風が強く吹いている を見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
長距離ランナーの孤独の中で、カケルはまだ光を見つけられずにいた。
高校時代の栄光と挫折を知る榊は、執拗に煽り、感情をぶつけてくる。
今、共に走る仲間。かつて、置き去りにしてしまった仲間。
過去と現在、孤立と協調が複雑な渦を描く、カケル深掘りエピ。
というわけで、駅伝青春物語も第四話、主人公の過去と現在をディープに掘り下げていくエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
絵に描いたようなコンプレックス魔人、榊くんが良い壁役になって、カケルの葛藤を掘り下げ、アオタケ連中の情熱に火をつけてくれた。良い敵役は、良い味方と同じくらいお話には大事だ。
カケルは高校時代の挫折を巧く処理できず、グジグジと長いトンネルに入っている。回想される万引きシーンは、その一番薄暗い場面だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
己の最愛を、最悪の方法で破壊することで決着をつけようという、大間違いの解決法。そこに行き合い、追いつき、正してくれたのがハイジである。
ハイジは万引きを謝らせただけでなく、”走り”を諦めたかったカケルを引っ張り上げた。アオタケの”みんな”に引き合わせた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
それがこの物語の開始であり、全ての原点である。今回のお話も、闇と光を行きつ戻りつする。ただの再演で終わらず、情けない王子がデカい仕事をしているところが変化見えて良い
カケルは”みんな”でいることに、巧く馴染めない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
曇り空の下を迷走する時、ちらっと映る”みんなの森”の禍々しさは、彼が共同体に抱く不信感、不安感をそのまま反映してる。魔女の住む森かよって重たさだな…。
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結果を至上命題に掲げ、”みんな”を叱咤する題材に使われる。特別扱いを受けて、持ち上げられることで孤立する。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
高校時代のトラウマは、カケルを深く傷つけている。そこからどう手を伸ばして”みんな”にアプローチしたら良いのか、言葉も手段も見つからない。
今回の長いトンネルは、そういうカケルのもつれる足、重たい天井を追体験する歩みとなる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
基本、ずーっと曇天で孤独、陰鬱でやな感じ。それがカケルの現状であり、一人で走っててもそれは解決しない。それどころか、過去が追いついてきてグダグダ呪いをかけても来る。
カケルが巧く付き合えない過去は、榊の形をとって追いついてきて、カケルが巻き込まれた現在をディスってくる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
そこで煽るネタが”早い・遅い”の対立項なところに、榊もまた高校時代のトラウマから脱しきれていない様子が見える。
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一番早い存在なのに、集団から置いてけぼりにされ、走ることすら許されない。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
榊はカケルと”みんな”になりたかったが、果たせなかった。その無念が彼を歪ませ、”最悪の煽り人間コンプレックスを添えて”に仕上げている。お前はカケルが好きすぎ!!
そんな二人のグダグダは、ふたりだけで完結していない。最後尾を走るひ弱いもやし、王子をクローズアップしつつ、お話は進む。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
カケルと王子のオタク仲間が交流するシーンは、この薄暗いエピソードでほぼ唯一、光が見えている。
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(コッペパンの万引きという”不正な食事(未遂)”を回想シーンで描いた後で、トンチキクソオタクと不思議なコミュニケーションをしつつ同じ釜の飯を食う”正当な食事”で追いかけるあたり、交流の意味、孤独の意味を食事で補強する演出は、今回切れ味が良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
飯シーンが強いアニメが好き)
オタクは走らない。王子は走るオタクだからこそ、走ることしかないカケルと接点ができた。そんな王子を接点にして、カケルはオタクと袖をすり合わせる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
望んだものでも、今の自分に似合ったものでもない。それでも人の縁は繋がっていて、人は一人で走るわけじゃない。ハイジの言う通りである。
ここで”走らないみんな”を描いておいたのは、”走る”行為を過剰に特権化せず、”みんな”の方に重点を置く足場になっていた。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
走れるやつを孤立させる高校時代と、ビリッケツの王子が榊に言い返す大学時代は、もう違う世界なのだ。トンチキポーズで呻いていたって、かっこいいコト言う資格はある。
榊が囚われている高校時代の呪いから、ハイジは出つつある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
それはアオタケの”みんな”(それが接点となり出会った、葉菜ちゃんやオタクたちという”走らないみんな含めて”)と、望まず出会ってしまったからだ。
暗闇の中最悪に間違えようとした時、追いついて問いかけてくれる人がいたからだ。
※訂正
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
×ハイジ→◯カケル
カケルはその意味をまだ知らなくて、しかし既に答えに出会っている。それが答えだと確信するために、2クールの物語が用意されている、と言っても良い。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
アオタケの面々も、それぞれの面倒くささ、長いトンネルを抱えて、肩を並べて孤独に走っていく。それがこの群像劇だ。
カケルは榊に言い返すべき言葉を、自分では見つけられない。そういうのは人間力が強いハイジとか、漫画で言葉だけ走ってる王子の仕事なのだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
自分にないものを”みんな”から引き受けて、カケルは一言、榊に『また会おう』と語りかける。
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(三浦しをんの別作品、アニメにもなった”舟を編む”は辞書編纂の物語で、『言葉を探す』というのは作者にとって大事なテーマなのだろう。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
自分の思いと現状を、的確に表現する言葉を見つけたなら。そして言葉を超えた答えにたどり着けたなら。カケルは自分なりの辞書を、走ることで探すのだ)
榊(が背負う自分の過去、過ち)と向き合いすぎてるカケルの肩をハイジは掴み、ぐいと前を向かせる。光の方、”みんな”の方へ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
その方向転換があってようやく、カケルは真っ当に榊と向き合い、自分が言うべき言葉を見つける。
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ここのさりげないディレクションの芝居が、ハイジが見据えているもの、カケル(達)が彼に導かれてたどり着くだろう場所を巧く表現してて、とても好きだ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
潰れたカエルみてーな、王子のクソダサスタイルも。
王子は必死に走る。自分の言葉で喋る。ダサくてかっこいい。
”みんな”の温もりを感じつつ、王子はそれぞれバラバラであること、それが尊重されていることがアオタケの良さだと吠える。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
お前はお前。ハイジがかけてくれた”言葉”が光を呼んで、長いトンネルの出口が見える。その先にいるのも”みんな”だ。
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背丈も衣装もシューズもバラバラな”みんな”。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
さり気なく挿入される靴コメディは、つまり駅伝を通じて”みんな”が”みんな”になるまでの一コマでもある。
強調される身長差・体格差は、バラバラでありつつ共同体である”みんな”のスケッチだ。
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クソ嫌なヤツ・榊の乱入で、アオタケの闘志には火が付いた。いまいちまとまりきらなかった面々が、同じ方向を向く材料として、侮蔑と隔意はいい材料だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
ここら辺の舵取りも、ハイジが丁寧にやってるところが恐ろしい。王子の言葉を自分の言葉と引き継ぎ、”みんな”の言葉にするのが鬼。
主人公のシャドウである榊を最大限活用し、カケルの過去と内面、現在と葛藤を丁寧に歩くエピソードでした。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
孤独を感じつつ、”みんな”に手を伸ばしたい。カケルの矛盾を追うことで、その先にいる”みんな”のバラバラ加減、繋がり方と可能性も、彫り深く描かれる形に。とても良かったです。
榊のクソデカ感情も超重力で描かれてたし、葉菜ちゃんも可愛かったし。強い絵で持って作品の骨組みを見せる筆がしっかりしてるんで、敵役含めて群像の表情がよく見え、見ごたえがありますね。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年10月23日
そして次回、選ばれるがゆえのカケルの孤独を描いた後は、選ばれないモノたちのお話。来週も楽しみですね。