BANANA FISHを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
因縁が地下を、高空を這い回る。赤い血のペンキで、一撃必殺の銃弾で、描かれるアメリカン・グラフィティ。
アッシュとオーサー、天才と凡俗、二人の豹の物語が決着を見るエピソード。木っ端のように人が死んで、物語はまた別の局面へ。
そんな感じの、一つの終わりと一つの始まりである。お話としてはオーサーとの因縁に決着が付き、英二が不帰点を渡るエピソードであろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
英二のイノセンスがギャングメンバーをたらしこみ、彼は決着にぎりぎり間に合う。しかしその言葉は無力で、殺人を止めることも、逮捕から逃がすこともできない。
アッシュとオーサーがメトロに乗って地下を、英二が高いマンションから空を、それぞれ足場にしているのは面白い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
ヘミングウェイを引用しつつ、まるで十代の文学青年のように”死と憧れ”について語るアッシュ。彼は出口のないメトロに乗り込み、死の天才として腕を振るう。
今回のアッシュはまさに殺人機械で、チートでも使っているかのようにヘッドショットを決める。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
オーサーと彼が率いる烏合の衆は、アッシュのように的確に”死”を扱えない。だからこそ天才を恐れ、惹かれ、消したいほどに憎む。殺すだけでは飽き足らず、親友を殺させて魂を潰そうとする。
そんな緑色の憎悪を乗せて、メトロは走る。山盛りの銃弾と死が、世界で一番低い場所を疾走する様は、血生臭く逃げ場がない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
安全圏に逃げ込んだと思ったら、そこが墓場になってしまう犠牲者達の姿は、浅はかで愚かで、哀しいほどに人間らしい。アッシュのような天才なら、死地も越えられただろうに
しかし、そんな未来は来ない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
悪徳に取り囲まれてなお、叛逆の牙を研ぎ澄ませ、人間として生きることを諦めなかったり。あるいは”パパ”ゴルツィネを夢中にさせるくらい、悪魔的な魅力を発散したり。
主人公たるアッシュが歩める特別な道を、オーサーとその仲間は歩けないのだ。
彼らは地下深く、緑色のメトロの中で死に、あるいは天から堕ちて死ぬ。キリマンジェロの雪に迷い込んだ豹のように、高い場所に憧れつつ、そこで生き抜く才覚を持たないから、より鋭い牙、天性の肉食獣に殺されてしまう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
因業で、哀れな死に様である。弱い、と言ってもいいだろう。
しかしその弱さ、脆さ、凶暴さの影はアッシュにも伸びる。地下を抜けて開けた場所、高い場所に開放されたアッシュとオーサーは、再びナイフを握って向き合う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
二匹の豹の表情は、等しく獣のそれだ。鋼鉄の牙も持っている。
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アッシュに惹かれ、だからこそ不倶戴天と憎んだオーサーは、分不相応な望みから堕ちて死ぬ。悪徳で翼を固めたイカロスは、飛び立てないまま無様に死ぬ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
しかしそんな惨めな凡人と、生き残ったアッシュの間にそこまで差はないだろう。青空が見える白い雪の中では生きられない、兇猛なる豺狼だ。
そんな己を英二に見られたくないからこそ、アッシュは英二を遠ざけようとし、それを乗り越えて現場までやってきた英二の声に動揺する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
その脆さと惨めさこそが、豹を雪に適応させ、綺麗なものの近くで生きさせる秘訣なのだろう…が、そういう綺麗なものは、哀しいくらいに無力だ。
銃弾は敵を殺すことが出来る。ナイフは決着を付けることが出来る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
英二が持ち込んだ言葉は、アッシュに隙を生むだけだ。殺し合いを止めるわけでも、警察というより巨大な暴力から逃がすわけでもない。救急車にすら追いつけないまま、英二は無力に取り残される。
英二に背負わされている無力さと正しさは、コレまで幾度も強調されてきたし、今回も健在だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
高くて綺麗な場所に守られ、アッシュと同じ地平まで下りてもすれ違う。無力で可愛い、綺麗なままのお姫様。赤い血を流す殺戮者とは、根っこから違う異国人。その綺麗事は、悪と同じように弱い。
英二の抱え込む正しさだけでは、豹がお互い喉笛を狙う世界を変えることはできない。だが、どれだけ鋭い牙を持っていたって、望む生き方ができるわけでもない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
才能があっても、なくても。誤った暴力、正しい無力のどちらを選んでも、得るものはない。
そんなどん詰まりの感覚を、ずっしり運ぶエピソードであった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
それでも豹は蒼天を求めて、雪の高峰を歩く。アッシュと英二の住む世界は違くても、お互い歩み寄り、見つめ合わずにはいられないのだ。
出会わなければ、あるいは諦められるなら、二人もそこまで辛くはないだろうし、救いもないだろう。
暴力と無力の間に橋をかけ、完璧な答えを導き出せたなら。オーサーが憧れ堕ちたような高みから、自由な空へと羽ばたけるなら、苦労はない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
でも現実は諦めと悪徳に満ちて、生き残ったアッシュも英二も、その泥の中でもがく。死んだ時しか、豹は雪に包まれる贅沢を許されないのかもしれない。
無様なオーサーを置き去りにして、運命はまだまだ転がっていく。二人を分かちた救急車がどこに進んでいくかは、次のエピソードを見なければわからない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
どうあれ、アッシュはたっぷり殺し、オーサーは死んだ。オーサーが殺させたスキップもショーターも、別に蘇りはしない。
殺すか殺されるかのルールから、結局出れなかったオーサーのどん詰まり。床はやっぱり、赤と青の入り混じった悪徳の紫だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
ブラインドは閉じられて世界は狭く、グラスに慰めの酒は入らない。彼らしい、つまらなくて寂しい部屋だ。
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殺したいほどに憧れる気持ちを暴力でしか発散できない凡庸と、そのくせまっすぐ向き合うことすらできない臆病さ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
ショーターを殺した”悪役”たるオーサーの虚しさは、彼の死をスカッと消費させてはくれない。真っ赤な血を逃げずに描いたこのアニメでは、その曖昧さこそが正しいのだと思う。
空を求めて地に落ちた、ダウンタウンのイカロス。その愚行を、僕はやっぱり嘲笑う気にはならない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
その危うさは、特別な才能に恵まれたアッシュや、力を持たぬがゆえにどこまでもキレイな英二にも、いつでも降りかかるからだ。いわんや、ヒーローになんてけしてなれない僕自身においては。
そしてそんな無様な死骸を一瞬の慰みと盛り上がって、物語は進んでいく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
殺戮ショーに興奮する群衆の愚行と、一切反応していない英二の正しさの対比は、なかなかグロテスクでいい。
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なんとも出口のない、カルマまみれのお話であった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
シンがアッシュの真価を見定めるべく地下に降りて、曇りのない目でその生き様を見届けていたのが、ほぼ唯一の清涼剤だろうか。
今後アッシュと英二の運命が転がっていく中で、あの真っ直ぐな少年がどう関わってくるか。なかなか楽しみだ。
もう一人の豹を殺して、檻に閉じ込められた山猫(リンクス)は、一体どこに行くのか。青い空を背負う異国人は、無力に切り離されて何が出来るのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月9日
1クール目終わりに作品全体を支配する残酷なルールと、一筋の光明を同時に捉えるお話でした。次回も楽しみですね。