少女☆歌劇 レヴュースタァライトを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
奈落の底に落ちたとしても、天に青い星が輝くのなら。
行こう、運命を積みに。
時を逆戻しに語られる、神楽ひかりの過去。青く透明なロンドンを駆け抜け、情熱をもぎ取られ堕ちた悼み。
それでも、あの赤い星が、私を導くから。
さぁ、二度目の幕が上がる。
というわけで、ひかりちゃんの過去と現在と未来を描くエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
世界全体を支配してた大場ななを前回描き、そこに物語の果てがあると予断させた上で、もう一枚の(そして最後の)伏せ札である神楽ひかりの起源と未来を描く。巧妙な変化球が、最高の速度でキマる回だった。
ひかりちゃんがどんな女の子で、どんな情熱と物語を秘めてレヴューに挑んでいるかは、ここまで隠されてきた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
主役である華恋の根源にいるし、ときおり見せる表情と優しさ、氷の仮面から溢れる情熱から"何か"があるのは判っていたが、詳細は秘され、焦らされてきた。
最後の秘匿情報が顕になるエネルギーは、大場なながループさせ支配してきた"輪廻する99回"を吹き飛ばし、孤独の宿命すら飲み込む力に変わる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
一度敗北したひかりはななが一番守りたい"弱者"でありつつ、その庇護を決定的に拒絶する。負けた側は、再演で負け続けては自分を再生産出来ないからだ。
過去に戻る運動と、過去を振り払う運動。華恋との約束を再獲得することで、未来に繋がる情熱を再生産する試み。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
勝者は一人しかいない舞台。身を持って刻まれた宿命を"それでも"と飲み込んで、過去に惹かれ続けるななを切り払った時、ひかりのステージはもう一つ上へと上がる。焼け野原に星が登る。
今回選ばれたレヴュータイトルは"孤独"。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
『"みんな"を守ってあげる』と輪廻を回していた大場ななは、皆が成長し協調する時間の輪から切り離され、孤独だった。
オーディションに破れた結果、舞台への情熱を奪われたひかりは、冷たい孤独から脱し、勝者が孤独になるレヴューのルールに反逆する。
既存のシステムに乗っかって、後ろ向きな願いを叶える者と、それを破綻させることで新しい輝きを求めるもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
逆向きに落ちる約束タワーが、第二幕の開演を告げるのはとても良く出来たフェティシズムだ。TOWERの逆位置が意味するのは『破壊からの再生』である。
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負け、奪われ、残酷なルールに支配されてなお、その先を目指す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
純那が、クロちゃんが、双葉が、華恋が、頂点に立つ真矢すら歩む挑戦者のベクトルから、一人孤独であった大場ななは、輪廻(再度の敗北、二度目の略奪)を拒絶するひかりの青い光に切り裂かれ、追い抜かれる
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大場ななが勝者を決め、大場ななが全てを守っていた時代は、逆さの塔の落下によって破綻した。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
此処から先は、負け犬達のサーカス。星を追い求め、明日を掴むために無様に突っ走るシリウス達のレース。黄色い永遠が介在する余地のない、赤と青のデュエット。
そんな感じの、決定的に鮮明なエピソードだった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
光田史亮のアクションセンス、鮮明な色彩センスが随所でうなり、ロンドン編とレヴューで大胆に分割/接合された構成も冴えていた。
勝負回できっちり勝負できるアニメは、本当に強い。勝ちきれるのならなおさらである。いいアニメだなぁほんと…。
今回のお話は、前振りなしの過去編から始まる。そこでのひかりちゃんは、聖翔でのぶっきらぼうな彼女とは、ちょっと印象が違う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
溌溂と明るく、情熱と優しさ、野望と敬意に満ちた、理想的舞台少女を、三森すずこが好演している。部屋も乱雑だが活気があり、机には星と約束
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第1話の光と同じように、寝ぼけつつ机に置き忘れた大事な約束を回収することから、今回の物語は始まる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
東京とロンドン、青と赤に切り分けられた世界の中で、ひかりは華恋と同じように、交わした約束、見つけた運命だけは見落とさない。繋がるための手紙も、赤と青。
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"青"は決定的にひかりの色で、彼女のホームである(であった)ロンドンは透明度の高い、美しい青に彩られている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
どこか聖翔(つまり東京)に似ていながら、神楽ひかりの色に染まった青いロンドン。過ぎ去りしゲネレシオン・ブル。
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冒頭の美術の鮮明さに脳みそバッキバキにされるが、そんな青いロンドンのなかで、ひかりは己を高めるためにオーディションに挑み、敗れる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
過去話で幾度も見てきた、窓からの光がレッスン室に作るステージ。どこか真矢に似た気配のあるマドロスの少女。
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ロンドン公演でも、冠をかぶる王者は脇役であり、主演特権は常に簒奪者の側にある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
切り裂かれるりんごから流れる、赤い血。それを切り裂く短剣は、ひかりの獲物。オーディションの残酷さを巧く暗示したポスターである。ここにも、赤と青の対比がある。
回想の中に埋め込まれた、もう一つの回想。ひかりの側から見た第4話、鏡写しの約束タワー。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
華恋の再生産がひかりとの約束を思い出すことから始まったように、ひかりの運命もまた、あのタワーの中にある。演劇と、夢と、決定的に出会ってしまった瞬間。
ひかりの回想の中で、寸詰まりの約束タワーとして描かれたすべり台。それはひかりが再挑戦を決意し、華恋が約束を思い出す第4話を保管し、再生産する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
別れの日、二人で頂点に立つ約束。それはかつてひかりの側からなされ、今華恋の側から再生産される。
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泣きはらした華恋が一度地面に降り、青い(ひかりのパールカラー!)階段から登り直して、二人が再び出会う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
過去と未来(話数的には逆接になるわけだが)で反復されるこの運命は、しかし再演ではない。主客を変え、年輪を重ね、それでも繰り返されるからこそ見えてくる意味。
華恋は泣いているばかりであることをやめ、まひるちゃんに起こしてもらうこと、脇役に甘んじること、自分の限界を定めることをやめた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
その起点には、ひかりを助けたいという思い、かつての約束を再獲得する熱意があった。その赤い炎が、ひかりの内側にも強く宿っていたこと
そしてそれが、決定的に破綻してしまったことを、今回の回想は教える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
青に彩られていた世界は、敗北の瞬間から真っ赤に染まる。もう取り返しがつかないほど、自分らしさで満たされたロンドンは変貌してしまった。
オーディションにおける敗北は、それほどの重さがある。
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ロンドン編では長く力強かった、青い刃。敗北と喪失からの再演となる東京編では、刃は短く弱々しいものとなる。それを握ってでも、敗北を繰り返す赤い世界から、ひかりは抜け出したかった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
頼りない刃は大場ななの再演への挑戦、輪廻を打ち破る鍵へと変わっていく。
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ひかりの短剣"Caliculus Bright"は、"つぼみの輝き"を意味する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
咲かないかもしれない。勝てないかもしれない。奪われたままかもしれない。
それでも、未来に青い光を伴って挑む勇気が、つぼみを花開かせ、勝利と未来へ道を切り開く。
それは大場ななが望む痛みなき永遠では、絶対に獲得できない力だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
ではひかりのつぼみは、何のために開くのか。ななの黄色い光を拒絶し、舞台を青に染め上げた決定打はなんなのか。
それは過去に交わし、未来に伸びていく約束であり、運命である。かつて、いつかと誓った思いの強さである。
大場ななもまた、同じようなものを抱え、しかし決定的に異なってしまっている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
ななの過去は変容せず、前進しない。停滞し、輪廻し、前に進んだと思えば強制的に元に戻らされる。敗北は敗北を繰り返し、赤い荒野に約束は帰らない。
私は再生産されない。
それが大場ななの優しさの形だとしても、舞台少女はそこに安住できない。傷つくことが判っていても、足を止めることを許されない胸の高鳴り。あの時見つけた、赤の、青の、あるいは黄色の星の輝き。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
それを自らも発していることを、大場ななは私的な永遠の中で忘れ去る。
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舞台の上で、ロンドンでの敗北は再演される。ななが遠ざけたい、でもひかりにこれ以上ないほど刻まれてしまっている、赤い喪失。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
それは幾度となく、オーディションに挑むひかりに襲いかかる。自らを駆動させる原点を見失ってしまった、赤い痛み。
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9位の純那ちゃんにすら追い詰められてしまう、精彩を欠いた青い星。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
華恋はその弱々しい光に導かれ、運命の舞台に上がる。第1話で決定的に物語が動き出した瞬間、地から天を照らし主役を導いた光は、ひかりの青だったのだ。それは、くすんでもそこに在る。
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忘却したように思えて、胸の中で疼き続けるもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
ループに閉じ込められてなお、生き生きと脈をうつ夢の鼓動。
かつて見た"スタァライト"に導かれ、時間を超越して未来の自分を見つけた舞台の記憶。
それが最初からそこにあったことを、今回の物語は鮮明に再生産する。
痛みも、失敗も、喪失も。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
大場ななが勝者の特権として定めた世界から排除されるものは、けして消えない。大場ななの優しさでは、舞台少女は救えない。
今回のひかりの勝利は、そのことを鮮明に見せる。大きく見えた壁は、見事に切り抜かれる。そこは、通過点でしかないのだ。
あるいは大場ななの再演は、新たな輝きを求め首を長くしていたキリンを骨に変え、マクベスの亡霊へと貶めていたのかもしれない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
全てが終わった後、ロンドンを支配する遺骨たち。敗者達の残骸は、ななの優しさが覆い隠すもう一つの真実だ。
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負けたままならただの骨、挑んで勝ち直せば光る星。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
腐敗の果てにある骨格に、血と肉を再生産させる営みに、ひかりは自分を投げた。その時溢れる緑の光は、青と黄色を混ぜた色合い。
大場ななの停滞と孤独、神楽ひかりの敗北と夢が、混じり合う未来の決闘の予言である。
ストイックに毎朝、体重を測り直していたひかり。彼女から失われた130gは、思い出と魂の値段、運命と夢の重さだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
シャイロックが切り取れなかった、血と肉一ポンド。借金のカタを取り戻すために、少女は勝ち目の薄い戦いに挑む。
そして、孤独のレヴューに約束を抱いて勝つ。
それは大場ななの身勝手な孤独に、ひかりが少しでも切り込めたことを意味するのか。永遠を繰り返せば"みんな"を守れるという独善を、切り崩せたことを意味するのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
ロンドンでの決闘の始まりは、緑の倫敦大橋であった。青と黄色が入り混じり、緑に変わる日は来るか。
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それはこの先の物語を見なければ、理解らぬ話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
大場ななの支配を、青い蕾の開花が決定的に切り裂いた今回、ななはオーディションの冷たい宿命を確認sるう。
かつて真矢を破った時、それでも緞帳を超えて問いを届かせようと願った彼女を、ななは拒絶した。
あのときと鏡写しに、決定的勝者であったななは敗北し、勝者に問う。それは繋がりたいという願い、繋がっているという実感(あるいは妄想)があればこそ、生まれる働きかけなのではないか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
ばななちゃんの幼く危うく、あまりに純粋な優しさと独善が好きなものとしては、そう思いたくもなる。
華恋もまたクロに問いかけられ、答えを返す。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
「なぜ、戦いに挑むのか」
それは舞台少女全てに投げかけられた問であり、作品を貫通するテーマであり、つまり戦わない僕らの殆どに投射されたエールなのだと思う。
(C)Project Revue Starlight pic.twitter.com/QEN6EGnJKC
場所を変え、相手を変え、時間すら超えて繰り返される勝利と敗北。喪失されるものと、再生産されるもの。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
乗り越えられないルールと、運命を書き換える決意。
そういうものが強く熱く交錯する、見事なレヴューでした。
神楽ひかりは、これ以上ないほどに舞台少女であったのです。
かつてひかりは、『勝者は一人だけ。敗者の残骸が、スタァの光を生む』というルールに破れ、最も大切なものを奪われた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
ななはその残酷さから"みんな"を護るために、バナナ色の光を過去だけに照射し、メビウスの檻を作り出した。
どん底から未来を求めるものと、静止した永遠を司るもの。
勝敗を分けた青い光(青い薔薇の花言葉は"不可能"そして"夢叶う")は、かつて自分を叩き落とした残酷なルールを打ち破り、天に二つ星を輝かせるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
奈落に繋がる舞台に、短剣が刺さる。命綱のような、か細い糸を輝かせ。
(C)Project Revue Starlight pic.twitter.com/eN4zP4azRY
その糸を手繰って、ひかりちゃんもななも、みんな戦い続ける。まだ8話、物語は続く。『もう最終回でも良い!』というエモさと圧力であったが、物語は続くのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
それが、僕には嬉しい。ななもひかりも、間違えたり失ったりしたまま、終わらなくていい(かもしれない)のだ。
唯一絶対星の輝きは、魂を奪われた残骸を燃料にしてしか生まれないのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年9月3日
痛みは永遠に残響し、人の成長を止めてしまうものなのか。
幼い時に見た夢は、怜悧な現実の前に無力なのか。
青春を問うレビューは、全員の根源が見えてようやく本番。来週がとても楽しみですね。