青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
県央藤沢、湘南の爽やかな雰囲気はどこ吹く風、ダウナーな空気とよく回る口を抱え、ヒネて生きる高校二年生、梓川咲太。
そんな彼が図書館で、野生のバニーガール─”青春症候群”を発症した桜島麻衣─と出会うことで、物語ははじまる。
そんな感じの、歪んだ自意識青春ど真ん中怪現象系SFジュブナイル、第一話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
系譜としては”転校生””時をかける少女”から”ブギーポップは笑わない””涼宮ハルヒの憂鬱””化物語”と流れていく、ヤングアダルト日常SF、その先端……なのかな?
思春期。発達していく心身が世界と、自分と、他人とのギャップを生み、擦れた自意識が真っ赤な血を流す、痛みと青臭さに満ちた地獄の季節である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
そんな歪みと喜びを素直に描くと、ちと恥ずかしい。SF的、伝奇的フィルターを通すことで、逆に素直に飲み込める作用が、ジュブナイルSFにはある。
消えてしまいたい。胸が張り裂けるほど苦しい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
少年少女を襲う”思春期症候群”は誰もが(つまり僕やあなたが)体験する青春の心理的発作が、身体的変化を伴って発露する現象だ。
ここら辺のフィジカルな超常現象が、非常にナイーブな青春の躍動と直結している感覚は、実は”夏色キセキ”に近い気もする
いかにもラノベ的な過剰な自分語り、ヒネてシニカルな言葉遊び、脂っぽいシチュエーションと、ドバっと山盛りな不可思議美少女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
そういう装飾を剥がしてみると、これは非常にストレートで、あらゆる時代の青春ど真ん中に向けて作られた、同士愛を込めた物語的処方箋たるジュブナイルSFなのだと思った
作中幾重にも重ねられる、”空気”への恐怖。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
咲太は孤立し、いかにもクインビー(学校の”空気”をコントロール可能な、特権階級)な女に透明な悪意を叩きつけられる。”病院送り事件”の真相を探ろうとしないまま、迫害し、傷つけ、そんな”空気”と戦うことを咲太は諦めている。
妹のかえでもまた、”空気”に飲み込まれ、自傷癖とも取られかねない”青春症候群”の発露で体と心を傷つけられ、未だ外に出ることはできない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
ヒネた内面をわざわざ吐露しなくても、めんどくせー青春ラノベを読まなくても、世界に向かって妄想の爆弾を破裂させなくても生きていけるノーマルども。
彼らが無自覚に、悪意なく吐き出す”空気”に咲太と妹は傷つけられ、二人きりの部屋をシェルターになんとか生き延びている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
クソヒネた態度取ってるクソガキなんだが、妹のために携帯電話(”空気”受信機)を海に投げ捨て、孤立した麻衣のためにクリームパンを買ってやれる男、咲太。
岡部くんが心が壊れかけたまゆりを守るべく”鳳凰院凶真”になったと知って、シュタゲが好きになったり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
八九寺の孤立に本気で共感して、本気で怒っていた阿良々木くんを見て化物語が好きになった男としては、妹や先輩を人間の根っこの部分で大事にできている主人公のことは、つい好感で見れてしまう。
麻衣もまた、”空気”に窒息させられそうになって芸能界から逃げ、人目を避け、身体的認識と社会的存在感を喪ってしまった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
グーグル検索すれば即座に最悪の結果が出てくるような、透明な悪意に満ちた”空気”のなかで、有名人になってしまった麻衣。彼女のナイーブさをすくい上げて、症候群は形をなす。
”空気”は恐ろしいもので、形がなく透明なのに、それがなければ生きていけない。名前も顔もない存在としてクリームパンが買えればこそ、飢えず排斥もされず生きていくことも出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
麻衣が嫌悪しつつ、”慣れた”と言うしかない”有名税”(嫌な言葉だ)としての無断盗撮。毒ガスのように流れ込む”空気”
それを遮断した結果、麻衣は咲太以外の他者と接続できなくなってしまう。逆に言うと、咲太は自分だけは”空気”ではなく実態として、真心のある人間として”有名人”にして”空気”でもある麻衣に向き合おうとする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
それは胸が張り裂けるほどの痛みを、妹を助けられなかった過去に抱いているからか?
静かに、藤沢のローカルな空気をたっぷり込めて進んでいく第一話だが、結構謎も多い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
未来から書き残された日記、読めなくなっている名前。”病院送り事件”とかえでの不登校の真相。
ここら辺はストーリーが進行し、新しいヒロインが顔を出す中で掘っていくネタなのかなぁ。
ともかく、奇妙な兎に出会うことで咲太のブタ野郎な青春は駆動し始め、縁あって仲良くなったバニーガール先輩を助けるために、おそらく”空気”と戦わなければいけなくなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
あるいは、”空気”を拒絶し社会的身体を透明化されてしまった先輩が、”空気”と向かい合う気持ちを蘇らせる必要がある。
かつて自分を殺しかけ、今も迫害し続ける”空気”。戦わないことで、シニカルな皮肉の棘で武装することで遠ざけている不定形の怪物と繋がり直すことでしか、麻衣の青春症候群は治らないのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
ここら辺の対比と融和を、沢山女の子見せつつしっかり予言しているところが、なかなか上手い第一話だ。
その誰かのための戦いが、咲太が”空気”と別の繋がり方をする契機になれば良いなぁ、と僕は思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
親友クンは幸いにして、スクールカーストのクソな”空気”とか気にせず付き合ってくれるが、その彼女は『空気が悪くなるから縁を切れ』と言ってくるクソアマである。
でも、二人の縁、二人を繋いでいる”空気”を乱し、切るわけにもいかない。そういう曖昧で危ういものと向き合うのは、とても大変だ。戦わないことで勝ちとしたくなるのも、よく判る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
それはありすぎても中毒し、なさすぎても窒息する、非常に危うく不安定なものだ。
拒絶するか、飲み込むか、同化するか。読むか、乱すか、風を吹かして入れ替えてしまうか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
咲太が巨大な自意識と同じくらい巨大な、形のない”空気”とどう戦って、どうバニーガール先輩を守るかは、なかなか注目しどころだろう。
そしてそれはひどくありふれた、思春期ど真ん中の(あるいはそれを終えた、またこれから飛び込む)人達の普遍的闘争でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
形が見えないくせに自分を支える、不定形で曖昧で、悪意も善意もないまぜになった世界をどう測量し、自分をどう配置するか。そこにいる他人を、どう計測するか。
それはそれぞれの人々が歯ぎしりしながら、決死に(あるいはダラダラとなんとなく)戦って、勝ったり負けたり勝ち負けがよく分からなくなったりしながら、何らか答えを出し、あるいは諦め、苦笑いをしながら飲み込んだり、飲み込めきれずに死んでしまったり、自分を変えたり世界を恨んだり。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
様々な形で向き合っていくものだと思う。そこには正解はなく、つまり”普通”もない。思春期症候群の現れは人によって千差万別であり、その処方箋もまた、個別のものであろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
しかしそれなりに真摯に向き合わなければ、それが死に至る病だということもまた、ありふれて大事な答えだ。
咲太は世間が肯定しない思春期症候群を、現在進行系の当事者として認める。それに苛まれた先輩の透明な世界に、孤軍踏み込んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
それは優しくて強いことだなぁ、と思う。皮肉な言葉遊びを片手に、もう一方の手に青臭い愛を握りしめて、青春戦士は人生の死闘に挑むのだ。
そういう青臭くて、古臭くて、凄くスタンダードな物語が今でもそれなりに元気で、形を変えキャラクターを変えてバリバリ前線で売れた結果として、この作品はTVアニメになり、映画になるのだと想う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
それは良いことだなぁと、かつて青年であり恥ずかしながら今も不完全な青年であるオッサンは思う。
SFジュブナイルへの思い入れがダダ漏れとなり、あんま他人様に見せる感想ではなくなってしまった気もする。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
学校のノーマルな空気からはみ出してしまった、ひねくれ者たちがなんとか肩寄せ合い生き延びている感じが細やかな作画からにじみ出ていて、アンニュイでよかった。
藤沢から江ノ島近辺にかけての描写があまりに地元過ぎて、何かが映るたびに”例の陸橋””例のコーナー””例の江ノ電改札口”と記憶が刺激されて、なかなか面白かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
このアニメに土の匂いを感じるのは、そういうローカルな親和性が僕の中にあるからかもしれない。全シーンどっかで見たマジ!!
アンニュイと言えばED”不可思議のカルテ”がマジ名曲で、凄く良かった。硬めの押韻、繰り返すテンポとリズム。六人の声が混じり合わずしかり隣り合って、ジャジーな空気の中で一つの曲になっていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
OPの青春ど真ん中感と、EDの湿り気。両方大事に走らせていくと面白いアニメになりそうだ。
作詞の児玉雨子さんを調べたら、アイドルタイムプリパラの主要楽曲(”チクタク・magicaる・アイドルタイム””Giraギャラティック・タイトロープ”他)を作られた方で、『鮭は生まれ故郷の河の匂いを覚えていて遡行するっていうけど、ホントなんだなぁ』という感慨にふけった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
マジ懐かしい”匂い”する。
ブタ野郎が誤解と愚かさに満ちた”空気”のなかで、自分と大事な人を護るために固めた冷笑の鎧。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
それがベキべキ割れて、熱い青春力がマグマのように吹き出る瞬間はなかなか熱くなりそうだ。なってほしい。
そんな風に期待が高まる第一話となりました。俺、このアニメ好きだな。
美麗な作画とゆったりとした動きの作り方が、咲太が見ている冷たくも温かい世界を無言で成型してて、妙にシックリ来るのだな。ロケハンきっちりやって、藤沢のローカル感を大量に盛り込めてるのもあるんだろうけど。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
そういう肌触りは、スカした青春斜め旅に体重乗せる上で、とても大事だと思う。
咲太が全然馴染めない、学校の騒乱。そこでトロフィーとして求められるパンを、藤沢駅南口方向のパン屋で先輩のために買ってやって、喧嘩別れした後もう一回買って駆けつけてやる咲太が、僕は好きである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
©2018 鴨志田 一/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/青ブタ Project pic.twitter.com/u3irixXq1I
咲太の優しさというのはひねくれていて、みんなが受け入れてくれるようなノーマルな形を取れず、腹減った時クリームパンを差し出してくれるような、そんなつまんねー優しさなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
でもそういう、生きてる実感に直結した優しさというのが僕は好きで、つまりそれは強い、ということでもあるからだ
”空気”に傷つけられ、勝てなかった彼が、腹ペコバニーガールにクリームパンを差し出せる強さとヒロイズムを、それを抱えた自分を肯定して、胸の傷が塞がる時が来ると良いな、と思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
その時はつまり、青春ブタ野郎の物語が終わるときでもあるのだろうが。
とまれ、不可思議な青春症候群とのリマッチは始まったばかりである。どんな困難が待ち受け、どんな戦いが繰り広げられるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
超常の領域で展開する戦いと並走して、当たり前のつまんねー生活の中で、ワラワラ湧いてくるクソみたいな青春バトルも起こるだろう。恋の鞘当てとか、身内の問題とか。
麻衣の問題を解決する答えは結局、咲太が言うように『芸能界(=”空気”に満たされた場所)に復帰する』ことなんだろうけども、今の彼女はそれを肯定できない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
その障害の一つが、”あの人”呼ばわりしてるマネージャーとの確執…なんだろうなぁ。間柄が気になる。母親かなぁ…。
麻衣がゴミクズみたいな大衆の透明な視線にズタズタにされたように、咲太にもマスコミ(しかも大人)が貼っ付いているのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
顔と佐藤聡美のいい声を付けた、対話可能、交渉可能なメディアを相手に、どういう関係が作られていくかもちと気になる。ほぼ唯一、大人との接点だしね。
そんな感じで、静かに滑り出しつつ、謎やら真心やらがみっしり詰まった良い第一話でした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月7日
長々書いた妄想がどんだけあたってるかは分からんけども、俺結構このアニメ好きになったんだなぁ、と思った。相変わらす、ど真ん中ジュブナイルSFに弱い。来週も楽しみですね。