BANANA FISHを見る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
山猫は檻を脱し、龍は悪魔と手を結ぶ。
精神医療センターの悪夢が幕を閉じ、訪れたつかの間の平穏。アッシュと英二が穏やかに暮らす裏側で、月龍は呪われた血を絶やし、血の復讐を夢見る。
そして銃弾が、夢の終わりを告げる。そして、"白"が来る。
そんな感じの、一瞬の平和のエピソードであり、血腥い激動の物語でもある。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
お預けされたぶんた~っぷりイチャコラしておったが、アッシュ&英二の平穏加減とは裏腹に、月龍とゴルツィネ周辺は血生臭く、大きくうねる。その潮目が呼び寄せたブランカが、挨拶代わりに銃弾を叩き込んで続く、と。
サブタイトルの『殺し屋 』はアッシュ、月龍、ブランカ三人を意味するのだろう。毒と銃弾、知恵と覚悟。武器は様々だが、それぞれ凄腕で男にもモテる。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
"殺し屋"たり得ない英二ののんきさも含めて、なかなかピリッとした良いサブタイである。"The Killers"で、ちゃんと複数形なのよね。
手足の細やかなクローズアップ、少し細い描線。松尾監督のセンスが生きたのか、ちょっと今までとは毛色の違うエピソードである。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
目元の描写に色気があって、久々にロマンスが踊るエピソードとして、ブランカの凄みを印象づけるお話として、なかなかいい仕上がりだったと思う。
殺し屋たちの在り方はそれぞれバラバラで、しかし血に惹かれ、血を引き寄せる所は似通っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
血を絶やすべくゴルツィネと手を結んだ月龍と、英二とアメリカの、自分自身のルーツについて語り合うアッシュ。『ゴミ溜めでも少しはまともに見える、朝焼けの魔法』は、朝に生まれたアッシュにもかかる
月龍が探り当てた、BANANA FISHのルーツ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
エンゼルトランペット、チョウセンアサガオ、あるいはダチュラ。毒物への親和性はつまり李家の"血"であり、ゴルツィネを駆動させる心臓に分け入り、パートナーシップを結ぶ助けにもなる。血は呪いであり、力の源にもなる。
血縁と生殖に呪われた、魂の双子。龍と虎はそれぞれ別のルートから、BANANA FISHの組成を読み解く。それを使って呪いを解きたがるのも同じだが、目指す方向は真逆…上と下、自由と束縛、正義と殺戮である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
似通っていてバラバラで、しかし同じ匂いがする。その共鳴と軋み。
そんな二人に寄り添う、二人の男。英二とゴルツィネ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
英二は再開を心から喜び、打算なく日常を寿ぐ。その穏やかな繋がり方が見ていて眩しいが、少しの嘘も陰る。
なぜ、月龍のことを伝えられないのか。自分が弱点になる負い目か、血で手を汚さない後ろめたさか。答えが見つけられないまま、英二は迷う
英二がアッシュの名前を解析し、そこに込められた祈りを肯定するシーンは、静かな癒やしがあってとても良かった。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
母が朝焼けの中の翡翠に込めた、祝福の願い。それはアッシュが英二に見た青い空のように、曖昧で美しく、高くて遠い。手が届かないからこそ、無くてはならないもの。
Aslanの秘められた響きを舌で転がすたびに、アッシュは母を思い出す。自分の中に流れている血、否定できない過去。取り返しのつかない、硬い感触の不幸を。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
それもまた、答えの出ない問いだ。しかしアッシュは、その血を肯定したいと願う。真名に込められた祈りを。英二もそれを共有する。
ゴルツィネは五人殺して貰う代わりに、五人殺す。李の血を根絶やしにし、コルシカ同胞の絆を殺す。英二が名を解いて祈りを見つけ直したのとは、真逆の等価交換だ。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
手を結ぶ相手も、結び方も、龍と虎は真逆だ。だからこそ、強く響き合う。英二の青い空、母の朝焼けの翡翠。それと同じだ。
そしてゴルツィネは、過去を呼び覚ます。ブランカ…"白"を意味する名前に様々に呪いと祝福を込めた、凄腕の殺し屋。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
今回の繊細な作画が、森川智之の少し甘い声とベストマッチを見せ、良い顔見せとなった。狙撃シーン、スローモーションのショック。グロテスクに描かれる"血"の生臭さ。素晴らしい。
"巨大な田舎"としてのアメリカ、そこに刻まれている神話な世界の神話を思い起こすと、"ブランカ"は狼王ロボの番である。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
アッシュの過去に深く食い込み、英二ともゴルツィネとも月龍とも違う噛み合い方をしている彼を通してアッシュを見ると、彼は狼になる。巨大な田舎に放たれた、人に慣れない獸。
その獣性は銃声によって呼び覚まされ、物語は新しい局面に入る。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
コルシカ財団も李家もアタマがすげかわり、BANANA FISHはその成分を解析されていく。血と名前は祝福と呪いを絡め取って、男たちは複雑に交錯する。
そのねっとり重い質感は、今までどおりか。
血を流し、血を流させることで獲得した娼婦の姿。悪夢の病院を抜け出すときにも使っていた性という武器を、アッシュは再び使い、ブランカの狙撃で結果で阻止される。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
血は簡単に否定できず、幾度も顔を出し、血によって否定される。赤の上に赤を塗り重ねた、出口のない迷宮。
英二は血で手を汚していないからこそ、そこから出る道が見えない。血まみれの世界の中で、ただ一人白い手をしている特権性が、状況を打破する権利を奪っている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
ハバナで世捨て人として生きていたブランカは、巻いた種がどんな実をつけるか確認するため、銃を握って舞台に上がる。
皆、何をするべきか、なにが出来るのか思い悩みながら、血に赤く染まり、あるいは染まらないことに悩みながら、迷宮に囚われている。
— コバヤシ (@lastbreath0902) 2018年11月3日
道は長い。この一瞬の止まり木の先に、まだまだ地獄が続いている。ブランカの参戦が、その因果にどんな波紋を残すか。次週も見逃せず、楽しみだ。