモに戻りたくてしおちゃんにすがって、ヤバいと気づいて戻ろうとして、でも天使の誘惑はあまりに完備で一発堕ち。
太陽くんも悲惨な境遇なんだが、そこに"マトモ"な救済を用意しないのがこの作品である。病院行って治療されて社会復帰という"マトモ"なルートは、今回で完全に潰れた感じもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
さとちゃんが背中押さなければ、"マトモ"に戻れたのかなぁ太陽くん…やっぱ無理かなぁ…。
天使教団を結成し、ファミレスで連合したクレイジー二人。愛のためなら神をも殺す、無敵の狂信者集団が今後どう暴走するか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
正直大惨事しか待ってないけども、ここまで見ちゃうと末路まで確認したくはある。クレイジーを暴れさせつつ、それを超える"マトモ"の強さも描いてっからね…負けしかない。
しかし半端な"マトモ"がクレイジーを乗り越え、"マトモ"なハッピーエンドに繋げられるかというと、そんなこともない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
泣いてる女の子を気遣い、挫折した行いの美徳を見つけ直す。しょーこちゃんとあさひくんの健全な交流は、エゴイズムの魔獣に噛み砕かれるための前振りでしかない。
たいようくんがなりたかった"マトモ"
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
妹を探して、親友を助ける"マトモ"
それはエゴイズムと愛の怪物、松坂さとうに飲み込まれる異物でしかない。だがさとちゃんの防衛行動は反社会的すぎて、もっと巨大な"マトモ"さ…法と常識によって破綻することが判っている。誰も勝者はいない。
さとちゃんが怪物であり、無力な子供でしかないことを丁寧に積んでるのが、なかなか悪趣味で周到だな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
"おばさん"を憎みつつ、そのトレースをするしかない。幼少期に学び取った愛による支配で、今回も太陽くんを落としていた。"母"から学んだ方法以外、世界と繋がる手段がない。
官憲の介入をごまかせたのは、世知に長けた大人である"おばさん"がバリケードとなってくれたから。そこで"母"に頼らないと窮地を抜けれないところに、獣としてのほころびと、人間としての救いが見える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
まだ怪物になりきらない道筋は、少し残っているような。人殺した時点で帰れないような。
そんな細くて暗い道を、みんなで歩く。勝手に気持ちよさを押し付けて、それが裏切られた突き落としちゃえ!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
それでも、"マトモ"に恋とか友情とか、できればしてみたかった人たちの大間違いは、今後も続く。
あさひくんのアシストは、しょーこちゃんを砂糖の檻に向かわせるだろう。
そこにはキラキラした友情大勝利なんぞ当然待っていなくて、さとちゃんのハッピーシュガーライフを守るための暴力が牙を研いでいるのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
そういう結論をしっかり予期させるのは、なかなかいい運びだと思う。倫理的な是非は横において…と言いたいところだが、相当倫理的な話だよなこのアニメ。
規範の強さ、硬さ、息苦しさを理解しているからこそ、そこからはみ出つつ可能ならば規範を守りたい人たちを描いているわけで。まぁ守れないんだけども。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
愛、自己実現、不安からの保護。少女たちは皆、凄く普遍的な価値を求める。光への歩みも、それがドロドロの闇で汚されきって間違えるのも人間性か
どっちにしても、エゴと愛にまみれた人たちの踊りは続く。天使を愛するものたちは結びつき、願いと暴力を育てていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月1日
それがどう結実するのか。狭い主観と破滅という、画家が示した額縁から出れる存在はいるのか。カルマは転輪し、加速していく。
来週も楽しみですね。