色づく世界の明日から を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
魔法潮流に流され、60年前の世界に迷い込んだ銀髪のアリス。レトロなワンダーランドにも色彩はなく、魔法はどこにもない。
薄暗い暗がりの中からモノクロームの世界を眺めて、ため息を一つ。私はどこに行って、何をすればいいんだろう?
そんな悩める主人公のメランコリック青春が、柔らかな光と影の中で踊るマジカルタイムトラベル青春絵巻、第二話である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
状況自体はスピーディに流されていくのに、主人公の心境変化は結構スローで、その物語的内輪差が独特のテンポと味わいを生んでいると思った。
オババの強引大魔術で、何も分からんまま過去にぶっ飛ばされた瞳美ちゃん。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
なぜここいいるのか、何がしたいかもわからない、青春のホワイト・アウトに苛まれつつ、しかし世間は妙に優しい。時間旅行者も魔法使いも、『そういうもん』として受け止められ、それなりの居場所をケアされる。
そういう世界の優しさを『マジカル☆ステイ』という言葉一つでわからせるのは、とても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
外国人留学生のように、魔法使いが訪れるのはよくあることで、社会的には当たり前。制度も体制も整っていて、瞳美ちゃんは社会的にはストレンジャーではない。
んだけども、色彩を喪ってしまった心は全く居場所を見つけておらず、彼女は恵まれた優しさの中で戸惑い続けている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
この戸惑いが居場所と色を見つけるまでの物語としてみると、これは非常にオーソドックスな青春のお話である。話の骨格がフツーであるのは、普遍性を得る上でとても大事だ。
とにかくライティングと色彩がキレてるアニメだが、視聴者の目に映る世界が綺麗であればあるほど、瞳美ちゃんのモノクロ世界が”もったいない”と感じられる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
僕らが見れる美しい世界、魔法に満ちた世界を、彼女は感じられない。その事実が、ヴィジュアル的実感でぐいと立ち上がってくる。
ほんっとあらゆる瞬間が美麗でピカピカしてんだけども、その美しさを瞳美ちゃんは実感できない。だから魔法も、大したことできない。青春が輝いてこない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
色覚と感情、物語的なスウィングをシンクロさせて描く作りは結構独特であり、いい作画の助けも借りて的確であるとも思う。
青春を入れる箱として、写真美術部を用意したのもそういうシステムの一部なのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
カメラを、あるいは絵筆を使って魔法に満ちた世界を切り取る。客観的美を主観的美に引き寄せて、言葉以外のもので表現する。そういうアーツを、魔法がなくても人間は追い求めてきた。
瞳美ちゃんは時間を遡ることで、綿々と続く人の営為、そこに参加する同年代の仲間と出会う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
口下手な彼女が自分を表現するメディア(おそらくそれは”魔法”だ)に出会った時、彼女の世界に色彩が戻ってくるのだろう。その片鱗を、今回の話しは恋に交えて追う。
冒頭、頭のイカレタ魔法女に、翔クンは引いている。東屋の壁は心の壁、分厚い柱は隔意そのものである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
なんにも持たない瞳美ちゃんは、しかし翔クンが見せてくれた色彩だけを頼りに、そこに近づいていこうとする。
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翔くんも負けず劣らず口下手なやつで、絵以外に己を表現するメディアを持っていない。不器用同士の接触はなかなか上手くいかないが、しかし通じ合うものはある。通じ合わないものもあるから、翔くんは手を差し伸べた後、瞳美とは反対方向に去っていく。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
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冒頭に配置されたこの距離感が、絵を見せてもらう間合いに踏み込み、二人でいることに光を感じるまでの変化が、今回の24分である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
最終的に開放された屋上(屋根と柱がある東屋との対比)で、二人は絵と魔法、お互いのメディアを認め合うことになる。
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東屋のシーンでは柱の外側に排除された二人が、屋上ではしっかりフレーム内部に収まる。ゴツゴツぶつかり合って、少しすれ違って、だからこそ触れ合える距離感を巧く絵にした、優れた演出だと思う。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
こういう言外のメッセージが太いと、作品が言いたいことがズギュンと伝わってくる気がする。
瞳美ちゃんは自分の居場所を見つけられず、時間軸的にも逆異邦人で、祖母の大暴れによる風評被害で遠ざけられてもいる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
二重三重の隔離が彼女を隔てているわけだが、そんな彼女の”ズレ”もまた、あんまり説明されずに描写されていく。いや、ババァの悪行はすげー強烈に目立ってたけども。
教室に座った彼女が、机を撫でる謎の仕草。これは60年後の世界では紙の教科書は存在せず、電脳化(あるいは魔法化)されたスマートデスクが”当たり前”だからだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
机を撫でれば、用は足りる。魔法に慣れすぎていると、アナログ授業は難しい。
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荒くれ者の魔法使い、青春ど真ん中の不器用女。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
色んなレッテルを貼らられている彼女は、時間という巨大な壁にもまた遮られている。
技術的・時間的異邦人でもある彼女が、写真や絵筆というアート・テクノロジーとどう向き合うか。技術論的な視座から見ていくのも、結構面白そうなアニメである。
さまざまな壁に隔てられた瞳美は、基本憂鬱な暗がりにいる。心情を照らすクローズアップになると、とにかくすんげぇ影が伸びんのよ。ここら辺の心理主義的ライティングは、いしづかあつこ、高雄統子、山田尚子あたりの諸作品を思わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
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この薄暗がりが印象的だからこそ、屋上で彼女が光と出会い、そこに踏み込んでいくシーンもよく刺さる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
それは特別な人、特別なメディアと出会った特別な瞬間であり、色彩に向かって進もうと心が動き出した一瞬なのだ。マージでビッカビッカだよ青春!
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それをまだ恋だと自覚しないまま、瞳美ちゃんと翔くんはそれぞれ、相手の中に光を見る。綺麗なものに憧れる。その胸の高鳴りを反映して、魔法は昨日よりも少し強く光る。自分の思いを、綺麗に反映してくれる。
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『魔法なんて大嫌い』
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
二回出てくる言葉だが、翔くんという色彩に出会う前と後ではニュアンスが全く違う。二回目は完全に、語尾に♡ついてる。
恋はそんなふうに、青春を駆動させる。熱量を込めて転がりだせば、自分の居場所も見つけられるかもしれない。
魔法は未来のテクノロジーであり、資質を要求する特別なアートでもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
色彩がみえないから巧く使えない瞳美は、現状唯一の魔法使いである。美しい星砂のアートは、瞳美ちゃんだけの特別な表現手段足りうるのだ。このアニメは、彼女がそれを肯定できるまでの物語なのかもしれない。
なかなか言葉を見つけられない青年たちが思いをぶつける手段。それは写真でも、絵でも、言葉でもいい。デジタルでも、アナログでも、マジカルでもいい。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
メディアそれ自体を特別視せず、しかし敬意を持って丁寧に書いているのは、僕は凄く誠実な姿勢だと思う。思いにピッタリハマる表現は色々あるのだ
そして恋は伝染し、輝きはリレーされる。闇の中魔法と戯れる可憐な少女を見て、少年の恋心にも明かりが灯った!
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
この一目惚れ描写はなかなかに風情があり、ファンタジックでもあった。さー一方通行数珠つなぎが加速していくゾー。
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将クンコミュ力高くて気配りできて優しくて、むっちゃスペック高い優良物件なんだけども、瞳美ちゃんが色彩を取り戻せるのは彼の写真ではなく、翔クンの絵…なんだよなぁ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
ここ掘り下げていくと、アートを語るのに大事な”才能”の話にもなってくるけども、ツッコんでいくのかな?
色々予感と物語の種をまく話だったけども、一度も画面に映らないまま破天荒な存在感を見せた琥珀ちゃん(後のババア)も、今後バリバリ芽吹くだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
瞳美ちゃんがアートマジックという”陰”の魔法なのに対し、琥珀ちゃんは破壊を撒き散らし誤解を生む”陽”の魔法なの、面白い対比ね。
強引に物語をキックスタートさせた(それはJK琥珀ちゃんを白髪の婆さんに変えた、時間の流れの整合性を取る行為でもあるんだけど)暴れん坊が、実際舞台に上がった時どうなるのか。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
武勇伝と風評被害が暴れまわった分、期待はグイッと高まっている。
写真部の他の面々がどういう物語を抱えているかも気になるし、うぜー後輩ボーイの腹にいつ一発入るかも楽しみである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
あいつのウザさは”クロムクロ”のYouTuberを想起させて、俺の中の何かが目覚めるな…嫌いじゃないんだけども。
群像劇としてどこまで踏み込めるかは、今後の取り回し次第ですかね。
そういう横幅がしっかり広がるためにも、主役とヒロインの魂の交流、目指すべき色彩の鮮明さはとっても大事。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月12日
恋がうねりだしてしまう瞬間の輝き、ありふれた青春の灰色を混ぜ合わせて、独自の輝きを生み出した第二話、とっても良かったです。次回も楽しみ。